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イニシャルKさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

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コメント数 1491
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841.  終の信託 《ネタバレ》 
周防正行監督が「それでもボクはやってない」に続いて手がけた社会派作品。「それでもボクはやってない」と同様にメッセージ性の強い作品で、周防監督がこの映画を通して言いたいことはよく分かる。しかし、出来としてはかなり微妙で、まず、主人公の女医(草刈民代)にほとんど感情移入ができないのが残念。(「それでもボクはやってない」のように題材が身近でないということもあるかもしれないが、それだけではない気がする。)また、この女医と担当患者(役所広司)との関係が医者と患者の信頼関係以上のものが描かれておらず、患者が死んだあとの女医の対応にも違和感を感じる。このシーンは本来笑ってはいけないシーンなのに思わず笑ってしまった。ここまでははっきり言ってダラダラしている部分も多く、退屈に感じていたが、クライマックスの女医を検事(大沢たかお)が追及するシーンは、大沢たかおの迫真の演技のおかげで非常に見ごたえがあり、ここから急に面白くなった。でも、この検事は悪役として描かれているが、主人公がどう言い逃れをするかよりも、検事がどのように主人公を追い込むかに興味がいってしまうというのは映画としては少々まずく、やっぱり主演の草刈民代の演技力不足を感じてしまった。全体的な構成もバランスが悪く、ラストあれで終わりではなく、裁判まできっちりと(字幕で説明するのではなく)描いてほしかったし、現在進行のシーンを検事局ではなく、裁判中の法廷にすれば可能だったはず。周防監督の作品は今まできっちりと作り込まれたものが多かっただけにこの映画は凡作という印象が拭えないし、奥さんである草刈民代を主演に起用しているからか、周防監督が気を抜いてしまったように感じる部分もある。(さっき書いた死んだ患者を前に主人公が号泣するシーンは役所広司を周防監督に置き換えて考えたほうが自然かもしれないが、劇中の設定は夫婦ではなくあくまで医者と患者なのでそれでもリアリティーはまったく感じられない。)しかし、検事の追及はきちんと周防監督らしいリアリティーを感じるし、テーマや題材は悪くない。でもこの映画は主役に草刈民代を起用したことが、周防監督にとっても映画自体にとってもよくなかったのではないかと思えてしまう。とにかくこの映画の主役に草刈民代というのはミスキャストで、もし、周防監督が伊丹十三監督のように奥さんを女優として売り出したいと考えて起用したならこういう重い映画ではなく、もっと娯楽要素の強い映画で起用したほうがまだ良かったかもしれない。
[DVD(邦画)] 5点(2013-08-12 16:33:25)
842.  俺の空だぜ!若大将 《ネタバレ》 
今回は若大将の上司が青大将という設定が面白いのだが、脚本自体はかなり適当に作られている印象であまり面白くない。銭湯の立ち退き交渉を描いた前半は若大将が青大将と衝突し会社を辞職したことで有耶無耶なまま終わってしまったような印象だし、そうするなら今回の節子は銭湯の店員という設定でないほうがいいだろう。そんな前半は若大将と伴淳演じる銭湯のおやじとのやりとりが面白く、伴淳の喜劇俳優としてのうまさも出ているが、この前半だけで退場してしまったのは惜しい。シリーズも既に末期となり、次回が一応シリーズとしての最終回ということだが、加山雄三がシリーズを降りた後も主人公を変えてシリーズを続けようとしたのか大矢茂演じる太田茂夫が登場するが、なんだか地味な感じがする。レギュラーである祖母役の飯田蝶子は映画ではこれが遺作みたいだけどまだ元気そうだ。
[DVD(邦画)] 5点(2013-08-11 23:00:54)
843.  息子(1991) 《ネタバレ》 
