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かっぱ堰さんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1251
性別 男性
自己紹介 【名前】「くるきまき」(Kurkimäki)を10年近く使いましたが変な名前だったので捨てました。
【文章】感想文を書いています。できる限り作り手の意図をくみ取ろうとしています。また、わざわざ見るからにはなるべく面白がろうとしています。
【点数】基本的に個人的な好き嫌いで付けています。
5点が標準点で、悪くないが特にいいとも思わない、または可も不可もあって相殺しているもの、素人目にも出来がよくないがいいところのある映画の最高点、嫌悪する映画の最高点と、感情問題としては0だが外見的に角が立たないよう標準点にしたものです。6点以上は好意的、4点以下は否定的です。
また0点は、特に事情があって採点放棄したもの、あるいは憎しみや怒りなどで効用が0以下になっているものです。

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21.  ブラックホーク・ダウン 《ネタバレ》 
初見は2000年代のTV放送だったが(たまたま出先の札幌で見た)その時に思ったのは、何でこの連中はアフリカにまで来てこんな目に遭わなければならないのかということである。どこが自国のためなのかわからない戦いで、現場の兵隊が次々に死んでいくのが痛々しい。内輪で殺し合っている連中など放っておけばいいではないかというのが当時の感想だった。 加えて虚脱感を覚えたのが終盤の「仲間のために戦う」という言葉だった。現代の米軍では戦うための目的意識も大義もなく、戦う理由が軍隊内部で自己完結してしまっているということなのか。「一人も残さない」のは士気の維持のためには重要だろうが、それでさらに死者が増えていくのも虚しく見えた。  今回改めて見直したが、実録風の原作のある映画とのことで、実際に戦闘に加わった人々も製作に協力していたことからすると、基本的には苦難の中で勇戦した軍人を顕彰し記憶にとどめようとした映画かと思われる。 現地がこういう状況になった経緯は知らないが、この時点で国連平和維持軍も出ていたことからすると、米軍だけが極端に条理に反した行動をしていたわけではなかったようである。数字としては最後の1000対19が目立っていたが、単純な数の比較でいえば、最初に「30万もの民間人が餓死」と出ていたこととの関係をどう捉えるかということになる。 ここでアメリカの独善性に反発して、民兵リーダーの言った「この国の流儀」というのを認めてしまうと、例えば国内の特定集団などを弾圧する国家があっても内政問題と言われれば止めさせられないことにならないか。あるいは序盤で将軍が言ったようにgenocideといえば放っておけなくなるということか。簡単に善悪を分けられるものではなく、文字通り考えさせられる映画にはなっている。 何にせよ国家たるものに一般庶民的な善意などありえないわけで、どうせ何かの思惑や利害で動いているのだろうとは思うが、どちらかというと一般庶民に属するこの映画の主人公に関しては、当初思っていたような世界秩序の守護者たるアメリカの役割をもう信じられなくなっていたらしい。死んで英雄になろうとも思っていなかったようで、自分としても(戦争したことはないが)同感というしかない。  以下雑談として、その後のアメリカは世界の警察官をやめたのかと思っていたら、今年の5/16には一度現地から撤退していた米軍を再度駐留させる決定をしたとの報道もあった。それまでも周辺国やアフリカ連合などとともに関与を続けていたようだが、現実問題として過激派組織の活動には隣国ケニアも苦慮していたらしい。
[インターネット(字幕)] 7点(2022-07-09 10:04:37)
22.  M★A★S★H/マッシュ 《ネタバレ》 
ポリコレ絶対主義の現代でもまだこんな映画の存在が許されているからにはよほどの名画であるらしいが、しかし全編通じた悪ふざけのため製作意図をわかってやる気に全くならない。世評によれば反戦映画だそうなので、これが反戦の表現と受け取れる雰囲気が当時はあったのだろうと思っておく。それにしても手前勝手で傲慢な連中だ。
[DVD(字幕)] 2点(2022-07-02 09:07:12)
23.  トコリの橋 《ネタバレ》 
朝鮮戦争中の空母艦載機のパイロットを主人公にした映画で、海軍の協力により発着艦や飛行中の場面は実写が使われている。攻撃の場面は特撮だろうが、結構リアルなのでこれは特撮だと自信をもって言い切れない出来になっている。 登場するのは主にジェット戦闘機のグラマンF9Fパンサー、ヘリコプターのシコルスキーHO3S-1である。F9Fは戦闘機ながら対地攻撃用に使われていたようで、劇中でも題名の橋の攻撃を行っていた。またHO3S-1は救難が主任務とのことで、発着艦の際は常に滞空して待機し、また敵地で孤立した友軍兵の救出に向かったりしていた。 空母に関して、艦橋に34と書いてあるのはCV-34(またはCVA-34)の「オリスカニー」であることを意味するが、劇中では「サボー号」(字幕)という設定になっている。この名前は、かつてアメリカがした戦争での激戦地の名前を空母につける伝統からすれば、太平洋戦争の激戦地だったソロモン諸島の島の名前(Savo Island)と思われる。劇中でこの空母がいたのは冬の日本海だったらしい。 なお「トコリ」は原作者が作った架空の地名とのことだが、少なくとも「リ」は「里」かと思った。場所としては港湾都市の元山の近くのようである。  この時期にも、大戦後期の主力だったエセックス級空母はまだ現役でいるが、既にジェット機やヘリコプターも搭載して時代が急速に変わりつつある印象を出している。少し前まで敵国だった日本も、戦後速やかに友邦になって人々も親和的であり(戦勝国に媚を売っていただけだろうが)、かつてアメリカ人が生命をかけて戦った敵はどこに行ったのかと思わされる。 その中で、本業は弁護士だという主人公は、前の大戦をせっかく生き延びたのに今どきまた戦地に駆り出されてしまっている。妻子を守るために戦うというならまだしも、自国が脅威にさらされている危機感など本国のどこにもなかったとすれば、この主人公が死地に赴くことの理不尽さは確かに感じられる。アメリカのやる戦争で、職業軍人は別としても一般国民が死んでいくことについて深刻な疑問を提起した映画なのかとは思った。「朝鮮にいるから戦う」とは、いなければ戦わずに済んだはずという意味だったか。  ところでアメリカ映画に出る日本人はヘンな連中ばかりというのは常識だが、この映画で特に呆れ果てたのが「御家族風呂」だった。素っ裸で居並んでお辞儀する一家など想像を絶するが、裸を気にしない子どもらが先に仲良くなったという展開は悪くない。戦争があっても人間同士が仲良くできるのはいいことだ。
