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かたゆきさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1884
性別 男性
年齢 48歳
自己紹介 自分なりの評価の基準は、
10・超大好きな作品。完璧。映画として傑作であるばかりでなく、自分の好みと見事に合致している。
9・大好きな作品。完璧に近い完成度。手放しに歴史に残る傑作といっていい。
8・好きな作品。本当に面白い。欠点があるかもしれないが、それも含めて好き。
7・少し好きな作品。普通に面白い。欠点もあるかもしれないが、そんなに気にならない。
6・普通の作品。可も無く不可も無く。最後までストレスなく観られる。面白いけど、心に残るものはあまりない。
5・少しつまらない作品。最後まで観るのにちょっとストレスを感じた。面白い部分も多少はあった。
4・つまらない作品。最後まで観るのが苦痛だった。ほとんど面白いところが感じられなかった。
3・かなりつまらない作品。最後まで観た自分を褒めてあげたい。観終えた後に、怒りのあまりDVDを割りそうになった。
2・超つまらない作品。時間と金を返せ。観終えた後に、怒りのあまり製作者全員を殴りに行きたくなった。
1・絶望的につまらない作品。最低。観終えた後に、怒りを通り越して死にたくなった。
0・死霊の盆踊り。

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21.  アイム・ユア・マン 恋人はアンドロイド 《ネタバレ》 
古代の象形文字を専門とする言語学者、アルマ・フェルザー。ベルリンの博物館で寝る間も惜しんで働いていた彼女はある日、上司からとある提案を受ける。それは研究資金を調達するため、ある民間企業が実施する極秘プロジェクトにモニターとして参加してほしいというものだった。気乗りはしないものの資金調達のため、その企業が主催するディナーパーティーに参加したアルマ。すると彼女の前に、非の打ちどころのない完璧な容姿を持つ男性トムが現れる。初対面にも関わらず、トムはアルマに酒を勧めると、甘い言葉を囁きながら積極的に口説き始めるのだった。彼の正体は、最新の高性能AIを搭載した恋愛型アンドロイド。そう、トムは全ての女性の理想の男性像を基に造られた、〝完璧な彼氏〟だったのだ――。3週間という約束で、トムとともに共同生活を始めたアルマ。最初は余りにも人間離れした言動を繰り返す彼に戸惑いを隠せない彼女だったが、仕事で重大なミスが発覚ししかも離婚した元夫の再婚という事実も重なって大きなストレスを抱え込んだアルマは、次第にトムに心を許してゆく……。昔からホントよくあるお話で、演出だって極めてオーソドックスなのに、何だろう、普通に面白かったです、これ。とにかく品が良くておしゃれ!ヒマさえあれば女性に甘い言葉を囁いて口説き始めるアンドロイドという、人によっちゃ見るに耐えなくなりそうなこのキャラクターが実にいい味出してる。バラの浮かんだ泡だらけのお風呂にワインをくゆらせながら浸かるオールバックのハンサムさん……、普通にしたら寒さマックスになりそうなこのシーンがちゃんと成立しているんだから凄い(笑)。最初は反発していた主人公が次第に彼に心惹かれてゆく描写も丁寧でちゃんと説得力が感じられるのも大変グッド。悪酔いして自暴自棄になった主人公がトムに「もう何でもいいから私を抱いてよ!」と詰め寄ったのに、彼が「ムードもタイミングも今じゃない、おやすみ」と部屋を出てゆくシーン。「もっと自分を大事にしなよ」ってことですか。さすが高性能AI、女心をよくわかってらっしゃる(笑)。ここらへん、女性監督ならではの視点が冴えてますね。最後、モニター期間を終えて施設へと帰ってゆくトムをアルマが窓から見送るシーンなんてなんとも切なく、もはや彼がアンドロイドであることも忘れて「アルマ、今すぐ家を出て彼を追っかけろよ!」と心の中で叫んじゃったし。愛に傷ついた中年女性の心の機微を繊細に描いたラブストーリー。自分もこーゆー「完璧な彼女」が欲しいと思っちゃいました。誰か作ってーー。
[DVD(字幕)] 7点(2023-04-05 08:31:28)(良:1票)
22.  ちいさな独裁者 《ネタバレ》 
1945年4月、敗色濃厚なドイツのとある地方都市。部隊から脱走してきた一兵士ヘロルトは、打ち捨てられた軍用車からとあるもの発見する。それは、「ナチス将校の軍服」――。周りに誰も居ないことを確認し、密かに袖を通すヘロルト。僅かに丈が合わないものの、身なりを小綺麗に整えると、もはや何処からどう見てもナチスの将校にしか見えなかった。持ち前の口の巧さから、彼は行く先々で〝部下〟を見つけては自らの支配下に置いてゆくのだった。偶然も重なり、正体がバレるぎりぎりのところで踏みとどまったヘロルトはやがて、ナチスの脱走兵収容所へと辿り着く。そこで更なる部下を得た彼は、権力の味に酔いしれ、次第に狂気の独裁者へと変貌してゆく……。大戦末期のドイツを舞台に、そんな軍服と口先だけを頼りにのし上がっていった脱走兵を描いたヒューマン・ドラマ。ナチスの部隊から逃げ出した主人公が、ナチスのお偉いさんを口八丁手八丁で丸め込み、どんどんと偉くなってゆくという、いわば戦争版わらしべ長者みたいな寓話的なお話なのですが、これが実話だというのですから驚きです。何処まで脚色されているのか分かりませんが、これがなかなかよく出来ている。