映画『東京物語』の口コミ・レビュー(2ページ目)

東京物語

[トウキョウモノガタリ]
Tokyo Story
1953年上映時間:136分
平均点:8.12 / 10(Review 200人) (点数分布表示)
公開開始日(1953-11-03)
ドラマモノクロ映画
新規登録(不明)【シネマレビュー管理人】さん
タイトル情報更新(2022-12-20)【イニシャルK】さん
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監督小津安二郎
助監督今村昌平
キャスト笠智衆(男優)平山周吉
東山千栄子(女優)平山とみ
原節子(女優)平山紀子
杉村春子(女優)金子しげ
中村伸郎(男優)金子庫造
山村聰(男優)平山幸一
三宅邦子(女優)平山文子
大坂志郎(男優)平山敬三
香川京子(女優)平山京子
東野英治郎(男優)沼田三平
十朱久雄(男優)服部修
長岡輝子(女優)服部よね
長尾敏之助(男優)尾道の医師
水木涼子(女優)美容院の客
安部徹(男優)敬三の先輩
高橋豊子(女優)隣家の細君
桜むつ子(女優)おでん屋の女
戸川美子(女優)美容院の客
諸角啓二郎(男優)巡査
脚本野田高梧
小津安二郎
音楽斎藤高順
撮影厚田雄春
川又昂(撮影助手)
製作山本武
配給松竹
美術浜田辰雄
衣装斎藤耐三
編集浜村義康
録音妹尾芳三郎
その他川又昂(デジタルリマスター版監修)
近森眞史(デジタルリマスター版色彩監修)
山内静夫(デジタルリマスター版協力)
NHK(デジタルリマスター版協力)
あらすじ
時代は戦後。尾道に住む平山周吉(笠智衆)とみ(東山千栄子)夫妻は、東京へ長男と長女をたずねて行く。実の子供たちからじゃけんにされるなか、死んだ次男の妻・紀子(原節子)だけが、彼らに親身に尽くすのだった。巨匠小津安二郎の代表作。
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💬口コミ一覧(8点検索) [全部]