[DVD(字幕)] 6点(2022-07-02 09:07:10)
24.  シェラ・デ・コブレの幽霊 《ネタバレ》 
邦画「女優霊」(1996)との関係で名前だけが語られて来た幻の映画である。 大人が見れば最恐ホラーともいえないが、泣き声+背景音や幽霊の映像効果などはけっこう恐ろしげであり、また凄味のあるショッキングな場面が印象的だった。「女優霊」脚本の高橋洋氏のように、幼少時に見ればトラウマ級のホラーだったかも知れないとは思った。  ストーリーとしては意外にもミステリー風の作りになっている。怖そうな雰囲気を出す一方、訳あり風の家政婦とか電話線や小瓶といった小道具が単純な心霊ホラーに終わらない予兆を示している。 本来はTVドラマの試作版とのことだが、見ると登場人物のキャラクターが探偵ドラマらしく出来上がっていて、これは確かに連続ドラマの第1話にふさわしいと思わせる。主人公である探偵のところにオカルトじみた相談事が持ち込まれると、オカルトの対極にいるリアリストの探偵助手が仕掛けを疑って判断材料を提供し、それを受けた探偵が、現世的な因果も含めた全体像を解明して決着がつく、というのがシリーズを通じた基本パターンになりそうに見える。 主人公は超自然現象の存在を否定しておらず、むしろ心霊を侮る罪びとを破滅から救おうとしていたらしい。探偵助手も現実主義だからこそということなのか、実際起きたことは起きたものとして受け入れるスタンスだったのは好印象だった。“一番怖いのは人間”とはよく言われるが、それはそうとしても、だからといって心霊の存在が否定されるわけではないというようでもある。 最後はひっくり返った車をそのままにして終わりなどいい加減な締め方で、そもそも事の真相もよくわからなかったが(母親を死なせたのは娘だった?)、まあ次回もあるなら見たいという気にさせる内容ではあった。  登場人物では、今回のヒロイン役である奥様が美形で目を引かれた(脚もきれいに見せている)。また探偵助手の家政婦の人物像が見どころで、最後のやり取りはこのドラマの雰囲気を端的に表現していた。ほか渚の美女は正体不明だったが、これからシリーズの進行とともに主人公との距離が縮まってハッピーエンドに至るのか、あるいは主人公に重大な危機をもたらす存在になるのか(白は心霊のイメージ?)。何にせよドラマ化が実現しなかったのでわからない。 ちなみに冒頭で、墓標に見立てたビルの建つ平べったい都市景観は当時のロサンゼルスの風景だったかも知れない。
[インターネット(字幕)] 6点(2022-06-25 10:27:50)
25.  米中開戦 20XX年: 悪魔のシナリオ 《ネタバレ》 
ニュージーランドの映画らしい。脚本・監督・プロデューサーの人物と、少なくとも主演女優は同国出身、撮影場所も同地である。どうせしょうもない映画だろうとは思ったが、IMDbのユーザーレビューを読んで大笑いしたので見ずには済ませられなくなった。 邦題はともかく当初の時点では北朝鮮・ロシア・中東に国際紛争の火種があり、このうち最初のが世界大戦につながった形になっている。いきなり大軍で侵攻してから全面核戦争にまで発展するなどまるで20世紀の発想だが、しかしそういうのが第三次世界大戦のイメージだとすれば、劇中の中高年の道楽で起きるようなのが原題の「第四次世界大戦」というつもりかも知れない。 物語的には一応、人類存亡の危機に警鐘を鳴らす体裁になっており、悲しみや憤りも表現されている。日本人なら反戦映画として見られなくもないが、それほど真面目に見るものとも思われない。 なお日本は当然破滅する側だが、当のニュージーランドは最後まで出て来ない。自分だけ離れた場所から北半球の破滅を眺めて面白がっていたようでもあり、いわば劇中の愉快犯の位置にいたということらしい。  映像面では各種兵器や戦闘場面が豊富だが、多くは本物の戦闘や演習や訓練などの映像をつなぎ合わせてそれらしく見せたもののようで、それがこの映画の最大の特徴である(素人動画にもありそうだが)。ちなみに艦隊の映像は環太平洋合同演習(リムパック)の映像が使われていたようで、個人的に贔屓にしている「ちょうかい」DDG-176が映ったのは嬉しい(邦画「空母いぶき」では変な名前に変えられてしまっていたが)。また同演習に参加した中国のジャンカイ級フリゲート(572衡水)の映像が使えたのはストーリー的に都合がいい。 ほか個人的にはリトアニアにNATO諸国の戦闘機が配備されているというのが興味深かった(ノルウェーのF-16など)。ほかにも軍事ファンの人々ならいろいろ見どころ(突っ込みどころ)があるかも知れない。自分としては「空母いぶき」と同程度には楽しめる映画だった。   [2022-05-14追記] いきなり大軍で侵攻してから核戦争に発展するなど20世紀の古くさい発想かと思っていたが、今年のロシア軍のウクライナ侵攻を見るとそうでもなかったらしい。この映画で国際紛争の火種になっていたのは北朝鮮・ロシア・中東の3つだったが、ロシアというのもありえなくはなかったことがわかる(映画でもウクライナや黒海が出て来る)。 なお劇中の道楽オヤジはいわゆる陰謀論的な世界観の所産のようでもあるが、現実問題としては人類文明を滅ぼすなどという、誰の得にもならない(本人も得しない)ことを趣味的にやらかす者はいないと思うのが普通である。その点で荒唐無稽な映画であるのは間違いないが、それにしても今回若干見直したところもなくはなかったので、最初は4点だったが少し点数を上げておく。
[インターネット(字幕)] 5点(2022-05-14 09:46:09)
26.  はちどり 《ネタバレ》 
