1. 雨月物語
私は日本人ですので、外国映画祭の審査員ほどにはジャパネスク・ロマンに「おおっ」とシビれたりしないのですが。でも、この映像の幽玄なこと湿度の高いこと、目を瞠りました。ストーリーは「まんが日本昔話」をいくつか合わせたようなもので、驚くほどの展開は無いんだけれど、件の名アニメを実写したらこうなるんだろうなあと思わせるほど雰囲気が似ています。 廃屋だったはずの朽木屋敷に誘われ、いつしか凛とした豪邸に落ち着いているとき、こちらもいつの間にやら幻惑されているのです。明かりの灯る夕刻や、先代の兜の発する気や、妖女そのものの京マチ子らに金縛りに遭わされました。怖く美しかった。 戦が庶民らにとっていかに苛酷であったか、その描写も容赦なく厳しい。里に残した妻が槍の犠牲になる場面は俯瞰ショットで音も無く、素っ気ないけれどとても恐ろしい。 妻が遭遇した残酷さ、弟夫婦らが辿る愚かさと不条理、そして主人公が出会う異界。「昔話」のテーマがてんこ盛りの、見事な映像作品でありました。 [CS・衛星(邦画)] 8点(2018-02-27 00:12:43)(良:1票) |
2. 運命の逆転
《ネタバレ》 いやあー、やっぱりJ・アイアンズはヨーロッパ貴族系なスノッブを演らせたら天下一品。すごいすごい。この作品がこうも強烈な気色悪さを纏っているのはこの人演じるクラウスの一貫した”得体の知れなさ”のおかげである。ハリウッドアクション映画でTシャツ姿のテロリスト役なんか似合ってなかったもんなあ。グレン・クローズも負けじと富豪の鬱屈おばさんを見事に仕上げてますけど、アイアンズに持っていかれ気味ですね。 真相は藪の中だし、本格的な法廷ドラマを期待するとがっかり必至。圧倒的に不利なクラウスの一発逆転を狙う、大学教授チームの論理も分かりづらい。 豪奢な邸宅のその内側のささくれた人間関係に、お金ありすぎるからだよーとやっかみのこもった感想を抱きながらの観賞でありました。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2017-12-17 23:49:46) |
3. うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー
《ネタバレ》 ある一日が繰り返される不条理、という題材は他作品(三崎亜紀氏の小説)でも触れたことがある。まさか84年にうる星のキャラですでに発表されていたとは。後年読了した小説の方はシリアスな現実感がずっしりと腹に溜まる感じだったけれど、アニメはなんといっても“うる星”なので暗くはならないのね。あたるの「それがどーしたのよ」的ないいかげん主義とラムの「毎日が幸せ」がベースになった現状では、さくらと面堂だけが真面目になってもからーっと明るい不条理だ。 画が凄い。映画の奥行きを活かした画の巧みさ。真実を知るさくらのこちらを見据えるアップ(ここ長い。びびった)、忍が入り込んだ鈴の重なる迷宮場面の陶酔感。飛行機でみるみる宇宙空間まで昇って知る、この世の(フザケた)全貌が現われるさまはまるでカメラで撮ったかのようななめらかな動き。当時のアニメとして最高の技術をふんだんに盛り込んだ画の力が、押井哲学ともいうべき難解なテーマに説得力を持たせ、かつうる星ファンをも納得させる作品にしていると思う。 [DVD(邦画)] 8点(2015-02-15 23:54:47) |
4. ウォーターボーイズ
おバカさんで美形の男の子たちがハダカではじける、女子には楽しい作品ではあります。青春ものではあるけれど、努力とか友情とか、その辺りの10代ワードを掘り下げたりしない伸びやかさ。画も常に明るくて、誰もが通るあの若く眩しいひとときをちょっぴり郷愁を伴って思い出したりもします。 惜しむらくは竹中直人。「いつでもどこでも竹中直人」なこの人、マイペースが過ぎませんか。作品に合わせよう、とか考えてるように見えないんだが。映画をぶち壊しかねない個性なのに邦画を観るとまあよく出てくるんだ。謎だ。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2015-01-15 01:19:47)(良:1票) |
5. 運命じゃない人
《ネタバレ》 うわあー、面白ーい、頭いいーっというのが、観た直後の感想。こりゃ楽しい映画です。冒頭でさ、マキちゃんが指輪を売るでしょ、「3000円だね」「えっ、それ、婚約指輪なんですけど」「・・・じゃあ3500円」のやりとり。ここで私はおおっとのけぞり、良い映画だと確信しました。掴みはOKというやつです。ヤクザも絡むけど内田コメディの極道さんたちはあくまでとぼけているので、マジ怖なこともなく安心です。 なんせ話が展開するにつれ快感ですもんね。端っこの展開図から見せられて、組み上がるにつれ えっ こことここが繋がって、こういう絵になるんだあって この巧みさ、物語を観る喜びでいっぱいになれます。お見事! [DVD(邦画)] 8点(2014-11-10 00:41:37)(良:1票) |