最初こそ、この主人公に感情移入して観続けていたら、徐々におかしなことになりはじめ、やがて自らが助かるために90人もの捕虜を無残にも処刑するという残虐行為に手を染めるところに至ってはもはやドン引きです。でも、そこまでの過程にものすごく説得力があるんです。人間、権力の味をしめるとここまで変貌してしまうのか。対するナチスの高官たちも官僚的な権力闘争に明け暮れ、もはや何が正しいのかすら分からなくなってる始末。カリスマ的な独裁者と非人間的な官僚機構、多くのユダヤ人を死に追いやったであろうそのシステムの最もシンプルなものがここにはある。監督のシニカルな目が光る、この恐るべきブラック・ユーモアには思わず戦慄させらてしまいます。惜しいのは、後半の主人公たちの乱痴気騒ぎが幾分かくどいこと。ここらへんをもう少し削れば、より完成度の高い作品に仕上がっていたんじゃないでしょうか。とはいえ、なかなか見応えのある戦争ドラマの秀作であったと思います。エンドロールで流れる、主人公たちが現代の欧州で大暴れする映像なんて、現代にまで連なる愚かな現実を象徴している。ますます混迷を深めるこの現代において、真に観るべき映画の一つと言っていい。
[DVD(字幕)] 7点(2020-09-14 03:11:46)(良:1票)
23.  蜘蛛の巣を払う女 《ネタバレ》 
女を暴力で支配しようとする男どもへの華麗なる復讐者、“ドラゴン・タトゥーの女”リスベットが帰ってきました!とは言っても、監督はおろか、主演二人もまさかの降板……(泣)。原作は世界的ベストセラーだけあって、お話自体はしっかりしていて普通に面白かったのですが、いかんせん前作のイメージが強烈過ぎて観ている間中、コレジャナイ感が半端ないんですよね、残念ながら。新リスベットを演じたクレア・フォイさんもプレッシャーに負けず頑張っていたとは思うし、こんなこと言っても詮無いことだと分かってはいるのですが、やはりルーニー・マーラのリスベットをもう一回見たかったです。ダニエル・クレイグが演じていたミカエル記者にいたっては、誰これ?って感じでした。まあ前述したとおり、お話自体はしっかりとよく描けていたし、北欧らしい乾いた空気感もスタイリッシュで大変良かったので、公正なジャッジを期して7点!にしても、あのラバー素材布団圧縮袋?に詰め込まれるのだけは死んでもヤですねー。
[DVD(字幕)] 7点(2019-10-30 21:01:08)(良:2票)
24.  女は二度決断する 《ネタバレ》 
ドイツのトルコ人街で小さなオフィスを構える夫とともに、ささやかながらも充実した毎日を送っていたカティヤ。もうすぐ7歳になる息子と一緒にこれからもっともっと幸せになるはずだった。そう、あの日を迎えるまでは――。子供を夫のオフィスに預けた直後、道端に仕掛けられた爆弾が爆発し、彼のオフィスが全焼してしまったのだ。急いで駆け付けたカティヤに告げられたのは、とても信じられないような残酷な事実だった。「そんな、私の愛する家族を返して!」。その日から、独りぼっちになってしまったカティヤの苦難の日々が始まる。酒や麻薬に溺れ、絶望に浸るような毎日。ついには自ら死を選ぶほどに追い詰められたカティヤ。だが、そんな彼女の元に一本の電話が入り、犯人と思しき人物が捕まったと知らされる。容疑者は人種差別主義を公然と叫ぶようなネオナチの夫婦。正義と復讐のために裁判を見守ることにしたカティヤだったが、運命は何処までも残酷な事実を彼女に突きつけるのだった…。ある日突然、爆弾テロによって家族を失ってしまった一人の女性の苦難の遍歴を綴った魂の記録。とても重たい物語ではあるのですが、監督の群を抜いたストーリーテリングと細部にまで拘ったであろうディテールの確かさ、深刻なテーマを真正面から見つめた冷徹な姿勢等によって最後まで惹き付けられて観ることが出来ました。何より主人公を演じたダイアン・クルーガーの真に迫った熱演が素晴らしい!ある日突然、大切な家族を失って苦悩する母親を見事に演じ切っていて、まるで鋭い刃で全身を弄られているかのような痛々しさに胸が押し潰されそうでした。そうして始まった裁判シーンも法廷劇として一級の出来で、画面の隅々にまで漲る緊張感は息を呑むほど。自分がしたことなど露ほど悪いと思っていないだろうネオナチ夫婦の不気味さや、職務とは言えまるで被害者が悪いとまで言いかねない言説を繰り返す弁護士の嫌らしさもしっかりと描き切っています。そうして言い渡される判決と、母親が下した二度の決断――。敢えて賛否が分かれるだろうこのラストにした意図は分かるのですが、僕はどちらかというと否の立場ですね。これではやはり憎しみの連鎖に終わりは見えないし、この重たい物語には少しでも希望が欲しかった。それでも敢えてこのラストにするのであれば、最後に僕はもっと主人公と犯人との対話が見たかった。何故ならその対話の中に、この憎しみの連鎖を超えられるような、何らかの思想的希望を僕は少しでも見出したかったから。
[DVD(字幕)] 7点(2019-05-04 22:48:06)
25.  手紙は憶えている 《ネタバレ》 