1994年の話である。この年にあった聖水大橋の崩落は、個人的には翌年の三豊百貨店の倒壊とセットで憶えているが、昨年6月と今年2月にも光州で同じ建設業者による建物の崩壊事故で死者が出たとの報道もあり、旧来の悪弊がいまだに残っているということらしい。 主人公の周囲で見ると、父親は一般庶民らしく人格的には洗練されていないが、一般庶民らしく普通に情の濃い男には見える。しかしそういう個人レベルの問題とは別に、儒教風?の長幼や男女による上下関係と強すぎる規範意識、また科挙制度に由来するといわれる学歴偏重などの社会的圧迫が全体的な息苦しさを生んでいるように思われる。日本でも似たようなところはあるが圧力の高さが違うのではないか。主人公の言動など見ていても、日頃からストレスの多い社会を生きているらしいとは思わされた。ちなみに家族の間でも罵倒語はきつかった。 なお自分を守るために立ち向かえというのは確かにそうだが、自衛の範囲を超えて他者への攻撃自体を志向/嗜好するようになってしまうと、生きづらい社会の形成に自ら加担することになるので自制すべきである。  物語としては、この年代にとって大人よりはるかに長く感じられるはずの数か月間に、主人公が直面した様々なことが描写されていたようで、緩く見えるがけっこう高密度らしい。個別の場面では、まずは病室にいた一般庶民のおばさん連中が可笑しかった。また漢文講師が歌う場面はいろいろな意味で印象的だったが、その後に再開発地区(もとが不法占拠?)を見て言った言葉がこの人物の醒めた精神を表現していた。 結末の意味は不明だったが、例えば人間関係は永続的なものではないと悟った上で、その時々に相手から受け取れたものの方を心にとどめて生きようということか。背景事情を知らないまま関係が断たれてしまったことで、かえって純化された人間像が14歳の人間の心に刻まれたということかも知れない。年齢性別が違うので直接共感はできないが、いろいろ受け取れるもののある映画ではあった。 ちなみに愛らしい少女は小鳥に喩えてもらえて幸いだ。鑑賞側の見苦しいオヤジの方が自己否定感を催す映画だった。  以下雑談として、劇中の塾で教えていたのは現代語ではなく古典であり、日本で「漢文」と言っているものに当たるらしい。現代ではハングルしか使わないことになっているので漢字言葉は隠されているが、現に自国語の基盤の一部(かなりの割合)をなすものを知っておくのはいいことではないか。 漢文講師が解説していた「相識滿天下 知心能幾人」に関して、劇中で漢字をそのままハングルで表記していたのは、日本語だと「そうしきまんてんか ちしんのういくにん」と経文風に音読みした形になるので、これでどれだけ意味がわかるのかと心配になる(日本なら読み下しというのもあるわけだが)。同じ漢字文化圏でも事情が違ってしまっているが、「能」は可能の能だと特に説明していたのは似たような感覚だなと思った。
[ブルーレイ(字幕)] 7点(2022-03-05 09:41:15)
27.  トップガン 《ネタバレ》 
2022年に続編が公開予定だそうだがそれとは無関係に、他国の類似映画で「スカイ・イーグル」(2011トルコ)、「TOP GUY トップガイ」(2014台湾)というのを見たついでに本家戦闘機映画として久しぶりに見た。 この映画のいいところは、何といっても今はなきF-14艦上戦闘機が大活躍なことである。グラマン社のニャンコシリーズの最後になってしまったが、後のVF-1 “Valkyrie” のデザイン元になったものでもあり、かつて多くの男子が憧れた飛行機だったことは間違いない。CGに頼れない時代のため実機が飛ぶこと自体に迫力があり、敵と高速ですれ違ったりするのがスリリングに見える。格闘戦中心の映画なので主翼を大きく展開する場面が多いが、後退角を大きくして全体が三角になる場面もあり、またその中間の状態も見えていたようなのは興味深い。なお訓練場面での相手役がA-4だったのはいいとして、本物の敵の「ミグ」(MiG-28?)をF-5が演じていたのは、F-86に対するMiG-15やF-4に対するMiG-21のイメージかも知れないが、F-14の相手としては大小差がありすぎて貧弱に見えた。 話の内容として特に心に残るものはないが、ただ前の方の人々も書かれているように、昔見たときは主人公のライバルが傲慢で嫌な奴だと思っていたところ、今回見ると結構まともな男だったというのは意外だった(首席卒業にふさわしい)。また最後に主人公が最前線での戦いを志向せず「トップガン」での活躍を希望したのは、常にどこかで本物の戦争をしている印象のあったアメリカにしては穏健である。 音楽面では、もともと洋楽にあまり関心はなかったが、"Danger Zone"や"Take My Breath Away"は当時さんざん聴かされたので当然憶えている。  ちなみに最近、続編との関係で話題になっていたのは、この旧作で主人公の私服の背中に日章旗と青天白日滿地紅旗がついていたということだった。これは1963~64にミサイル巡洋艦ガルヴェストンが日本と中華民国を訪問した際の記念物らしく、それならパイロットというより船乗りの持ち物だろうと思ったが(古着屋で買ったのか)、とにかくアメリカの友邦がどこなのかということが当時のハリウッド映画にも反映されていたとはいえる。 それより今回気づいたのはSundownという男のヘルメットが旭日旗デザインに見えたことだったが、これはrising sunではなくて日没だ、という洒落(謙遜?対抗?)だったのか。ミラマーというのはカリフォルニアにあるらしいので西海岸っぽいとはいえる。
[DVD(字幕)] 6点(2021-12-25 11:23:15)
28.  ザ・トゥルー・コスト ~ファストファッション 真の代償~ 《ネタバレ》 
