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ザ・チャンバラさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1274
性別 男性
年齢 43歳
自己紹介 嫁・子供・犬と都内に住んでいます。職業は公認会計士です。
ちょっと前までは仕事がヒマで、趣味に多くの時間を使えていたのですが、最近は景気が回復しているのか驚くほど仕事が増えており、映画を見られなくなってきています。
程々に稼いで程々に遊べる生活を愛する私にとっては過酷な日々となっていますが、そんな中でも細々とレビューを続けていきたいと思います。

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1.  エイリアン:コヴェナント 《ネタバレ》 
プリクェルではないという微妙な立ち位置で多くの観客に混乱を与えた『プロメテウス』から一転し、本作では『エイリアン』の看板が戻り、全体としては原点回帰の作風となっています。怪しげな星に立ち寄った宇宙船がどえらい目に遭わされるという物語であり、血もドバドバ出ます。これぞエイリアンです。ただし、バカな人間がバカなことをしでかしたために余計に事態が悪化するという、この手の映画でやって欲しくない展開が非常に多くて登場人物に感情移入できなかったことが、観客の恐怖心を和らげるという悪い影響をもたらしていますが。 コヴェナント号が航路を外れてまで舞台となる星にやってくるという基本的な部分から、説明がうまくいっていません。「我々の生存に必要な要素が揃っている。当初の目標である植民星オリガエではなく、こちらの星に移住しよう」という突拍子もない意思決定が実にアッサリとなされるのですが、こんな重要事項に関する判断があまりに軽すぎやしないかと驚きました。一応、この意思決定を下した艦長代理には「信仰心が厚すぎる余り、合理的な判断をできない可能性のある人」という人事評価があり、そのために艦長への昇進を見送られてきたという設定もあるにはあったのですが、ならばなぜ他のクルー達は艦長代理に反対の声を上げないのかと思いました。会社命令で行かざるをえなかったノストロモ号のクルー達と比較すると、事の発端部分に自業自得の要素があるため、コヴェナント号のクルー達には感情移入できませんでした。 惑星に降り立った後も、生命に必要な水と空気があり、植物も生い茂っている環境であれば未知の病原体等のリスクを考えなければならないのに、防護服なしで普通に探検を始めるものだから、この人達はバカなのかと思ってしまいました。いよいよバックバスターに襲われる場面では血で足を滑らせて転倒、一心不乱に撃った弾丸が可燃物を直撃して着陸艇大爆発と、こちらも愚かなキャラクターが事態を悪化させるという形で物語が進んでいくため、怖いというよりも呆れてしまいました。 そして、『プロメテウス』で活躍したデヴィッド登場により、場はさらに混乱します。隠れ家としてデヴィッドに案内されたのは未知の巨人の死体がゴロゴロ転がる、見るからに怪しい場所であるにも関わらず、「ここは安全だ」というデヴィッドの言い分を全面的に鵜呑みにするクルーのみなさん。また、一か所に固まって救援を待てばいいものを、単独行動でどんどん戦力を消耗していくものだからイライラさせられました。彼らの持つ銃火器はエイリアンに対して効果を持つようだったし、用心深く対処していれば全員で生き残ることも可能だったと思うのですが。 一応、エイリアンの起源も説明されます。前作でエンジニアが作り出したものをデヴィッドが品種改良して完成させたのがみなさんご存知のエイリアンでしたという、それを知ったところで「へぇ~」とも何ともならない、実にありがたみのない説明ではありましたが。起源を描けば描くほどエイリアンの存在は矮小化しており、「偶然出会った訳のわからん凶悪生物」という第一作のまま放っといてあげればよかったのにと思いました。 リドリー・スコットによると、次回作『エイリアン/アウェイクニング』は『プロテウス』と本作の間の時期を舞台にした作品となるようですが、エイリアンの起源に関する興味はあまりないので、これ以上の続編はもういいかなという感じです。
[映画館(字幕)] 5点(2017-09-16 12:35:20)(良:4票)
2.  スロウ・ウェスト 《ネタバレ》 
