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プロフィール
コメント数 2398
性別 男性
自己紹介 〈死ぬまでに観ておきたいカルト・ムービーたち〉

『What's Up, Tiger Lily?』(1966)
誰にも触れて欲しくない恥ずかしい過去があるものですが、ウディ・アレンにとっては記念すべき初監督作がどうもそうみたいです。実はこの映画、60年代に東宝で撮られた『国際秘密警察』シリーズの『火薬の樽』と『鍵の鍵』2作をつなぎ合わせて勝手に英語で吹き替えたという珍作中の珍作だそうです。予告編だけ観ると実にシュールで面白そうですが、どうも東宝には無断でいじったみたいで、おそらく日本でソフト化されるのは絶対ムリでまさにカルト中のカルトです。アレンの自伝でも、本作については無視はされてないけど人ごとみたいな書き方でほんの1・2行しか触れてないところは意味深です。

『華麗なる悪』(1969)
ジョン・ヒューストン監督作でも駄作のひとつなのですがパメラ・フランクリンに萌えていた中学生のときにTVで観てハマりました。ああ、もう一度観たいなあ・・・。スコットランド民謡調のテーマ・ソングは私のエバー・グリーンです。


   
 

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1.  女は二度生まれる 《ネタバレ》 
小えんはドドンパしか知らない芸無しのいわゆる枕芸者、つまり客に春を売る方が得意と言うわけ。やたらと靖国神社が映るので、たぶん神楽坂あたりの置屋の芸者なんでしょう。そんな小えんが芸者を辞めてバーのホステスから一級建築士の妾となり、その建築士と死別するまでの男性遍歴がメインストーリーです。とは言っても体を許した男たちとは短いエピソードの羅列みたいな構成で、一種の群像劇みたいな感じです。まあ昭和三十年代のお話しですから、この映画に出てくる登場人物たちの行動というか言動は、現代の観点からは顰蹙を買わざるを得ないでしょう。小えん=若尾文子からしてよく言えば自由奔放、何を考えているのか理解不能な感も無きにしも非ずです。そんな彼女に建築士の山村聰だけは彼なりの愛情を注ぎ小えんもそれに応えようと努力するのですが、だいたい愛人を囲って所帯を持たせて妻や娘を蔑ろにするってのは、ちょっとどうなんでしょうかね、まあこの頃は“男の甲斐性”という感じで決して悪行とはとられていなかったんだからしょうがないかも。山村聰にしては珍しく男の欲望に正直なキャラを演じていました。唯一小えんと純愛的な関係性を持っていた藤巻潤にしても、芸者に復帰した彼女を取引先の外人顧客に接待で上納しようとして、とにかくこの映画に出てくる男どもはどいつもこいつもろくでなし揃いですな。おっと映画館で知り合った若い工員=高見國一だけは例外だったかもしれませんね。あと不協和音が強調される妙に不安を煽るような音楽が、印象的でした。 と言うわけでちょっと変わったテイストの作品ですが、妙に後味が残るところがあります。ところで小えんはこの映画のどこで“二度生まれた”んでしょうかね、やはりラストなんでしょうかね?
