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S&Sさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 2398
性別 男性
自己紹介 〈死ぬまでに観ておきたいカルト・ムービーたち〉

『What's Up, Tiger Lily?』(1966)
誰にも触れて欲しくない恥ずかしい過去があるものですが、ウディ・アレンにとっては記念すべき初監督作がどうもそうみたいです。実はこの映画、60年代に東宝で撮られた『国際秘密警察』シリーズの『火薬の樽』と『鍵の鍵』2作をつなぎ合わせて勝手に英語で吹き替えたという珍作中の珍作だそうです。予告編だけ観ると実にシュールで面白そうですが、どうも東宝には無断でいじったみたいで、おそらく日本でソフト化されるのは絶対ムリでまさにカルト中のカルトです。アレンの自伝でも、本作については無視はされてないけど人ごとみたいな書き方でほんの1・2行しか触れてないところは意味深です。

『華麗なる悪』(1969)
ジョン・ヒューストン監督作でも駄作のひとつなのですがパメラ・フランクリンに萌えていた中学生のときにTVで観てハマりました。ああ、もう一度観たいなあ・・・。スコットランド民謡調のテーマ・ソングは私のエバー・グリーンです。


   
 

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221.  仁義の墓場 《ネタバレ》 
“実録ヤクザ映画の極北”という評判ですが、たしかに想像のはるか上を行く壮絶さでした、『スカーフェイス』なんて可愛いもんです。主人公が“伝説のヤクザ”と呼ばれているというので、成り上がって組を創って暴れまわるのかと思いきや、最後までただのチンピラで終いにはヘロイン中毒というのはちょっとサプライズでした。この男のやることには何の筋も道理もなく自分の親分や盟友を傷つけたり殺したりで、ヤクザなのにハナ肇や梅宮辰夫がなんかすごく善人に見えちゃうぐらいです。たしかに渡哲也の演技は鬼気迫るというか狂気すら感じさせますが、実はこの役は彼が大河ドラマ『勝海舟』を病気降板してからの復帰第一作なんです。でも快癒というにはほど遠い状態で、後半の演技は体調の悪さがかえって迫力を生むことに繋がりました。冒頭で関係者のインタビュー音声を流す(なんと隠しマイクで録音してしかも無断使用!)など深作監督作としては珍しい手法、でも主人公の戸籍謄本まで晒しちゃうのは現代では炎上必死でしょう。終戦直後から始まるストーリーなので警察が三国人を抑えるためにヤクザを使ったという話はよく知られていますけど、殺人容疑で一審有罪判決を喰らった被告が控訴中に保釈されるという展開には心底びっくりです。それも1950年代の話しですからねえ、昔はいろいろと緩かったということなんでしょうか。あと渡哲也が逮捕されるシークエンス、窓から拳銃を乱射する渡に取り囲んだ警察とヤクザが石を大量に投げつけて対抗すんですが、監督の意図せず本作で唯一笑いを誘うシーンとなっています。たしかにあれじゃあ堪りませんよね(笑)。
[CS・衛星(邦画)] 6点(2020-11-07 23:02:31)
222.  斬、 《ネタバレ》 
どこか『七人の侍』のネガ像のような感じがするストーリーでした。澤村次郎左衛門は軍師・勘兵衛、都築杢之進は木村功が演じた岡本勝四郎、ゆうの弟市助は菊千代といった感じでしょうか。この映画の登場人物は時代劇でありながらそこをあえて無視したような現代的な言動で終始します。澤村は剣の腕はたつけど軍師的な知恵には乏しくて、無頼集団を斬ったときに一人に逃げられたことには無頓着で、ねぎらいの膳に無心にがっついている。まあこのキャラは幕末に一山あてようと湧いてきた有象無象の一人という感じで、思想性などは微塵も感じられない。「ご公儀のお役に立ちたい」というセリフからすると幕府側で活動するつもりということになるけれど、新撰組の実例が示すとおり歴史の大渦の中で使い捨てにされる運命です。こんな澤村に見込まれて運命が狂ってゆくのが都築と市助というわけです。蒼井優が演じるゆうもけっこうなツンデレで、都築に好意を持っているくせに無頼連中の仕返しで両親と市助が殺されると「あんたが市助を唆したからこんなことになったんだ、寝ているだけでなんもしてない、あんたが連中を斬ってこい!」と熱病でフラフラの都築を責め立てる、いやー、原因を作ったのは澤村じゃないんかい!彼女のキャラはかなり支離滅裂で、身勝手な女子大生って感じでしょうか、でもなんかリアルです。都築も都築で声を張らないセリフ回しでほとんど通し、これじゃあ渋谷のセンター街あたりにいる若いのと大して変わらんじゃん(笑)。こっちもゆうに好意というか欲情しているのにマスをかいて我慢する、ていうか時代劇でマスをかくシーンなんて初めて観ました。 というわけで海外も含めて高評価が多い本作ですが、自分としてはけっこう違和感を感じてしまったというのが偽らざる感想です。手持ちカメラで撮ったチャンバラを見せられるというのも、けっこう苦痛でしたしね。