新人監督の長編第一作目ながらマイケル・ファスベンダーとベン・メンデルソーンという信用できる俳優が揃って出演しており(ファスベンダーは製作総指揮も兼任)、低予算ながら光るもののある作品かと思ったのですが、私にはあまり良さが伝わってきませんでした。 情け無用の西部に暮し、「この土地は強くないと生きていけないのだ」と信じてきた賞金稼ぎ・サイラスが、強さとは対極にいるロマンチストの青年・ジェイと行動を共にする中で腕っぷし以外の強さを学んで人間的に成長する物語。そのコンセプトだけを見ると男泣き必至の激熱ドラマを期待させられるのですが、本編はどうにも盛り上がりきりません。そもそもサイラスは登場時点である程度善人であり、殺しに疲れている様子も見せるため、ジェイの存在が決定的に彼を変えるきっかけになったようには見えないのです。ほっといても、サイラスは作品のクライマックスで行き着いた境地に達したように思います。また、このテーマであればサイラスとジェイの価値観の違いや、それに起因する衝突をもっと見せるべきだったのに、二人の間であまりに波風が立たなさ過ぎていることも、作品からドラマ性を奪っています。 さらには、基本設定に納得いかない部分が多かったことも、ドラマへの没入感を阻害しています。被害者の親族であるジェイが許している中で、ローズ親子に賞金を懸けていたのは一体誰だったのか。ジェイは、なぜローズ親子の潜伏先を知っていたのか。サイラスは、なぜジェイについていけば賞金首のローズ親子に辿り着けることを知っていたのか。あまりに情報が端折られすぎていて、話がよくわからないことになっています。また、だだっ広い西部で登場人物が容易に出会うことができるというご都合主義も、作品の説得力を奪っています。 そんなメタメタな内容でしたが、唯一胸に刺さったのが移民親子による強盗のくだりでした。ジェイとサイラスが立ち寄った雑貨店に男女二人組の強盗が押し入ってくるのですが、明らかに不慣れな様子なので容易に反撃に遭い、彼らは撃ち殺されてしまいます。その後、ジェイとサイラスは店の外で待たされている子供二人を発見。このことから、男女は子供を食わせるために仕方なく悪事を働いたということが明らかになります。彼らは死ぬか奪うかの他に選択肢がないというところにまで追いつめられていたのです。また、子供が外国語を話していることから、この親子はつい最近アメリカに移住してきたということが推測されます。夢を抱いてアメリカに渡ってきたものの、弱肉強食の世界に飲まれてしまった移民の馴れの果て。サイラスは、俺らではこの子達を救えないのだから、そもそも手を差し伸べる必要はないという態度をとります。そして、冷酷ではあるがそれが事実である以上はサイラスに従わざるをえないジェイ。単純な善悪では割り切れないこの非情な展開は、当時の西部の混乱状態を見事に表現していたと思います。
[DVD(吹替)] 5点(2017-01-13 00:23:05)
3.  ピアノ・レッスン 《ネタバレ》 
美しい撮影に美しい音楽、俳優による渾身の演技と、ポテンシャルの高い映画であることは認めるのですが、私としては共感できる点が少なかったため、評価は低めです。 主人公・エイダは聾唖者ではなく、6歳の時に話すことをやめて音楽での表現にすべてを委ねたという設定。そんな彼女にとってピアノは体の一部なのですが、一方スチュワートはエイダにとってのピアノの重要性を理解できず、また理解しようともせず、重いピアノは家まで運べないと言ってピアノを海岸に放置した後、勝手に土地と交換してしまいます。ここでエイダのスチュワートに対する感情は致命的に悪化します。一方、ベインズはピアノを所有した直後に自発的に調律師を呼び、それまで野ざらしだったピアノのコンディションを整えます。また、興味本位でピアノを雑に扱ったりせず、このピアノを扱えるのはエイダだけであるという態度を示します。エイダはここにグッときたわけです。一家の大黒柱としての責任を果たしてくれるが、その価値観は狭く固定されて奥さんの感情に寄り添えない男と、社会的には不安定だがちゃんと配慮してくれる男と、どちらがいいですかという話です。 そんなエイダの気持ちは分からんでもないのですが、じゃあ、あなたはスチュワートの気持ちや立場を理解しようとしたんですかという点が引っかかりました。エイダは嫁いだ当初からスチュワートを毛嫌いする態度をとっていた上に、娘が分身のように寄り添っているため、夫婦の営みどころかキスすら交わせないという有様。夫婦とは、夫婦らしい行動をとり続けることでその関係が作られ、維持されるという側面があるのですが、エイダは初っ端からそれを拒絶していたわけです。「慣れるまで待ってあげよう」というスチュワートの気遣いを裏切ってベインズに走るという行為は、さすがに受け入れがたかったです。浮気がバレた後には、一応、夫婦関係修復の態度を見せるものの、「お触りはなしよ」という業者チックなルールを設けたもんで、「ベインズは本番OKだったのに、俺には無しかい」とスチュワートの自意識を余計に傷つけます。 その他、家の前で子供を待たせて浮気相手と事に及んだり、身動きがとれない場面では子供を伝令に使ったりと、浮気に子供を巻き込んでしまう点も受け付けませんでした。そこにいちいち噛み付くべき映画でないことは分かるのですが、人の親としてはどうしても気になりました。
