1.《ネタバレ》 カメラが無駄な移動をしたり、奇をてらったアングルや小細工をしない(ように見せるために相当な細工と苦労をしているのであろう)1カット1カットの緊張感が素晴らしい。
合成など一切しないと思われる風景も、今の時代には相当難しいことであると思う。
観客にカメラの存在を意識させず、時代劇で描かれるその時代にはありえない視点や動きを排除した黒澤演出を見事に受け継いでいると言っていい。
黒澤監督と比較ばかりしてはもはや失礼であろう小泉監督の演出スタイルは今の時代には貴重である。
自分はこれを見た後、黒澤監督より、ふとキューブリック監督の「バリー・リンドン」を思い出した。
ストーリーと関係なく、例えば踊りの動きや、殺陣の動き、立ち居振る舞い、家の間取り、食べるもの等に見入ってしまうことがあり、おそらく過去の時代にはこのような生活と時間の流れ方があったのだろうと思わせる、ドキュメンタリーのような雰囲気が楽しめました。
映画館で様々な予告編を見ていると、めまぐるしい映像に目が痛くなってくる年頃になってきましたが、「正攻法」とは何かということを改めて示してくれたと思います。