[CS・衛星(邦画)] 6点(2020-10-22 20:06:01)
223.  地獄でなぜ悪い 《ネタバレ》 
海外の映画作家は自身の映画愛を吐露するような作品を撮ることが多いですが、邦画ではそういう私的な映画はほとんどないというか撮ることを許してもらえないという感じです。でもそこは園子温、まさに『映画に愛をこめて/アメリカの夜』ならぬ『セシル・B/ザ・シネマ・ウォーズ』という感じで映画愛をぶつけてきました、つまり彼は日本のジョン・ウォーターズということ?でもホントにやりたかったのは、『キル・ビル』青葉屋の死闘の再現だったみたい(笑)。 前半を観ている段階では、「この映画はいったいどこに向かっているのだろう?」という疑問しか浮かばず当惑しかないです。だって武藤組VS池上組の抗争と映画バカ集団ファック・ボンバーズとの接点がまったく見出せず、まるで違う映画のストーリーを交互に見せられているかのような感じです。まあ武藤組組長・國村隼が二階堂ふみを主演にした映画を撮ろうとしていることが伏線なのかもしれませんが、これをどう回収するのかと思いきや、お社で星野源が見つけた10年前の願い文が魔法の様に武藤組とファック・ボンバーズを結びつけるという強引な脚本!だいたい星野はなんで長谷川博己のことを知ってるんだよ!でもそこからの怒涛の展開はまさに園子温の本領発揮としか言いようがありません。園子温の映画では実力派俳優に怪演させるのがお家芸みたいなところがありますが、本作では堤真一がまさにそれ。あの表情というか顔芸はほとんどアホ芸という領域です。星野源もいまと違ってどちらかというとサブカル界隈の人というイメージで、これもかなりの怪演です。 閉幕近く長谷川博己の妄想の中で、首や脚など喪失した部位を包帯でつなぎ直した(?)死者たちが完成した映画にスタンディング・オベーションを送るところは、まるで『タイタニック』の感涙のラストみたいで良かったです。でも、ここで終わればいいのにあのメタフィクショナルな幕の閉め方は、いったいどういうつもりだ!でもこのずれたセンスがまた園子温らしいんだよな…
[CS・衛星(邦画)] 6点(2020-10-13 21:16:49)
224.  ハワイ・マレー沖海戦 《ネタバレ》 
それまで燻っていた円谷英二が齢40にして培ってきた特撮技術をついに華開かせた歴史的大作です。現在の眼では初歩的なVFXという冷めた見方もできますが、円谷は戦後『太平洋の嵐』で本作と同じ特撮カットに拘ってスケールアップした真珠湾攻撃を再現しました。その後『加藤隼戦闘隊』などの作品でその名を轟かせましたが、そのため山本嘉次郎ともども戦後は公職追放の苦難をなめることになります。■冒頭タイトルが流れると次に「後援 海軍省」「企画 大本営海軍部」というテロップが出ます。実はこの映画にはキャスト・スタッフが紹介されるタイトル・ロールが存在しません。これじゃあまるで海軍が製作した映画みたいですね。実際は真珠湾攻撃を報じる新聞に載った写真と数十秒のニュース映画の映像を観た撮影所長の森岩雄が、「これを映画化したい」と感じたのが事の始まりです。すぐに海軍省に出向き企画を説明して、そんな発想は欠片もなかった海軍から後援を取り付けたのが真相です。でもこれは昭和17年の年初のことで、海軍からは12月8日の開戦一周年に間に合うように製作しろというきついお達し。でもその公開日には、真珠湾攻撃した南雲機動部隊のうちすでに空母四隻は海の底で眠っていたというのは、不謹慎かもしれないが笑えない話です。■いざクランクインしてみると、予想外の苦労に見舞われます。それはロケや取材に対する現場部隊の非協力的な対応で、これはお役所特有の縦割り組織文化のせいでした。一番苦労したのは主役メカのはずの空母で、乗艦どころか外観を撮影することすら許されなかったそうです。でもなんとか苦労して原寸大の空母セットを造り上げましたが、試写をご覧になった事情を知らない海軍大佐・高松宮が「なんだこれは!日本にこんなフネはないぞ!」と激怒されたそうです。でも観てみるとけっこう雰囲気は出ていると思いますけどね、艦橋が左舷にあることから赤城のつもりでしょうが、外観はどちらかというと翔鶴型に近いという感じですね。■前半の圧巻はやはり主人公が志願する予科練での教育シークエンスです。霞ヶ浦の予科練で実際にロケしており、朝イチで訓練生が運動場に集合して体操するシーンは迫力すら感じます。この時動員された訓練生は四千人だったそうですが、終戦までに四千人の七割が戦死したというのは悲しいことです。