映画『国宝(2025)』の口コミ・レビュー

国宝(2025)

[コクホウ]
2025年上映時間:175分
平均点:8.14 / 10(Review 21人) (点数分布表示)
公開開始日(2025-06-06) (公開中)
ドラマ小説の映画化
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タイトル情報更新(2025-07-08)【イニシャルK】さん
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監督李相日
演出中村鴈治郎(四代目)(歌舞伎指導)
キャスト吉沢亮(男優)立花喜久雄(花井東一郎)
横浜流星(男優)大垣俊介(花井半也)
渡辺謙(男優)花井半二郎
田中泯(男優)小野川万菊
高畑充希(女優)福田春江
寺島しのぶ(女優)大垣幸子
森七菜(女優)彰子
三浦貴大(男優)竹野
見上愛(女優)藤駒
永瀬正敏(男優)立花権五郎
嶋田久作(男優)梅木
宮澤エマ(女優)立花マツ
中村鴈治郎(四代目)(男優)吾妻千五郎
原作吉田修一「国宝」(朝日新聞出版刊)
脚本奥寺佐渡子
作詞坂本美雨「Luminance」
主題歌井口理原摩利彦 feat. 井口理「Luminance」
撮影ソフィアン・エル・ファニ
製作市川南〔製作〕
アニプレックス(製作幹事)
配給東宝
美術種田陽平(美術監督)
ヘアメイク豊川京子
編集今井剛
録音白取貢
北田雅也(音響効果)
照明中村裕樹
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💬口コミ一覧(10点検索) [全部]

4.ネタバレ 見せ方がうまい。ショットの確実な切り取り、安定した画面処理など、もはや巨匠の域に達した李監督の円熟の演出が冴えまくっていました。
とくに舞台の場面では、2006年の出世作において、自家薬籠中の物としたステージパフォーマンスを捉えるカメラワークがさらに進化していて、
歌舞伎の魅力を余すとこなく描写。寄りのショットのモンタージュなども圧巻で、映画という表現形態がもたらすカタルシスに酔ったしだいです。
                      ◇
ところで、私の先輩で松竹に長年勤められて、歌舞伎座にも関わったことのある方がいらっしゃって、今作についてのレビューに触れることができました。
松竹で歌舞伎を間近に見てきた方ならではの視点で論評されています。若干長いですが、ご参考に紹介させていただきます。

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「歌舞伎ファンタジー映画の傑作」

二人の歌舞伎俳優を描いたファンタジー映画としての傑作だと思う(ただし、2回観た後の評価)。
ちなみに初めて観た後の感想は「長尺を感じさせない力作・佳作」って感じだったから、2回観て評価がアップ。

何故かと言うと、

〈一つ目の理由〉
初めて観た直後はポジティブな満足感とともに、いろんな「こだわり」も小骨のように引っかかってしまった。

例えば、
①劇中のクライマックスの歌舞伎シーンはキラキラの音楽盛り盛り、ど派手映像で、俳優のアップの多用が映画的ダイナミズムを感じさせる一方で、「引き」のショットもあまりない。こちとら長唄、常磐津、清元、竹本が耳に馴染んでるし、当たり前だけど、劇場の客席から観る舞台はいつも「引き」の視点なんだよ、とか。
②渡辺謙があまり歌舞伎俳優の雰囲気じゃないなぁ、とか。
③わざわざ襲名披露の口上の場で血を吐かせるのか(原作がどうあれ、監督の演出がどうあれ、歌舞伎の興行者の立場として、あるいは歌舞伎ファンとしては、なんだか舞台を汚された気分で不快)とか、
④年老いて引退した人間国宝の元女形・万菊が最晩年になんであいりん地区(?)の簡易宿にいるのか、とか、
⑤あと、映画の評価とは関係ないケチくさいグチを承知で言えば、歌舞伎400年の歴史のうち、130年にわたってその伝統を守り、発展させてきた松竹へのリスペクトが足りへんなぁ、エンドクレジットに「協力:松竹株式会社」くらいあっても罰は当たらんやろ、東宝はん!とかね。

ただ、これらの諸々は歌舞伎ファンで歌舞伎の製作・興行会社の元社員としてのバイアスが利き過ぎていたかなと。
そして、何より、この映画は歌舞伎、歌舞伎俳優をめぐるファンタジーと割り切った瞬間に、ネガティブなこだわりが霧消した。

とくに①については、歌舞伎観劇の客には見ることの出来ない、映画としての特性を存分に活かした視覚的、音響的効果として素直に受け入れることが出来た。言うまでもなく、観客の視点ではなく、役者からの視点がダイナミックに描かれていたと思う。
ただ、④については、田中泯演ずる人間国宝の老女形(歌右衛門そのもの)が簡易宿で最期を迎えなければならないのは、ファンタジー映画としても、腑に落ちない。

