1. 笑う男(1928)
「恐怖と幻想の世界」の中の1本で写真からおどろおどろしい怪奇ものとして手つかずだった作品。 17世紀イギリスにおいて謀反人として処刑された男の幼児が父の愚行を一生笑うように子供の人身売買組織に笑い顔に整形され捨てられるという冒頭の展開にこれは復讐譚なのだろうか? 旅芸人の一座に拾われた幼児が拾った乳児(盲目だった)に対する心遣いに涙が滲み「えっ?」 一座のスターに成長した二人のいたわり合う純愛模様に、笑わせるのと笑われる違いに悶える姿に、座長の慈愛に、横暴極まりない王家の遣り口と闘う姿に、ハッピーエンド、バッドエンドの予想がつかないテンポの良い展開に手に汗握る硬直状態。 何度も泣かされた中で一番泣かされたのがジャーマンシェパードのホモ君。鑑賞史上最も男気ある犬の君に加点。泣き納めだったラストショットが目に焼き付きます。 恐怖も幻想も無い人間ドラマ文芸作品として極上の逸品です。 [DVD(字幕)] 10点(2022-03-21 18:20:45) |
2. 罠(1949)
《ネタバレ》 お目当てロバート・ライアン(ボクシング学生チャンピオンだったそう)の違和感の無いファイトシーンに於けるトレーナーとカットマンのおためごかしぶりが35歳落ち目ボクサーが夢を抱いて上がったリングでの孤立無援を際立たせる。意地を貫いた代償に金儲けし損ねた下衆どもにボクサー生命を絶たれる。絶望の中に希望が見えた夫婦の会話に涙腺決壊。試合前の控室(絶品ロバート・ライアンが沁みる)の人間模様と観戦客の心模様も見応え満点。フィルム・ノワール且つボクシング映画の大傑作。 [DVD(字幕)] 10点(2019-02-24 02:33:00) |
3. ワン・ツー・スリー/ラブハント作戦
ベルリンの壁建設ドンピシャのタイミングで作られた本作でのビリー・ワイルダー監督が東側と西側陣営に向ける冷ややかな視線は真骨頂。監督特有のユーモア部分のまろやかというかマッタリしたところが感じられなかったのはジェームズ・キャグニーの存在に依るところが大かと。 出世欲に取り憑かれたコカコーラ西ベルリン支社長を演ずるキャグニーは、お顔体型共に62歳相応にふっくらしているものの、台詞回しと眼力は往年と変わりなく、超ハイテンショントークでの出ずっぱりな姿に感動しきり。いやぁ物凄かった。 半切りのグレープフルーツを手にするのに「民衆の敵」の迷?シーンが蘇ります。 キャグニーに合わせて他のキャストもキビキビしており、展開も超怒濤、剣の舞が更に拍車をかける。 結末のオチがこれまた素晴らしい。キャグニーのホロリとした直後のコーラを手にして「シュレマーァァァァァ」は最高!!! 惜しかったのはホルスト・ブッフホルツ演ずるオットーで、肩に力が入り、過ぎたるは及ばざるがごとし、だったところが-0.1点。 壁封鎖のタイミングの良さで当時はヒットしなくて後年に再評価を受けたという本作は、ドタバタコメディとしてワイルダー作品としてキャグニー出演作として紛れも無い傑作です。 [DVD(字幕)] 9点(2024-05-27 01:14:29)(良:1票) |
4. 我は海の子
《ネタバレ》 何でも金で解決出来ると考えている大富豪の社長の一人息子。母は死別、父は多忙、執事とメイドが世話を焼く。憎たらしい小僧のありがちな成長物語だが、兄のような父のようなマニュエルとの交流が胸に沁みる。ディスコ船長の無謀な競争に嫌な予感がしたのが的中し、そこから先は泣き通し。漁での出来事を話しているであろう車中の父とハーヴェイのラストショットが泣き納め。絶品のスペンサー・トレイシーを思い浮かべるとグッとくる。珠玉の逸品。孫が大きくなったら一緒に観てみたい。 [DVD(字幕)] 9点(2018-02-28 14:01:12) |
5. 悪いことしましョ!(2000)