■そしてクライマックスの真珠湾空襲、雲下に真珠湾が見えるというシーンでは、公開当時は観客から拍手と歓声が沸き上がったそうです。そりゃここまで来るのに一時間以上かかっており、前半の修身的ドラマや予科練シークエンスが長いのでみんな待ちくたびれてたんじゃないの(笑)。皮肉なことにアメリカ戦艦群のミニチュア製作は日本の空母よりよっぽど楽だったそうで、それは雑誌掲載写真やジェーン海軍年鑑などの資料入手が容易だったからです。魚雷命中時の水柱が高すぎる気がどうしても拭えないんですが、記録映像や目撃談から割り出して円谷がこの高さにしたそうで、拘りが凄いです。ただ当たり前ですが水は縮尺することができないので特撮表現は難しいですよね。この「水の特撮表現」は円谷の生涯のテーマとなり、遺作である『日本海大海戦』で完成の域に達します。■実は当初の企画ではあくまで『ハワイ海戦』であり、真珠湾攻撃がテーマでした。ところがシナリオ段階で海軍からのゴリ押しでマレー沖海戦も描くことになってしまいました。これはスケジュール的にもハードどころの騒ぎではなく、助監督たちに至っては山本嘉次郎を飛び越えて森岩雄に「公開を一カ月延期してください」と談判する騒ぎになったそうです。そういうわけでプリンス・オブ・ウエールズとレパルスの撃沈特撮シークエンスはわずか二日で撮影されました。このシークエンスではやたらテロップが多用されているのも、こういう事情でしょう。■こうやって見ると、海軍の「便宜は与えないけど、口は出す」の方針でガチガチのザ・国策映画という風になってしまっているのは否めないでしょう。同じスタッフの『加藤隼戦闘隊』と見比べてみるとその差は歴然です。一般的なイメージとは違って、プロパガンダ映画に関しては陸軍の方が頭は柔らかかったようです。
[CS・衛星(邦画)] 6点(2020-10-10 00:11:14)
225.  眠狂四郎 悪女狩り 《ネタバレ》 
ついに狂四郎シリーズも最終回、死期が迫った雷蔵本人は自覚していたかもしれないが、大映はまさか本作でシリーズが終わるとは予想してなかったんじゃないかな。もちろん大団円として撮ってるわけじゃなく、今まで通りの通常運転のストーリー展開。でも雷蔵は体調はかなり悪く、立ち回りなんかはスタンド・インを使う場面もあったそうです。そういえばストーリー自体もかなり暗い滅びの物語に徹していました。奇しくも雷蔵最後のセリフが「貴様を救う神があるか、俺も確かめに行きたいものだ」というところが、結果的には意味深ですね。 大奥内での身ごもった側室と大奥総取締役との将軍後継者を巡っての争いがストーリーの基本。そこに邪魔な幕閣を消すために総取締役が操るニセ狂四郎や隠れキリシタンが絡むという大風呂敷を広げた脚本ですが、ニセ狂四郎が正体がバレた後でも本物を狙って襲う動機がイマイチ不明だし、将軍の跡継ぎ問題はけっきょくどうなっちゃったの?etc.けっこう粗が目立つ脚本なんですよね。今回のハニートラップはシリーズ中で随一のシュールな仕掛け、自分はてっきりこれは狂四郎の見ている夢なんだろうと観ているときは思いました。 こうして、私の“眠狂四郎マラソン”が一年かけて無事終了いたしましたが、全作を観てこのシリーズの感想は以下の通りです。●自分にとってシリーズ最大の謎は、若山富三郎が演じた陳孫です。初期の二作に狂四郎の好敵手として登場していずれの対決も決着つかず、シリーズを盛り上げるキャラになるかと思いきやその後はまったく登場せずで終わり。スタッフとしてはそろそろ再登場させようかと思っていたら、雷蔵の突然の死で機会を失したという感じだったのかも。●けっきょく、円月殺法って何だったんでしょうか?ただ剣を一回りさせて頂点で光を反射して眼潰しして斬りかかるって感じしかないです。殺陣が得意じゃなかった雷蔵なので迫力を出し切れなかったのかもしれません。●とはいえ約五年も続いたこのシリーズ、雷蔵=狂四郎がその後の時代劇に多大な影響を与えていることは疑いありません。徹底的に虚無的なそれまでの時代劇になかったスタイルは、70年代には木枯し紋次郎で華を咲かせたと私は思います。でも座頭市&眠狂四郎はやっぱ観たかったなあ…
[CS・衛星(邦画)] 6点(2020-10-01 23:06:24)(良:1票)
226.  映画 みんな!エスパーだよ! 《ネタバレ》 