ルディ・コランダーを捜しだし、必ず罪を償わせる――。老人ホームで穏やかな余生を送っていたグッドマンは、一週間前に妻を亡くしたことから長年患っていた認知症の症状が酷くなり記憶が曖昧になることもしばしば。昨日何をしていて自分が誰なのかもおぼつかない状態のままその日も目覚めた彼は、自分が一通の手紙を手にしているのを発見する。同じ施設で暮らす老人が書いたというその手紙には、これから自分が何をなすべきかが事細かに書かれていた。「俺たちはアウシュビッツの生き残りでお互いの家族を皆殺しにされた。家族を殺した男の名はルディ・コランダー。奴は今も名を変えアメリカやカナダの何処かで平穏に暮らしているはずだ。いいか、君は奴を見つけるために今から出発しなければならない」。候補となる男は4人。密かに施設を抜け出したグッドマンは、手紙の指示通りに銃を手に入れ、かつての宿敵かもしれない人々の元を訪ねるのだが、認知症から次第に記憶が曖昧になってゆくのだった…。頼りになるのは一通の手紙のみ、果たして彼は無事にルディ・コランダーを捜し出し過去を清算することが出来るのか?人生の終末期を迎えた老人の孤独な復讐の旅を淡々と描いたサスペンス作品。いやはやなかなか魅せるじゃないですか、これ。目覚めるたびに記憶を無くす主人公が一通の手紙だけを頼りに復讐の相手を捜すという、言わば老人版『メメント』とも呼ぶべき作品なのですが、物凄く凝った構成をしていたあちらとは違い本作は非常にストレートに描かれているところがポイント。人生の最後に過去を清算したいという老人ののどかな旅路のように始まりながら、主人公の認知症が徐々に悪化してゆくことによってどんどんとサスペンス色が濃くなってゆくところなどなかなか巧い。主人公を演じたクリストファー・プラマーの熟練の演技の賜物もあって、最後まで緊張感を途切れさせることなく観ることが出来ました。途中に出てくるナチ信望者のおっさんなんか嫌らしさ全開で、彼の家での二人のやり取りなども不穏でいい。最後のオチは想定の範囲内でそこまで驚きもなかったのですが、全体的には充分面白かったと言っていいんじゃないでしょうか。過去の作品からこの監督にはあまりいい印象を持っていなかったのですが、本作でちょっと見直しました。やるじゃん!
[DVD(字幕)] 7点(2018-04-18 00:02:18)
26.  やさしい本泥棒 《ネタバレ》 
1938年、ドイツ。ナチスがその汚れた爪で世界をずたずたに切り裂こうと手ぐすねを引いていたその年、とある一人の少女が貧しい老夫婦の元へと養子に出される。彼女の名前はリーゼル、まだ思春期を迎えたばかりの平凡な女の子だ。甲斐性はないが心優しいおじいさん、口が悪く一見性悪に見えるが根は善人のおばあさん、そして腕白盛りのクラスメートの少年たちとリーゼルは新しい生活に少しずつ馴染んでゆく。学校で文字を習い始めた彼女は、図書館にある様々な本に書かれたまだ見ぬ世界に強く惹かれてゆくのだった。だが、社会ではナチスがその正体を徐々に表し始める。リーゼルが愛する様々な本たちは彼らによって有害図書に指定され、強制的に燃やされていく。そんな折、彼女の家に突然マックスと名乗る一人の大怪我を負った青年が訪ねてくる。昔おじいさんの命を救った恩人の息子であり、そしてユダヤ人だった。地下室に匿うことになった彼の気を少しでも紛らわすためにリーゼルは、本をたくさん隠し持っている市長の家に忍び込み、夜な夜な彼に朗読して聞かせるために一冊ずつ盗み出してゆく…。時代の波に翻弄されたある一人の少女の青春を、死神という特異なストーリーテラーの視点でもって描き出す大河ドラマ。そういった変わった設定ではあるものの、とても堅実に創られた歴史ドラマとしてなかなか良く出来ていたと思います。主人公の少女を演じた女の子の瑞々しさもさることながら、やはりジェフリー・ラッシュ&エミリー・ワトソンという名優コンビが演じた老夫婦の存在でしょう。どんどんと悪化していく世情に決して負けることなく、人間として必死に生きていこうとする彼らは全編を通じて胸に迫るものがあります。地下室に隠れ住むことになるユダヤ人青年マックスも、リーゼルに大切なものをたくさん教えてくれる男として充分存在感を放っている。特に、主人公に恋する同級生の男の子が非常に魅力的でした。常にリーゼルのために頑張ってくれた彼が、その後に辿る運命を思うと切なくなってしまいます。ただ、一個の物語として見ると少々散漫な印象を受けたのも事実。タイトルにもなっている〝本泥棒〟というエピソードが物語の中でいまいちうまく機能していないうえ、ラスト、彼らが戦後どうなったかを駆け足で説明するくだりも何だかとってつけたような感じがしてちょっと残念でした。とはいえ、丁寧に創られた大河ドラマとしてとても好感の持てる作品に仕上がっていたと思います。
[DVD(字幕)] 7点(2016-08-24 01:00:38)
27.  誰よりも狙われた男 《ネタバレ》 
ドイツ、ハンブルク。2001年、911の実行犯がこの港湾都市で計画を練って以降、それを察知できなかった現地の情報機関は躍起になってテロ対策を加速させていた。そんな国際都市にある日、ロシア当局に拷問を受けた過去があるチェチェン人青年イッサが入国してくる。そのことを察知したテロ対策諜報員バッハマンは、彼が大手銀行員と接触したがっていることを知り、全容を解明しようと彼をしばらく泳がせることを決断する。だが、バッハマンの思惑など意に関せず、国の上部機関、警察、現地のイスラムネットワーク、さらにはアメリカのCIAまでが絡んでき、事態はさらに複雑な様相を呈していくのだった。そんな折、イッサを支援していた女性弁護士の手筈で彼がドイツの街中で失踪してしまう……。名優フィリップ・シーモア・ホフマンの遺作となったのは、ドイツの国際都市を舞台にテロ対策の最前線をリアルに描いたスパイ・サスペンスでした。スパイ小説の巨匠ジョン・ル・カレの原作を映画化しただけあって、この全編に漲る息を呑むような緊迫感はなかなか凄かった。派手なアクションやスキャンダラスな設定で観客を煽るのではなく、あくまでもリアルで地味なストーリーなのに最後まで見せきる本作のスタッフたちの手腕は大したもの。