941. 太陽は光り輝く
プリースト判事。冴えない見た目の飲んだくれが人を裁けるのか、やたらと陽気な音楽、ハズレだったかと思いました。しかし、「人間の尊厳は肌の色や職業に関係ない」譲れない思いは何があっても譲らない二つのシーンにひれ伏しました。とりわけ後のシーンの演出は鳥肌もので、将軍の胸中を想像すると泣けてきそうになりました。「怒りの葡萄」「わが谷は緑なりき」「周遊する蒸気船」に続く鑑賞となった本作も監督特有の骨太さに感じ入った傑作です。 [DVD(字幕)] 9点(2018-08-17 09:23:24) |
942. 巨象の道
《ネタバレ》 ピーター・フィンチとダナ・アンドリュースの狭間で揺れるエリザベス・テイラー。死者の威光が支配する館。ワクワクしたのですが。 お粗末な展開の中での三人の無機質な芝居に白けて睡魔が押し寄せてきたところへの象の大群。シャキッとなりイライラも解消させてくれた象さんの大暴れに加点。アニマルパニックものにしょうもないドラマをくっつけた愚作。名優の無駄遣いに腹が立ってしようがない。 [DVD(字幕)] 3点(2018-08-15 13:20:28) |
943. 恋のゆくえ/ファビュラス・ベイカー・ボーイズ
暑苦しいイメージがあるジェフ・ブリッジスが醸し出す虚無的な雰囲気に惹きつけられる。一方ミシェル・ファイファーは蓮っ葉のイメージそのままで物語に酔えない要因に。兄弟の姿から、自活の為に好きでもない仕事をこなして「今日も稼いだ」と疲れ果てる虚しさと好きな仕事が出来る有難味をイヤと言うほど思い知らされる。 [DVD(字幕)] 5点(2018-08-15 01:16:41) |
944. アパルーサの決闘
《ネタバレ》 辛気臭い、もとい、寡黙な二人組エド・ハリスとヴィゴ・モーテンセン VS 初めて観るウエスタンもののジェレミー・アイアンズ(お目当て) 決闘模様に寄せた大きな期待を木端微塵にぶち壊してくれたのがレネー・ゼルウィガー。見た目も性格も「はぁ? アンタ何なん?・・・以下、悪口」 彼女に振り回されるエド・ハリス同様に脚本(by エド・ハリス)も情けなく、決闘場面に頭の中は「何でやねん?」でいっぱい。もう、いっその事皆死んじゃえばよかったのにと燻っていた憤懣が燃え上がる。 持ち味を十二分に発揮していたヴィゴ・モーテンセンに+2点 [DVD(字幕)] 4点(2018-08-12 13:45:24) |
945. 女と女と女たち
監督は巨匠、脇役陣は一流どころがズラリと居並ぶのに期待が膨れ上がったのですが、シャーリー・マクレーンを愛でるだけの作品で残念。七変化は欲張り過ぎで3話くらいをじっくりと魅せて欲しかったところです。曲者キャラでないピーター・セラーズの瑞々しさが妙に印象に残ります。 [DVD(字幕)] 4点(2018-08-08 15:09:16) |
946. 生きるべきか死ぬべきか
「メル・ブルックスの大脱走」既見。筋立ては解っているので双方比べてみると、メル・ブルックス>ジャック・ベニー、チャールズ・ダーニング>シグ・ルーマン、キャロル・ロンバード>アン・バンクロフトといったところ。お笑い度・しんみりさせられ度はリメイク>オリジナル。ナチスドイツによってドイツ市民権を剥奪されたユダヤ系のルビッチ監督が1942年に作り上げた事を思うと、 生きるべきか死ぬべきか>メル・ブルックスの大脱走 の結論になりました。 ご贔屓アン・バンクロフトが見劣りしてしまったキャロル・ロンバードの魅力に驚いています。 [DVD(字幕)] 9点(2018-08-07 03:01:30) |
947. ブルー・マックス
