3.ネタバレ 「峰不二子の嘘」というタイトルが、センスが良いように見えて、実はあまり上手く無いなと思った。なぜなら、峰不二子ってそもそも“嘘をつく”キャラクターであるし、もし劇中で彼女が嘘をつかなかったとしたら、そんなの峰不二子ではない。つまりは、峰不二子というキャラクターにおいて「嘘」は必須ファクターであり、そこには意外性もなければ、どんなストーリーが描かれるのであろうという期待感もあまり生まれなかった。そして、タイトルでそう明言されている以上、劇中において峰不二子が何らかの「嘘」をつくことは明らかであり、そうなると大体の話も端から読めてしまう。そんなタイトル設定の稚拙さが、全体的な話運びにも如実に表れてしまっている。実際、「嘘」と銘打つ割にはストーリーテリング的にも上手くなく、キャラクターの言動や一つ一つの台詞回しに至るまで陳腐さを感じたことは否めない。キャラクター造形においても、峰不二子ら主要キャラクターは良いとしても、キーパーソンとなる子どもや、悪役の描かれ方があまりに類型的でおざなりに思えた。当シリーズは、「次元大介の墓標」以降、“大人向け”のルパン三世シリーズとしての“意欲”は大いに買っているけれど、前作の「血煙の石川五エ門」然り、もう一歩も二歩もチャレンジングに踏み込み切れていないのが残念に思う。このシリーズ化の直接的な“きっかけ”になったであろう前段のTVシリーズ「LUPIN the Third -峰不二子という女-」の、圧倒的に淫靡で過激な正真正銘の“アダルティ”と比較してしまうと、シリーズの目論見に反してどうしても“子供騙し”思えてくる。正直、終盤までの稚拙な展開のまま終幕していたなら、もっと酷評は避けられなかっただろう。ただ、ラストの峰不二子による“肉弾戦”が何とか救いとなっている。峰不二子が“真っ向勝負”の肉弾戦を挑むという意外性、そして彼女ならではの決着方法と、残酷とエロティシズム。このラストのシークエンスのみは、峰不二子というキャラクターを主人公とした作品に相応しい味わいを残せていると思う。尺の短さや、随所に垣間見える作画のチープ、製作期間の空き方から察するに、中々資金集めに苦労している企画なのだろうけれど、キャラクターデザインや声優陣は非常に良い雰囲気を醸し出しているだけに、何とか“あの怪人”までは辿り着いてほしいものだなと。
1.男性の目線で描かれた峰不二子のハードでアダルトなアニメだった。(前後篇 各30分x2/計60分)LUPIN THE IIIRDシリーズとしては3作目。基本的にはそれぞれ独立したストーリーだが、今回、各作品の連続性を匂わす部分があり既存の2作『次元大介の墓標』と『血煙の石川五ェ門』を先に観ておくと、より楽しめると思う。「前篇」は、なかなか物語の行き先が見えない上、不二子の行動原理も掴み難く、何だかモヤモヤしたが「後篇」になるとギアがトップに入り、敵キャラとの対決で峰不二子という女の「強さと怖さ」がムキ出しになる。そして、ルパンにだけ見せる不二子らしいキュートな顔、その理由も物語を通して何となくわかる。ルパンと繋がっていても完全には馴れ合わない。そんな不二子の《自立した生き方》を納得させられる作品だった。小池監督のハードでアダルトな《LUPIN THE IIIRDシリーズ》は、ルパンをオマージュした『カウボーイビバップ』への、本家ルパンからの逆オマージュにも思える。次元、五ェ門、不二子と来て、おそらく銭形篇、ルパン篇と続くのだろう。そうそう、このシリーズは作画面でも大人の鑑賞に応えられるハイクオリティ。趣向を凝らしたアクションシーンも見応えがあり、リアルに描かれた高級車でのカーアクションなどガジェット好きの心を毎度くすぐられている。個人的には、アニメで唯一の「完結を観るまでは死ねない」シリーズだ。