13.《ネタバレ》 南部で北軍兵が負傷し、女だけの女学院に運ばれ、女たちはハンサムな男に興味津々、男は保身のため女たちの気を引こうとして、5人の女性といい関係になる。
マーサ校長はクソ真面目な人だが、兄と不適切な関係を持ち、彼の殺害に関与した疑いがある。マクビーが夜這いに来るのではと胸をときめかせるが、キャロルのベッドに行ったため、彼の脚を切断する。
ハリーは奴隷ではないのに校長に忠実で、自由になれるのに出て行かないのは、校長に密かな借りがあるのだろう。
エドウィナ先生は貞淑を絵に描いたような人で、校長に経営者にならないかと持ちかけられ喜ぶが、マクビーがキャロルと関係すると彼を突き飛ばし、Bワードで罵る。だが数日後には彼と初体験して、ともに出て行くと宣言する。
キャロルは、マクビーがエドウィナ先生とキスするのを見て嫉妬し、彼を南軍に引き渡そうとする。あとになって「今でも愛している」と言い、彼の頼みで部屋の鍵を開けるが、彼が暴君になるととたんに「脅された」と嘘を言う。
エイミーは12歳なのに、マクビーがキャロルのベッドに入ったことに嫉妬し、ペットの亀を殺されて逆上する。
一同が食堂に集まるシーンでは、脚を切断されたマクビーが探偵のように全員の心理状態を説明し、偽善を告発して溜飲を下げるが、全員を性奴隷にすると宣言したことで、全員の支持を失い、ラストの悲劇に至る。「最後の晩餐」のシーンでは、エドウィナ以外の全員が毒キノコだと知りながら、誰も教えない。
作者が言いたかったことは、女たちは女だけの世界で長い間男を知らず、男は南軍に引き渡される恐怖があり、特殊な状況ゆえに破綻してしまう悲劇だったのだろう。だが脚本が下手なせいか、本作では登場人物がその都度「なんでそうなるの」という不可解な行動を取る。マクビーもあまりにやり過ぎなので、殺されても当然にしか見えない。気持ちのすれ違いが原因で、女たちは殺人加害者へ、男は殺人被害者へという悲劇の結末に至るつもりが、喜劇にしか見えてこない。邦題では、原題にない「異常な」という言葉が挿入されているが、登場人物はみな異常にしか見えず、全く共感できないという点において珍しいカルトムービーだ。内心がいちいち音声化されるという技法も「異常」であり、ソフィア・コッポラ監督のリメイク版を除けば、類似設定の作品がほかにないという意味でも、記念碑的珍作といえよう。
マクビーが来たら雌鶏が卵を産んだのは、女性の発情を暗示している。無力で女たちに運び入れられたマクビーが、最後に無力で女たちに運び出されるシーンも、暴力的な性を発露した校長の兄の末路を暗示している。