そんな無差別テロという悪魔の所業を阻止するために誰も知らないところで彼らのような人が日夜、神経を磨り減らすような情報戦を繰り広げているのかと思うと本当に頭が下がる思いです。特に、何処にでも居るサラリーマンのようないでたちでありながら、それでも時折その隠し切れない狂気性を垣間見せるF・S・ホフマンの熱演は見事でした。権謀術数渦巻くテロ対策という問題の難しさに翻弄され、自分の無力さを思い知らされた彼の魂の咆哮とでも言うべき最後の雄叫びは胸の奥深くに突き刺さってくるようでした。つくづく惜しい人を失くしたと残念でなりません。奇しくも昨日(2015/11/14)、フランスのパリでイスラム国と見られる組織によって大規模なテロが発生してしまいました。あらためて、本作のラストに漂う無力感に胸が引き裂かれる思いです。本作の主人公バッハマンのような人たちがそれでもテロという悪魔の所業に決して負けず闘い続けてほしいと、今回のテロで亡くなった人々のためにそう願わずにはいられません。
[DVD(字幕)] 7点(2015-11-15 22:00:09)
28.  マップ・トゥ・ザ・スターズ 《ネタバレ》 
学校のノートに、自分の机や木々に、砂の上や雪の上に君の名を書く。肯定する肉体すべてに、我が友すべての額に、差し出された手すべてに、君の名を書く――。女優として行き詰まりを感じ、起死回生を計るために今まで真剣に向き合うことを拒んできた自分の母親の人生を描いた伝記映画に主演しようと目論むハリウッドのセレブ女優、ハバナ。子役として一躍有名になったもののクスリに手を出し謹慎を余儀なくされた13歳の高慢な少年、ベンジー。その姉で、かつて弟を焼き殺そうとしてずっと病院に隔離入院させられていた、生まれつき精神に問題を抱えた少女、アガサ。2人の父親で、神秘的なセラピストとしてハリウッドセレブたちに人気の金に目がない男、スタッフォード。ハリウッドの上流階級で蠢く、そんな醜いセレブたちの嘘と喧騒に満ちた日々を、まるで夜空の星に地図を描くような空虚さでもってシニカルに見つめた群像劇。かつてグロ映画界の巨匠としてその名を馳せたものの、最近はなんだか分かりにくい作品ばかり撮っているクローネンバーグの最新作、そんなに期待せずに今回鑑賞してみました。率直な感想を述べさせてもらうと、比較的分かり易いアプローチで描かれていて、今回は眠気と戦うことなく最後まで観ることが出来ました(笑)。とはいえ、ストーリーは確かに分かりやすかったのですが、この作品が観客に伝えたかったテーマはやっぱり分かり難かったです。たぶん、このどうしようもない人たちの何も有益なものを生み出さない醜悪な人間ドラマを延々と描くことで、人生の空しさを表してると思うんだけど?とはいえ、そんなさっっっぱり分からない感じが、上手く言えないのですが今回はなんだか心地良かったです。例えるなら、デビット・リンチの傑作『マルホランド・ドライブ』を幾分か薄めた感じのシュルレアリスム劇と言ったところ。豪華な役者陣の熱演も光っていたし、シニカルな人間ドラマの中にときたま顔を見せる抒情性も印象的だし、なかなか見応えがありました。それにしても、本作で主役を演じたジュリアン・ムーアのもう何も怖いものナシと言った感じの鬼気迫るような演技は凄いですね。誰も望んでいない?ヌードを惜しげもなく披露し、ヒステリーを起こして泣き喚くわ、おばさんとレズっちゃうわ、ネグリジェ姿で変な踊りを踊りだすわ、挙句の果てには便器にパンツを下ろして座り、「最近、便秘気味なの」とブブブってオナラしちゃうなんて、物凄い女優魂です。そ、そこまでせんでも…と若干ひいちゃうくらいでした(笑)。
[DVD(字幕)] 7点(2015-08-07 18:27:47)
29.  ハンナ・アーレント 《ネタバレ》 
「聞いたでしょう、アイヒマンは法律に従っただけ。彼は自分で手を下していない。ただ、ユダヤ民族抹消という上からの命令に従っただけ。その証拠にアイヒマンは、自分にユダヤ人への憎悪はないと主張している。そう、彼は単なる役人なの。ホロコーストという、想像を絶する残虐行為と彼の平凡さを同列に裁くことは間違っている」――。1960年、多くのユダヤ人をガス室へと送ったナチス戦犯アイヒマンが、イスラエル諜報機関によって南米で逮捕される。すぐにイスラエルへと移送された彼は、人道に対する罪で裁判にかけられるのだった。ドイツ系ユダヤ人であり、自らも迫害された過去を持つ高名な哲学者ハンナ・アーレントは、彼の罪を冷静に見つめようと、すぐにイスラエルへと飛ぶ。「こんな残忍な怪物はすぐに処刑すべきだ!」という空気に満ち満ちたそんな裁判を傍聴していく中で、ハンナは彼が裁くに値しない凡庸な人間であるという考え方を強めていく。やがて、「ホロコーストという未曾有の悲劇を起こしたのは、彼のような人間だけではなく、ユダヤ人にもその責任の一端がある」という主張を表明すると、彼女に嵐のような批判が巻き起こるのだった……。実話を基に、ナチス戦犯であるアイヒマン裁判をあくまで冷徹に見つめた一人の女性哲学者の凛とした生き様を淡々と描いたヒューマン・ドラマ。恥ずかしながらハンナ・アーレントというこの哲学者もアイヒマン裁判もほとんど知らずに本作を鑑賞してみたのですが、これがなかなか見応えのある人間ドラマの佳品へと仕上がっておりました。とにかく、本作の主人公であるハンナ・アーレントが人間としてすこぶる魅力的!!ヘビースモーカーだった彼女が煙草をくゆらせながら(ほんと、ず~~~っとプカプカ煙草喫ってます笑)延々とディベートする姿がとにかく格好良い!!