[CS・衛星(邦画)] 7点(2024-01-31 22:01:36)
2.  「女の小箱」より 夫が見た 《ネタバレ》 
私が今まで観た若尾文子主演の映画で、もっとも彼女がエロかったのが本作です、いや若尾文子フィルモグラフィ中でもオール・タイム・ベストかもしれません。なにしろタイトル・バックが若尾様の入浴シーンで、微妙なところはボディダブルであるのは判ってますけど、すりガラス越しにほとんど見えてると言っても良い裸体には製作時代を考えると驚くほど大胆です。もう全編にわたって人妻フェロモンを出しまくり、田宮二郎と初めてベッドを共にした後の彼女のセリフにはもう頭がクラクラしました。その若尾様に負けず劣らずなのが岸田今日子でして、上手い女優さんだとは認識しておりましたがここまで色っぽかったとは自分の不明を恥じるばかりです。 田宮二郎の演じるキャラは明らかにあの横井英樹がモデルなのは明白ですが、実物と違って実に魅力的なキャラになっています。“目的のためなら手段を選ばず”という男なのに、あまりにキザなので凄みが薄れてしまった感じもありましたが、まるで初心な少年みたいに若尾様にのめりこんでゆく心情にはマッチしていたと思います。お話し自体はけっこうご都合主義が濃厚な感じで「世間はそんなに狭いんかよ!」と甘く突っ込みを入れておきますが、夫の川崎敬三や若尾様の兄役などが開陳する価値観があまりに古くて嫌悪すら催すところがやはり時代を感じてしまいます。まあ昭和30年代の日本人のレベルなんてこの程度だったというのが現実なんでしょうけど、増村保造はそれを決して肯定せずに新しい時代の男女スタイルを若尾・田宮の両者に投影しているのかもしれません。 血まみれで死にゆく田宮二郎に口づけをする若尾文子、凄みがあるラスト・カットでした。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2020-08-30 23:43:44)
3.  怨霊佐倉大騒動 《ネタバレ》 
狂言歌舞伎の題目になっていて有名な佐倉惣五郎の直訴事件をストレート勝負で映像化、かつて活動弁士だった社長の大蔵貢がいかにも好みそうなお話しでもあります。監督は渡辺邦男で佐倉惣五郎役には嵐寛寿郎という、『明治天皇と日露大戦争』で天下をとった新東宝いちの黄金コンビでございます。 お話しは舞台化された佐倉惣五郎もので使われたエピソードというかネタを総動員したって感じで、謂わば集大成と言えます。堀田家のバカ殿様をはじめ家老連中のあくまで憎々しくて、王道のストーリーテリングで安心して観れます。もちろんアラカンも期待通りの重厚な演技、名主とは言え農民なのに役人とのいざこざで見せる立ち振る舞いはまるっきり剣豪のそれなのは、まあご愛敬です。惣五郎一家が処刑されてからのラスト10分は、怨霊となった惣五郎一家が悪役たちに憑りついて大暴れします。アラカンが「そこまでせんでも…これでは映画の余韻が台無しに…」と渋い顔したという話も伝わっていますが、やっぱ新東宝ですからこのお化け屋敷テイストは必須ですよね。 というわけで、深く考えなければ退屈せずに時間がつぶせる一編です。
[CS・衛星(邦画)] 5点(2017-06-23 22:26:32)
4.  お葬式 《ネタバレ》 
自分が喪主を務めた経験から閃いて一週間で書いた脚本なんだそうですが、その着想と切り口はさすがというしかなく、この一作によって伊丹十三自身も映画作家としての道を切り拓けたわけです。伊丹映画というと作りこまれたキャラの登場人物が特徴ですけど本作は逆に主人公夫婦が俳優というほかは出演者がみな平凡な一般人という設定です。山崎努もお得意の脂ぎったアクの強いキャラではなく、私生活の雑事からは逃げるタイプの優柔不断な男であるってのが新鮮です。この映画の凄いところは、“お葬式”という自身が葬られることも含めてどんな人間でも一度は体験する儀式を、その平凡な進行の中に潜む“可笑しさ”をまるで神の眼で見ているかのように客観的に描いているところなんです。