1. スティック・イット!
《ネタバレ》 スポ根ものもついに女子体操まで題材にするとはいよいよネタ切れかと思いきや、これがなかなか面白い掘り出し物だったんです。まずカメラと編集のキレがイイです。体操演技する女優たちをバスビー・バークレー風に捉えるショットにはミュージカル・ファンはニヤリとさせられるのは必定です。鉄棒や平均台などのガチな種目ではスタントダブルを使っているのは当然としても、女優たちとのつなぎが巧妙なので違和感は少ないです。もっとも、そのために体操演技のクライマックスになると引きの映像になってしまうのは致し方ないでしょう。何よりも体操やフィギュアスケートのような採点競技に対するアンチテーゼを前面に押し出した脚本は、かなり目新しいんじゃないでしょうか。コーチや審判員にガチガチに型にはめ込まれる選手たちを観ていると、旧共産圏のような全体主義国家が体操に強かったのは納得させられます。ジェフ・ブリッジスも、この手の映画ではお約束のダメコーチを単純に演じるのではなく、口八丁の商魂たくましい男を彼らしい巧みさで演じています。 ラストの選手たちのはっちゃけぶりを観ていると、「これは『スラップショット』の体操ヴァージョンなんだな」と気が付きました。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2017-03-06 21:45:36) |
2. スモーク(1995)
ポール・オースター書き下ろしの脚色だけあって、なんと言うか良い意味で小説っぽい映画ですな。それはオーギーはじめ登場人物が、それぞれ丁寧に性格付けされているせいでしょう。NY版下町人情噺というのがピッタリの佳作です。邦画だったら『釣りバカ日誌』みたにシリーズ化させちゃうんだろうな、きっと(『ブルー・イン・ザ・フェイス』はありますけど)。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2010-06-26 00:55:03) |
3. ズーランダー
《ネタバレ》 この馬鹿馬鹿しさ好きです。オ―エン・ウィルソンがPCからファイルを盗もうとして四苦八苦するところが個人的にはバカ受けでした。しかしここまでファッションモデル業界をコケにして、クレームが来なかったのでしょうか。カメオ出演が豪華でしたが、デビッド・ボウイの登場するところだけクレジットがでるのが面白かったです。 [DVD(字幕)] 7点(2009-01-31 12:45:30) |
4. スカイエース
《ネタバレ》 原作は第一次世界大戦西部戦線での英軍の塹壕戦をテーマにした戯曲で、いわば『西部戦線異状なし』の英国版みたいな感じだそうです。それを航空隊の物語に変更して、志願したパブリックスクール生の若者が、部隊配属から戦死するまでの7日のストーリーとして脚色されています。この若者が配属された第76飛行中隊の指揮官は実はパブリックスクールの先輩で姉の婚約者、つまりもうすぐ義兄になる人で演じているのがマルコム・マクドウェル、すでに23歳で少佐のベテラン・エース戦闘機乗りで同窓の英雄というわけです。製作されたのが76年でマクドウェルにはまだ『時計仕掛けのオレンジ』のアレックスのイメージが残っている頃ですが、そんなパブリック・イメージにはそぐわない有能で老獪な戦闘機乗りです。設定は1917年の10月ですけど、史実としては西部戦線の航空戦は激しさを増していて、少数のエースパイロットが奮闘しているけど新人として配属されてくるパイロットはバタバタと撃ち落されてゆき、7日で戦死というのは実情に近かったんじゃないでしょうか。そんなわけでパイロットたちは酒に女と戦闘後はひたすら快楽を求めますが、中には精神が破綻して離脱する者も出てくる始末です。 空戦シークエンスにはレプリカの複葉機が使われていますが、英軍機はけっこう再現度が高かったと思います。それに反して独軍機の方はイマイチどころかイマサンぐらいの代物で、一次大戦の独軍戦闘機は赤く塗装しておけばそれらしく見える、というのは大間違いですぜ。とはいえ空戦シーンはそれなりのものでしたが、英軍機のパイロットが撃墜されたときに全身が燃えながらパラシュートなしで空中に投げ出され、地面に激突するまでをワンカットで見せるところは強烈でした。 『レッドバロン』や『ブルー・マックス』の様な派手な空戦映画を期待すると肩透かしを喰いますけど、塹壕戦と同じように消耗品として消費されてゆく戦闘機乗りにスポットを当てた地味ながらも英国映画らしい佳作でした。ジョン・ギールグッドやクリストファー・プラマーなどの渋い大物俳優たちも脇を固めています。 [インターネット(字幕)] 6点(2024-09-18 22:14:46)★《更新》★ |