28.おばさんの嫌味がいい味でてます
のりまきさん 8点(2004-12-07 20:53:00)
27.なんとも寂しい老後ですな、やるせないと言うか何と言うか。
自分も息子達のような行動をしてしまう可能性も大いにあるんで責めれないんだよなぁ。50年前の映画とは思えないほどの出来のよさ。昔の日本映画って本当に凄かったんだね…。
ふくちゃんさん 8点(2004-12-26 05:34:48)
26.小津映画はこれが初めてだったのでまず静止画に驚かされました。
悲しい内容ではありますが、日本人の一般的な家族というのをよくあらわしていると思います。
maemaeさん [ビデオ(吹替)] 8点(2005-10-30 19:59:03)
25.僕は20代だが、なんとも味わい深い映画で面白かった.一見、退屈でだらだらした映画にみえるが、不思議と退屈さはなく飽きることなく見れた。世間的に見れば家族はバラバラでないのかもしれない。しかし、確実に家族は断裂しているのであってそこがなんとも悲しかった。
思込百遍さん [DVD(字幕)] 8点(2005-11-10 14:46:06)
24.ネタバレ 熱海でおばあちゃんが立ち眩んで転んでから、ずっと胸が締め付けられるような気持ちで観ていました。そしてその後は随所で不覚にも涙。どうも僕はおばあちゃんに弱いようです。これは一種の家族崩壊を描いた作品だが、ただ哀しいだけで終わらせなかったところが◎。今観ても十分名作だと思うけど、もっと年を重ねてから観たら、もっともっと堪能できるんだろうなぁ。
とかげ12号さん [CS・衛星(吹替)] 8点(2005-11-20 20:04:22)
23.今、どこであるのかを、例えば煙突からモクモクと煙が出ているカットで「東京」と判らせ、冒頭と同じ画を見せることで「尾道」だと判らせ、旅館と海が当然「熱海」で、「大阪」は大阪城のカットをもってくる。今、どの家にいるのかをその前に差し込まれる美容院や病院の看板が語ってくれる。説明セリフやナレーションが無くても画だけで判らせる。 大半が人物が大写しで映される中、例えば熱海での翌朝の老夫婦の後姿や、半ば追い出されたカタチの二人の道端に腰掛ける姿や、一人で朝焼けを見ていたと言う妻に先立たれた父の姿は小さく小さく映し出すことでその寂しさを表現する。老夫婦の尾道の家での会話に近所のおばさんが割って入る。老夫婦のあいだにおばさんがいる、という構図を、妻亡き後もそのまま同じ構図で映し出す。妻のいた場所がぽっかりと空いた構図が強烈な喪失感を演出する。映画とはまさにこういう作品のことをいうのである。しかしそれだけでは傑作とは言えない。この作品は映画として本来当たり前にすべきことをちゃんとしていて、それをベースに小津流の独特の画と独特の間で小津らしさを出し、さらに老夫婦をメインにした「家族」のストーリーの中から、東京で一人で生きる女の物語をラストで出現させるという構成が素晴らしすぎる。終始見せてきた原節子の意味ありげな視線が本当の「東京物語」の伏線だったのである。傑作です。
R&Aさん [DVD(字幕)] 8点(2006-01-16 12:53:37)
👍 4
22.笠智衆という俳優、物凄いハマってますねこの役。ばあちゃんが死んでしまってからの幾多の一人でいるシーン、表にはみえないけど、ジワーっとにじみ出てくる何かがあります。これが俳優の姿なんだろうなぁとも思ってしまいました。そして、原節子。あまりにも美人。静かで単調なようでありながら、まったく退屈しない。2時間以上の作品でありながら退屈しない。時折みせる美しい景色。にじみ出る人の心。どう考えてもやっぱりこれは名作です。
アンリさん [DVD(字幕)] 8点(2006-07-05 11:17:16)
21.ネタバレ 世間的に評価されている名作という理由だけで高得点はつけたくないが、本作はお世辞抜きにして、素晴らしい作品であると感じた。
この歳になるまで、小津作品は一度も観たことなく、ようやく本作を鑑賞したのだが、鑑賞中、なぜか終始鳥肌が立つような感じで、悲しくはないけど涙が出そうになることが何度もあった。とても不思議な作品である。