[DVD(吹替)] 4点(2015-08-04 14:24:12)
4.  戦場のメリークリスマス
日本人監督が撮ったとは思えないほど日本人キャラクターが薄っぺら。帝国軍人として一般に連想されるまんまの人物が出てきます。本作の4年後にスピルバーグが作った『太陽の帝国』の方が、まだ日本人キャラクターに奥行きがあり、ステレオタイプ化を避けようとする努力が見られました。しかも、切腹やら武士道精神やら、外国人が関心を示しそうな要素を前面に押し出していることもマイナスで、西洋文化と東洋文化の衝突というテーマを扱う割には、文化の比較方法が表層的で感心しません。だいたい、切腹なんて明治時代にはとっくに廃止されていて、以降は一部の高級士官がパフォーマンス的に切腹することは稀にあっても、軍隊内の処分として切腹を命じるなんてことはありませんでした。監督は象徴的な意味合いで切腹を出してきたのでしょうが、世界市場を意識した歴史もの映画なのだから、こういう大きなウソをつくことは好ましくありません。 また、録音が悪いため、セリフが聞き取りづらかった点もマイナス。日本人キャストのセリフすら分かったり分からなかったりの状態であり、カタコトの日本語を話すローレンス中佐(安倍晋三似)なんて、何を言ってるんだかほとんど聞き取れません。字幕スーパーがつく英語パートがオアシスに感じました。 評価できるのは意表を突くキャスティング。勝新太郎と監督が対立したからビートたけし、沢田研二のスケジュールが合わなかったから坂本龍一、ロバート・レッドフォードに断られたからデビッド・ボウイと、出演したのは当初意図されていたキャストではないのですが、プロの俳優に断られたから、ならば他ジャンルの巨人達を集めてきて主要キャラクターを演じさせるという思い切り。監督のこの判断は神がかっていたと思います。ビートたけしも坂本龍一も演技はうまくないのですが、それぞれの生きるジャンルではトップを走っているという、そのカリスマ性は映画にきちんと反映されています。各キャストの不得手を隠そうとするのではなく、のびのびとやらせて各々の強みを見せる。素晴らしい演出だったと思います。さらに、主要3人の不安定さを補うために配置されたローレンス中佐役のトム・コンティの縁の下の力持ちぶりも見所です。主要3人とは違って地味。一応はタイトルロールなのに見せ場も与えられずほとんど印象に残らないという損な役回りではあるものの、そのポジションを堅実に守りきっています。
[DVD(邦画)] 5点(2015-07-29 17:59:52)
5.  ホビット/決戦のゆくえ 《ネタバレ》 
IMAX-3Dにて鑑賞。HFR上映は人生初なのですが、映画館とは思えないほどのくっきり画像、カメラが動いても全然ブレない動画対応力の恩恵は凄かったです。通常上映とは比較にならないほど3D効果を高く感じるし、画面の動きがスムーズで目が疲れないので非常に快適。その反面、画がくっきりしすぎで大スクリーン特有のざらつきがなく、テレビを見ているようなノッペリ感があったことはちょっと残念でした。。。 内容は、冒頭からフルスロットル。前作では城の中を這い回っていたスマウグ様がついに空を飛び、街を焼き付くすというテンションの高い見せ場からスタートします。通常の映画であればクライマックス級の見せ場でお腹いっぱいになったところで、” The Battle of the Five Armies”のタイトル表示。このレベルの見せ場が、本作では本編開始前の肩慣らしだったのかと呆気にとられました。その後は見せ場に次ぐ見せ場。ず~っと戦ってます。シリーズを通じて、偉そうな事を言うだけで大した活躍を見せてこなかったガラドリエル、エルロンド、サルマンの3人がついに参戦し、尋常ではない実力を見せ付ける場面など、ファンサービスもきっちり心得ています。。。 そして、ついに始まるオーク軍との全面戦争のテンションの高さも相変わらずで、ドワーフ軍が陣形を整える場面のかっこよさ、エルフ軍が戦闘に参加するタイミングの絶妙さなど、ピージャク演出も絶好調。