2.岡本喜八監督の暗黒街シリーズ3作目。ヤクザ映画という印象が強かった前2作と違い、自動車業界を舞台に産業スパイを描いていて、主演も鶴田浩二や三船敏郎に代わって「独立愚連隊西へ」や「戦国野郎」などで息の合ったところを見せていた加山雄三と佐藤允のコンビが担当し、前2作とは毛色の違う作品になっている。同じく自動車業界の産業スパイものといえば増村保造監督の「黒の試走車」が思い浮かぶが、本作はサスペンスよりもアクション映画としての色合いが濃く、同じ題材でありながら受ける印象はまったく違う。しかしあくまで娯楽アクション映画に徹したことと主演ふたりの対照的なキャラクターが喜八監督の作風に見事にマッチし、喜八監督の持ち味がじゅうぶんに発揮されていて、演出も前2作と比べると明らかにイキイキとしているのが嬉しい。結果、喜八監督が手がけた暗黒街シリーズの中ではいちばんこの監督らしさが出ていて面白かった。それに加山雄三と佐藤允のコンビがやはり本作でも息の合ったところを見せていて、このコンビの良さもしっかりと出ている。喜八監督の暗黒街シリーズとしては最後の作品になるのかもしれないが、その中ではぼくも本作がいちばん好きだ。