第一印象として、非常に「緊張感」のある映画だと感じた。美しい「日本の心」と、失われていく「日本の心」が終始静かにぶつかり合い、せめぎ合い、衝突しながら、それが一本の筋となって、映画の根底を流れていく。だから、特殊な緊張感が生じるのだろう。
子ども達に会えることを楽しみにわざわざ尾道から出てきたものの、子どもたちから邪魔にされながら、決して直接文句も言わずに、逆に「幸せな方かもしれんなあ」と語り合う老夫婦。
子どもたちは、絶対いいはずだと熱海へ送り出し、厄介払いをして、母親が亡くなったら、「(死ぬ順番が父と母が)逆だったらよかったのに」と語り合う。
まさに「親の心子知らず」という言葉がぴったりだ。「あんな立派に育てられたのは誰のおかげだ」と問い詰めたくもなるが、自分には幸一もしげも否定できないと思う。
父母と子どもというのは、ある意味においては、一番近いようにみえて、一番遠い関係でもある。血が繋がっていれば、紀子のように自分の真の気持ちを素直に吐露できないものである。
そして、幸一もしげも最初はああではなかっただろう。しかし、父や母がいる故郷を離れ、東京へ出て、結婚し、子どもを持ち自分の生活というものが次第に形作られていくと、徐々に人間はみな変わっていってしまうのだろう。紀子や京子ですら、再婚や結婚をしたら恐らく変わっていってしまうのではないか。これはもう良い、悪いというよりも、人間としてやむを得ないことなのだろう。
大きな家に一人取り残された周吉の後ろ姿がとても小さく感じられる。彼の後ろ姿によって、人間が変わっていってしまうことのもの悲しさと、郷愁の余韻が残る。
本作を観て、親子の関係を少し改めてみないといけないなと感じられた。小津監督も失われつつある「日本の心」を描きつつ、そうした現状に対して少し考えさせて、いくらかの歯止めをしたいという趣旨を込めたのではないだろうか。
六本木ソルジャーさん [DVD(邦画)] 8点(2006-12-31 00:22:01)
👍 2
20.自分でもなぜなのかは分かりませんが2時間飽きずに鑑賞することが出来ました。日本人特有の心情や感性を本当にうまいこと取り入れた作品だと思います。最後、原節子とおじいさんの会話や、悲しみ溢れる最初と変わらぬアングルには自然と涙してしまいました。海外の方はこれを見て一体どう感じるのかが気になります。何年か、何十年後かにまた見てみたいと思える作品。
Kの紅茶さん [ビデオ(邦画)] 8点(2007-09-06 21:38:09)
19.序盤で泣いてしまう自分はきっと変じゃない。
オニール大佐さん [DVD(邦画)] 8点(2008-08-09 09:13:40)
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18.ネタバレ 小津安二郎が日本を代表する映画監督で「東京物語」がその代表作であることは知っていても、実は観たことがない人は結構多いのではないか。つまり、何故この監督が有名なのか解っていないのではないか。かく云う私も比較的最近までその一人でした。そして、この映画を観ていろんな疑問が一気に解消しました。それくらい視点や語り口が独特です。鑑賞直後はとても大切なものを見せられた気分でした。熱海に厄介払いされた後に、静かな佇まいで海を眺めていた笠智衆が印象に残っています。
アンドレ・タカシさん [DVD(邦画)] 8点(2008-09-29 03:23:43)
17.ネタバレ 大人な映画だな、と感じました。淡々とした日常を描いているだけなのに、随所に「醜さ」と「美しさ」が散りばめられていて印象に残ります。
田舎から出てきた両親に対する長男・長女の態度は、悪いという訳ではない。だって忙しいんだからしょうがないでしょう、と。でもその態度は醜い。一方、できる限りの事はしようとする紀子さんの態度は美しい。
母親の危篤の知らせを聞いて、喪服を持っていくかどうかを相談する長女。悪いという訳ではない。だって必要になるかもしれないから。でも、とてつもなく醜い。
そしてラストシーン。心に溜めていた自分のずるさを思わず告白してしまった紀子さんと、精一杯の感謝を伝える事で、何とか紀子さんに新しい道を進んでもらおうとしている周吉さん。本当に美しかったです。
