8.《ネタバレ》 「恐怖」について誠に的を得た説明をされていたのはザ・チャンバラさんだったと思うが、日常の中に潜む非日常が徐々に日常を侵食していくさま、というのがやっぱりホラーの醍醐味かなあ、と私なんかも思う。多くのホラー作品も、それを心得て作られるのが常である。
でこの「感染」というやつは、いきなり「非日常」から始まっちまう。「平和で健全な病院ライフ」というのが、もう、最初っから存在してないとこにもって、もうひとつの「非日常」をぶち込む、という離れ業に出るのだ。ある意味すごいのかもしれないし、「実験」という言葉も浮かぶ。
院長が逃げて、病院経営が立ち行かなくなり、もう明日をも知れない、という低空飛行から始まって、「もっともっと」低いところまで観客を引き摺っていかなければいけないのである。「落差」が作りにくい状況なのである。
まあ、最初から低空飛行しなければいけなかった理由は、医療ミスの発生し易い状況を作りたかったとか、なおかつそれを隠匿しなければならない状況にしたかったから、というふうに考えられるが、しかし、「平和で健全な病院ライフ」からスタートしたとしても、別の演出でそれは可能だったんじゃないかな…と私は思う。…「明」から「暗」ではなく、「暗」から「特暗」へ、という、作り手の目途したところは「通好み」というか、なんというのか。そのへんに特殊なものを感じた。
ホラー映画としては、急に後ろに人が立っているとかを何回も使うのはもう勘弁してほしいと思うが、全体としては話の省略の仕方とか、秋葉医師の時計など小物の使い方は悪くない。俳優陣も高嶋弟以外はまずまずの出来と思う。私は南果歩のブキミさが結構気に入った。
オチへの突然の持って行き方も、悪くない。「アザーズ」と似ているな、と思ったけども。
なんというか邦画ホラーのレベルアップを感じた作品。