対するオーク軍も、『砂の惑星』みたいな巨大ワームを投入したり、ガンキャノンのような格好で投石器を撃つトロルが登場したりと、止むことのない創意工夫には頭の下がる思いがしました。。。 しかし、途中からピージャク演出も息切れを起こし、終盤の戦闘は単調になってしまいます。さらには、困った時の大鷲投入という本シリーズの悪癖は今回も健在。オークの第1軍と第2軍の挟み撃ちに遭って絶体絶命というところで、大鷲の群れが飛んできて敵の第2軍をあっという間に蹴散らしてしまうという世にもあんまりな展開にはコケそうになりました。キャラクターの戦力描写も不自然で、前作まではオークの小集団からコソコソ逃げ回っていたドワーフ達が、今回だけは完全武装の上に数でも圧倒するオーク軍を無双状態でなぎ倒すという光景には目を疑いました。なぜ、旅のはじまりからその実力を出さなかったんだと。
[映画館(字幕)] 7点(2014-12-14 00:49:27)(良:1票)
6.  ラブリーボーン 《ネタバレ》 
ピーター・ジャクソンはかねがね「指輪物語とキングコングを撮ることが私の監督人生における目標だ」と語っていましたが、2005年までにその両方の目標を達成してしまい、さらにはニュージーランド時代のフィルモグラフィに首尾一貫性がなかったこともあって、『キングコング』後の動向は非常に注目されていました。一時期は、低予算のゾンビ映画を撮るのではないかという話もありましたが、結局、ジャクソンが選んだのは『乙女の祈り』の流れを汲んだ暗いファンタジーでした。大作ではなく中規模作品を選択したこと、似たような映画を撮れる監督が少ないジャンルを選んできたことなど、本企画については逃げを打ったなという印象を受けた覚えがあります。。。 そうして完成した映画は、かなり微妙でした。決してダメな映画ではありません。死後の世界のビジュアルは圧倒的だし、俳優陣から渾身の演技も引き出せています。納得できるかどうかはともかくとして、オチもちゃんとつけているし、ベテラン監督ならではのレベルの高い仕事を楽しむことはできます。ただし、映画を綺麗にまとめるということに終始して、ドラマに切実なものが感じられなかったことも、また事実。本作のテーマは、暗い過去に囚われ過ぎず、前を向いて生きていきましょうということなのですが、ドロドロとした暗い部分の描写が決定的に不足しているのです。主人公・スージーは、犯人を殺してやりたいほど憎んでいるはずだし、この世に対する未練も多くあったはずなのに、それら負の感情がうまく表現されていません。これでは、前へ進もうとするラストの決断も活きてきません。。。 そもそもの問題として、このテーマであれば、後に天罰が下るにしても、現実世界で犯人が見つかってはいけないと思うのですが。犯人を突き止めることと、新しい道へと歩み始めること、被害者家族がその両方を実現したのでは、本作の核心部分がブレてしまいます。結局犯人は特定されず、事件は迷宮入りしたが、被害者家族は事件に囚われ続けることをやめ、次のステップへ進む決断をする。本来はこうあるべきだったと思います。。。 上記以外の細かい欠点としては、現実世界での犯人探しに説得力がなかったことや(勘や印象で犯人を決めつけてしまう)、存在意義を感じない登場人物が多かったということも気になりました。スーザン・サランドンなんて、完全に持て余してたし。
[ブルーレイ(吹替)] 5点(2014-04-14 01:21:48)
7.  ホビット/竜に奪われた王国 《ネタバレ》 
とにかく凄いのがレゴラスのアクション。LOTRよりレゴラスはアクション番長として名を馳せていましたが、本作に登場する若いレゴラスは、LOTRを余裕で上回る凄まじいアクションを披露します。さらには、レゴラスの部下・タウリエルも凄い。動ける戦闘型エルフが二人もいることで、見せ場は「速い!美しい!かっこいい!」の三拍子揃ったとんでもないものになっています。。。 ただし、原作には登場しないレゴラスの存在がマイナスに働いている局面もあります。レゴラスの登場により、われわれ観客は否応なくギムリを想起させられるのですが、LOTRにおけるギムリがレゴラスと並ぶオークハンターだったことに対して、本作のドワーフ達がホビット並の戦闘力しかないという設定上の不整合が気になってしまうのです。ドワーフって、エルフの活躍を指をくわえて眺めてるような奴らでしたっけ?  戦力描写の不自然さは、タイトルロールであるスマウグにもあります。二つの王国を瞬時に滅ぼした最強の火竜という設定ながら、本作のクライマックスでは10人のドワーフとホビットを相手に『エイリアン3』みたいな追っかけっこを延々とやっており、意外とちゃっちい奴なんだなとガッカリさせられました。