〈二つ目の理由〉
一度目を見終わって、映画としてのレベルの高さを感じつつも、登場人物の心情やドラマの進行・物語の展開が大胆に省略されていて、人物の心の動きや事象の流れがスッと入ってこないなぁって思ってた。

ただし、2回目を観終わって、ああ、これってあえてそういう演出なんだなって。説明的にならず、客観的というか、メタ的にクールに撮ってるのかぁ、って。そう言えば喜久雄の描写もどことなくクールである。多くのものを切り捨て「芸」一筋に歩んで来た、そして人間国宝になった。

フラッシュバック的に頻繁に現れる紙吹雪の舞うカット。その背景は常に暗闇だった。喜久雄はその暗闇に代わる景色を探し求めていたのだろう。

ラストで喜久雄は圧倒的な「鷺娘」を踊ったあと、客席の彼方を見て「きれいやなぁ」とつぶやく。その先には暗闇ではない明るい色のついた、ただし、空っぽの空間があった。喜久雄は空っぽの空間の彼方に何かを見たのか。それは雪景色の中の父の死に様だったのか。

それとも芸を極めた無我の境地果ての空っぽの空間を、「きれいやなぁ」と表現したのか。いずれにしても、2回見てまだいろんな解釈の余地があるのは、やはり傑作なのかな。

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大通り・ヘップバーンさん [映画館(邦画)] 10点(2025-07-21 18:55:49)★《新規》★
3.ネタバレ 親を殺された主人公が、歌舞伎役者に拾われて、住み込みの弟子として、同い年の歌舞伎役者御曹司と一緒に、厳しい稽古を積んで歌舞伎役者を目指すところから始まり、人間国宝に至るまでの一代記です。同じ道を志した2人の男の立場が二転三転し、各々がそれぞれ苦悩しつつ、少し道を外れつつ、それでも、歌舞伎役者として生きる以外の道も無く、それに縛られ、その高みを目指すしかない、単純に好敵手とも言えない、単純に戦友とも言えない、二人の関係が、なんとも味わい深いですね。実際のところ、そんなにうまいこと二転三転するかよと思いますが、芸事とは別の、個人の能力ではどうすることもできない、様々な有象無象によって、物事は簡単にひっくり返り、人生は大きく流されるものであること、どちらに転んでいてもおかしくなかった人生の綾を、わかりやすく効果的に見せるために、うまく考えられた構成だと感じました。最終的にまったく異なる対照的な人生となったことも感じ入るものがありました。本作は、題材が題材だけに、まじめに取り組まなければ、伝統芸能を貶めてしまいかねないという縛りがあるので、ハードルは高いのだけれど、制作陣や役者陣皆が作品の質を上げる面で同じ方向を向いていて、すべてのシーンに意味があって、役者が皆、実のある演技をしていて、それが束になってぶつかってくる、凄味のある作品になっていると思いました。歌舞伎の演目の映像美も素晴らしいのですが、冒頭の1960年代のヤクザの宴会と殴り込みのシーンの作り込みの細かさに、ガッツリ持っていかれ、それ以降、時間を気にすることなく見入ってしまいました。
camusonさん [映画館(字幕なし「原語」)] 10点(2025-07-15 18:45:50)
2.ネタバレ 題材もさる事ながら日本映画の底力を感じる凄みのある作品でした。3時間全くだらけることなく没入しました。
歌舞伎の世界のもつ独特の「世襲」に翻弄される2人の主人公それぞれの半生が事細かに描かれ、変な言い方ですがどちらの不幸もとても美しく見えました。
キャストも見事で特に吉沢亮と横浜流星はなんちゃって歌舞伎役者ではなく歌舞伎役者でした。これをプロの歌舞伎役者がやってたらこんなに感動しなかったと思います(全演目良かったですが2回の曽根崎心中はいずれも魅入りました。糖尿病で脚を切らざるを得ないその前に、襲名披露で打ちひしがれて逃げ出した演目で演じたお初の凄みも鬼気迫りました)。
最後の鷺娘は死に鷺のほうでしたがまさに絶唱。見上げた上空がいつか見たかった景色で最高に美しい大団円でした。円盤出たらメイキングでどれだけ2人が歌舞伎や舞踊の稽古に真摯に打ち込んだかぜひ観たいです。ここ数年の映画で最高の1本です。
まさかずきゅーぶりっくさん [映画館(邦画)] 10点(2025-07-07 12:02:36)
1.「芸」という、その価値の本質がひどく曖昧で、故に悪魔的な魅力を放ち続けるモノの狂気と、深淵。
174分という映画の尺があまりにも短く感じられるほどに、光と闇が濃縮された映画世界に恍惚となり、うまく言葉を紡ぐことができない。
正しい言語化のためにも、再鑑賞は必須と考えているけれど、とりあえず初回鑑賞後の「記憶」として記しておこうと思う。