まだ「男はつらいよ」シリーズをやっていた頃の山田洋次監督の映画には珍しく、山田作品の顔である渥美清や倍賞千恵子が出ておらず、そこに山田監督のいつもと違う雰囲気の映画にしようという意気込みのようなものが感じられ、地方に住む父親と、東京に住む息子たちの関係を描いていて、ストーリー的には小津安二郎監督の「東京物語」や「一人息子」を思わせており、実際に小津監督の作品のような雰囲気がある味わい深いものになっている。映画はこの父親と、東京でフリーター生活をする次男を軸に三部構成で展開していくのだが、この親子を演じる三國連太郎と永瀬正敏の演技が素晴らしく、二人の方言でのやりとりがリアルでまるで本当の親子のよう。また、次男の東京での暮らしぶりを軽いタッチで描く一方、父親の次男以外の子供たちとのシーンでは「東京物語」でも描かれた親子のすれ違いが描かれており、その対比のバランスもいい。(父親と次男以外の親子のすれ違いは「東京物語」よりもシビアに描かれているような気がする。)次男と和久井映見扮する聾唖の女性(初々しく好演。)との恋をもう少し膨らましてもよかったような気がしないでもないが、そうすると焦点がぼやける可能性があるのであくまでもサブ的なエピソードにしたのは正解だったかもしれない。彼女が聾唖であることを揶揄する田中邦衛や中村メイコに「いいではないか!」と叫ぶ次男には思わず感情移入できたし、次男が結婚相手としてその女性を父親に紹介するシーンはとても良かった。そして、岩手の家に帰ってきた父親が過去の幻影を見るラストシーンは一人残され、老いていくしかない老人の孤独が痛いほど伝わって来て切ないと同時に山田監督の優しさというものも感じられて印象に残るし、あまりあざとさを感じさせることなく素直に感動できる。この映画は山田監督、そして主演の三國連太郎、もちろん永瀬正敏や和久井映見にとっても代表作と言っていい名作だと思うし、「釣りバカ日誌」シリーズで脚本家と俳優という関係で長年組んでいた山田監督と三國連太郎の監督と俳優でのコンビ作がこれ一本きりなのはちょっと惜しい気がする。そうそう、本作には最初に書いたように「男はつらいよ」シリーズのメンバーはほとんど出演していないが、今になってよく見ると三國連太郎のほかにも「釣りバカ日誌」シリーズのメンバーである浅田美代子や奈良岡朋子、中本賢がそろって山田作品に出演しているのは面白い。(浅田美代子と奈良岡朋子はこの当時はまだシリーズには未登場だったけど。)
[DVD(邦画)] 8点(2013-08-09 19:47:20)
844.  ステキな金縛り ONCE IN A BLUE MOON 《ネタバレ》 
自ら演出の舞台や、脚本を担当している「古畑任三郎」でも法廷劇を扱ったことのある三谷幸喜監督が手がけた法廷映画であるが、ただの法廷劇ではなく、証人が戦国時代の落武者の幽霊であるというのはいかにも歴史マニアの三谷監督らしいところで、この設定だけで面白いし、よくこの奇想天外な設定を生かしきっていると思う。主演の深津絵里と西田敏行のやりとりなど三谷監督らしい笑いも多く安心して見ていられた。前作「ザ・マジックアワー」でもそうだったのだが、本作も犯行のあった時間に被告が泊まっていたホテルが「犬神家の一族」の那須ホテルを彷彿とさせていたり、フランク・キャプラ監督の映画に言及するシーンがあったりと三谷監督の映画好きぶりが垣間見えるのが楽しい。(幽霊である小日向文世が「スミス都へ行く」や「素晴らしき哉、人生」の上映時間を細かく記憶しているのには笑った。)ストーリーも思っていたより面白く、長いわりには退屈しなかったのだが、ただ、裁判のシーン以外のところで詰め込みすぎた感があり、少し不満も残る。その中でもやはりいちばん気になるのはラストで、エミ(深津絵里)に六兵衛(西田敏行)の姿が見えなくなるというだけで良かったのに、そこからさらに死んでいるエミの父(草彅剛)の幽霊を登場させたのは「感動させてやろう」という魂胆が見え見えでやり過ぎ感があり残念で、この父親との再会シーンを削ってしまったほうがもっとキレイに終われただろうと思うと惜しい。それでも主役ふたりが歌う主題歌はけっこう良かったし、本作は三谷監督の映画では「THE 有頂天ホテル」よりは好きなので少し甘めかもしれないが7点。でも、同じく7点をつけている「ザ・マジックアワー」のほうが本作よりも好きだな。最後にもう一言、「ザ・マジックアワー」の主人公である村田大樹(佐藤浩市)が登場してエミに自己紹介するシーンではつい「ザ・マジックアワー」での村田に高千穂マリ(深津絵里)が自己紹介するシーンを思い出してしまったことも書き加えておこう。
[DVD(邦画)] 7点(2013-08-06 23:34:08)(良:1票)
845.  上意討ち 拝領妻始末 《ネタバレ》 