要らんことをダラダラと喋りすぎだし、かと言って、すべてを見透かされてしまいそうな超越的な知性も感じさせられないし、『王の帰還』のアングマールの魔王のような腰砕け感がありました。西洋のドラゴンと東洋の竜を合わせたようなデザインや、彼が吐く炎の迫力、キングギドラを思わせる飛翔場面など、画としての見所は多かっただけに、本作における中途半端な活躍は残念でした。。。 そして本作最大の問題点は、ドワーフ達のやる気のなさです。宮殿へつながる扉が開かないとなれば、大して粘りもせずに帰ろうとするし、スマウグが眠る階層への侵入もビルボ任せでまったく主体性がありません。前作では、祖国を取り戻そうとする亡国の民という悲哀があったのに、本作ではただ状況に流されているだけの弱者です。ビルボやバルドなど、種族を超えて力を貸してくれる人たちにも悪態をついてばかりだし、彼らの旅への共感の度合はかなり下がってしまいました。。。 本作は、完結編への橋渡しのような場面が多く、その立ち位置の関係から不完全燃焼の多い回となってしまいました。そうは言ってもポテンシャルの高いシリーズなので、次回作には期待しています。
[映画館(吹替)] 6点(2014-03-12 00:48:16)(良:2票)
8.  第9地区
有名な話ですが、本作の元となったのはTVゲーム『HALO』の映画化企画です。『HALO』の実写CMで高い評価を受けたニール・ブロムカンプが監督に起用されていたものの、ピーター・ジャクソンとマイクロソフトが条件面で衝突して『HALO』は頓挫。しかし、せっかく集めた人材や、重ねてきた芸術的協議を捨てるのは惜しいということで、急遽、ブロムカンプの短編映画を長編化したのが本作だったというわけです。突貫工事で製作された本作なので、その生い立ちに起因する作りの粗さみたいなものは随所に現れています。。。 まず、基本設定に光るものがありません。本作の元ネタは1988年の『エイリアン・ネイション』だと考えられるのですが、元ネタを上回るアイデアを提示できていないため、SF映画としてのサプライズには乏しいと感じました(B級映画『エイリアン・ネイション』に見向きもしなかった評論家先生達は、本作を「斬新だ!」と言って絶賛したようですが…)。ディティールについても同様で、宇宙船の燃料を浴びたことでヴィカスの変身が始まるということの原理がよくわからないし、怠け者ばかりのエビ星人の中でクリストファー・ジョンソンだけが行動力と科学知識を持っていることの理由も説明されません。意図的に説明を省いている部分もあれば、そうでない部分もあり、全体として見ると設定が煮詰めきれていないように思います。さらに、SFを通して人種問題を語るという姿勢も、何だか青臭く感じました。SFはしばしば現実社会の写鏡として利用されますが、本作の主張はストレート過ぎて説教臭くなっているのです。。。 ただし、「観客の心を容赦なく刺激する」という点において、本作は確実に成功を収めています。主人公が徹底的にいじめられ、その後、凄まじい反撃をする。アクション映画の基本中の基本を守ることで、驚くほどエモーショナルな物語に仕上がっているのです。また、エビ星人の描き方も秀逸。最初は気持ち悪く感じていたエビ星人に対して、中盤以降は愛着を覚えてしまうという不思議。架空のキャラに魂を吹き込むという点において、本作は突出しています。その他、メカ描写や銃撃戦の迫力には目を見張るものがあったのですが、これらについては『HALO』で積み重ねてきた知識や技術が十二分に活かされています。手持ちの技術・人材で出来ることは何かという点を冷静に分析していたピーター・ジャクソンは、さすがの采配でした。
[映画館(字幕)] 7点(2013-10-12 02:28:44)(良:2票)
9.  ホビット/思いがけない冒険
IMAX3Dにて鑑賞。本日のシネコンは『ONE PIECE』に席巻されており、公開第一週の週末であるにも関わらず本作のスクリーンは悲しい程にガラガラ。10年前の『ロード・オブ・ザ・リング』初公開時には確かにあった熱気も今や昔、大変寂しい環境下での鑑賞となりました。。。 内容や雰囲気は、良くも悪くも旧シリーズを引き継いでいます。世界観を統一するためか、本作に登場するものは10年前に見たようなものばかりで目新しい要素や新機軸なるものは皆無。おまけに、ストーリー展開はご丁寧にも『旅の仲間』をなぞったものとなっており、旧シリーズが肌に合わなかった方は、恐らく本作もつまらないと感じるはずです。一方、旧シリーズのファンにとって、これは最高の新シリーズとなっています。