6.《ネタバレ》 本作は「三国志演義」の映画化ではなくて、まさにジョン・ウーによる「レッドクリフ」という三国志とは別物の作品に仕上がっているような気がした。
三国志演義を重視する人向けよりも、“ゲーム”を好む層や“三国志”を知らない人をターゲットにしたのかもしれないという作りとなっている。
序盤の「長坂の戦い」は非常に面白いと感じられた。三国志演義の「長坂橋」の張飛のエピソードがなかったものの、基本的には三国志演義の流れを汲んでいる。
息つく間もない怒涛の戦いの後につづく、各エピソードも素晴らしく、繊細な仕上がりとなっている点は気に入った。
「水牛のエピソード」で周喩の人格の高さや呉軍の結束の強さを描き、「馬の出産+琴の競演」で周喩と諸葛亮の言葉を交わさない会話や友情・ライバル関係を描き、「虎ハンティング」で孫権が迷いを断ち切り、会戦を決心するという姿を描いている。
“戦い”とは直接関係のないエピソードを使って、実に上手く“裏”を描いている点が素晴らしい。
「これはひょっとして傑作になるのでは・・・」という想いが強くなっていった。
しかし、八卦の陣の戦い辺りから、ジョン・ウーらしい悪ふざけが発揮されていくことになるとは思いもよらなかった。
見る人によっては面白い戦いだったと思うが、知っている人には突っ込みどころ満載の戦いとなった。「三国志演義」通りに描くことが“正解”とは思わないが、これは“悪い裏切り”としか思えなかった。
内容を思いっきりイジった割には、ハトを飼って、ハトを飛ばすだけの諸葛亮には不満。名軍師の采配や知略の影を薄くさせた真意が図りかねる。
また、緊張感や緊迫感が劉備・孫権連合軍に欠けるというのもいかがなものか。
先勝したものの、相手は80万の大軍であり、勝つ見込みがないほど追い詰められているはずである。むこうはサッカーをやって緊張感を欠いているのはいい描き方だが、戦いが終わった後、「荊州」の地をどうするかなどと言っている場合ではない。
さらに、終盤では多少触れていたが、基本的には劉備と孫権は仲間ではなく、“志”を異にする敵同士でもある。曹操という強敵を前にして一時的には手を結んだものの、仲良しクラブではなく、すぐにでも同盟を破棄してもいいというほど絆は薄いものだ。
この辺りの微妙な関係を重視せず、アクション重視となってしまったのは個人的には残念に感じた。