“パンチラ・フリーク”園子温の趣味が全開、この人ってエロとバイオレンスにふっ切れるとモロに本性が迸りますね。お話しはもう中高生のエロ妄想以外の何物でもないけど、ここまで行っちゃうともう清々しいと言える領域です。私は未見ですけどTVドラマの映画化だそうで、深夜帯とはいえこんなエロドラマを放送していたとはさすがテレ東と褒めてあげます。とくに前半は出てくる女性キャラがほとんどパンチラを見せてくれたような印象で、タモリ俱楽部のオープニングが好きな人には堪らないでしょう。ヒロインの真野恵里菜はかつてのハロプロのソロ・アイドル、いつの間にか園子温映画の常連に収まり、「パンチラは下ネタじゃない」なんてインタビューに答えてる、完全に園子温に洗脳されてしまったみたいで嬉しいやら悲しいやら、ぐれてしまった娘を見せられてるような心境です(笑)。あとカメオ出演の関根勤の嬉しそうな演技、すっかりラビット関根の昔に戻っていました。セリフも八割がたが三河弁、尾張弁もだがこの辺りの方言は可愛い女の子が使うとその強烈なギャップに震えます(笑)。 豊橋の名所案内は確かに出来たけど、よく市役所が協力してくれたと感心します、市長や幹部がよっぽどシャレが解る人達だったんでしょうかね、それが最大の謎です。
[CS・衛星(邦画)] 6点(2020-09-19 20:12:10)
227.  結婚相談 《ネタバレ》 
「結婚相談所が実は売春組織だった!行き遅れた三十路女・鶴川島子の運命や如何に!」というのが私がその立場だったらこの映画につけるコピーですかね。当時の日活の看板清純派だった芦川いづみが驚天動地の汚れ役に挑戦というわけで、ポスターを見るとなんと成人映画指定になっています。もちろん芦川を含めて誰も脱いでませんし、せいぜい芦川が色っぽい表情を見せるぐらいで、当時の映倫の基準が良くわかりません。でもこの映画の芦川いづみは表情がエロいんです。なんというか、AKBの柏木由紀をすっきりさせたような雰囲気で、これは見入ってしまいます。でもついさっきまで清純派だったのにコールガールに身を落とす女を演じさせる、この日活のドラスティックな彼女に対する方針転換、三年後に藤竜也と結婚してフェードアウトしてしまったのも必然だったのかなと思います。 こんなドロドロしたお話しなのに、監督しているのがモダニスト・中平康なのでちょっと洒落た雰囲気させ感じさせてくれます。劇中で2~3か所、屋外でバーブ佐竹の『女心の唄』を大音量で流す宣伝カーみたいな車が、ストーリーと無関係に映されるのがなんかシュールでいかにも中平康らしい。ひょっとしたらこれって、『青春デンデケデケデケ』に出てくる南野陽子が乗った謎の『潮来笠』を流して町内を走り回る宣伝車の元ネタなんじゃないでしょうか。だとしたら、大林宣彦もかなりのシネフィルですね。
[CS・衛星(邦画)] 6点(2020-06-30 18:42:53)
228.  気球クラブ、その後 《ネタバレ》 
こうやって観ると、園子温って作風が偉く今では変わってしまいましたね、本作あたりのころはまるっきり岩井俊二の模倣者という感じですから。 登場人物たちはキャンパスライフがオミットされているけど、二十歳前後の大学生みたいですな。村上君が起ち上げた気球クラブのメンバーだけど彼以外はさして気球には興味がなさそうで、いわゆるナンパ・サークルといった感じです。その村上君は10年たっても中二病を拗らせているという感じで、その言動はいちいちウザいのは観ていて苦痛でした。逆に周りの連中はいかにも軽そうなリア充の若者たちという対比が面白い。彼らの愛唱するのがユーミンの『翳りゆく部屋』というわけですが、正直2000年代初頭の若者がユーミンじゃなくて荒井由実の曲を知っているというのはなんか違和感を感じました。まあ園子温にはどストライクなのは判りますけどね。村上君とカップルなのは永作博美ですが、村上君役の役者とは演技力の差があり過ぎてバランスの悪さを感じました(言うまでもなく上手いのは永作ですけどね)。村上君の音頭で気球クラブは解散、その儀式としてお互いが携帯の個人データを消しあうところはいかにもデジタル世代って感じです。でもその5年後に村上君が事故死したら旧メンバーたちが携帯で連絡取りあっているというのはどういうわけ?解散時のスピーチで「気球クラブはこれで解散、俺たちはもう二度と会わない」と宣言したのに、それを実践したのは彼だけだったみたいですね、みんなはその後も繋がっていたみたいです(肉体的にもね)。この青臭いところはほんと他に比べて浮いたキャラなんですけど、時々こういう人とは人生の中で出会いますよ。 この映画のテーマはずばり “青春の終わった瞬間”というわけですが、この数年後には園子温は『愛のむきだし』や『冷たい熱帯魚』といった作風にチェンジしてゆくわけで、それを考えるとちょっと意味深かもしれません。
[CS・衛星(邦画)] 6点(2020-03-27 23:21:22)
229.  眠狂四郎 女妖剣 《ネタバレ》 