どれだけ批判に晒されようと絶対に自分の信念を曲げない鉄の女であった彼女。でも、家庭では一人の女性として夫を気遣う姿がとても印象的でした。そして、ユダヤ人でありながら、自らの感情よりも冷静な知性でもって真実を見つめようとしたハンナの姿勢は大変興味深いものでした。誰もが自分で考えることを放棄し、ただ上からの命令や時代の空気に流されてホロコーストという未曾有の悲劇を巻き起こしてしまった人類……、今回も感情に流されてアイヒマンを死刑にしてしまったら私たちは何も時代から学ばなかったことになるというハンナの思想は、徐々に右傾化する現代日本に警鐘を鳴らしているようでもあります。時代の風潮に安易に流されることなく、自分で考え判断することの重要さをあらためて教えてくれる佳品でありました。
[DVD(字幕)] 7点(2015-06-25 12:45:19)
30.  ブリングリング 《ネタバレ》 
「ミーシャ・バートンが飲酒運転で捕まったって」「マジで?」「うん、それにパリス・ヒルトンは今夜、ベガスでパーティー」「ねえ、パリスの自宅って調べられる?」「ちょっと待って…。えーっと、ブライア・サミット・サークル2342番地…」「行こうよ!中に入れたりしたら最高に楽しそうじゃん!」――。おちこぼれて三流高への転校を余儀なくされた高校生、マーク。彼はそこで、自由奔放に生きる女の子レベッカを初めとする不良グループと出会うのだった。退屈な日常から少しでも逃れたい彼女たちは、常にネットでセレブたちの煌びやかな生活をチェックし、夜毎パーティーへと繰り出してはドラッグと酒に手を出す享楽的な日々を過ごしていた。ところがある日、手癖の悪いレベッカの思いつきによって、彼らはパリス・ヒルトンの自宅へと侵入することに成功する。そこで見た大量のブランド品やキュートな靴、眩いばかりの宝飾品の数々に彼女たちのテンションは最高潮に。無事にパリスのものを盗みだせた彼女たちは、「あたしもパリスみたいなセレブ生活を楽しみたい!!」と次第にその行動をエスカレートさせていくのだった…。ハリウッドのセレブたちを標的に数億円規模の金品を盗み出したティーンエイジャーたちによる窃盗事件を基に、ソフィア・コッポラ監督がスタイリッシュに描き出す青春クライム・ムービー。もういかにもソフィア・コッポラらしい、なかなかカッコいいガールズ映画でしたね、これ。彼女たちの行動に当然のように嫌悪感を抱くだろう、自称・良識派の人たちや年配の方には申し訳ないですが、若いってこういうことだと僕は思います。後先のことなんかこれっぽっちも考えず、「取り敢えず楽しそうだからやってみよう!!」という彼女たちの行動原理には、いたく共感出来ました。僕も若いころは酒飲んでいっぱい無茶やりましたもん。皆でゲームして一番負けたもんが女装してコンビニに行くとか、バイト先の倉庫に忍び込んで夜中中麻雀してみたりとか…(あん時、SNSがあれば僕なんか真っ先にお騒がせ画像を投稿しただろうなぁ、おーこわ笑)。そしてソフィア・コッポラの美点って、そんな無軌道な若者たちを描かせても、最後まで上品でお洒落な雰囲気を維持しちゃうその感性にあると思います。もう全編を彩るその映像や音楽の品の良さといったら…。ただ、良くも悪くも薄味なんですよね~。その薄っぺらさが現代社会を象徴していると言えば聞こえはいいのだけど、ちょっぴり物足りなさを感じたのも事実。彼女のセンスとは僕は昔から相性がいいんで本作も普通に楽しめましたけど、そろそろコッポラ監督の新境地みたいなものも観てみたい気もします。とはいえ、若い女性を可愛く撮らせたらやっぱり彼女の右に出る者は居ないですね。出てくる女の子、全員めっちゃキュートで可愛くてえがったっす!あ、あとパリス・ヒルトン、普通にアホ過ぎやろ(笑)。
[DVD(字幕)] 7点(2015-05-07 22:48:46)(良:2票)
31.  オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ 《ネタバレ》 
「あなたの新しい音楽も素敵だわ。なんだかあなたが過去にシューベルトに書いた弦楽五重奏を思い出す」「懐かしい。彼はあれを自作として発表したんだ。実際に書いたのはアダージョの楽章だけさ」――。都会の片隅で誰からも隠れて生きるヴァンパイアの夫婦、アダムとイヴ。もう何百年もの昔からその存在を人に知られることなく、気まぐれにシェイクスピアやシューベルトに作品を提供しては、人間の血を啜り生活してきた。そんな彼らもアイフォーンやユーチューブが常識になった現代では、昔のような自由を満喫することが出来なくなってしまった。病院から横流しされる輸血用の血液を啜り、ただひたすら夜陰に紛れて細々とした生活を営む彼ら。ところがそこに自由奔放なイヴの妹が転がり込んできたことから、そんな静かな生活に少しずつ罅が入ってゆく……。インディペンデント映画界の名匠、ジム・ジャームッシュ監督が満を持して贈る現代の幻想奇譚。もういかにもジム・ジャームッシュといった感じの、ストーリーよりも雰囲気優先、リアリティよりもセンス重視、物語の整合性よりもスタイリッシュさ命、もうとにかく都会の夜の匂いを濃厚に漂わせるジャジーで格好良い映画でしたね、これ。昔から、その我が道をゆくぶれない姿勢は好感が持てるし確かに彼にしか表現しえない独自の世界観を持った監督であることは大いに認めるところなのだけど、本作に関してはどーなんですかね?