いわゆるファストファッションが世界に及ぼす負の影響に関するドキュメンタリーである。序盤でブランドロゴを見せる場面では、ZARA(スペイン)、H&M(スウェーデン)の次にUNIQLOが出ており、これが実際の世界的な順位であるらしい。 この業界が悪い面で注目されるきっかけになったのは、2013.4.24にバングラデシュでラナ・プラザというビルが倒壊し、中の縫製工場にいた多数の労働者が死傷した事件と思われる。この映画では、サプライチェーンの中で低コスト大量生産のしわ寄せが集中する現場の労働者のほか、大規模な環境汚染や現地政府からの圧力と弾圧、またマスメディアによる意識操作も扱われている。「中流階級の衰退」といった構造的な問題にも若干触れて、最終的には現状の経済システムを変えていこうと人々に呼びかける映画になっている。 期待すべき事例としては「ピープル・ツリー」というフェアトレードの専門ブランド(日本にも拠点あり)を紹介している。  個別の場面では、バングラデシュの労働者がインタビューで途中までは元気よく話していたが、ラナ・プラザのところで感情を抑えられなくなってしまったのが心に残った。当然ながらどんな国の人々にも普通の人の情はあるわけだが、それがあると感じられないのがグローバル企業だという表現になっている。またテキサスの綿花生産者が、本人にとってのオーガニック・コットンが「重要」から「必然」になった契機を説明した場面は、編集が作為的かも知れないが印象的ではあった。 個人的感覚としては作中に出たような、物欲まみれで実店舗のセールに殺到する消費者像というのがいまの日本にそのまま当てはまる気はしない。しかしかなり前からの風潮として、低価格は絶対正義であって高いものを買わされるのはバカ、と言われ続けてきた気も確かにする。別にこの映画を見て世界を変えてやると息巻くわけでもないが、せめて自分の行動くらいは一般人の良心に従って制御していきたいものだとは思った。  なお自分がこの映画を見たきっかけは、2021.4.8にファーストリテイリングの会長兼社長が記者会見で、綿花に関わる強制労働についての質問に対し“政治的なことにはノーコメント”という趣旨の発言をして批判されていたことである。それ自体には突っ込まないとして(映画の範疇を超える)、関連する意見として“現地の人々の仕事をなくしていいのか”とか“もっと現実を直視しろ”といったような業界寄りの声も出ていたようだったが、この映画ではそういった反論を一応前提にした上での提言をあえてする形になっている。
[DVD(字幕)] 5点(2021-05-08 08:54:07)
29.  ダブル・ビジョン 《ネタバレ》 
1000年前の道教の予言がもとで現代に起きた連続殺人事件を、台北市の刑事とFBIの捜査官が協力して解明していくミステリー調のホラーである。 全体的に陰鬱で不穏な劇中世界ができており、一応は21世紀なので大企業のオフィスなどはそれなりに現代的だが、特に警察署内が日本でいえば昭和の刑事物のようで20世紀色が濃厚に見える。若干くどい感じの背景音楽が流れるのも古風な印象を出している。 ホラー要素としては、不気味な死に方が連続するのは予告の通りだが、そのほか突然の壮絶な殺し合いもあったりして驚かされた。また「双瞳」というものの見せ方はうまくできている。  謎解き部分は実はよくわからなかったが、主人公も犠牲者になるのかと思わせておいて、実は別の役割だったという意外な展開だったらしい(よくわからない)。永遠の命を求めていた真犯人は、最終的には主人公のせいで目的を達せられなかったのだろうと思うが(よくわからない)、実はそのことも含めて予告されていたと思えばいいか(よくわからない)。また同時並行で主人公の家族物語が展開し、これもすっきり納得はできなかったが、ラストはしみじみした印象で悪くなかった。 また個人的に面白かったのが主人公とアメリカ人の異文化交流だった。自分としては「レッドブル」(1988)を思い出したが、人物の関係性は当然違っており、この映画では科学捜査と俗信の対比を見せる形になっている。御守りなら日本の警察にもありそうだが、本来は赤い守り袋でなければならないらしい。「アメリカにも悪霊…」「科学捜査は…」「長年FBIで働いてれば…」には笑った(共感した)。 そういった感覚のギャップを含めてコミカルな場面が実は結構あり、これは日本でいえば呪怨シリーズのようなものかも知れない。笑わそうとする意図を前面に出さず、真面目な顔で可笑しいことを言ってみせる印象なのは結構好きだ。ただ「ママに感謝」がわかりにくく、終盤ではこれが主人公の妻に向けた言葉になっていたらしいが意味不明瞭なのは残念だった。現地の言葉は全く知らないが謝謝你媽と言ったのか。  出演者については主人公役が香港、他は台湾の役者のようである。怪しい少女役は林涵Hannah Linという人で、当時本当に17歳くらい(16歳?)だったらしいがなかなかの迫力を出していた。また個人的にはショートヘアの監察医や主人公の妻が(年齢はともかく)なかなか可愛い感じで好きだ。
[DVD(字幕)] 6点(2021-04-24 11:29:19)
30.  恐怖と戦慄の美女<TVM> 《ネタバレ》 
原題によれば恐怖の3部作である。邦題の美女とは3部作全てで主演しているカレン・ブラックという人のことで、原作は全て作家のリチャード・マシスン(地球最後の男/アイ・アム・レジェンドなど)である。 以下個別に書く。 【ジュリー】 外見は地味だが中身は違うと妄想するとか、隠されたものを自分は見抜けると思い上がってしっぺ返しをくらう話とすればわからなくはないが、ドラマとしての展開が唐突過ぎて説明不足である。序盤のわざとらしいチラ見せはいいとして、ほかに何か変な超能力でも使ったということなのか。アメリカ社会に隠れ住む魔物(witchか吸血鬼か)の魔力のせいだとすれば単純なヒトコワ系でもないのかも知れない。 【ミリセントとテレーズ】 オチが早いうちにわかってしまうが、結末に呪いが絡んで来るのが若干の工夫か。相手の持ち物を人形に入れて針を刺す、というのは日本でも親しまれている手法と思ったら、もとはブードゥーの魔術ということらしい。個人的には妹の容姿に嫌悪を催した(近場にいる実在の人物を思い出した)ので、妹を嫌う姉の気持ちはわかったとはいえる。ただし26歳というのは無理があるのではないか(演者は当時35歳)。 【アメリア】 呪いの人形が襲って来るだけの話で、最後がどうなるかは宣伝写真で思い切りネタバレしている。人形は顔にインパクトがあるが、骨董屋で発見したというには小奇麗な造形物だった。国内向け解説ではこれもブードゥーの呪いと書いてあるが、ズーニ族というのは実在のアメリカ先住民ではないか(民族差別だ)。ドラマ的には母娘の関係破綻というのはわかるとして、最後が何でこうなるかは不明だった。主人公は人形を気に入って何気に抱っこしたりしていたので、最初からそういう素質はあったらしい。  前の2つは最後のオチで勝負の小話だが、現世的な怖さだけでなく、超自然的な要素が微妙に入っているのが半端な感じだった。また最終話は「チャイルド・プレイ」という映画の元ネタかと噂になっているようで、これがこの3部作の最大の見所になっているらしい。 主演の人が地味だったり凶悪だったり様々な顔を見せるという企画だったようだが、個人的にはあまり好きになれない3部作だった。昔のTVドラマということもあるだろうが少々かったるい印象である。主演の人も外見的に好みでない。