人懐っこく気の良い冴えない孤独な青年が悪魔の力を借りて成りたい自分に変えて貰う。五変化におけるブレンダン・フレイザーの芸達者ぶりにびっくり。さらに初体験エリザベス・ハーレイのコスプレに「素敵~」眼福でした(この人は現在も「奇跡の57歳」と呼ばれる美貌と体型の持ち主だとか)二人の掛け合いが愉快でカラリとした味わいが心地良い。 間違った選択ばかりで年月を費やした私にとって元気づけられる神様のお言葉からの着地点もなかなかのもの。 大いに楽しめた作品でした。 [DVD(字幕)] 8点(2023-05-14 18:34:02) |
6. ワールド・オブ・ライズ
《ネタバレ》 食べながら子守しながら指令を送るホフマン、無辜の建築家を死に追いやる手口、ヨルダン情報局が1枚上手だった。イギリス人監督のアメリカへの視線を感じます。(イギリスも似たり寄ったりですが)精悍な顔つきでのキレある身のこなしに魅入ったディカプリオ。ノーアクション&怒鳴らない静かさでありながら無限大の嫌らしさを好演するラッセル・クロウ、美味しいところを持っていった超絶カッコイイ!MIPマーク・ストロング。単なる絵空事アクションCIAものではなく、今この時も監視している事を思わされる見所満載な力作です。「嘘はつかない、約束は守る」虚しく響く彼等の世界が何というか・・・ため息が出ます。 [インターネット(字幕)] 8点(2021-07-26 03:58:15) |
7. 私は告白する
《ネタバレ》 告解は「人殺ししました」であっても絶対他言しない。神父の掟を守り抜こうとするローガンが濡れ衣を着せられて追い詰められてゆくのを固唾を呑んで見守る。恩を仇で返す犬畜生にも劣るケラーのお蔭で、鑑賞翌日歯が浮いてしまって困った事に。ケラーとその妻とルースの告白を聞くローガンの胸の内をモンゴメリー・クリフトが魅せてくれる。タイトルの「私は」はケラーの妻を指しているように思えるもので、そのシーンに堪らず大泣き。何時もの洒脱さが影を潜める監督らしからぬ、それでいて見応えある秀作。 [DVD(字幕)] 8点(2018-08-26 01:07:46) |
8. ワース 命の値段
実話なんですね。 演じるのがマイケル・キートンなので、血も涙も無いヤツかと思いきや、 ぬる燗のような一言一句に聞き入ってしまいました。 気の遠くなりそうなミッションをやり遂げた皆様に拍手。 [DVD(字幕)] 7点(2024-01-08 02:23:30) |
9. 我れ暁に死す
《ネタバレ》 ジェームズ・キャグニー、ジョージ・ラフト共演でこの邦題という事で鑑賞前から既に身悶え。無実の罪を着せられる新聞記者キャグニーと極悪人ラフトの刑務所内に於ける友情物語という意外な設定と痺れる所が無い展開に興奮は治まりましたが、善人役でもビシッ!!と決めるキャグニー、ニヒルなラフト、両名の個性溢れる好演に満足させてもらった作品。 [DVD(字幕)] 7点(2019-03-03 23:16:09) |
10. 私の殺した男
《ネタバレ》 息子を亡くした親の喪失感がひしひしと伝わってきて、墓地での母親同士の会話に泣かされてしまいました。 ラストで演奏に聴き入る夫妻にこれでいいのだと思う一方で、真実を隠し通せるとは思えず、明らかになった場面を想像して、やはり真実を伝えた上で葛藤を乗り越える物語でなけらばならないのではないかと複雑な心境です。 抑えた語り口で反戦を謳う本作から7年後にWW2が開戦する現実の厳しさを感じます。ヒトラー総統は鑑賞してなかったのでしょうね。 [DVD(字幕)] 7点(2018-07-27 16:29:43) |
11. 我が家の楽園
食うために好きでもなけりゃ楽しくもない仕事でクタクタになって納税の義務を果たしている者からすればバンダーホフの言動はムカツク。お伽噺と割り切って観る分にはカービーの存在感が光っており、ハーモニカを吹いている時の絶品の表情に+5点。 [DVD(字幕)] 7点(2018-02-03 21:04:36) |
12. ワルキューレ
