1.ネタバレ 力作で、問題作で、怪作。暴力的なまでに痛快で、滑稽で、恐ろしく、哀しい。キューブリックとクローネンバーグへのオマージュを盛り込みつつ、最後はロバート・ロドリゲスばりの悪ノリが炸裂。ルッキズムの大量消費と底の見えない承認欲求へのツケが、ショービス業界に、スクリーンの観客に大量の鮮血として返ってくる。どんな歳でも彼女を想っている同窓生がいたのにも関わらず、化粧でも抗えない老いを受け入れられなかった、優柔不断の彼女の運命を決定づけた。その果てで、理想の象徴であるスーは、現実のエリザベスを受け入れることができず、殺してしまった。誰にも見向きされなくなっても、最後に味方になってくれるのは自分自身ただ一人。"This is Me"で前向きに生きたいものだが、勝者が作り出した価値観に人間そう単純に捨て切れない。140分の長尺をものともしない、スタイリッシュな演出の手札の多さと力業で捻じ伏せる。過去の人だったデミ・ムーアが若手のマイキー・マディソンにオスカーを奪われて初めて本作は完成したと言っても良い。サブスクになったらもう一度見たい。