《ネタバレ》 WW1に於けるドイツ空軍が描かれた物語。地べた這いずり回る歩兵のシュタッフェルが上空の戦闘機を眺める胸中に共感を。技量に出身は関係なくとも、勲章が欲しい、欲しい、欲しい! 飢えた姿に貴族と平民の育ちの違いがある事を実感。更に将軍の妻と火遊びに興じるのには「図に乗るな。このままで済むと思うな。罰が下るぞ」(これは欲求不満気味の妻にも言える)と眺めていました。騎士道精神を持つ隊長以外まともな人物がいない中での真打がクルーガーマン伯爵・将軍。保身>空軍の体面>甥の敵且つ間男への鉄槌を表現するジェームズ・メイソンをたっぷり堪能させてもらいました。終盤の元帥からの電話以降は彼の独断場であり、「うわ~そうきたか、頭いい~、しかし悪いやっちゃなぁ」と思った途端の Sit Down !!!!!!!!! に椅子から思わず立ち上ってしまいました。「えらいすんません」怒髪天を衝く鬼の形相での野太いベルベットボイスはジェームズ・メイソン名場面集の1つとなりました。やるせなさが募る異色の戦争映画。傑作。 [DVD(字幕)] 9点(2018-07-30 16:22:18) |
948. 私の殺した男
《ネタバレ》 息子を亡くした親の喪失感がひしひしと伝わってきて、墓地での母親同士の会話に泣かされてしまいました。 ラストで演奏に聴き入る夫妻にこれでいいのだと思う一方で、真実を隠し通せるとは思えず、明らかになった場面を想像して、やはり真実を伝えた上で葛藤を乗り越える物語でなけらばならないのではないかと複雑な心境です。 抑えた語り口で反戦を謳う本作から7年後にWW2が開戦する現実の厳しさを感じます。ヒトラー総統は鑑賞してなかったのでしょうね。 [DVD(字幕)] 7点(2018-07-27 16:29:43) |
949. 青髭八人目の妻
クローデット・コルベールが演ずるニコルが鬱陶しく胸糞悪くて笑えず、ゲイリー・クーパーの熱演も空回り感が激しい。ワイルダー脚本作でこんな大ハズレがあるのが驚き。 [DVD(字幕)] 3点(2018-07-22 23:00:28) |
950. 名誉と栄光のためでなく
ロブソン監督作という事で鑑賞。アンソニー・クインにしてもアラン・ドロンにしてもジョージ・シーガルにしても監督ならではの男気が不足しており惹き込まれない。国が独立を果たす為にどれ程の血と涙が流れなきゃならんのかという思いはあったもののアクションものとして気楽に楽しめた作品。 [DVD(字幕)] 6点(2018-07-21 21:04:06) |
951. 死霊伝説
《ネタバレ》 完全版鑑賞。ジェームズ・メイソンの冷酷非道な狂乱模様を見たい一心で眠気に耐えに耐えての鑑賞でしたが。エレガントで気品に満ち溢れた姿に見惚れるばかりで、スーザンが見入られるように連れていかれるシーンでは、そりゃあ私だって黙ってついていって破滅でも何でもしますわ、と思った彼の出演作中でも屈指の男ぶりでありました。その先がなく、あっけない最期に眠りに落ちてしまい1時間後に続きを完走しました。因縁や謎は何も解き明かされないのもあいまって欲求不満で身悶えしてしまった非常に残念な作品。 [DVD(字幕)] 4点(2018-07-18 16:50:56) |
952. スワンプ・ウォーター
ジャン・ルノワール監督が描く湿地帯を舞台にした異色西部劇。逃亡犯と猟師の関係、二組の三角関係、二組の親子関係、それぞれが感慨深く、支流が大河になるのを見るような起承転結の展開が見事。ダナ・アンドリュースとアン・バクスターの瑞々しさ、ウォルター・ブレナンとウォルター・ヒューストンの優しさが垣間見える無骨な男くささ、それぞれに見惚れ、ラストのダンスシーンが素直に胸に沁みる。フランス人でありながらこのような作品を亡命先のアメリカで作り上げる監督の巨匠ぶりを感じさせられる傑作。 [DVD(字幕)] 9点(2018-07-09 00:45:00) |
953. 哀愁の花びら