このようなクーデターがあった事を初めて知りました。命そのものを絶とうとする権力闘争の結末に同情心は涌いてきませんでしたが、皆が皆「ヒトラー万歳」ではなかったところに感じ入るものがありました。トム・クルーズの「ハイルヒトラー」と「ドイツ万歳」が強烈でした。 [DVD(字幕)] 7点(2012-12-24 03:08:35) |
13. わが谷は緑なりき
《ネタバレ》 「一家の頭である父と心臓である母」言葉通りの二人に敬服します。主人公のラストの台詞「我が谷は緑だった」に凝縮される成長記にいろいろな事を考えさせられました。 [DVD(字幕)] 7点(2012-03-12 22:51:09) |
14. 我が道を往く
物静かで飄々としたオマリー神父は一陣の涼風の様でした。道徳心、弱き者に対する思い遣り、年長者に対する敬意と優しさ。これらは世代を超えて普遍的なものであるべしと、しみじみとした気持ちにさせられます。フィッツギボン神父が実に味わい深く、オマリー神父の存在を引き立てておりました。 [DVD(字幕)] 7点(2010-08-02 18:50:46) |
15. 鷲は舞いおりた
原作未読。昨日観たミンスミート作戦と比べて今作のドイツ軍作戦の拙さを思わされます。どこまでチャーチルに迫れるかという見どころが安っぽく描かれているのが不満です。ただ、上司と部下の関係に於いてシュタイナー大佐とヒムラーの人間の本質が浮き彫りにされているところは印象深いものがありました。 [インターネット(字幕)] 6点(2023-01-02 18:03:46) |
16. 私を野球につれてって
創成期(ですかね?)の大リーグを舞台にしており、シーズンオフは芸人としてコンビを組むジーン・ケリーとフランク・シナトラというムチャクチャな設定でもってミュージカル作品として成立しております。バズビー・バークレイのめくるめく映像美への期待は残念ながら空振り。ハチャメチャなお話を気楽に楽しめました。 余談ながら、O'Brien to Ryan to Goldberg のシーンに、大昔に今は無き藤井寺球場で初観戦の際に、相手チーム(どこか忘れた)ランナー1塁で次のバッターへ「かっ飛ばせ~ 6・4・3~」と皆で野次ってるのに「ガラの悪いところやなぁ」ビックリしたのを思い出しました。 [インターネット(字幕)] 6点(2020-12-07 02:24:10) |
17. 若草物語(1949)
「古き良き時代」言葉が浮かぶホームドラマ。何処を切り取っても絵はがきになる美術スタッフの仕事ぶりに拍手。見せ場となるべきシーンが台詞だけで済まされている演出が唐突であり、いまいち乗り切れなかった作品。 [DVD(字幕)] 6点(2020-04-22 07:18:53) |
18. 私は殺される(1948)
ベッド上のバーバラ・スタンウィックの熱演が鬱陶しく感じ、金に転んで夫になったバート・ランカスター(瑞々しい!)の後悔も解ろうというもの。検事の関わり等不明な点が多く、観終わってモヤモヤが残る。よろしくない邦題がね、風呂に入って40分考えてみたけど「見えない殺意」しか浮かばず。難しいね。 [DVD(字幕)] 6点(2017-11-27 10:14:33) |
19. 若草物語(1994)
ガブリエル・バーンがとても良かった。ジョーを見る眼差しはこの人が愛しいという思いに溢れ、「もっといい作品が書ける筈だ」と忠告する姿にジョーの事を心から大切に思っているのを感じた。 6点(2004-02-12 20:13:53) |
20. 我等の生涯の最良の年
《ネタバレ》 戦勝国アメリカ復員兵3人の再出発へのドラマ。長過ぎました。ダラダラと語られて段々と嫌になってハッピーエンドでも何の感慨も無く。名作の誉れ高かっただけに意外でビックリしています。ご贔屓ではありますがフレデリック・マーチのオスカー受賞は異議あるところです。 [インターネット(字幕)] 5点(2022-12-26 00:58:26)(良:1票) |