テンションの高いイントロにはじまり、美しい撮影に、熱いドラマに、ド派手な見せ場にと、旧シリーズの良い部分がすべて受け継がれているのです。ピーター・ジャクソンの演出は10年でより進化を遂げており、見せ場における間の取り方などは神がかっています。ファンタジー映画を撮らせると、この人は世界一の監督であるということを再認識させられました。。。 『ロード・オブ・ザ・リング』というコンテンツと3D技術との相性は抜群に良く、画面に奥行を得たことで中つ国がより魅力を増しています。ジェームズ・キャメロンが『アバター』で実践した演出法が用いられているのですが、それによって観客は世界の広さを実感することとなります。同時に、本作では飛び出すアトラクションとしての面白さも追求されており、最大の見せ場であるゴブリンの洞窟での戦闘は、現状において存在するすべての3D映画で最高の仕上がりとなっています。。。 3D映画と言えば、字幕を読むことが苦痛になるため吹替での鑑賞が考慮されますが、その点、本作は吹替版の仕上がりも完璧です。普段は吹替を避けておられる字幕派の方も、本作では吹替にチャレンジしてみても良いかもしれません。
[映画館(吹替)] 8点(2012-12-15 23:10:59)
10.  ラスト サムライ
何と言っても合戦が物凄い。役者に徹底した稽古をつけ、500人のエキストラにも訓練を施しただけあってその迫力はケタ違いで、史上空前の合戦シーンを楽しむことが出来ます。それだけでも本作は存在価値ありでしょう。日本映画界も何年かに一度、巨費を投じた時代劇を製作するのですが、ただ大勢が走り回っているだけで迫力とは程遠いものがほとんど。その点、スペクタクルを作ることに慣れているアメリカさんは見せ場の作り方が非常に的確です。また、適度に汚しを加えた鎧のかっこよさも目を引きますが、この点でも、ピカピカのダサイ鎧を登場させる日本映画界とのセンスの違いを実感できます。。。お話については、本作の監督と脚本家は根本的な部分で大きな勘違いをしています。彼らはサムライを滅びゆく部族のようなものだと考えているのです(サムライとインディアンを同一視していることからも明らか)。そして本作が面白いのは、根本的な部分を勘違いしているにも関わらず、全体としてはそれほどおかしな出来になっていないということ。これはエドワード・ズウィックとトム・クルーズの真摯な姿勢の賜物で、日本人俳優からの指摘をきちんと作品に採り入れていったことで、作品は破滅を免れています。「意見を採り入れる」とは言うは易し行うは難しで、本作の脚本を書いたのはアメリカ人であり、いくら中立的に作っているつもりでも、無意識のうちに日本人キャラにもアメリカ的な言動をとらせてしまっていたはず。そんな脚本において日本人からの修正を受け入れていると、「そこを変えられると物語に支障が出るよ」という局面も多分に発生したことでしょう。にも関わらず彼らは日本人の意見を丁寧に拾っていったのです(ニンジャのくだりだけはどうしても譲らなかったらしいですが)。ただし監督達の勘違いが吉と出ている場面もいくつかあって、序盤のサムライ登場シーンなどはサムライを極端に神秘的で崇高なものだと考えていた監督のおかげで、目を見張るほどかっこいい場面となっています。日本人では、サムライをここまでかっこよく演出することはないでしょう。。。なお、本作についてよくある批判として、織田信長の時代から銃を扱ってきたサムライの武装が刀と弓矢だけってことはないだろというものがありますが、伝統的な武装のみで蜂起した神風連の乱が本作の舞台となる1876年に発生しており、あながち間違いとも言えないようです。
[映画館(字幕)] 7点(2010-08-14 01:56:42)(良:1票)
11.  キング・コング(2005)
ピーター・ジャクソン作品におけるVFXは他の監督のものとは異質な印象を受けます。作り物の映像をいかにリアルに見せるかがVFXの勝負所ですが、この人の作品のVFXはCG&ミニチュア丸出し。カメラは巨大建造物をすり抜け、恐竜の肩越しに人間を見下ろし、自由に空を飛びますが、この見せ方では絶対にリアルに見えません(エアフォース・ワンの飛行機大破シーンにおいて、カメラがありえない動きをしたためにCG丸出しになったのと同じ理屈)。とはいえVFXに精通している監督さんですから、恐らく意図的にこれをやっているはず。つまりハナからリアルに見せる気がないのです。ではこの人の映画がダメなのかと言うとその逆で、CGのひとつの使い道を実践しているように思います。CGはリアルな映像を作ることがひとつの使い道ですが、同時に監督の脳内にある映像を自由にビジュアル化するツールでもあるはず。