5.「死刑囚には同情しない」という向きがあるようだが、主人公は真っ当に生きようと就職活動をしたが全て断られ、結局悪の道に進むしかなかったのだし、そもそも彼の犯した罪からして殺人未遂でしかなく、重罪とはいえ連座制とかいうわけのわからんシロモノがなければ到底死刑になるような罪ではあるまい。また、死に際に「次に生まれてくる時は金持ちになって生まれてこよう」という訓練兵がいることを考えれば、他の訓練兵にしても事情は主人公と大同小異と推測できる。そういう彼らに対して「死刑囚だから死んで当然」と言い放てる人がいるのは、結局ここ日本という国では、社会的・経済的弱者のことなどもはや想像の域を超えた他人事になってしまったからと言えるのかも知れない。「同情しない派」にとっては、死刑囚になるような人間は全て猟奇連続殺人犯のサイコ野郎で、当時まだ貧しかった韓国のように貧困や無知ゆえに犯罪を犯す者がいたなど思いもしないのだろう。しかし、少しでもそのような視点を持ち合わせていれば、彼らが生まれながらの極悪人というよりも、むしろ上手く生きることが出来なかった人間・不器用な人間と感じられ、急速に我々に親しい存在となるはずだ。そして反対に、そんな彼らの弱みにつけこんで殺人マシーンに仕立て上げた権力者達のほうが死刑囚としてふさわしいのではないか、とも考えるはずだ。しかし、現実には兵達は抹殺され、権力者達は生き延びる。この悲惨な事件(というか映画)の肝はまさにそこにあると私は思う。我々が憎むべきなのは個々の人間よりもそういう社会の矛盾ではあるまいか。そしてそこに普遍性があるからこそ、三十余年経った今でもこの事件の顛末が我々の心を打つのではあるまいか。
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4.皆さん忘れてやいませんか?元々は死刑が確定した囚人達だと言うことを。その囚人達がここまで尊厳を持って死ねるようになったんです。ここまで仲間達と団結しひとつのことを成し遂げようと努力できる機会はそうはない。決して、囚人だからゴミ同様にどんな風に扱ってもいいということを言っているのではありません。語ればキリがないテーマです。同じく囚人をテーマにした「デッソマンウォーキング」という映画がありますが、こういう深いテーマは良い悪いで判断するのではなく、観た人の心にどう影響するかに掛かっている。消化するだけでは意味がない。消化してこれからどう行動していくか。行動して始めてその人のものになる。難しいですけどね。 【ちーた】さん [DVD(字幕)] 6点(2005-11-05 10:12:21)
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3.最初から一気にストーリーに引き込まれてしまっただけに、中間(作戦中止後)の中だるみが残念で仕方ない。歴史的な事実をもとにしているためか映画としてはラストに物足りなさを感じる。特殊部隊を中心に作品が構成されているため、国家の情勢、軍の上層部などが全く描かれていなかったことも物足りなさを感じる一因になっているものと思う。特殊部隊の隊員たちに感情移入できるよう多少は脚色してあるのだろうが、どうせなら隊員たち数名にスポットライトをあてて入隊までの経緯を細かく描写して徹底的に特殊部隊を中心とした感動ストーリーに仕立てるか、客観的な事実だけを前面に押し出して国家情勢の変動と交えてドキュメンタリー風にした方が良かったと思う。真に迫る演技を見せてくれただけに脚本の方向性が定まっていない印象を受けのがものすごく残念。 【北狐】さん 7点(2005-01-12 23:50:13)
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2.熱い!熱すぎる男の血と汗と魂!三人の班長、ベンガル、パンチ佐藤、松中(ダイエーホークス)にマンセー! 【5454】さん 7点(2004-06-22 22:05:41)
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1.冒頭の掴みからあれよあれよという間にタイトル通りの島「実尾島(シルミド)」に連れて行かれ、地獄の特訓あたりまでは物凄いハイテンションだったのだが・・・。さすが兵役のある国だけあって、外見的にはほとんど日本人と違いはないんだけど軍隊シーンの迫力が違う。過去に邦画がなんでつまんないんだとさんざん問題にされた頃があって、製作者側の言い分としては主に「顔が違う(ハリウッドスターみたいなわけにはいかない)」「予算が違う」「ロケーションが違う」などいろんなことが言われて来たんだけど、最近の韓国映画と「ラスト・サムライ」で全てが単なる言い訳に過ぎないことが証明されましたね。まあ邦画も最近けっこう盛り返してますけど。で、「シルミド」ですが、例によってまったく事前に勉強して行かなかったために、金日成暗殺計画が打ち切りになったら、あとは皆殺しになるだけだから15分ぐらいだろう、なんて思っていたらそこから先が長かった。後でパンフを見たら実は後半のバスジャックの方がメインな話だったみたいなので、そりゃそうだろうけどまさか1時間以上あるとは(@@)というわけで自業自得なんですけど想像したよりちょっと長くなってしまいました。登場人物たちは魅力的だし、映像的にもキレがあって非常に良いです。しかし泣かせどころのツボが絞り切れずにエンエンと引っ張っていたのはやっぱり国民性かなあという感じがしました。よって微妙に減点。娯楽作品としても優れていますし、価値ある映画だと思います。総合点の高い作品でした。 【anemone】さん 7点(2004-06-20 02:53:46)
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