眠狂四郎シリーズも第四作目にしていよいよエロ要素が強めになってきました。悪役も今後のシリーズで宿敵となるらしい備前屋徳右衛門が登場、ラストの狂四郎に斬られもしない中途半端な退場は生かしておいて次作以降で使う魂胆だったわけですね。宿敵と言えば若山富三郎の懐かしの陳孫も再登場、狂四郎と再び対決いたしますがまたも決着つかずにフェードアウト、これじゃあ『キングコング対ゴジラ』のラストシーンと同じです。悪役といえば、今回はキリスト教そのものがその役目を担っている感じもします。狂四郎の父親が実は棄教して黒ミサを信奉する外人だったという衝撃の事実、でもキリスト教に対する憎悪としか言いようがない冷淡さをそれまで見せられてきたから、自身は薄々勘づいていたように見ることもできます。醜い容貌の菊姫も美しい聖女びるぜん志摩も、どちらも魔性の女でしたという結末は強烈でしたが、現代では下手したら男尊女卑だと炎上しかねませんね。狂四郎に斬られる敵に強いのが一人もいなかったのは、ちと心残りでした。
[CS・衛星(邦画)] 6点(2020-02-01 23:37:38)
230.  眠狂四郎 勝負 《ネタバレ》 
柴田錬三郎に原作を改変しないと約束させられて撮った前作はどう観ても失敗作となり、思い切って不義理をして大胆に脚色して臨んだのがこの第二作。試写を観た柴田は無言で去ったそうですが、後に「俺の負けだ」と述懐したそうです。 前作に比べると雷蔵のキャラは明らかにニヒルさと無常観を漂わせるようになり、眠狂四郎のスタイルを確立する方向に進んでいるのは判ります。やっと普通のチャンバラ映画の水準に達した、というところでしょうか。でもまだ狂四郎がイイ人すぎるし、だいいちよく喋る。原作との違いはわき役キャラを明確にしたところらしいですけど、そのバイ・プレイヤーたちがいい味を出しています。勘定奉行の加藤嘉が飄々としたキャラで魅了してくれるし、雷蔵との絡みがまた味わい深いものがあります。狂四郎をとりまく三人の女たちもそれぞれの個性を出していて、とくに高姫役の久保菜穂子の怪しい色気が良かったですね。突っ込むとすれば、高姫サイドが藤村志保を通じて五人の剣客を集めて勘定奉行と狂四郎を狙うところで、なんでそんな回りくどいことするんだろうというのは当然の疑問で、またこの五人の個性が希薄で活躍もしないところでしょうか。でも三隈研次らしい映像美には注目です。
[CS・衛星(邦画)] 6点(2019-12-02 23:20:15)
231.  さらば、わが友 実録大物死刑囚たち 《ネタバレ》 
昭和29年におこった「カービン銃ギャング事件」で戦後犯罪史に名を残す大津健一が出所後に発表した手記を映画化したいわゆる便乗もの映画です。彼が一審で死刑判決受けたのは以前に犯した殺人事件が発覚したためで、「カービン銃ギャング事件」では死者は出していない。ちなみに天知茂の初主演作は、この事件が解決した直後に撮られた『恐怖のカービン銃』という低予算映画です。 前半はこのカービン銃強盗の犯行と逃走の経緯がメイン・プロットで、犠牲者が出たわけではないからか割とコミカルなタッチです。大津を演じるのは後にブルース・ウィリスの吹き替えなどで知られる磯部勉です。特筆すべきは大津と逃亡する愛人役を岡田奈々が演じているところです。改めて観て、岡田奈々って本当に可愛かったなあとため息がでました。悪女とは言えないとしても一緒に逮捕されるような汚れ役をアイドル出身の彼女が演じていたとは、本気で女優の道に進む気概があったんだと感じます。実在のこの女性もなんと東映女優の端くれだったそうで、東映で映画化されたのは何かのご縁だったのかも。 後半は拘置所に入ってから死刑判決を受けてその運命から逃れようと主人公の苦闘がメインです。そこに同じ死刑囚棟にいた有名な死刑囚たちのエピソードを絡ませる構成になっていますが、その挿話と大津の物語が上手く調和していて、意外と巧みなストーリーテリングです。その中では永島敏行が演じた黒木の脱獄するエピソードがもちろんインパクトがありますけど、私には三鷹事件の竹内景助を演じた愛川欽也がなぜか印象に残りました。コミカル色を排除した愛川欽也を映画で観るというのは珍しいことですが、意外とマッチョな雰囲気で和製ピーター・フォークという趣なんです。あとメッカ殺人事件の正田昭は石田純一で、当たり前ですけど若々しいです(でもよく見ると、この人現在まで顔がほとんど劣化してないのが凄い)。大津は一審判決後に必死になって法廷闘争に臨んで結局無期懲役へと減刑を勝ち取るのですが、この辺りはわずか一分未満の駆け足映像とナレーションで済まされてしまいます。 それにしても大津や正田は一人殺害で死刑判決、昭和の時代はけっこう厳しかったんですね。まあ二人とも強盗殺人罪だから仕方なかったのかも。
[CS・衛星(邦画)] 6点(2019-10-31 18:21:11)
232.  悪の教典 《ネタバレ》 