指輪物語では本の挿絵や読者の脳内にしかなかったイメージを見事に映像化しました。決してリアルには見えませんでしたが、イメージの映像化という意味では完璧でした。そしてキングコングでは、伝統的な特撮の魅力を復活させています。昔ながらの特撮映画は、いかにも作り物な映像が味だったりします。ストップモーションのモンスターはチラチラとぎこちない動きでリアリティのかけらもありませんが、そんなキャラが人間臭い動きをすることに愛着を覚え、ミニチュア丸出しであっても大破壊に興奮しました。それは「良いものを見せてもらった」というサービス精神に対する感動も多かったように思います。ピーター・ジャクソンはCGを本物っぽく見せることではなく、怪獣映画に必要なイメージをどう伝えるかに重きを置きました。JJ・エイブラムスがクローバーフィールドにおいて絶対に避けた「神の視点(現実的にありえない俯瞰ショット)」をあえて選択しているのです。怪獣映画においてはリアルに見えることは決して重要ではなく、大量破壊をもっとも見えやすい場所から見せるサービス精神の方が大事だとわかっているようです。また、コングの仕草や表情、巨大昆虫達のいやらしい動きなど、モンスターに味のある動作をさせることで独特の存在感を与えている点もストップモーションの良さを継承しています。本流の大作映画の作りではないため批判的な意見もあるようですが、伝統的なモンスター映画の継承者という意味では完璧な作品だったと思います。
[映画館(字幕)] 9点(2009-01-03 19:00:18)(良:3票)
12.  ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還 - スペシャル・エクステンデッド・エディション -
今後、これ以上の映画が登場するのかと不安になるほどの出来です。通常の映画2本分の長さでありながらダレる間がなく、見終わった後の達成感もひっくるめて見ている側も旅に参加したような気分になれます。「ナルニア国物語」の完成度と比較すればわかりますが、予算がかかっている、技術レベルが高いなどの理由だけでこれほどのものは到底作れるわけがなく、ピーター・ジャクソンという監督の采配あっての完成度です。ひとつひとつのシーン、ひとりひとりのキャラクターを監督が愛情をもってきめ細かに描いている密度があるからこそ、これほど上映時間が長くても見る者の目を離させることなく、自然と集中して見られたのだと思います。セリフのあるキャラクターの心情をじっくり伝えるだけでなく、軍勢をなすオークやトロルの一体一体までに個体差があり、彼らが痛がったり怖がったりする様子までさりげなくも几帳面に描かれているという仕事の細かさはまさに驚異的。このおかげで合戦の連続のこの第3部もただド派手で大味な作品にならずに済んだのだと思います。ストップモーションのキャラクターに個性を与えたハリーハウゼンの仕事をCGの時代にやったのが本作の功績のひとつでしょう。またこの映画の大きな功績だと思うのが、文章のイマジネーションに実写が負けていた部分を相当革新させたことです。例えばトロルやオリファントが軍勢を蹴散らし、ドラゴンが空から襲ってくる様子。文章においては表現されてきたこれらの光景も映像としては実写どころかアニメですら再現されておらず、作り手のイマジネーションが文章に至っていなかったひとつの例だと言えますが、ピーター・ジャクソンという人物は今までできなかったこの映像を十分に説得力ある形で見せてしまっています。また箱庭のような狭っ苦しい印象しか残らなかった実写ファンタジーの世界観を映画史上はじめて覆し、どこまでも広がるような世界を再現、エルフの高貴さや指輪の邪悪さという実在しないものまで十分な説得力をもって表現しているのは驚くべきことです。これがなければフロドの旅の過酷さやゴンドールが挑む戦いの絶望は伝わらず、困難に挑む登場人物たちの苦悩やそれに打ち勝つ勇気という指輪物語のテーマの表現はできなかったでしょう。そんなわけで、世界でピーター・ジャクソンでなければ作れなかった、これ以上の完成度は考えられない映画史上の金字塔と言えます。
[DVD(吹替)] 10点(2006-11-12 21:46:38)(良:2票)
13.  ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還