[DVD(字幕)] 4点(2021-01-23 08:59:09)
31.  オーストラリア(2008) 《ネタバレ》 
序盤からのめまぐるしい展開でコメディ調の細かい場面を連ねていくのが苛立たしく、人物紹介を字幕で読み取るのが困難なのも最悪だ。その後の物語も上滑りで薄っぺらい感じだったが、最終的には根強い男尊女卑を解消し、また先住民の虐待についても懺悔した上で理解し合い、さらに何気に見えた他のアジア系マイノリティとも共生しながら、明るい未来が開けていきそうなハッピーエンドにはなっていた。 史実との違いに関しては、個人的にはポート・ダーウィンになぜかアメリカの戦艦のようなのがいるとか(籠マストと三脚マスト)、日本の艦上攻撃機がなぜか魚雷を積んでいるのは真珠湾攻撃かと思った。ちなみに艦載機が好んで地上の人間を銃撃するなどはアメリカ軍のやりそうなことである。  ところで歴史的観点からいえば、2007~2013年の労働党政権下で作られた国策映画かと思った。題名が国名そのままなのは、当時の政権にとってこれがいわば正史という意味と思われる。ラストのテロップで「2008年、オーストラリア首相は…」と出たように先住民尊重の姿勢だったようだが、日本人の立場からは何かと反日傾向が目立つ時代だったように記憶しており、この映画に関しても、他のレビューサイトなどでは許しがたい反日映画として激しく怒る人々が多かったようである。 ただし今回自分が見たところでは、正直それほど極端な反日映画には見えなかった(最悪なのは他にある)。日本軍がなぜか先住民(混血)の子どもらを掃討しようとする場面があったが、これは迫り来る戦争の脅威ということを映画的に(=現実性度外視で)表現したという程度の印象だった。またそれ以前に劇中では、現地の白人が先住民の女性を性奴隷のように扱う習慣があったことが語られていたが、それに比べればまだしも日本は邪悪とも見えず、いわば一般論的な敵国扱いのようだった。 確かに昔はオーストラリアの国全体が反日に見えた時期もあったが、実際のところは親日も反日もはっきり決まっていない人々が大多数と想像されるので、こんな映画であまり反感を募らせない方が無難とはいえる(国民同士を反目させて離間を図るという政治的意図もありうるわけなので)。映画としてはやたらに長いこともあって二度と見る気にならないが、あまり角が立たない程度の点数にしておく。
[インターネット(字幕)] 4点(2020-12-19 08:58:13)
32.  北京の55日 《ネタバレ》 
冒頭いきなりそれらしく作った城壁や街並みに驚かされるが、その後も巨大な楼閣が炎上して崩壊するなど、こんなものを実物でよく作ったものだと思わされる。壁に「殺」「焼」と大書されていたりするのが殺伐とした雰囲気を出していたが、ほかにも火薬箱に「容易起火」と書いた紙が貼ってあるなどアメリカ人には読めないわけだ。なお清国人を斬首するのに辮髪を掴んでいたのは使い勝手がよさそうだった。  当時の列強の政策自体はほめられたことではないとして、アメリカだけは別に領土的野心はなかったのだとアピールしていたようである。また清国側が民衆運動を都合よく使って示威行動なり破壊活動をさせていたのを見ると、こういうのは昔からあったのだと改めて思わされるが、その制御を誤ると権力が滅ぶというのが最後の西太后の述懐だったらしい。 列強側は11か国といいながら、アメリカ映画なので米英中心なのは当然として、意外に日本もアメリカ寄りで目立つ場所にいる。これは史実というより第二次大戦後の日本の立ち位置の反映かも知れないが、単なる子分というだけでもなく、いきり立つアメリカを宥めて協調を促したように見える場面もあった。敵の警備兵をカラテで倒したのも日本人ではないか。アメリカ人が英独仏伊には各国語で呼びかけておいて、日本語だけ出て来なかったのはナメられているような気もしたが、けっこう親日的というか変になれなれしい映画には見えた。 基本的には、日頃は利害が対立していても有事には協力していこう(アメリカ主導で)という映画だったようで、昔の日本も孤立して世界と戦うばかりでなく、ちゃんと他国と連携しようとしていた時代もあったというのは悪くない。今はそういうお仲間をどれだけ作れるかが問題だろうが、現実問題としてアメリカを当てにしていればいいわけでもなく、まあ前途多難だというしかない。  登場人物では、﨟󠄀たけたロシア婦人が一応ヒロインだったようだが、それはともかく自分としては、昔の夏帆を思わせる可憐な少女が救われてもらいたいとだけ思いながら見ていた。主人公の少佐に対して部下の軍曹や神父までが、この子にまともに向き合え、と強要していたのは笑った。この少女が幸せになりさえすれば、あとは大清帝国がどうなろうがハッピーエンドということだ。 そのようなことで、結果的にはそれなりに面白い娯楽映画だった。
[ブルーレイ(字幕)] 6点(2020-11-14 09:25:40)
33.  ウィッチ 《ネタバレ》 
アメリカ開拓時代の最初期に当たる17世紀という設定で、場所はニューイングランドとのことだがマサチューセッツを想定していたらしい。なお撮影場所はカナダのオンタリオ州とのことである。 エンディングの説明によれば、各種の記録に基づいて古い時代の魔女像を再現しようとした映画ということになる。時代設定からすると、先住民の社会で伝えられてきた魔物にヨーロッパ人が初めて遭遇したというような話かと思ったら全くそうではなく、出るのはヨーロッパ風の魔女である。イングランドから最初の移民が来た時点で現地在住の魔女が既にいたというのも変なので、いわばキリスト教徒(清教徒)と魔女が一緒に渡来したようなものだったと思うしかない。 監督インタビューによれば、主人公のモデルはエリザベス・ナップ(Elizabeth Knapp)という実在の人物だそうである。思春期の少女が悪霊に憑かれた話とすればありきたりなようだが、あるいは「セイラム魔女裁判」(1692~1693)のような事件の背景を表現した映画かも知れない。個人的には「魔女」(1922)の各論編という印象だった。  全体的には陰鬱で不穏な雰囲気の中で神経に障る出来事が起きていく展開で、ホラーとしては地味だが悪くない。