てか、ジョニー・デップ扮する瀕死の銃傷を負ったガンマンがただひたすら逃げまくる「デッドマン」やフォレスト・ウィテカー扮する武士道に心酔する殺し屋がひたすら殺し続ける「ゴーストドッグ」とやってることがほとんど一緒なような…(笑)。まあ、ファンにとってはこの大いなるマンネリ感が堪らないんですけどね。というわけで今回も、この“物凄く中身があるように見えながら、実際はそんな面倒臭いことはどーでもいい、ただこの雰囲気だけを楽しんでくれ”と言わんばかりの潔いまでの中身のなさは素直に好印象。ただちょっと長かったですかね。もう少し短く纏めてくれても良かったような気がしなくもない。あと、最近の僕のお気に入りの若手女優ミア・ワシコウスカが、ほんのチョイ役ですが、そのキュートでコケティッシュな魅力でもって作品に華を添えておりとても印象的でした。彼女の牙剥き出し笑顔に思わずキュンとしちゃったことをここに付け加えておきます。
[DVD(字幕)] 7点(2015-02-09 22:15:56)
32.  おとなのけんか 《ネタバレ》 
とある平日の昼下がり――。平凡な日用雑貨品を扱うお店を営んでいるロングストリート夫妻のマンションに、日夜訴訟や裁判に追われているエリート弁護士カウアン夫妻が訪ねてくる。目的は、お互いの子供同士の些細な喧嘩によって怪我をさせてしまったロングストリート家の息子のことを話し合うため。だが、徹底的に価値観の違うこの夫婦の話し合いは見事なまでに噛み合わない。どころか、お互いの本音と建前が見え隠れする遣り取りは次第にヒートアップしてゆくことに。さらには、夫と妻の長年溜めに溜め込んだ双方の鬱憤が露わになり、穏やかな話し合いで終わるはずだった会合は、どんどんと修羅場へと化してしまうのだった…。エゴとプライドが複雑に交錯するとある二組の夫婦の次第にエスカレートしていく〝おとなのけんか〟を、アカデミー賞の栄誉に輝く実力派の役者陣が軽妙に演じたシニカルなホームコメディ。昔から、ロマン・ポランスキーってあんまり好きな監督じゃないんだけど、これまでの彼の作風からがらりと変わったこの作品は、いい感じで肩の力を抜いて撮られたのか最後までなかなか興味深く観ることが出来ました。いやー、大人ってほんと面倒臭いね(笑)。プライドだけはやたらと高い妻たちと、自分のことを常に正しいと信じて疑わない横柄な夫たちとのうんざりするような口喧嘩が延々と繰り広げる本作の展開は、全うな親戚付合いをしている人なら誰しもが経験したことがあるであろう普遍的なもの。ここで酒でもかっ喰らって本音をぶちまければどんなにかスカッとするだろうって誰もが一度は願ったであろう願望を、彼らは見事に実行に移してくれます(ケイト・ウィンスレットにいたっては、実際にゲロっちゃうしッッ笑)。ジョディ・フォスターをはじめとする魅力的な役者陣のこの息が詰まるような濃厚な演技合戦はとっても見応えがありました。ここまでの修羅場を演じたこの4人、明日から無事に元の生活に戻ることが出来るのでしょうか?本音でぶつかり合った結果、案外結束が強まったりしてね。でも、この面倒臭~い諍いはやっぱりこれから先も続いていくだろうことを、最後、復活したケータイが再び鳴り始めることで暗示して終わるという最後までシニカルな笑いに満ちた作品でありました。まさに、大人のためのホーム・コメディ。僕の心が比較的穏やかな状態のときに観れたおかげかけっこう面白かったっす。ラストに映し出される、仲直りした子供たちや元気に跳ね回るハムスターには心底ホッとさせられたしね。ただ、遺産相続などで揉めに揉めているときなんかには観ないほうがいいかもです。ますます心が病むこと間違いなし(笑)。
[DVD(字幕)] 7点(2014-10-06 10:34:39)
33.  チャイルドコール 呼声 《ネタバレ》 
夫の激しい暴力から逃れ、支援者らの協力のもと、小さなアパートへと越してきた親子アナとアンデシュ。新たな地で生活を立て直そうとする彼女たちだったが、異常なほど心配性のアナは、もう8歳になる息子のためにチャイルドコールを購入するのだった。ところがある夜、そんな無線機に息子とは違う子供の虐待される悲痛な叫び声が混線してしまう。当然のように困惑するアナ。そしてそのことがきっかけで、ようやく手に入れた彼女と愛する息子との安穏な生活は次第に壊れ始めてゆくのだった。忍び寄る夫の影、いつの間にか息子の身体に出来ていたあざ、何度も失われるアナの記憶、そして虐待していたと思しき隣人の怪しい行動…。冒頭から、そんな謎に満ちたストーリーと画面に横溢する常に何かとてつもなく嫌なことが起こりそうな不穏な雰囲気とでなかなか惹き込まれましたね、これ。こういう謎が謎を呼ぶミステリアスでダークな作品、もろ自分の好みっす。登場人物誰もがみんな怪しい悪意を隠し持っていそうな感じとか、けっこうじっとりとした怖さでゾクっときちゃいました。これでオチがしっかりしていれば傑作になるぞ!とワクワクしながら観ていたのですが、残念ながら最後に明かされるこのオチはさすがに強引過ぎますって(真相は実はお母さんの〇〇だった。でもだとしたら、これとあれの辻褄が合わんと思ったら、実は子供は△△だったのだって、おい!笑)。と、オチがちょっぴり残念賞でしたけれど、この全編を覆う不穏な空気と鑑賞後の(良い意味で)後味の悪~い余韻とかは充分堪能できました。大マケして7点っす。
[DVD(字幕)] 7点(2014-05-04 20:01:22)
34.  エスター 《ネタバレ》 