MANSONさん [DVD(字幕)] 8点(2009-09-04 02:28:25)
16.若い頃に見て面白くなくても、歳を重ねると良さがわかってくる作品というものがある。
私の場合は本作がまさにそういう作品なのです。ごく普通の家族や親戚をごく自然にリアルに演技していて好感がもてますが、大坂志郎の大阪弁は少し違和感あり。
きーとんさん [ビデオ(邦画)] 8点(2010-07-24 17:57:44)
15.何と穏やかな老夫婦だろう、癒されるな~。熱海で温泉を満喫したけど、夜は賑やかすぎてなかなか眠れない→翌朝、海を眺める二人「帰ろうか」 かわいいとさえ思えてきます。お気に入りはとみさんが孫に語りかける場面。孫の成長を見守りたいけど、虫の知らせがあったのだろうか、その哀愁たるや尋常ではない。「あんたがのう、お医者さんになるころ、お祖母ちゃんおるかのう・・・」 泣けます。この物語に悪役はいない、みんながとてもリアル。杉村春子さんが演じた「しげ」は嫌われる役かもしれないけど、決して悪人ではないし、酔った父親とその友人を布団に寝かせるなど、優しいところもあります。椅子に寝てるんだから放っておく人もいると思いますけどね・・・ 旦那(中村伸郎さん)は二階行き。「子供より孫がかわいい」は定説だけど、それを否定した周吉、とみ二人の会話も面白かった。小津さんは孫どころか結婚もしなかったのでそんな風に思えたのかもしれません。
リーム555さん [DVD(邦画)] 8点(2010-09-01 22:00:52)
👍 1
14.ネタバレ 普段、洋画しか観ない自分が何故この映画を観たかというと、マイページの「好みが近いレビュワーより抜粋したお勧め作品一覧」で1位にランキングされていたからなのですが、結論から言ってしまうと、想像以上に面白かった。
映画全体を考えると、さすがに老夫婦を中心に描いているだけあって、なかなかゆったりとしたテンポで物語が進んでいくのですが、ただ単にそれだけで終わる映画ではなく、終始に渡ってローアングルで尚且つ固定されたカメラでどっしりと構えて撮られているのがストーリーを落ち着きのあるものにし、映画全体に安定感をもたらしているのだと思います。
映画の途中で熱海のシーンがあり、そこで海を眺めていて立ち上がろうとした時に立ちくらみがするシーンがあるのですが、防波堤の上というちょっと危ない場所に立っているにもかかわらず、それでも防波堤から足を踏み外したりということは絶対に起こり得ないだろうと安心して見ていられるのは、やはり前述した安定感ゆえのものだと思います。
最後、原節子が号泣するシーンは、義理の父からの「お前さんにゃ本当~に幸せになってもらいたいんだよ」という台詞に感極まってしまうわけですが、義理の母が自分のアパートに1人で来た時に言われたのと全く同じ台詞だったのが、亡くなった義理の母の記憶を呼び起こさせ、そして二人揃って同じ気持ちで自分の事を大切に思っていてくれているんだなという思いが改めて伝わってきて泣いてしまったのだと思います。
蛇足ですが、屋内の撮影で空間の奥行きを感じさせる人物配置での撮影や、会話時の人物を喋り始まった1秒後くらいに顔を正面に向けさせて撮る特徴的な構図、観光バスの車内撮影など、興味を引かれる映像がいろいろあって面白かったです。
バスに乗って東京見物をしている時、みんなで同じタイミングで顔を動かしたり、振動に合わせて皆揃って揺れる様はいとをかし、といったところでしょうか。(久々の邦画なので、ちょっと和風な表現をしてみました笑)
もっつぁれらさん [CS・衛星(邦画)] 8点(2011-04-09 00:41:54)
13.ネタバレ 「秋刀魚の味」で小津映画を知り、すぐさま代表作「東京物語」を見た。何と秋刀魚の味よりも10年近くも古いこの映画で、笠智衆が老人を演じている。息子や娘役の山村聰、杉村春子と何歳かしか違わないのに・・・。それがほぼ年相応の東山千栄子と夫婦をくみ、うちわを仰ぎながら二人でたたずんでいる。まさに絵になる情景だ。