魔女が出る場面は多くないが、妖艶な美女とか単なるババア(裸)とか夜会に集まった連中(裸)とかがいたようである。 物語的には宗教色が強いようでよくわからない。要は厳格な宗教で抑圧されていた少女が解放?された話かも知れないが、その辺は個人的に共感するものではない。部外者なりにいわせてもらうと、教義のようなもので固めた世界観は危機にかえって脆いというように見えた。母親のように、一神教を現世利益的に捉えるのは無理がある。また父親に関しては、旧約聖書の「ヨブ記」のように神の試練に耐えようとしたものの、それより一番大事なのはやはり家族だ、と思ってしまったことで罰せられたという意味なのか。最後に薪の山が崩れたのは物悲しく見えた。 ほかに哀れなのが健気な弟だった。姉をそういう目で見るなとは思うが、彼が罪人というなら人類など全て死滅した方がいい。  出演者に関しては、主演は可憐で個性的な美少女だが、裸になると少し肉付きがよすぎるように見えた(後姿)のは意外だった。また悪魔に欺かれて地獄に堕ちた子役の演技が印象的だった。
[DVD(字幕)] 7点(2020-09-26 09:27:39)
34.  1303号室 《ネタバレ》 
「ディレクターズ・カット版を逆輸入」(96分)というのを見たが、もとの94分とどれだけ違うのかわからない(例えば洗面所の場面を追加したとか)。そもそも何でこれがアメリカ映画かと思うわけだが、極端に陰気くさい和風住宅とか和室の押入れなどは海外向けに見せる日本像という意図なのか。わりと忠実にジャパニーズホラーなるものを作ろうとしているようには見えながらも、リングとか呪怨とか出所のわかりやすいネタをあからさまに入れ込むのでは真似事にしか見えない。 原作は読んでいないが、映画で見た限りでは母と娘の関係がテーマだったらしい。途中までは一応真面目にドラマを作ろうとしたように見えたので、せめて主人公とその母親の問題には区切りをつけて終わってもらいたいと思っていたところ、ラストがこれでは結局何だったのかわからない。とにかく最後は理不尽な結末にして、これこそがジャパニーズホラーだという安直な態度には納得できかねる。  キャストでは、個人的には中越典子さんに注目していたが、最初のうちは疲れたような顔ばかり見せられて不満がたまる。しかし終盤になって怒りを露わにしたあたりからちゃんと美貌が見られるようになり、若干ながら色っぽい場面もあったりする。また初音映莉子という人は地味ながらも味のある表情を見せているが、この物語でこの役柄ならこういうメイクはなしで済ませてもらいたかった。 ほか隣室の少女役は、後にアイドルグループ「私立恵比寿中学」で活躍した松野莉奈という人らしい。また他の映画で印象的な役をしていた荒川ちかという人が出ていたはずだが、幼少時の写真に写っていただけのようである。  なお雑談として、この映画では家庭の問題よりも悪徳不動産業者の告発が主目的に見えたが、今なら変に安い物件などとりあえず事故物件サイトで見てみるという手もあるのではないか。昨年ネットでたまたま見た怪談(体験談)で、著名な事故物件サイトの名前がごく普通に出て来ていたのでそういう時代になったのだと思ったことがある。ただ現実問題として、誰かが嘘を書き込んだのがそのままになっている場合もあるようなので要注意ということらしい。
[DVD(邦画)] 3点(2020-09-19 13:29:30)
35.  地球最後の日 《ネタバレ》 
昭和26年の映画(白黒ゴジラの3年前)としてはかなりいい出来というしかない。ミニチュアのほか書割りも使ってそれなりの映像を作っており、ロケットの発射台などはなかなかの壮大感を出している(ラストの風景画は残念)。ロケット内部の設えとか、目的地で方向転換して逆噴射する場面などは後の東宝特撮映画にも生かされていたかも知れない。ちなみに惑星の大気中を航空機として飛んでいたのは後世のスペースシャトル風である。  物語としては、最初に金の話から始まっていたのは現実的で結構だが、しかし発起人の科学者が身内最優先な上に、他のスタッフも自分が助かるために参加したのだとすれば、人類のために働く志を持った献身的な人間はいなかったことになってしまう。抽選に漏れた連中が暴動でも起こすのではないかと思っていたらその通りだったが、ただラストはちゃんと勧善懲悪的になっていて安心した。かつ“老害”排斥意識が高まっている現代日本の風潮にも合った結末になっている。 こういう状況で、わずか40人を選ぶ中に自分が入ると思う観客はいないだろうから所詮は他人事になりそうなところ、主人公を変に謙虚な人物に設定したことで観客の立場に寄せていたようでもある。自分など何の役にも立たないと卑下していたのは共感できるものがなくはなかったが、しかし恋敵のお情けで役目をもらえたように見えながら、実は大気中の飛行区間の操縦をしっかり担当しており、ちゃんと本職の技量を生かす形になっていたようである。  なお各国の動向はよくわからなかったが、政府もマスコミも破滅の恐怖から目を逸らしてとりあえずの避難を呼びかけ、一般大衆も従容として受け入れていたようなのが不気味とはいえる。 移住に成功したのが劇中メンバーだけだとすれば、「ノアの方舟」の話を共有するはずのイスラム教徒も排除され、また数ばかり多く煩わしいアジア系人種なども一掃されて、英語を話す白人のキリスト教徒だけ(ユダヤも含む?)で清浄な新世界を作ることになったらしい。しかし残った40人も、抽選だったからには暴動を起こした連中と本質的に違いがないわけで、いずれ旧世界と同じ世界ができて同じことを繰り返すのだろうと予想しておく(今回は二度目?)。 ちなみにどうでもいいことだが、個人的にヒロイン役の女優はカワイイ系美女でけっこう好きだ。
[DVD(字幕)] 5点(2020-03-29 00:59:04)
36.  アウトブレイク 《ネタバレ》 