この映画をWASP思想に絡めて批判する意見をたまに聞きますけど、それは的外れもいいところです。「指輪物語」は英国にも新たな伝説をってことで、ヨーロッパのさまざまな民間伝承や英雄物語を研究して作られた物語なので、その映画版が白人中心になるのは当たり前。桃太郎や一寸法師に日本人以外が出てこないからって、それが民族主義になりますか?魔法使いや英雄に有色人種がいないのがそんなに不満ですか?私の場合、有色人種が大活躍する「ロード・オブ・ザ・リング」を想像する方がゾっとします。黒人や黄色人種が出てきた時点で、雰囲気も情感も吹っ飛びますからね。そしてオークやウルク・ハイなどの異形の者たちが有色人種の象徴だとする考え方も、それはそれで不自然です。善の対極に悪がいるのが物語の基本だし、その悪がなぜ有色人種につながるのか?その根拠がわかりません。オークが仏教徒だったり、ウルク・ハイが漢字の読み書きができるなら、私も有色人種だと認めますけど。白人による差別という被害者意識ありきで妄想が飛躍してるように思います。これは娯楽作なんですから、もっとピュアに楽しみましょう。ちなみに私は9点をつけていますが、残りの1点は年末のSEEのためにとっておきます。本格的なレビューもSEEで行うつもりです。
9点(2004-09-10 04:24:28)(良:6票)
14.  ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔 - スペシャル・エクステンデッド・エディション -
「ロード・オブ・ザ・リング」という作品自体が、「ゴッドファーザー」と双璧をなす映画史上のツインタワーだと思います。やっぱりこのシリーズはすごい。というか完璧。面白いとか、映像がすごいとか言うさらに上の次元、つまり傑作としてのとてつもない風格を持ってるんですね。ワンカット見ただけですごい映画だとわかってしまいます。そんな中での「二つの塔」ですが、私はとくにセオデン王がお気に入りです。おなじみ、シリーズいちの武闘派キングです。セリフがいちいち文章風で、とにかくかっこいいことを言うんですよ。「血よ燃えろ、怒りと共に敵を滅ぼす!赤い夜明けが来る!」ですからね。かっこよすぎです。SEEでは、前作に引き続いてボロミアの復権がうれしい限りです。ていうか、なんでこんな大事なシーンをカットしたんだよぉって思います。これがあるかないかでボロミアの印象がかなり違う上に、「王の帰還」でのデネソールとファラミアの関係にまで影響が出ます。監督はボロミアが嫌いなんでしょうか?その他の復活シーンは話のメインには関わらないほのぼの系が中心なんですけど、やはり作品の印象をより深くしてくれます。そして、贅を尽くした吹き替えの出来が最高。SEE、吹き替え、これを味わわずして「ロード・オブ・ザ・リング」は語れません。
10点(2004-08-20 00:57:23)
15.  ロード・オブ・ザ・リング - スペシャル・エクステンデッド・エディション -
最高クラスの娯楽性、芸術性を併せ持ち、しかも荘厳な風格まで持ったのが真の映画だと思うんですけど、それって「ゴッドファーザー」と、そしてこの「ロード・オブ・ザ・リング」くらいしか歴史上存在しないような気がします。それほどのスーパー傑作なわけですが、このSEEはもんのすごいことになってます。こちらを見てしまうと、映画館で興奮したものは不完全版と呼ばざるをえません。なによりボロミアの復権がうれしいですね。劇場版では肝心なシーンがカットされ、さらに日本語字幕でもめちゃくちゃにされてしまい、ほぼ悪役扱いだったボロミア。しかしこのSEEを見ると、そのあまりに人間臭いキャラクターに共感せずにはいられません。彼は人間としての強さと弱さの両面を見せ、それゆえに感動させるのです。とくに、指輪の魔力に溺れたことを悔い、獅子奮迅の活躍を見せる最後のバトルはたまりません。あれこそ男です。どこか超越したアラゴルンよりも、私はボロミアの方が好きですね。人間の弱さや邪悪な面を嫌い、人間に対して極端な不信感を持つアラゴルンですが、そんな彼を変えたのもボロミアでした。SEEではふたりの友情がよりしっかりと描かれており、特にラストでは、ボロミアの死をきっかけにアラゴルンが人間の王になる決意をしたことがわかります。そして、このDVD版の吹き替えの出来もすさまじいものがありました。本当に完璧な吹き替えで、このDVDは9800円の価値は十分すぎるほどあります。こんなありがたいバージョンが世間のほとんどの人の目には触れないんですよね。映画ファンやってて本当によかったっす。10点といわず、12点くらい献上したい気持ちです。
10点(2004-06-19 16:27:24)(良:2票)
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