この映画が作られたのは、私が生まれてまもない頃、映画設定はそれ以前だから、はるか大昔。その頃家族は、両親と子供たち以外に祖父祖母がいっしょに住み、長男が必ず親の面倒を見なければならなかった。その時代にあって、こうした家族の問題を取り上げたのは画期的というもの。
子供たちの誰が良くて誰が悪いという問題ではないだろう、核家族へ向けての提言であったのかもしれない。しかし、小津映画の世界とはいえ、親が危篤というのにのんびりしたものだ。喪服の心配ではなく、何が何でも飛んで行くべきだろう、それが親子というものだ。
ESPERANZAさん [ビデオ(邦画)] 8点(2011-04-24 08:02:38)
12.ネタバレ 子どもが親から独立し、自分自身の家庭を持ったら、やはりそれが一番大事になるでしょう。外からやってきた人は、自分の親であっても「来訪者」であり、平穏な毎日に乱れを生む存在になってしまいます。それはつまり、子が親離れしたということで、必ずしも非難されるものではありません。作中でも否定的には描かれていませんでした。「遠くの親類より近くの他人」とも言いますし。とはいえ、子どもに相手にされないと親としては寂しいもので、そのあたりのバランス感覚が絶妙です。ここが小津作品ならではの味わいになっていると思います。
本作では、終盤での周吉と紀子の会話がキモでしょうが、ここで紀子が「わたくし狡いんです」と言っているのは、どういうことでしょう。死んだ次男(夫)のことを忘れてきているのに、義父母に優しくしたのが狡いのか。紀子は「将来が不安になることがある」とも言っていることから、孤独な毎日を送っていると想像されます。特に友達がいるような描写も見られませんし。上京した義父母の面倒を見るというのは、淋しい日常を忘れさせてくれる格好の慰めだったのではないでしょうか。つまり、彼女はむしろ自分自身のために義父母に優しい態度をとったことを「狡い」と表現したのではないかと思われました。何にせよ、こうした戦争未亡人の孤独も取り入れたことが、本作にさらなる陰影をつけていると感じます。
なお、NHKのデジタル・リマスター版で見ましたが、画像だけでなく音声も改善されていて、聞きやすくなっているのは幸いでした。
アングロファイルさん [CS・衛星(邦画)] 8点(2011-07-30 19:47:50)
👍 2
11.まず驚くべきはこの時の笠智衆さんは49歳だったという事。お爺ちゃん歴ながっ!!いま観ても遜色無い、いや逆に更に核家族化し親戚づきあいの減った現代の方がしっくり来るお話かもしれませんね。この作品は若いうちに観てもピンとこないだろうが、親が死にうる歳であったり、子供が手を離れてきたあたりの方には感慨深いと思う。映画の中で冷たく見える実子だけれど、多少デフォルメされてても実際あんな感じなんだろうな。事実、私も4人兄弟の長女でありますが、実親には細かくてキツイ性格の娘だと言われ、義親には正直で優しい嫁だと言われています。そんなものでしょう。孝行したい時に親は無し、、、か。
movie海馬さん [CS・衛星(邦画)] 8点(2013-04-01 21:54:35)
10.ネタバレ 壮絶な映画でした。わざわざ田舎から出てきたのに迷惑がられる両親には共感せざるを得ません。家族ではなくても、友人関係や社会との関わりで二人と同じ気持を味わうことはあると思います。その二人に親切に振る舞い続ける唯一の存在である紀子さんには、強い思い入れがどうしても出来てしまいます。その中でのクライマックスには激しく心を揺さぶられました。隠してきた本心を告白する紀子と、それを受け入れた上で彼女の未来を心配し激励する父・周平。やられました。僕のような人生経験の少ない若輩者でもこうなのですから、今後人生経験を積んでいく中で、この映画を見るたびに心に響くところが変わっていくのではないかと思います。これぞ映画。
カニばさみさん [DVD(邦画)] 8点(2013-09-05 01:26:39)
👍 1
9.ネタバレ 再見。
個人的に「大人の見る繪本 生まれてはみたけれど」や「淑女は何を忘れたか」「その夜の妻」と傑作の多い小津だが、戦後の小津は「浮草」以外あまり好きになれないでいる。