こういう知的なアプローチのコメディはそれまでの日本映画にはほとんど皆無だったことを考えると、伊丹の才能は驚嘆すべきものがあります。さすがに長い俳優生活を経て映画を知り尽くしていただけあって、随所に見られる映画技巧はこれが初監督作とは信じられないですね。その後はどんどんその技巧に溺れるような作風になってしまったのは残念ですけど。 そして見るたびに感じるんですけど、メンヘラ愛人の高瀬春奈のキャラは果たしてこの映画に必要だったのかな、ということです。確かにあの爆尻と腋毛を見せつけるシーンはもう強烈で、現在ならあのシーンのおかげでR15指定ぐらいにされるのは必定でしょう。でもそこでカットバックを使って宮本信子がブランコで揺れるところを見せるのがまた強烈な印象で、あの横移動する木柱は夫の不倫に気づいている彼女の葛藤を表しているんですけど、それと同時に山崎努が高瀬春奈に行っている行為の暗喩にもなっているんです。伊丹の作品にはたいがい1箇所はエロシーンが入るのが恒例ですけど、どの映画でもハッとさせてくれます。彼自身もそういうのが好きなんでしょうけど、それにしてもこの山崎努と高瀬春奈のシーンは、伊丹の全フィルモグラフィ中でも最高峰のエロなんじゃないでしょうか。
[映画館(邦画)] 8点(2017-05-23 23:26:43)
5.  俺達に墓はない 《ネタバレ》 
松田優作と岩城滉一がコンビ、この関係は『傷だらけの天使』のショーケンと水谷豊みたいな感じです。岩城滉一がおカマというかバイセクシャルであるという設定も似ていますね。でもこの映画の松田優作はとぼけたセリフ回しはしてますがかなりの悪人です。冒頭からヤクザの事務所を襲撃するのに必要な銃を調達するために爆弾騒ぎを起こしてデパート強盗をやらかします。相棒の岩城滉一がと事務所に突入すると、金庫のやばいお金にに目をつけていた志賀勝に先を越されて2000万円持ってかれてしまいます。これが縁でコンビを組んだ優作と志賀勝とのけ者にされた岩城滉一が、次の6000万円強奪を巡って三つ巴の争いを繰り広げるというわけです。 Vシネマのご先祖にあたる東映セントラルフィルムの作品ですから、緩いところは満載です。志賀勝がヤクザの車から逃げ出すところなんか、「そんな間抜けなヤクザはおらんやろ!」と遠慮なく突っ込ませていただきました。低予算なんでとうぜん街頭ロケ多用なんですが、すれ違った通行人が「今のは松田優作だ」とあきらかに気が付くリアクションまでそのまま使われていて、ほとんどゲリラ撮影だったみたいです。でも当時の東映セントラルの作品には欠かせないカー・アクションだけはなかなか力が入っています。主役とは言えないにしても、これほど志賀勝が活躍(?)する映画は初めてのような気がします。全体的にハードボイルドというにはちょっと圧が低いような感じですし、あの結末は予想外としか言いようがないもので、ある意味予測不可能なストーリーだったんじゃないでしょうか。 それにしてもあの東映セントラルのマークは久しぶりに観たけど懐かしいですね、場末の便所臭い名画座なんかでこのロゴを何回観たことでしょうか。青春の思い出です。
[CS・衛星(邦画)] 5点(2016-11-30 21:40:20)(良:1票)
6.  男の顔は履歴書 《ネタバレ》 
もと本職の安藤昇がやくざ以外の役柄で出演している映画は初めて見るような気がします、もっとも医者役といっても安藤昇そのまんまんで実にどすの効いたお医者さんですけどね(笑)。いちおう松竹配給の映画だったみたいですけど、まるで東映の実録やくざ映画を先取りしたようなお話です。というか、特筆すべきなのは超豪華な出演陣で、アラカンや香山美子まで出てくるというきらびやかさ、香山は特別出演となっていますけどなんでこの映画に出る気になったのか不思議。これも監督である加藤泰の人徳だったんでしょうか。 ストーリーは安藤の体験をもとにしたような終戦直後の三国人と闇市マーケットの抗争なんですが、もうまるっきり任侠映画と思っていれば間違いなしです。でも脚本の切り口がなかなか鋭くて、時系列をシャッフルさせた語り口はその手の映画としてはかなり斬新だと思います。