2.《ネタバレ》 杉野昭夫作画のシャープな描線が素晴らしい。
静の場面の端整な劇画調と、淡い背景の対照がコミックの味わいを残し、パワーテニスのスピーディで力感ある身体動画と流動線が画面に独特の躍動感を呼び込む。
そして、馬飼野康二の劇伴音楽も大いにドラマに緩急をつける。
今の時代の鑑賞なら、テレビゲーム画面や、ビデオ録画テープの巻き戻しやコマ送り映像など、当時の最新風俗・流行を取り入れた斬新さは、逆にノスタルジーの対象と写るだろう。
が、現在の無粋なケータイ文化の中では成し得ない、古きよき固定電話によるコミュニケーションもまたノスタルジーを帯びつつ、その映画的用法の見事さによって感動はまったく古びない。
「呼び鈴」の音の叙情。沈黙の時間と夜空の星のショットが醸し出す興趣。主人公とコーチの電話のやり取りは都合3度、段階的に発展活用され最終場面の感動に繋がっていく。
ラストに再び響く、呼び鈴の余韻がまた素晴らしい。