《ネタバレ》 陳腐であったのは邦題のみで現実味を感じさせられたショウビズ界舞台裏での愛憎劇は見応え十分なもの。ジュディ・ガーランドが思い浮かんだニーリー・オハラを演じたパティ・デュークの熱演が素晴らしく、お目当てだったスーザン・ヘイワードとの掴み合いは圧巻。母や夫を思い遣る人格者であっても才能無く容姿が売りのジェニファーを演じたシャロン・テートも酷評には値せず服毒シーンがやるせない。アンを演じたバーバラ・パーキンスは主役であってもインパクトに欠けた点が残念。三者三様の生き様を表したようなディオンヌ・ワーウィックの主題歌はほろ苦く余韻が深い。職人ぶりを感じたマーク・ロブソン監督の秀作。 [DVD(字幕)] 8点(2018-07-07 21:56:57) |
954. ボヴァリー夫人(1949)
《ネタバレ》 原作未読。ジェームズ・メイソンいきなりの登場に本作ではどんな姿を魅せてくれるのか膨らんだ期待はぺしゃんこに(寂) しかしながら、ジェニファー・ジョーンズとヴァン・ヘフリンの名演でもって単なる不倫話が格調高いものとなっており物語に釘付けに。再登場での右斜め上を見上げる彼の決めポーズでのラストショットに「あっ、そうだった」出演していたのを思い出す次第。 マイケル・チミノが影響を受けたのだろうかと思った舞踏会シーンは圧巻で絵的な美しさとエマの心情が溢れ出る演出が実に見事。 最後まで身勝手を通した最期のエマにかける神父さんの台詞と立ち尽くすシャルルに感極まってしまった。 「普通が一番」という事は傷つけて傷つけられて初めて判るものであるのを実感させられる。 時に華麗で時に哀感溢れる音楽と共に記憶に留まる傑作。 [DVD(字幕)] 9点(2018-07-01 11:57:12) |
955. 牛泥棒
《ネタバレ》 苦手なヘンリー・フォンダの抑揚のない芝居で物語ものっぺりとして惹き込まれない。人が我は正義なりという感情だけで人を裁く浅はかな思い上がりを、処刑賛成者は勿論のこと、妻に宛てた遺書を勝手に読み上げる行為からも感じた。遺書の内容は妻に宛てるものでなく監督の主張であり、観て解る事をあらためて言葉にする演出に白ける。過ちに対する罰を受けることのないご都合主義の結末にも萎える。お目当てだったダナ・アンドリュースも見どころが無い。尺が短かったのがせめてもの救い。 [DVD(字幕)] 4点(2018-06-30 20:45:16) |
956. 愚かなり我が心
硬派、骨太のマーク・ロブソンの見応えあるメロドラマ。エロイーズは確かに愚かな女性。しかし、ウォルトとの在りし日のロマンスにウットリさせられました。屈折しておらず善良な好青年役のジェームズ・メイソン(そんな役があるのか?)を思い起こさせるダナ・アンドリュースの魅力に尽きます。そしてエロイーズの父親を演じたロバート・キースも彼に劣らず絶品で、この男性二人の一言一句は胸に染み入るものでした。原作者サリンジャーは本作に激怒し、以降自作の映画化を一切認めなかったのだとか。私は満足出来たので原作を読みたいとは思いません。映画よりも主題歌が大ヒットしたそうですが、それほどでもといったところです。 [DVD(字幕)] 7点(2018-06-29 01:24:11) |
957. 謀議<TVM>
《ネタバレ》 1942年1月20日にヴァンゼー湖畔の邸宅(元はユダヤ人宅)にて開催されたヴァンゼー会議の模様が描かれた作品。党・内閣・省庁・国務事務・治安機関・占領地責任者・親衛隊の15名の出席者の内13名が知らされていなかった議題は「ユダヤ人問題の最終的解決」議長ハイドリヒと腹心アイヒマンの中では方針及び方策は決定済みであり、本件の権限を親衛隊に集約させる事も含めて全会一致の可決に向かって会議を進めてゆく。各々の立場から出される意見はユダヤ人を人間と思っておらず、口蹄疫の対策会議のよう。