167.《ネタバレ》 作品を見る気になったのはNHKの「ふたり」という番組を観たから。
いまだにそうだがとにかく酷評が多い作品だ。 原作者も怒ったと漏れ聞く。
しかし「ふたり」で描かれた親子の確執を見てどうしても見たくなった。
考えてみれば原作者が納得しない映画作品というのは少なくない。
目立つ例ではスティーブンキング原作のシャイニング。
鑑賞は英語版と日本語オリジナルの両方。
英語版はディズニーだけあって声優が豪華。 ティモシーダルトン、ウィレムデフォーなど。
いきなり監督でこれだけの作品を作り上げたのはすごい。 父親が宮崎駿だし、ジブリ作品だし比較されるのは仕方がない。 でも明らかに宮崎吾郎作品に仕上がっている。 父親の過去の作品と見紛うようなシーンが多いのだがこれは父親の影を追い続けた息子の精一杯の父への思いなのではないか。
声が良い。 菅原文太の声を聞いていてあの顔が浮かんでこない。 田中裕子の声が良い。 実に雰囲気のある声。 特にクライマックスのぼそぼそとつぶやく声にはしびれた。 これが宮崎吾郎の演出によるのだとしたら大したものだ。 恐らく宮崎駿の映画だったら全然違う声質、演出になるだろう。
音楽も良い。 スコットランド民謡的雰囲気も入って映画の風景と合っていた。
話の展開は直球的演出だが無理になんでも説明しようとしていないところに好感が持てた。
テーマが単純明快なのも良い。 吾郎監督かなり勉強したのだろうと思う。
冒頭でいきなり父を殺す主人公アレン。 父宮崎駿がこれを見ていったい何を思ったろう。
なぜ父を殺したのかの具体的説明はない。 下手をすると単に説明不足、不完全燃焼という形で受け取られるのだが、この映画ではなんでも説明して解決ということではなく疑問を余韻として残すというように収まっているように感じた。
人物の動きにも優れたセンスを感じた。 とても自然な動きだし構図もよく考えられている。
剣の構え方も良かった。
少し持ち上げすぎなのかもしれない。 でもいきなり監督でこれだけの作品を彼は作り上げたのだ。
才能ある監督だと思う。 父親とは違う作品を作れる。 しかし宮崎駿の息子じゃなかったらそのチャンスは与えられなかったのは確かだし、ジブリだからできることなのかもしれない。 だからどうしても父親と比べられてしまうのは仕方がない。 これは宿命だ。