また脇を固めている助演陣がツボにはまっているのも嬉しいところです。朝鮮人チンピラの菅原文太がかなりの存在感があったし、なんといっても参ったのは三国人のボス役の内田良平で、あのなぜか眉毛がない顔はスッゲッー怖かったです。 ラストは瀕死の重傷を負った因縁の中谷一郎の命を助けるべく成功率の低い手術を始めるところで終わるんですが、このストップモーションがかっこいいんです。これはなかなかの掘り出し物だったと思います。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2016-09-27 23:30:04)
7.  男が血を見た時(1960) 《ネタバレ》 
CSで放送されたものを鑑賞したのですが、いくら新東宝のレアものとはいえあまりの画像の劣悪さには往生しました。気になるのはフィルムの痛みもさることながら、ブチブチとカットが飛んでいるところです。たぶん全篇で5分は切れているんじゃないかと思いますが、70分少々の上映時間ですからこれは影響は大ですよ。内容はまあ新東宝お得意の電気紙芝居みたいなものですが、どうせ新東宝の珍品を流すなら『九十九本目の生娘』や『地平線がぎらぎらっ』あたりにしてほしいなあ。 主演は松原録郎で、たぶんこの人は新東宝二枚目男優の中でもっとも影が薄かった存在だと思います。彼の代表作と言うと、やはり伝説のカルトTVドラマ『恐怖のミイラ』ということになりますかな。このドラマは新東宝の倒産直後ということもあり、三条魔子とか若杉嘉津子そして三原葉子といった旧新東宝のメンバーが大挙ご出演されているそうです。この映画ではオートバイのカミナリ族に入ってくるブルジョワのボンボン息子で、カミナリ族とは今で言う暴走族の元祖みたいなもんです。自分はバイクには詳しくないのですが、登場するバイクはどうもモトグッチあたりの外国製が多かったみたいです。カネがない新東宝のことですからバイクの走りなどスクリーン・プロセスも使わずただ映すだけですが、カメラが並走して撮っているのでかえって迫力がある画になっているのは怪我の功名ですかね。 ラストは新東宝お得意の女を賭けての対決、もちろんバイクのスピード競争です。明らかに『理由なき反抗』あたりを意識してはいますが、中身も取り柄もない映画でした。
[CS・衛星(邦画)] 3点(2014-07-18 23:27:47)
8.  俺は都会の山男 《ネタバレ》 
公開されたのが新東宝倒産の半年前ということもあってか、タイトルクレジットには大蔵貢の名前が消えています。この映画は“山”や“登山”とはいっさい関係がなく、吉田輝雄の演じる乱暴男のキャラが“山男”と言うわけです。 この男、就職面接で居眠りをした挙句人事部長をぶん殴ってとうぜん就活は失敗、チンピラと組んで“喧嘩商会”なる商売を始めます。要は腕っ節の強さを活かして喧嘩の仲裁(というか助っ人)でカネを稼ごうというわけですが、この“山男”が超硬派なのに女には滅茶苦茶モテて若いのから熟女まで七人もの女が金魚のフンみたいにまとわりついてきます。まあそこは“ハンサム・タワーズ”の吉田輝雄ですから納得しましょう。彼は菅原文太や宇津井健と違ってアクション演技にキレがあってボクサー役でも務まりそうな身のこなしです。 本作は新東宝には珍しいドライでC調なギャグが連発され、ひょっとして東宝の喜劇シリーズより可笑しいんじゃないかと思わせるところもあります。豪華と言うか、コロムビア・トップ・ライトや江戸家猫八といった当時のお笑いのスターたちがワン・シーンずつ登場する構成なのが新東宝にしては珍しく、中でも由利徹の裁判官と南利明の書記のギャグには笑ってしまいました。警察を徹底的にバカにしたり当時の池田政権の政策を名指しでおちょくったりするアナーキーなところもプログラム・ピクチャーとしては珍しいところです。 さて実はこの映画には奇妙な部分があります。留置場の担当警官というホントのチョイ役なんですけど、制帽をま深に被っていてアップショットもないので判りにくいのですがどうも丹波哲朗みたいなんです。その警官にむかって「お前最近トップ屋なんかして稼ぎやがって」なんて言う楽屋落ちなセリフがあったのでこれは丹波だと確信しちゃいました(彼は当時TVドラマ『トップ屋』で活躍してました)。とすれば、そのころは大蔵貢と喧嘩して丹波は新東宝をクビになってたはずで、大蔵貢に無断でノン・クレジット出演させたってことでしょうか。なんか新東宝末期の混乱が透けて見える様な気がします。