他の感染症映画を先に見て、この映画も見ずには済まない気分になって見た。むかし最初に見た時点では、とにかく出血熱が恐ろしいことは知っていたが、この映画では恐ろしいところはほどほどにして、きっちり娯楽映画に仕上げていたので呆れた記憶がある。 それでもこの映画で初めて覚えたのがUSAMRIIDとかCDC、Biosafety levelというものの存在だった。今回見ると、序盤でレベル1から順番に奥へ進んでいき、4まで行ったところでカメラが止められたように見えるのが少し面白い。また、拡大が始まったばかりでいきなりアメリカの西端から東端まで飛んだのは怖いことで、どれだけ田舎に住んでいても、飛行機が毎日飛んでいるからには油断できないと思わせるものがある。 ほか初見時に非常に印象的だったのが、映画館での感染拡大を映像化していたことである。見た人のほとんどがこれを憶えているのではと思うが、その割に2020年の現時点で、映画館はそれほど危ない場所とは思われていないらしい。これに関しては、集団感染の3条件である①換気の悪い密閉空間、②多くの人が密集、③近距離での会話や発声ということから考えると、劇中では大口開けて笑う人物がいたのが③に該当するのでまずかったが、みんな黙って静かに映画を見る日本は事情が違うということかも知れない(客席での飲食はどうか不明)。ちなみにうちの地元の映画館は、客がいないので②の条件も満たしていない。  そのほか娯楽映画らしく笑わせるところが結構多く、個人的には中盤の「7月に寝た」という台詞が、修羅場でもジョークの言える冷静さの表現のようで好きだ。しかし終盤に入ると大活劇の展開に合わせてコメディ色まで出していたようで、操縦士が便所に行っていてshitなどというしょうもないギャグを入れていたのはやりすぎだ(笑った)。あまり観客を笑わせると映画館が危なくなる。 なお社会的なメッセージ性ということでは、ウイルスは危なすぎて生物兵器には使えないとのアピールにはなっていたかも知れないが、今でも開発しているところはあるに違いない。また登場人物に関して、小さい子のいる若いお母さんが2人とも清楚系かつカワイイ系の美女で、個人的に心惹かれるところがあって余計に心配させられた。こういう人なりご家庭なりを犠牲にしてはならないというメッセージは個人的に強く感じた。 ちなみに撮影地はカリフォルニア州のFerndaleという町らしい。現在の様子はストリートビューで見られる。
[インターネット(字幕)] 6点(2020-03-23 20:30:57)
37.  コンテイジョン 《ネタバレ》 
何となく始まって何となく終わってしまう映画だった。別にハリウッド的大活劇を期待したわけではないので悪くはないが、正直言って退屈だった。 大筋としては現実味のある展開だったが、現時点で世界的に起きている感染拡大よりさらに深刻な事態ではあったらしい。略奪や暴動が起きるのはアメリカでは普通のこととして、日本人の感覚で完全に予想外だったのは、看護師の組合がストライキをするということだった。また対策に当たる公的機関としては、もはや日本人にも馴染みになったCDCとWHOが出ていたが、うちWHOが製薬会社と癒着していると誹謗されていたのは結局デマだった?ようで、やはり信頼できる国際機関がないと困るということだ。 ほか細かい点としては、妻と話せるかと夫が尋ねた場面は“実感がわかない”ことの表現としてユニークだった(あるいは気が動転して初めから話を聞いていなかったとか?)。また登場人物では、CDCでサルの身代わりになった人が見せた穏やかで愛嬌のある顔が好きだ。父親にとってはさぞ可愛い娘だったろう。  ところで一般庶民のする感染症対策としては、人との接触を避ける、握手しない、病気なら家にいる、頻繁に手を洗うといった常識的なことが語られていた程度だったが、ほかに重要だったのは「テレビやネットの噂」を信じて不安を募らせるなという点かも知れない。利己的な動機で人々の不安を煽る連中はどこにでもいて、やがて死滅するわけでもなく社会に巣食ったまま、ウイルスのように生き延びていくというのが一つの問題提起だったように思われる。 現在の日本でも、情報発信者にどういう思惑があるか(誰の得か)を想像しながら聞くのは必須と思わされる状況だが、加えて、どうもメディアが触れようとしない/逸らす部分があるらしいのは困ったことである。しかしとりあえず一般庶民の立場では、それぞれが感染しない・させない行動を習慣化して、災害だけでなく感染症にも強い社会を作っていくのが大事と思うしかない。日本人にはその素質が備わっている(ブタの血のついた手を服で拭いてから人と握手する調理師は日本にはいない)。その上で、弘化三年に肥後の海辺に出現したという「アマビエ」の絵でも見て和んでいるのがいい。
[ブルーレイ(字幕)] 6点(2020-03-23 20:29:03)(良:1票)
38.  THE JUON/呪怨 《ネタバレ》 
邦画の劇場版1を基本にしてOV版1の発端部分その他を加え、わけのわからない箇所やおふざけを除いて再構成した結果、非常に筋の通ったまともなホラー映画になっている。邦画版の特徴だった時間の前後もわかりやすく単純化されており、初めからこういう風に作ればよかっただろうが、と思わせるものがある。 真面目な映画のため、特にOV版にあったような笑いを誘う場面は目立たなくなっているが、かろうじてバスに乗っていたバカップルのようなのは存在自体が微妙に可笑しい。また細かいことだが、外国人教授が少年の額に手を当てようとしたときに、瞬時に少年が避けて無表情に睨んだのはネコの動きのようで面白かった。 ただ個人的に不満なのは女優が全般的に可愛くないことで、これは邦画版との大きな違いに思われる。邦画版と一対一で対応している人物も多いが、邦画版のあの人物がこれかと思うとあまりの可愛げのなさに呆れてしまう。その中で主役はかなりいい方で、終盤で日本人看護師と並んだところを見ても外人にしては大柄でないのが好印象だった。  ところで中盤過ぎに日本の刑事が、毎度の冒頭に出る辞書的説明をまるで日本全体の事情のように一般化して語っていたが、これはわが国に関する著しい誤解を生む恐れがある。映画全体としても日本の風景の中に外人多数を連れ込んだような違和感があることもあって、“日本にさえ来なければこんな目には遭わなかった”という教訓的な感じの映画になっている。タクシーの窓に「ようこそ日本へ」というシールが貼ってあったのは皮肉のようだがこれも笑うところなのか。 この当時はともかく現在は訪日外国人数が著しく増加しており(2004~2014の10年間で倍以上)、外国人観光客などを対象にした民泊の動きも全国的に活発になっている。そういうときに、古風な日本家屋には何が憑いているかわからない、というこの映画は水を差すのではという話だが、まあそういうことも含めて外人には受けるだろうと思うべきか。劇中の家の内部も微妙に外人受けしそうな作りのようでもあり、これが日本への旅情を誘うことになるとすれば幸いである。  [2020/02/16追記] 2015年の時点では、当時のインバウンド拡大の風潮に乗って外国人観光客を無条件で歓迎するようなことを書いてしまったが、その後に民泊の弊害とかオーバーツーリズムとか(感染症のリスクとか)の問題が出て来て、今となってはあまりよろしくない書き方だった気がする(反省)。政界や経済界の思惑はともかく個人の立場としては、人数や金の問題というよりも、日本に関心があって日本のことをもっとよく知りたいお客さんに来てもらいたい。