三度目の妊娠で子供を死産してしまったショックから、アルコール依存症となってしまったケイト。だが、愛する二人の子供たちと夫の支えによりなんとか立ち直れた彼女は、生きて産まれることが出来なかった子供へと罪滅ぼしするかの如く、孤児院からエスターという名の9歳の女の子を引き取ることに。家族も増え、更なる幸せへと向かうかと思われたケイトだったが、徐々にそんなエスターの奇行が目立ち始めるのだった。彼女のことをイジメていた女の子が滑り台から転落し、怪しんでいた孤児院のシスターが謎の死を遂げ、そして耳に障害のあるケイトの娘マックスにまで…。謎の少女エスターに追い詰められ、どんどんと崩壊していくケイトの幸せな生活をねちっこく描いた異色のスリラー作品。いやー、胸糞悪かったっすね~。観ながら、こんな理不尽なことが許されていいのか!と叫びだしそうになっちゃったし。でも、そんな胸糞悪い感じもけっこう嫌いじゃない僕としては、この全編を覆う常に何かいや~なことが起こりそうな雰囲気、なかなか楽しめました。とにかくエスター怖すぎっす!単純なサイコキラーとしてだけじゃなく、ちゃんと女の子らしい心理描写も随所に差し挟んでくるところとかも、いや~な感じをますます増幅させてましたね。それにエスターの描く、蛍光色を多用したグロテスクな絵の描写とかにもけっこうセンスを感じました。うん、なかなか面白かったっす(後味めっちゃ悪いですけどね笑)。あと、自他共に認めるロリコンの僕ですが父親を誘惑しようとするエスターの妖艶なドレス姿には何故か全然グッときませんでした。その後に明かされる、エスターの驚愕の真実を知って、僕のロリコンレーダーはやっぱり間違っていなかったんだと納得(笑)。
[DVD(字幕)] 7点(2014-03-13 00:22:24)(笑:1票)
35.  愛、アムール 《ネタバレ》 
子供たちも独立し長年仲睦まじく暮らしてきた老夫婦ジョルジュとアンヌ。ところがある日、妻アンヌに不穏な病の兆しが現れる。診断の結果は軽い脳梗塞。だが、簡単に成功するはずだった手術は失敗し、アンヌには半身不随の後遺症が残ることに。失意のうちに妻を自宅へと引き取り献身的に在宅看護する夫ジョルジュだったが、アンヌの病はどんどんと悪化の一途を辿ってゆくのだった――。都会の片隅で次第に追い詰められていく老夫婦の姿を淡々と描いた哀切な人間ドラマ。かつて「ファニー・ゲーム」という、観終わった後に強烈な不快感だけが残り、しかも観客に強烈な不快感を残してやるというこの監督の意図にまんまとハメられたと思うと二重の意味で腹が立つ最低最悪な映画を撮ったミヒャエル・ハネケ監督。もうこいつの映画は二度と観まいと心に誓ったのだけど、一作だけでそう判断するのはフェアではないと思い、カンヌでグランプリを取ったという今作をあらためて鑑賞してみました。舞台は何処にでもあるようなアパートの一室のみ、登場人物もほとんど老夫婦二人のみという挑戦的な演出、そして内容の方も老々介護というとてもじゃないが胸踊るような楽しいテーマとは言いがたい作品なのに、最後まで観客の興味を持続させ2時間強という長い上映時間を淡々と見せ切るところは、悔しいけど彼の才覚を認めざるをえませんね。特に主演俳優2人の真に迫った熱演には素直に圧倒されました。とは言え「ファニー・ゲーム」同様、今回も見れば見るほど気が滅入るような理不尽な現実をひたすら観客の前に提示するという、この監督の(ラース・フォン・トリアーとはまた違ったタイプの)圧倒的な負のエネルギーは確かに凄いとは思うし、その芸術的価値も充分に認めるけれど、やっぱり積極的に次を観たいとは思えません。どうぞご自由にやっててくださいといった感じです(笑)。
[DVD(字幕)] 7点(2014-02-02 10:26:18)
36.  クラウド アトラス 《ネタバレ》 
1849年、太平洋諸島、奴隷商人の青年がひょんなことから一人の迫害された奴隷を助けようとしていた。1936年、ケンブリッジ、同性愛者の青年が高名な老作曲家の指導のもと荘厳な楽曲を書き上げようとしていた。1973年、サンフランシスコ、正義感の強い女性ジャーナリストが原発を巡る醜聞をスクープしようと奮闘していた。2012年、ロンドン、冴えない編集者が借金のせいで悪辣な老人ホームへと監禁されようとしていた。2144年、ネオ・ソウル、クローン人間の少女が自由と愛を求めて立ち上がろうとしていた。崩壊後、106度目の冬、悪魔の幻影に脅かされる男は一人の女性を女神の神殿へと案内しようとしていた。輪廻転生をテーマに、一見、全く関連性のなさそうな6つのお話が同時並行的に描かれる壮大な群像劇。ほとんど予備知識もないままに観始めたのですが、複雑怪奇なそんな世界へと圧倒的な映像美と壮麗な音楽とで観客をぐいぐい引き込む冒頭部分から、「これはもしかしたら凄い映画になるかも!」といやが応にもテンション上がっちゃいました。綿密に考え抜かれて構成されたであろう編集は本当に見事で、3時間という長い作品なのに最後まで退屈させずに一気に見せ切るこの監督たちの手腕は素直に素晴らしいと思います。トム・ハンクスを初めとする実力派の役者陣が織り成す、怪演といってもいいくらいの芸達者ぶりにも楽しませてもらいました。ただね~、ここまで大風呂敷を拡げたお話をどう纏め上げてくれるのだろうとワクワクしながら観ていたら、「え、これで終わり?」というラストを迎えてしまい、ちょっぴり肩透かし感は残念ながら否めなかったですね、これ。最後、クラウド・アトラス六重奏が荘厳に鳴り響き、6つの物語が互いに共鳴しあう、壮大なラストを期待してたんだけどなー。うーん、なんとも竜頭蛇尾。とはいえ、この唯一無二とも言えるスタイリッシュで壮大な世界観には素直に圧倒されました。よって7点!