[CS・衛星(邦画)] 4点(2013-11-29 20:40:17)
9.  女の防波堤 《ネタバレ》 
新東宝の映画の中では、『九十九本目の生娘』ほどではないけどかなりカルト的な存在なんだそうです、この映画。 太平洋戦争終戦直後、空襲で家族を失い焼け出された小畑絹子と親友の荒川さつきは、進駐軍相手の慰安所である特殊慰安施設協会(RAA)に採用されて慰安婦になります。同僚には戦争未亡人もいましたがほとんどはもともとその道のプロの女ばかりで、米兵相手に慰安所は大賑わいです。小畑絹子はNO.1の売れっ子になりますが上司の課長の愛人になったおかげで福生の進駐軍クラブの歌手になり、これはちょっと楽な仕事でした。ここで空軍将校と知り合いめでたく結婚、ところがここから波乱万丈の転落人生に拍車がかかってゆくのです。 お約束通り夫は生後間もない娘を残して戦死、次はギャングの情婦になってヤク中になり、中毒を治療するために入院したら主治医に惚れられて結婚、慰安婦の過去がばれて離婚され自棄になって有楽町のガード下にたむろする街娼にまで落ちぶれる、映画の後半40分はもうジェット・コースター状態です。 小畑絹子は新東宝にはもったいないほどの美人なんですが、裏社会でぐれているときの演技と時折おとずれる平穏な生活の時の淑女ぶりとの落差があまりに大きくて、笑ってしまいました。この映画の呼び物は三原葉子がリンチされる『肉体の門』に出てくるようなシーンだと思いますが、別にヌードを見せるわけじゃないけどなかなか迫力がある肢体です。もっとびっくりしたのは荒川さつきが脳梅毒で文字通り狂死するシーンで、あのリアルな死にざまは子供が観たらトラウマになること間違いなしです。あと特筆すべきはあの古賀政男が音楽を担当していることで、劇中流れるギターのメロディーも古賀政男がつま弾いています。 製作年代はちょうど売春防止法が施行された頃で、こういったことは大きな社会問題だった時代だったことを考えると、新東宝らしい題材であることは確かです。正統派の監督が取り組めばとてつもなく重くなりそうなテーマなのに、新東宝らしくエロを強調したおかげで単なるジェット・コースター・メロドラマに仕上がったという感じでしょうか。 ラストで「もう二度と戦争をしてはいけない」という小畑絹子のセリフがあるんですが、とってつけた様な白々しさが漂い偽善の極みでした。
[CS・衛星(邦画)] 4点(2013-11-11 21:30:03)
10.  女と命をかけてブッ飛ばせ 《ネタバレ》 
新東宝時代の宇津井健と言うと『スーパージャイアンツ』の恥ずかしいコスチューム姿が有名ですが、他の出演作にしてもどれもけっこう変なキャラばかり演じている様な気がします。良く観察してみると、この人演技中ほとんどまばたきしないんです。つまり彼は顔の表情でする演技が得意じゃなかったみたいで、そのためどの映画でも、単純で陽気だけど心の奥底では何を考えているのか窺い知れないアンバランスな人物という感じなんですよね。 さて本作では、新聞社のオートバイ便からスピードボートの操縦に商売替えしたスピード狂というあいかわらず普遍性が欠落したキャラなんですが、結論から言うと“またかよ”と言うのが正直なところです。このスピードボートがどこからみても競艇で使われているヤツで、このボートの開発がまるでトヨタや日産の新車開発みたいなノリで新聞が報道するという不思議な世界のお話しです。そんなにボートを題材にしたいんならふつうに競艇界を舞台にした映画にすればよいのにと首をひねるばかりです。 と言うわけでお話しと言うか世界観は相変わらず新東宝らしくぶっ飛んでます。