[DVD(邦画)] 6点(2020-02-16 13:48:36)(良:1票)
39.  K-19 《ネタバレ》 
最初に見たのはTV放送で、とにかく放射線障害が悲惨だったことだけ憶えていた。医学的にどうかはわからないがわずか10分でこの状態になり、それでも次々に人員が投入されていくのが恐ろしい。日本でいえば1999年に東海村臨界事故があったので、何かと雑なソビエト連邦の出来事だからとも言い切れなかった。  今回は無料公開の終了間際ということで見たが、上記以外の部分はそれほど感心しなかった。一応は実際にあった事件をもとにしているので、先の見えない展開のようでも自由度は狭まっており、例えば総員退艦して自沈する選択はありえなかったことになる。事故の話だけでは不足と思ったのか、前半では艦長が無理してスリリングな見せ場を作っていたが、その理由の説明には納得できなかったので落胆させられた。終盤で再度300mをやったのは、前にもやったので気分的には怖くないという意味だろうが、物理的には1回が限度で2回は無理ということもあり得たのではないか。 人間ドラマとしても、前艦長が一番いい人かと思っていたら艦長も感化されていい人になって、最後は仲間が一番大事で終わるのは極めて普通というしかない。少し意外な点として、艦長の父親も息子に似て野心家だったが「ツキの落ちる日」が来て収容所に行ったのかと思っていたところ、終盤でその想定をひっくり返す展開になっていたらしいが、それもそれほど印象的なものにはなっていなかった。 最後の集合写真で大感動もできなかったが、もうアメリカでもかつての敵への偏見などはなく、ロシア人の乗員に素直に心を寄せる余裕があったのだなという感慨はあった。ロシア風の背景音楽も耳に残る。  以下些細なことだが、字幕で近くの島の名前が「ヤン・マヤン」だったのは何語か見当がつかず南洋の島かと思ったが、これはノルウェー語でJan Mayen、ロシア語でもЯн-Майенで、カタカナでは「ヤン・マイエン」と書くのが妥当と思われる。こういうところにも気を使ってもらわないと北極海の雰囲気が損なわれるわけだが、そもそもその前の段階でバレンツ海を「ベーリング海域」と訳すようではどこの話かわからなくなる。劇中の地図を見ればいいにしても杜撰な翻訳だ。
[インターネット(字幕)] 5点(2019-10-27 19:28:28)
40.  おクジラさま ふたつの正義の物語 《ネタバレ》 
題名(副題の方)にクレームを付ける目的で見た。 かつて“正義の味方”という言葉があったが、そこでの“正義”とは社会の構成員が安全・安心に暮らすために必要な共通認識を規範として守り、あるいは守らせるよう努めることだったと考えられる。要は“人を殺してはならない”といった類の極めて基本的なもので、だからこそ“正義の味方”の登場は子ども向け創作物に限られていたわけだが、だからといって子どもの世界にしか正義が存在しないわけではない。わざわざ口に出して言わないにしても、大人を含めた社会の全員が“正義の味方”でなければならないことになる(程度の問題はあるとして)。 そのような前提でいえば、副題のように正義が複数などということはありえない。現実には、何が正しいかについて社会の共通認識が得られにくい問題が多いにしても、逆にいえばそのような問題に対して“正義”という言葉を使うのは誤りだということになる。確かに個別の個人的見解や信念を揶揄するためにこの言葉が濫用されているのも事実だが、それが日本語の“正義”の意味を変質させ、さらには社会の構成員が守るべき規範が存在するという意識までも希薄にしていくことはないのかと危惧される。 この映画の副題は、そのような風潮を助長するとまではいわないにしても(そこまで影響力はないだろうが)社会の安全・安心を損なうことを平気で表現しているのは間違いない。解説文にある「正義の反対は悪ではなく別の正義」という言葉を使うなら、“人を殺してはならない”という正義の反対は“人を殺してもよい”という別の正義であって悪ではない、ということになるが、そういうことをこの映画は意識していたのかどうか。 さらにいえば、捕鯨問題のように人類全体の共通認識が得られにくい題材をわざわざ選んで“正義”を相対化して骨抜きにし、アメリカ発という高級そうな見かけを装って、日本人の多くが正しいと思うことをポピュリズムとして否定し侮蔑して貶めようとしているのではないかと疑っていた。全て副題の印象が悪かったためである。  そういう最悪の先入観のもとで見たが、実際は自分がこの問題に関して感覚的に思っていたことに沿った内容で、日本側へのメッセージも含めてそれほど反発を感じるところはない。外部情報によれば、完成前からアメリカで激しく批判されていたのをものともせずに発表したとのことで、少なくともアメリカに迎合しようとするものではなく、かえって作中で言われていた日本人のPR下手を助けるものになっている。結果として先入観の方が間違っていたことになるが、点数は本来の数字から副題分を減じてつけておく。「正義の反対は…」の英語原文の訳し方に対する反感である。 ほか余談として、登場人物の中立的(親日的)アメリカ人の話の中で「海兵隊を内陸(アイダホ)に投入してるようなもの」という表現はユニークで笑った。これ自体は反捕鯨団体の行動力に一定の敬意を示した上での発言だったが、ここで自分としては“活動的な馬鹿より恐ろしいものはない”という言葉を思い出した。もう一つ、少し可笑しいところとして、小学校で「ろうかはあるこう」と書いてあるのに平気で走る子どもらを映していたのは“元気な子どもたち”(または“大らかな学校”)の表現かと思われる。
[DVD(邦画)] 5点(2019-10-19 17:23:35)
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