伊藤英明を稀代のサイコキラー・ハスミン役に持ってきたのは、とりあえず正解。彼もいつも演じている偽善が鼻につくヒーローよりも、こういう悪役を選択した方が役者生命を延ばせるというもんです。でもこのハスミンは通常の悪役キャラとは大違いで普段は快活で生徒に信頼されるナイスガイ、まあこのキャラについては普段の演技パターンでこなせるわけですが、鬼畜モードに入ったハスミンを演じるにはちょっと演技力が不足しているようです。それは別に凶暴にふるまう演技を要求しているわけではなく、さりげない所作などに普通じゃないところを盛り込んでほしかったんだけどなんか物足りなかったですね。区別せずに論ずる人が多いけど、いわゆるキチ〇イ(あっちの世界に行っちゃった人)とサイコパスは明確な違いがあるんです。ハスミンは原作者の意図からしてもサイコパス分類のはずで、そうなると彼に話しかける幻聴や幻覚は誤解を招く表現で不要だったとおもいます。 大量に射殺されてゆく高校生たちの阿鼻叫喚はすごい絵面ですが、彼女らに感情移入できなかったのが我ながら不思議でした。これはこの子たちの家庭環境などの個人的な背景がまったく描かれていなかったのが原因かと思いますが、原作から大幅にカットされたのはこの部分らしいです。大部の小説を映画化する場合にはどこを切るかは重要な作業で脚本家の腕の見せどころでもありますが、エピソード自体をばっさりカットして再構築するということも時には必要なはずです、でもこれは原作者との関係もあるので難しい問題かと思います。三池崇史のことですから30分以上にわたる大虐殺シーンには力を入れたかったと思いますし、そうなるとそこに至るまでにあと30分は尺が必要だったんじゃないでしょうか。 “To Be Continued ”がエンドマークでしたが、続編はどうなってるんでしょうか、まあ小説の方がまだ発表されていないので無理ですよね。
[CS・衛星(邦画)] 6点(2019-06-30 23:16:04)
233.  将軍家光の乱心 激突 《ネタバレ》 
実はわたくしも、この映画が角川映画&監督・深作欣二じゃないってことに、今回ようやく気が付きました。本作が撮られたのは89年、この当時では角川映画は完全に失速し始めていたころで、チャンバラ映画の本家・東映が角川映画の切り拓いた路線に乗っかる形で公開した超大作、まあ時代はバブルの真っ只中でしたからね。 お話しはもちろん周知のごとく荒唐無稽ですが、内容はしごく単純極まりなく緒形拳率いる浪人集団が将軍家光の長男竹千代を江戸まで護送するだけのことです。道中を家光が放った追手というか大軍が襲いかかってくるわけですが、この攻防戦のアクションが想像以上に大迫力。悪役・伊庭庄左衛門の千葉真一が配下のJACの面々を動員してアクション監督を務めていますが、彼の持てる力を結集したようなシーンの数々は見ものでした。とくに馬を使ったアクションはすさまじく、「これ、撮影でケガさせて廃馬がけっこう出たんじゃない?」と心配してしまうほどです。中にはスタントマンから死者が出た『ワイルドバンチ』の有名な橋爆破アクションをそっくり再現したシーンまであり、まさか日本映画でこれをやるとは、とびっくりいたしました。本家との違いは、橋げたの部分が一枚の板になっていて爆破ともに落し蓋みたいに下に開く構造になっていて、ここら辺に安全策があったのかもしれません。千葉真一のスタッフとしての役割は、東宝特撮の円谷英二みたいな感じといえば判りやすいと思います。ここまでやれるなら、日本映画界はなぜ彼に予算をたっぷり与えてアクション映画を一本撮らせてあげなかったのかと、悔やむ次第です。 トンデモ映画みたいに評されることもありますが、わたくしはアクションと殺陣(千葉真一と緒形拳の一騎討ち)だけ見てればかなり評価が高いとおもいます。でもALFEEを起用した呆れるほどの音楽センスに一点マイナスといたします。
[CS・衛星(字幕なし「原語」)] 6点(2019-05-23 23:41:58)
234.  逆噴射家族 《ネタバレ》 
内容だけじゃなくセリフの面からこれはもう地上波じゃ絶対に放送できないし、昨今ではBSやCSでもお目にかかることがないですね。小林克也はこれが映画初主演で、もしこの映画をリメイクするならお父さんは本田博太郎というイメージですが、本田と違って小林には狂気を微塵も感じさせない平凡さが濃厚で、かえってこの方が面白いキャスティングだと思います。低予算を逆手にとって登場人物はほぼ5人だけ、また浦安の新興住宅街にセットを組んで撮影してますが、この住宅街が映るカットには他の住人や車がまったく存在せず、製作者が意図する疎外感が肌で感じられるような仕組みになっています。中盤以降は本当に家族で殺しあうんじゃないかとハラハラするような展開、もしそうしていたらスプラッター・ホラーという全然別のジャンルになっちゃうんで観ていてそれはないだろうと察しは付きますが、そういう感じのホラーは最近のフランス・スプラッターにはありそうですね。もしそうするなら、倍賞美津子ほかの家族が精神病を患っていると思い込んでいた小林克也だけが本当に狂っていたとする脚本が王道ですが、どう見ても女房子供もやはりおかしいというのがこの映画の独特のテイストなんでしょう。ラストの平穏もハッピーエンドというよりも悪夢ファンタジーと呼ぶほうがふさわしいのでは。 こんな超オフビートなお話し、原作が小林よしりんだったとは驚くところでしょう。いまや政治の世界に中途半端に首を突っ込んでいる人ですが、かつては『東大一直線』とか『おぼっちゃまくん』といったシュールでパンクな作品の人だったことが懐かしい。