女優陣はなかなかのレベルですが、気になったのは三条魔子がいつの間にかキャバレーのホステスになっちゃってるところでしょうか。この様に、登場人物で境遇が何の説明もなく変わってしまう(ひどい時にはいなくなっちゃう)のが一人か二人かならずいるのが、新東宝プログラム・ピクチャーの脚本上のお約束なんです。思うに映画会社が大部屋俳優を大量に抱えていた時代ですから、“使わなきゃ損”という根性で無理矢理押し込んで収拾がつかなくなっちゃったということなんでしょうね。まあこんなことは東宝など他の映画会社ではあり得ない、新東宝ならではの珍現象なんですけど。
[CS・衛星(邦画)] 2点(2013-06-26 20:33:04)
11.  黄線地帯 《ネタバレ》 
天知茂と三原葉子、この新東宝を代表する二大スター(?)を奇才石井輝男のイマジネーションの世界に投げ込んでトロットロッになるまで煮込んだという感じ、でもちゃんとハードボイルドしてます。前半の100円札を使った伝言ゲームの様なストーリー・テリングもなかなか面白く、テンポの良さもあって楽しめました。 そして何故か神戸にカスバがある!でもそこは本当のカスバを超越した異次元ワールドみたいなところだと思って間違いはない。路地を歩くまさに無国籍としか言いようのない怪しげな連中、雨に打たれて彷徨う吟遊詩人、なぜか着物を着ている墨を塗った様に黒い顔の白人女、うーんこんな日本なんて観たことがない、まるで『ブレードランナー』のLAみたいです。あの若杉嘉津子までもがダサい格好した怪しげなマダムになっちゃうんだから、恐ろしい。 天知茂の殺し屋も、蛇のようにクールなのかと思えば、卵の値段から己の不運な半生を嘆いたりする妙な屈折があるキャラです。対する三原葉子は、ライン・シリーズとしては唯一のカラー作品と言うこともあり、靴やドレスの鮮やかな赤が印象に残ります。彼女のちょっとずれたリアクション演技やひょうきんな表情がまた良くて、この役こそが彼女のフィルモグラフィ中のベストキャラだと思います。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2013-06-05 01:06:51)
12.  女吸血鬼 《ネタバレ》 
吸血鬼+狼男+天草四郎伝説のごった煮を作ったらこんなのが出来ちゃいました!ってな感じでしょうか。ちなみに本作は、『女(の血しか吸わない)吸血鬼』が正しい題名でした。話の掴みはけっこうホラーらしい雰囲気なんです。失踪した妻が20年ぶりに帰ってきたら、タイムスリップしてきたみたいにそのまんまの容姿だったなんて話だけ聞けば面白そうでしょ。でもほとんどギャグとしか見えない娘たちの反応で、後はもう訳が判らない新東宝ワールドの御開帳というわけです。 天地茂の吸血鬼もちょっとイイ感じだなと思っていたら、突然狼男みたいに月の光を浴びて変身(顔だけ)しちゃうのでただ唖然でした。最後に監督が中川信夫だと知ってまたびっくり、彼もよっぽど体調悪かったのでしょうね(単にやる気がなかっただけかも)。
[CS・衛星(邦画)] 3点(2013-01-19 22:51:14)(良:1票)
13.  女死刑囚の脱獄 《ネタバレ》 
新東宝随一の名匠である中川信夫も量産されたプログラム・ピクチャーを数多く撮っています。中川信夫と言えば怪談・ホラー・時代劇の監督というイメージが強くて、こういう現代を舞台にした犯罪アクションものは果たして彼の撮りたかった題材とは言い難いところです。 父親殺しの尊属殺人罪(むかしはこういう罪がありました)で死刑が確定してしまったお嬢様が、婚約者の力を借りて脱獄して冤罪を晴らすというのがストーリーです。このお嬢様役が、新東宝社長の大蔵貢に「妾を女優にしてやった」という歴史に残る大妄言を浴びせられて映画界から消えていった、いまや伝説の女優である高倉みゆきなのです。『天皇・皇后と日清戦争』で昭憲皇后を演じたこともあり“皇后女優”とも呼ばれた彼女、品がある顔つきであまり露骨な役はフィルモグラフィには無い新東宝女優としては珍しい存在です。それだけ大蔵貢には大事にされていたみたいです。ちなみに大蔵が彼女に言い寄ったのは事実ですが、“妾発言”はまったく相手にされなかった腹いせだったと言うのが真相だそうです。 この映画でも、レズの女囚に迫られるぐらいで高倉みゆきのお色気シーンはいっさいなし。死刑確定しているのに独房でなく雑居房に入っているなどかなりいい加減な脚本ですし、殺人事件の真相もかなりのハチャメチャぶりで、これではさすがの中川信夫も腕の振るいようがなかったでしょうね。