こういう圧倒的に完成度が高い映画の感想を綴るとき、あまりキャストやスタッフ個々の功績に言及することは、個人的に避ける。俳優や監督の個人名を挙げて、それぞれの演技や演出を文章化してしまうと、なんだか当たり障りのない批評的な表現になってしまい、作品に対する私自身の「感情」を、正しく表現できていないと感じるからだ。
でも、「役者」という生き方と文化、その陰と陽をひたすらに追求したこの作品においては、やはり何を置いてもそれを身一つで体現した“役者たち”を軸に語ることが、筋なのではないかと思う。

つまるところ、“立花喜久雄”という役者の天賦と狂気に等しく支配された主人公を演じた、役者・吉沢亮が、「圧巻」だったということ。
これまでこの俳優の演技をそれほど見てきておらず、既に確固たる人気俳優の一人であることは勿論認識していたけれど、個人的な印象が薄かったことは否めない。
ただ、独特な眼差しの奥に何か仄暗い闇と光を秘めた俳優だなという、予感めいたものは前々から感じていて、本作でその「正体」が、ついに顕になったという感覚が強い。
吉沢亮という役者が秘めた仄暗さの中の光は、まさに本作の主人公が孕む美しくも禍々しい狂気性と呼応し、入り混じり、唯一無二のキャラクター像を作り上げて見せていたと思える。

極道一家の御曹司として生まれ、父親の惨死を目の当たりにして、行く宛もなく歌舞伎役者の家に転がり込み、自身の「芸」のみを研鑽し、邁進し、凋落と絶望を経て、「国宝」と成る男。
そんな荒唐無稽な人間の人生を、疑問も違和感もなく、体現してまかり通してみせた吉沢亮の表現力にこそ、この映画の本幹に通じる“深淵”を見たように思う。


そしてもう一人、主人公・立花喜久雄と文字通り“対”を成し、共に役者人生を全うする“大垣俊介”を演じた横浜流星も、素晴らしかった。
名門歌舞伎一家の「血」を受け継ぎ、役者としての華を持ちつつも、主人公との圧倒的な“ギフト=天賦の才”の差を感じ続け、苦闘し続ける人物像を、こちらも見事に体現しきっていたと思う。

物語の中の立花喜久雄と大垣俊介の関係性は、そのまま現実世界の吉沢亮と横浜流星の俳優としての性質や立ち位置にも通じているように見えた。
李相日監督の言葉にもあるように、本作の製作に当たって主演の吉沢亮のキャスティングは、ほぼ大前提として確定していたようだが、相手役のキャスティングにおいては熟慮の末、「横浜流星に賭けてみよう」という決定プロセスだったらしい。
そこには、横浜流星という俳優における重圧や葛藤、そしてそれらを凌駕する熱情と努力が溢れ出ていた。

主人公の喜久雄以上に、その終生のライバルであり“親友”である俊介の、人物的な存在感を高められなければ、この映画世界の構造は成立しなかっただろう。
無慈悲で明確な“ギフト”の差を突きつけながら、病で足を腐らせ、片足になりながらも、舞台に立ち続ける大垣俊介の姿も、役者・横浜流星の人間性と呼応し、魅力的な人物像を作り上げていたと思う。



「役者」という生き様そのものが、「人間国宝」として認定されるというこの国の文化は、よくよく考えると少し異様にも感じる。
“自分”ではないものを演じ、芸術として表現し、それを「国宝」と呼称されるレベルにまで高めるという行為は、そもそも普通の人生や、まともな価値観を逸脱しなければ、成り得ない。
本作の主人公がそうであったように、それはすなわち「人間失格」の烙印を押されようとも、悪魔にすべてを投げ売って、ようやく垣間見える境地なのだろう。

社会的な倫理観とは程遠く、嫉まれ、憎まれ、恨まれ、歩み続ける孤独な狂気の道。
そこから放たれる一瞬の「芸」の光に、私たち人間は熱狂し続ける。
鉄腕麗人さん [映画館(邦画)] 10点(2025-06-21 10:31:26)
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【点数情報】

Review人数 21人
平均点数 8.14点
000.00%
100.00%
200.00%
300.00%
400.00%
500.00%
6314.29%
7419.05%
8523.81%
9523.81%
10419.05%

【その他点数情報】

No名前平均Review数
1 邦題マッチング評価 10.00点 Review1人
2 ストーリー評価 8.50点 Review2人
3 鑑賞後の後味 8.50点 Review2人
4 音楽評価 10.00点 Review1人
5 感泣評価 10.00点 Review1人

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