[DVD(字幕)] 7点(2013-11-28 08:37:50)
37.  ディヴァイド 《ネタバレ》 
なんの説明もなされないまま、いきなり冒頭から核戦争(らしき?)カタストロフィが巻き起こり、マンションの地下室へと追い込まれてしまった種々雑多な人々。地上に出るべきか、このままここで救助を待つべきか、各々に葛藤を重ねていたら、突然に現れた防護服姿の男たちによって唯一の扉が溶接されてしまう。「どうせ、低予算で作られた、よくあるB級SFじゃろう」くらいの心持ちで鑑賞してみたら、これが意外や意外、なかなか良く出来た密室劇で良い意味で僕の期待を裏切ってくれました。追い詰められて次第に獣性を剥き出しにする男たち、心の弱さからそんな男に引き摺られる婚約者、子供をさらわれ次第に狂気に捉われる母親、そしてそんな極限状況の中で必死に理性を保とうとする主人公エヴァ。確かに脚本上の瑕疵が目立つ作品ではあるけれど、それを補って余りあるセンス溢れる映像(ビニールで包装された無機質な通路や、銃を手に入れようとする時の変幻自在なカメラワーク、何より自らはなった業火に身を焼かれる狂った男の最期等)と、過剰なまでの暴力描写によって人間心理の深い闇を垣間見たような気がします。お金がかかっていそうなのは冒頭と最後のCG描写だけで、あとはずっと薄汚れた地下室だけで物語が進むという明らかな低予算映画なのだけど、監督の映像センスと役者陣の熱演、そして何より人の心を打つような映画を創ろうという情熱さえあれば、いくらでも面白い映画が創れるという見本のような作品でした。この監督の次回作にも期待したい。
[DVD(字幕)] 7点(2013-10-17 22:37:33)
38.  アンフィニッシュ・ライフ 《ネタバレ》 
ハルストレム監督らしい、未完成な人生を生きる市井の人々の苦悩や哀歓を惚れ惚れするくらい美しい自然の風景のなかに描いた心温まる名品。誰もが生きていくうえで傷付き傷付けられ、そして時には他人も傷付けてしまう。でも、それでも必死に生きていく人々、だってそれが人間なんだもの。普通の監督が撮れば、確実に説教臭くなったり宗教っぽくなるだろうそんなテーマも、彼にかかればこんなに愛らしい映画になってしまうのだから素敵。余談だけど、この映画を観てアメリカから銃がなくならない理由がよく分かりますね。だってあんな男(元夫)がいつ襲ってくるか分からない社会なんだもの。
[DVD(字幕)] 7点(2013-05-04 19:34:08)
39.  ブラックブック 《ネタバレ》 
あの変態映画監督が第二次大戦時のヨーロッパを舞台に、歴史に翻弄されるある一人の女性の運命を真面目に撮ったと聞いて幾分かびっくりしながら観たのだけど、ちゃんと見応えのある歴史ドラマに仕上がっていて一安心。次々と襲いくる理不尽な現実に「悲しみに終わりはないの!」と叫ぶ主人公の悲哀が胸を打つ。でも、やっぱり変態監督だから、物語にほとんど必要ないようなあの男どもの汚物を主人公の頭からぶっかけるシーンの力の入れ方はさすがですね(笑)。
[DVD(字幕)] 7点(2013-04-29 23:05:49)
40.  ナイロビの蜂 《ネタバレ》 
アフリカの人道支援活動の裏で暗躍する大手製薬会社のダークな側面を告発する社会派サスペンス。この監督って、出世作『シティ・オブ・ゴット』でも感じたことなんだけど、ようはいかに第三世界が先進国の利益のために過酷な環境に置かれているかということを主要なテーマにしているのだろう。重厚で見応え充分なのだけど、もっとそんな過酷な環境を突破する力強さみたいなものが欲しかった(シティオブゴットみたいに)。それでも、いまアフリカで美名の名の下になにが行われているのかという現実を痛烈に分からせてくれる良作。
[DVD(字幕)] 7点(2013-04-25 00:02:16)
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