[CS・衛星(邦画)] 6点(2019-02-19 23:56:55)
235.  子連れ狼 三途の川の乳母車 《ネタバレ》 
大江戸版子連れゴルゴ13、拝一刀シリーズ第二弾。今回は松尾嘉代率いる明石柳生のくのいち軍団と、大江戸版トランスポーター弁天来三兄弟という敵役も豪華ダブルキャストです。明石柳生のアマゾネスたち、忍びの黒鍬衆には滅法強いのに肝心の拝一刀にはいずれも瞬殺されるという残念な結果に。あの大根切り殺法にはそのユニークさに爆笑しましたが、最後の一人はなんと大五郎に仕留められるという衝撃の結末。だいたいあんな殺気ばしった顔で近寄ってくれば、いくらコスプレしてたって一刀に見破られるのは当然の帰結。でも全滅しながらも一刀に手傷を負わせたところは評価してあげたい。目を見張るのは大五郎の子役の演技力、乳母車からガンを飛ばすところなんかもう天才子役と呼んであげたい。弁天三兄弟との砂丘での対決は、地中に潜んだ阿波藩の雑魚侍の登場がなんといってもシュールの極み。でもガジェットに凝った割には、三兄弟とも一刀にはまるで歯が立たずにあっさり斬られてしまいました。護送されていた職人を助けるのかと思いきやばっさり斬捨てる、さすが拝一刀引き受けた仕事はきっちりこなす、まさに非情な大江戸版ゴルゴ13でした。でも何人斬っても一依頼につき五百両とは、なかなか良心的な価格設定です(笑)。
[CS・衛星(邦画)] 6点(2018-12-22 21:13:28)
236.  東京流れ者 《ネタバレ》 
物語自体はベタな任侠もので、それ以上でも以下でもないです。ただ舞台の一つとなる東京のクラブのセットは、白を基調にした清順らしいアヴァンギャルドな異空間となっています。60年代の鈴木清順の作品はモノクロというイメージが強いんですが、カラー作品を撮れば彼の天才的な色彩感覚に魅了されてしまいます、でも彼のカラー映画は勢いが失われてきた晩年に撮られたものが多いのが残念。佐世保のクラブは造りからして西部劇のサルーンそのもの、大乱闘もウェスタンお約束のパロディです。だけど映画自体は思ったよりはるかにまともで、『殺しの烙印』みたいなハチャメチャさは影を潜めています。まあ若き日の渡哲也はいかにも不器用そうな感じで、宍戸錠のようなはっちゃけを期待するのが無理ってもんでしょう。そういう観点からは、私には期待外れの一編でした。 余談ですがヘアドライヤーのメーカーとタイアップしていたみたいで、二か所不自然にドライヤーに言及するセリフやシーンがあります。松原智恵子が楽屋でセットしているシーンでは壁に貼ってあるそのドライヤーのポスターが大写しされますし、ほとんど五分刈りの渡哲也がドライヤーを髪にあてていたのには、そのわざとらしさに爆笑してしまいました。この映画で唯一の笑えるところでした。
[CS・衛星(邦画)] 6点(2018-11-03 23:24:00)(良:1票)
237.  ブリングリング 《ネタバレ》 
「事実は小説よりも奇なり」、本作はまさにこの古人の名言につきます。こんなお話し、フィクションならば脚本段階で即ボツにされること間違いなしでしょう。ハリウッド・セレブの自宅があんなにセキュリティが甘かったなんてとても信じ難い。ビバリーヒルズなんか町の入り口でセレブの自宅を案内するマップが売られているぐらいだから住所をネットで特定するぐらい誰でもできるでしょうが、まさかパリス・ヒルトンが鍵をマットの下に隠していたなんて(笑)。撮影には実際の彼女の家を使わせたそうで、この女どこまでアホなのかそれとも売れるためなら手段を選ばないタレントの鑑なのか?被害者の中にリンジー・ローハンもいましたが、パリスといい今や落ちるところまで落ちてしまった者同士という共通点があります。事実なのか脚色なのか判断に迷いますけど、ラストのインタビューで主犯格のエマ・ワトソンが「刑務所で隣の房にリンジー・ローハンが入っていた」と語るシーンが強烈な皮肉になっています。つまり、盗るほうも盗られるほうもその差は紙一重の似た者同士というわけです。 共感できる要素は一かけらもないんですが、ガーリー・ムーヴィーの巨匠ソフィア・コッポラだけあってそのセンスだけは円熟の域に達していると思います。彼女自身が育った環境の賜物かもしれませんが、こういうファッションとブランドものをアイコンに使わせたら、ハリウッドでも彼女の右に出るものはいないのは確かです。でもそのセンスが映像化されても、観る者の心に何かが残るかという観点から言うと、ちょっと苦しいところがあります。まあこれが彼女の趣味なんだからどうしようもないんですけどね。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2018-10-22 22:42:19)