[CS・衛星(邦画)] 3点(2012-12-03 19:58:55)
14.  女奴隷船 《ネタバレ》 
新東宝、というか大蔵貢はいかにして手持ちの女優でエロっぽい映画を撮るかに全精力を注いできたのですが、それにしても本作は相当に奇想天外な映画です。 太平洋戦争末期、菅原文太はドイツのレーダー設計図(これが女性の写真の裏に隠しインクで印刷されているというわけが判らん設定)を南方から本土へ運ぶ任務を遂行中に乗機が撃墜されてしまう。気がついたらそこは船の中、その船は九州から上海に売られてゆく日本人女性を運搬している船だった。その船は丹波哲朗が首領の海賊船(!)に襲われて女たちと文太のほかは皆殺しにされ、本拠である無人島に拉致される。 はあ、思い出すたびに何とバカげたプロットかとため息が出るばかりです。丹波たち海賊は説明がないけど中国人みたいで、まあそれはいいけど丹波のファッションが幅の広いベルトにグリーンのサテンのシャツ、まるっきりカリブの海賊なんです、バンダナはさすがにしてないけど。 女たちを売り飛ばす組織の女王様は新東宝いちのヴァンプ女優である三原葉子でして、彼女がまたタータンチェックのベストに革のブーツとなんか違和感のある衣装で登場するんですよ(もっともその後は薄い半裸に近い衣装で通してくれます)。他の女たちもそうなんですが、みんな当時の六本木あたりで見られたファッションというのは、どうなんでしょうね(笑)。中盤では三原葉子がアラブ風衣装でセクシーダンスを踊ったり、三原と女たちがパンツ丸出しで乱闘して見せたりと期待されているものは一応見せてくれます。 ヒーローは菅原文太ですが、その文太の演技が驚くほど下手くそなんです。アクションシーンも腰が引けていて様になってないし、丹波の方が上手い役者に見えるというぐらいですから、相当なもんです。海女映画ではあんなに露出していた三ツ矢歌子まで、ひとりだけお嬢さんルックで肌も全然見せないと言うのには、当時のファンから罵声を浴びたんじゃないですかね。 ラスト、文太と女たちが高速艇で島を脱出するのですが、さんざん裏切ってあくどい事をしてきた三原がヒロインみたいな表情で船首に立っているのはびっくりです。まあ良くも悪くも、本作は彼女のための映画だったということでしょうか。
[CS・衛星(邦画)] 2点(2012-10-10 23:46:23)(良:1票)
15.  鴛鴦歌合戦 《ネタバレ》 
まず志村喬の歌の上手さに唖然・呆然。この後テイチクレコードから本気でレコードデビューのお誘いがあったというのも納得です。わずか10日でこんな凄い映画を撮りあげちゃうマキノ正博の職人技と言うか神業には恐れ入りました。でも、志村喬がセットの退場方向を間違えて「そっちじゃないよ」と片岡千恵蔵に声をかけられるショットをそのまま使っているところもあり、まあそこはご愛敬ということで。 本作が撮られたときは志村喬はなんとまだ34歳!、千恵蔵の方が年上だったとはまったく驚くばかりです。だってどう見たって『七人の侍』や『ゴジラ』とおんなじ顔なんだから、恐るべき人です。 全編に漂う能天気なバカバカしさはもう最高で、市川春代の可愛らしさにはちょっと参りました。出来ればもうちょっと状態の良い画像で愉しみたかったところです。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2010-09-21 20:20:01)
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