とはいっても、見返してみると以前とは違う発見があるものだ。

船の汽笛や列車の走行音が響く港町。意気揚々と何かの荷造りをする老夫婦、それに笑顔で応え嬉しそうに出かけていく娘。彼女は通学路を行く子供たちに混ざるように道の向うへ。いくつになっても誰かの「子供」ということに変わりはない…と本作の展開を予告する。

晴れ渡った空に煙突から吹き上がる煙が吸い込まれるように消えていき、その空の下に洗濯物が風でたなびき、子供たちは野球道具を持って遊びに行き、駅では女同士が語り合う。穏やかな音楽とともに。

これは…きっと楽しい映画なんだろうな~と最初見た時は期待に胸を膨らませたものだ。
ところが、物語は想像以上に重くのしかかる。オマケに笠智衆のゆったりとした喋りで恐ろしい睡魔に襲われたものだ。

落ち着き払う静かな老夫婦、それを迎え入れる「子供」たちは忙しそうに家中を駆ける。成長し続ける子供たちの世話をしなければならない余裕の無さ、がんじがらめの日常。解放されすべてを終えつつある老人とは違って。

聖母のようにいつもニコニコ顔で振る舞う原節子も、俺には何処が影があり不気味な幽霊のように見えた。たまにボケをかましてクスッとさせてくれたけど(電話のやり取りとか)。
同じ小津でも「晩春」の嫉妬の表情、「麦秋」のユーモアと色気、「成瀬巳喜男の「驟雨」といった彼女の方が人間味があって可愛いし好きだ。

本音を押し殺して家族を迎え入れる親たち、挨拶を強制される子供たちは嫌がっているのかすぐに別の場所へ走り去ってしまう。
ずっと一緒で馴染みの関係ならともかく、遠く離れて暮らす存在だしなあ。子供たちにとっては、自分たちの場所を奪う得体の知れない他人にしか思えないのだろう。
自分の机を勝手に廊下に移されるんだから。子供は正直だ。だって本当に英語の勉強してたし。

子供たちの本音がさらけ出されるとともに始まる「たらい回し」。「戸田家の兄妹」のそれよりも遥かに悪化している。
追い出される形で家を出て旅を続け、酒を飲み交わし愚痴を聞いてもらい、旅先の旅館でさえ音が五月蠅くて満足に寝られない。

歩き続けた先でたどり着く海原。そこに夫婦水入らずで団扇をあおぎながら、久々に静かな刻を過ごす。

立ち上がった瞬間の「よろめき」が予告するもの、優しさに満足して「旅立つ」死、幼い子供に向けられていた愛情が、溢れ出る涙によってようやく親にも向けられる。後悔しても、行ってしまった者は戻って来ない。

親を愛するが故に不満を言う香川京子。子供に勉強を教え面倒を見る教師だからこそ、余計に思いやる気持ちが強いのだろう。
それに対し、すべてを許しなだめる原節子。未亡人として夫の死を乗り越え耐えて来た強さ。黒のスカート、灰色(紺色?)のスカートの対比。

老人は、そんな尽くしてくれる者に「幸せになれ」と言って送り出そうとする。死を乗り越えた者どうしだからこそ、自分を大事にして欲しいという想い。揺れ動き溢れ出そうになる本音、それを見て立ち上がり、餞別として渡す「形見」。それは新しい人生を刻んで欲しいという願いも込められているのかも知れない。

冒頭と違い、轟音をあげながら突っ走る列車の疾走。それに乗り込み、時計を見つめるその瞳。「再出発するぞ」と決意をかためた意志の強さを感じる。
そこには、さっきまで「本音」を隠すように顔を覆って嗚咽していた者の姿はない。「父ありき」の列車の場面といい、こういう小津の演出はほんとに憎いくらい素晴らしい。

老人は、団扇をあおぎながら静かに窓の外を見つめ続ける。汽笛を吹かす船の行く末さえ、暖かく見守るように。
すかあふえいすさん [DVD(邦画)] 8点(2014-01-07 17:11:39)
👍 2
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【点数情報】

Review人数 200人
平均点数 8.12点
021.00%
110.50%
221.00%
300.00%
442.00%
584.00%
6147.00%
72713.50%
84824.00%
93417.00%
106030.00%

【その他点数情報】

No名前平均Review数
1 邦題マッチング評価 9.66点 Review9人
2 ストーリー評価 8.72点 Review18人
3 鑑賞後の後味 9.00点 Review20人
4 音楽評価 8.70点 Review10人
5 感泣評価 9.00点 Review14人

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