5. スタング
《ネタバレ》 やっぱB級はこうじゃなくっちゃねえ、何も考えさせない・突っ込ませない絶叫マシーン映画です。“なんで巨大蜂モンスターが出現したの?”という問いに“庭に散布する肥料にホルモンを混ぜたからかな”というアンサー、“この映画は50年代モンスター映画のリメイクか?”という疑問が湧くぐらいのいい加減な理屈、もうサイコーです。いわばこのモンスター蜂の産みの親であるボンクラ息子シドニー君、どうしても懐かしの宅八郎にしか見えず気色が悪いことこの上なし。B級モンスター映画と言えばこの人、ランス・ヘンリクセンご老体もしっかり顔を見せていますが、近年では珍しい暴れっぷりです(結局はお約束通りの途中退場でしたがね)。ケータリング屋のカップルのポール君、チャラい奴かと思いきや危機モードになると突然に頼れるファイターに変貌するのが面白い。でも満身創痍になって収容された救急車の中でヒロインとエッチし始めるのは、さすがチャラ男でした(笑)。ヒロイン娘のツンデレぶりも良かったです。モンスター蜂はもちろんCGですけど、造形や動きにはあまり安っぽさは感じませんでした。刺された獲物から成虫が飛び出してくるのは、寄生バチのモンスターというわけなんですね。 期待しないで観ていたからこれぐらい愉しませていただけたら、まあ満足です。屋敷内の攻防あたりの脚本にもたつきが無ければ、もっと加点してあげたのにね。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2022-06-27 20:50:03) |
6. スターリングラード(1993)
《ネタバレ》 “『Uボート』を凌ぐ製作費をかけた戦争大作”と公開当時に喧伝されていましたが、このスターリングラードという題材自体が冷戦が終わってドイツが再統一されてようやく取り組むことができたんじゃないでしょうか。ドイツ人に聞いたことがありますけど、スターリングラード戦は第二次大戦を知らない現代のドイツ人にもトラウマになっている悲劇なんだそうです、第二次大戦ではほかにも悲惨な敗戦があるにも関わらずです。 この完敗劇をひたすら前線のドイツ軍一小隊の目線で描いています。その部隊は酷暑のアフリカ戦線で活躍して休養の後に極寒のスターリングラードに送られるという劇的な設定ですけど、史実ではそんな部隊はありませんでした。でもそれはラストの凍死してゆく兵士の重いセリフにつながるところなので良いフィクションだと思います。徹底的に前線目線の脚本なので戦役全体の動きは観ている方にもさっぱり実感できず、気が付いたら包囲されているという感じですが、それもある意味リアルなんじゃないでしょうか。若きトーマス・クレッチマンが小隊長役で、この後にもたびたび演じることになる育ちが良いけどちょっと気弱なドイツ将校を好演しています。この将校がまた全編で勇猛な活躍などはいっさい見せず、途中からは軍装がボロボロになったうえに部下からもため口を訊かれるようになるのでどこにいるのかも判別不能になってしまいます。 彼らは物語半ばで懲罰部隊おくりとなってしまいますが、防衛戦に成功して原隊に復帰してからラストまでの展開がエピソードを詰め込み過ぎてちょっと緊張感を削いでいる感が強すぎです。とくに悪逆な中隊長の隠れ家でのエピソードなんかは、果たして必要だったんだろうかと思ってしまいます。そこでまたもやドイツ軍に捕まってベッドに縛り付けられた女兵士を一同が発見、「ここは階級順で行きましょう、少尉殿からお先に」という兵士のセリフには苦笑させられました。大真面目なんでしょうけど、こんな状況で軍規を持ち出すところがいかにもドイツ人らしいです。 [ビデオ(字幕)] 6点(2017-05-07 00:29:35) |
7. スターリングラード(2001)
独ソのエーススナイパー同志の死闘と、ソ連兵同志の三角恋愛というかけ離れたコンセプトをバランス良く描かいた作品です。ただそのバランスが良すぎるのが難点で、冒頭15分のボルガ河渡河から始まる戦闘シーンは壮絶で迫力ありますが、その後の展開は小じんまりした印象でいまひとつインパクトが薄くなってしまいました。ソ連側の兵士や将校はジャン・ジャック・アノーらしく「薔薇の名前」の修道士たちのようなリアルで人間くさい顔つきなので、主人公たち三人の美男美女ぶりがちょっと浮いてしまっている感じがしました。 [DVD(字幕)] 6点(2009-07-10 23:38:39) |