とりわけ印象深いのが激しく反対したニュールンベルグ法作成者のシュトゥッカートの「抹殺は法にもとるもので強制去勢で種を絶やせ、その際の混血におけるユダヤ人の定義を明確に」コリン・ファースの熱演もあいまって腸が煮えくり返った。人間が持ち合わせている感情から反対したクリツィンガーとて度合いが少ないものの鬼畜に変わりない。 他作品でゲスの権化だったハイドリヒは物腰は柔らかいものの発言の封殺や個別の恫喝で着地点に向かって突っ走り、アイヒマンは執事のように物静かにハイドリヒを補佐する。「白い巨塔」の教授会を見ているようだった。 後片付けする邸宅の使用人達も無邪気に雪合戦をして主人を待つ運転手達もヨーロッパ各地のユダヤ人達も謀議の内容を知るはずもない事が何ともやるせない。アイヒマンによって破棄された会議資料の内、戦後発見された№16のコピーの所有者はクリツィンガーだったのだろうか。 ほぼ全編に亘る室内会話劇は緊張が途切れない見応え満点の秀作。 [DVD(字幕)] 8点(2018-06-28 02:30:06)(良:2票) |
958. 真説フランケンシュタイン/北極に消えた怪奇人間!<TVM>
《ネタバレ》 2部構成3時間。1部終了時点で泣く泣く就寝。続きが観たくて堪らず仕事帰りの自転車を漕ぐ足に力が入ってしまった。苦手なホラーものでありながらジェームズ・メイソンが引き合わせてくれた本作の素晴らしさに感嘆しきり。この歳になるまでフランケンシュタインがつぎはぎだらけの怪物と思っていましたが、怪物を作り上げた医者だったのにビックリ。生み出されるまで、生まれてからヒトとしての知性を授けられ成長してゆき、ジワジワと醜くなり両者の間に溝が出来て、悲惨な結末まで。実に丹念に描かれており、おどろおどろしさとドラマの塩梅良く、レナード・ホワイティング、マイケル・サラザン、デビット・マッカラム、ジェーン・シーモア(妖美に目が眩む)、アグネス・ムーアヘッド、ラルフ・リチャードソン、ジョン・ギールグッドという超豪華俳優陣と凝ったセットと映像美はTV作品とは思えない出来栄え。いの一番に登場したジェームズ・メイソンは分別あり気で怪しげで実は権力欲の塊のポリドリ博士(実在人物に脚色を加えている)役で要所要所に顔を出し物語に深みを加えている。生首に縋り付いて泣く姿や、天罰を受けてのあまりと言えばあまりの最期は夢に出てきそうな強烈さ。購入した甲斐のある傑作です。 [DVD(字幕)] 9点(2018-06-25 15:41:27) |
959. 殴られる男
《ネタバレ》 真相を知ったトロが吐き出したマウスピースを口に戻そうとして力尽きる姿にジーンときました。目の当たりにしたエディは金に転んだ自身を恥じたのだろうか、何を思ったのだろうか。ニックの寄生虫ぶりに上がり続けた不快指数がマックスに達した時にエディも袂を分かつ。そこからエンディングまでエディとトロの無事を握り拳で祈り続けました。ラストショットのタイプの文面の日本語訳に「えっ? 何で?」観直して誤訳を確認しました。特筆ものの失態です。遺作に相応しいボギーの持ち味溢れる姿に見惚れ、神経を逆なでされ続けたロッド・スタイガーの熱演に釘づけになった逸品。 [DVD(字幕)] 9点(2018-06-23 22:13:41) |
960. トコリの橋
《ネタバレ》 二人の息子が戦死して妻と息子の嫁の精神と一家が崩壊した提督、出撃前夜のブルーベイカー大尉の怯え、もうダメかもわからないけど何とか助からないものかとの願いが叶わない大尉の最期、ラストショットの提督。反戦を強く感じる作品。発艦、帰艦、空中戦の特筆もののリアルさに命を懸けて他人の命を奪う仕事の無情さを味わう。重厚なフレデリック・マーチ、精悍なウィリアム・ホールデンにそぐわない珍妙な日本描写が残念。 [DVD(字幕)] 7点(2018-06-16 23:17:08) |