238.  あさひなぐ 《ネタバレ》 
アイドル映画としてはかなり上質な出来ではないでしょうか。乃木坂のメンバーは西野七瀬と白石麻衣ぐらいしか顔認識ができない私ですが、調べると主要キャストはほとんど乃木坂のメンバーなんですね。二年生の部長を演じる伊藤万理華って女優がけっこう個性があって上手いなあと思ったら、彼女も撮影当時は在籍していた元メンバーだったんですね(すいません知識がなさ過ぎて)。かなりコメディ色が強い撮り方ですが、演出のテンポが良いので愉しめました。演技力に難があるアイドルを起用する場合は、それをカヴァーするためにカット割りを短くするのがコツですが、こういうアイドルばかり出演する作品になるとそれがストーリーテリングのテンポをよくしてくれる効果があるわけです、これも怪我の功名ですかね。 面白いのは二ツ坂高校という校名で、私はてっきり乃木坂・欅坂の二つのグループ名をもじったシャレなのかと思っていたら、原作コミックの連載開始の方が乃木坂46結成より早かったんですね。現在の坂道グループの隆盛を予言しているみたいで面白いと思います。
[CS・衛星(邦画)] 6点(2018-09-30 21:39:32)
239.  GONIN 《ネタバレ》 
お話自体は単純明快、ヤクザ事務所襲撃まで大してデティールもつけないストーリーテリングで、その分五人のキャラを深掘りしようという監督の意図は分かりますが、それが佐藤浩市いがい上手くいかなかった気がします。ふつう、こういう種類の犯罪映画では強奪側の仲間割れやら確執が起こるというのが定石ですが、この脚本では何で佐藤浩市のようなど素人が立てた計画に乗って危ない橋を渡ろうとしているのかがそもそも伝わってきません。割と早い展開で五人は一人ずつタマを取られてゆくのですが、彼らが生きているうちのキャラ付けが不十分なので後半の展開がスカスカになってしまってるんですよね。たけしと木村一八、佐藤浩市と本木雅弘の関係が同性愛的な関係だという着想は面白いとは思いますが、キャラ付けが薄いので唐突感が強すぎです。これが石井隆の作風なんですけど、ストーリーがバブル崩壊後の暗く閉塞感に満ちた世相を反映しているのも観ていてしんどかったです。 それにしてもこのころのモッくんの切れた演技は、20年たって昭和天皇や秋山真之を演じるほど出世した現在の姿を知っているだけに、実に新鮮に感じました。もう一度こういう切れまくったキャラを演じてくれないかなあ…
[CS・衛星(邦画)] 6点(2018-08-23 23:21:20)
240.  ロスト・イン・トランスレーション 《ネタバレ》 
むかし聞いた話では、海外の映画スターは日本のCMに出演したことは本国では秘密というか触れてはいけないことになっているとのこと、アラン・ドロンとかチャールズ・ブロンソンがCMに出てた頃でなんかショックでした。黒澤明や三船敏郎は知名度があるといっても、当時まだ日本は低く見られていたってことです、要は。それがいまやキアヌ・リーヴスみたいにラーメン食べるためだけにお忍びで来日するハリウッド・セレブまでいるぐらいで、日本が進化したのか彼らスターたちが変わったのか、まあその両方なんでしょうね。 そういう意味ではビル・マーレイが演じるボブ・ハリスは、古いタイプのハリウッド・スターのカリカチュアになっているのかもしれません。ハリスにしてもスカヨハ演じるシャーロットしても、なんとなく鬱気味なのは内容が異なるにしてもそれぞれの結婚生活が原因で、東京や日本人のせいではないわけです。つまり別に東京が舞台でなくてもお話が成立するのは誰にでもわかります。この映画は旅先で誰もが味わったことのある日常からの解放感と疎外感をつづった映像詩みたいなもので、米国人にはパリやローマじゃなくて異質そのものである東京が舞台に最適だったということです。この脚本はソフィア・コッポラの実体験(旦那がスパイク・ジョーンズだったころ)をもとにしているらしいですが、非西洋人に対する彼女の上から目線にはちょっとカチンと来るものがあります。これはフランシス・フォード・コッポラにも感じられるところで、まあ親ゆずりなのかもしれません。 西新宿のヨドバシカメラの前を通るたびに、この雑踏をあのラスト・シーンにまとめたソフィアの映像センスは認めざるを得ないなと、感じてしまいます。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2018-07-30 23:21:52)
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