小林正樹監督が「切腹」に続いて橋本忍とコンビを組み、滝口康彦の原作を映画化した時代劇。見る前はスタープロである三船プロの製作のため、あまり小林監督らしさは出ていないのではとも思ったが、見てみるとまったくそんなことはなく、「人間の条件」にも通ずるようなテーマが実に小林監督らしいとても重厚な見ごたえのある映画だった。藩が笹原家に出した要求はあまりにも身勝手で、藩の圧力にひたすら耐える伊三郎(三船敏郎)、与五郎(加藤剛)、いち(司葉子)にとても感情移入ができるし、主演の三船がなかなか刀を抜かずに静の演技が多いところにも、俳優の魅力よりも映画自体のストーリー性で魅せようという小林監督の意図が感じられる。黒澤明監督の「用心棒」や「椿三十郎」で三船と敵対する役を演じていた仲代達矢が今回は伊三郎の友人役で出演しており、本作でもクライマックスで決闘をすることになるのだが、敵対することになっても今回は友人同士という設定のためか、重苦しさがあり、派手さもなく、爽快感もないというのがやっぱり先の2本とは違うところで、本作は単純な娯楽時代劇というわけではないということもあるかもしれないが、このあたりに同じ二人の決闘でも印象の違いを見ることができる。(仲代が本作でも負けてしまうのはやっぱりお約束だろうか。)しかし、終盤30分はそれ以外でも三船の殺陣の見せ場が多く、それまでのドラマで魅せる展開を考えたら少しそこだけ浮いてしまった感もなくはない。殺陣による見せ場を三船と仲代の決闘だけに絞っても良かったのではと思う。そこだけがちょっと残念。でも、内容的に見るべきもののある映画で、「切腹」には及ばないものの、この映画もまた小林監督の時代劇での代表作と言っていい名作だと思う。
[DVD(邦画)] 8点(2013-08-05 23:18:33)
846.  大鹿村騒動記
原田芳雄があたためていた企画を阪本順治監督に持ち込み、映画化を実現した作品。友人の妻と駆け落ちした男が記憶障害になった妻を友人のもとに返しにくるという話はよく考えたらドロドロしているが、そういうふうには描いておらず、登場人物もすべて善人なので物足りない人には物足りないかもしれないが、ほのぼのとした人情劇で、傑作とまではいかないものの面白く見れたし、舞台となる信州の風景が美しく、この大自然いっぱいの中で繰り広げられる物語にいつの間にか惹きこまれている自分がいた。これが遺作となった原田芳雄はこの数年前から闘病生活を続けていたみたいだが、劇中ではそんなことをまったく感じさせずに演技をしていて、この映画の試写会の舞台挨拶でのやせ細った姿がウソのようで、本作だけを見ていると公開直後に亡くなってしまったことが信じられない。いや、ひょっとしたらこの時既に自分の死期を悟っていて、この映画だけはなんとしても自分で実現させたかったのかもしれないと思うとこの「大鹿村騒動記」という映画にかける原田芳雄の思いというものがひしひしと伝わってくるのだ。もうこれだけでこの映画は原田芳雄という俳優の代表作の1本になっていると思うし、先週見たデビュー作である「復讐の歌が聞える」から既にハードボイルドなイメージが強かった原田芳雄の遺作がこのような優しい映画であることは少し意外かもしれないが、自分の思いを最後の最後に実現させて安心して旅立って行ったのだろう。映画はそんな原田芳雄扮する善、大楠道代扮する貴子、岸部一徳扮する収の三人を中心に展開していくが、ほかの出演者で印象に残るのはやっぱり三國連太郎。出番は多くないのだが、悪役や癖の強い役柄が多かった若い頃とは違い、仏様のような穏やかで優しい顔立ちになっているのが印象的で、それでいて登場すると画面がビシッと引き締まる。彼が戦時中のシベリア抑留の話をするシーンは戦争経験者だからこその説得力と重みがあるシーンだと思う。そんな三國連太郎もこの四月に亡くなってしまい本当に惜しい。あらためてこの映画に出演している二人の名優、原田芳雄と三國連太郎のご冥福を心よりお祈りするとともに素晴らしい出演作の数々を残してくれたことに感謝を申し上げたい気持ちでいっぱい。本当にお疲れ様でした。
[DVD(邦画)] 7点(2013-07-31 00:56:17)(良:3票)
847.  復讐の歌が聞える 《ネタバレ》 
7年ぶりに出所した男(原田芳雄)が、父が社長を務める会社を乗っ取り、家族を自殺に追い込んだ城戸(内田良平)一味を次々と殺していく姿を描いた復讐劇で、話の筋としては同年に加藤泰監督が同じ松竹で手がけた「みな殺しの霊歌」と似ているところがある。ただしこちらは背景のドラマを丹念に描くというよりは、主人公がどんな方法で一味を殺していくかという見せ場に重点が置かれた作品で、「みな殺しの霊歌」よりも娯楽性が強い。殺しのシーンがバラエティに富んでおり、自殺の替え玉や、標的三人が乗っているセスナを故意に墜落させるのはまあ普通なのだが、ラーメンを食べている標的にコショウといって毒を渡したり、入浴しようとした女性の標的を煮えたぎる浴室に閉じ込めて殺すシーンはつい笑ってしまうし、ゴルフクラブの暴発で殺すシーンもあり、とにかく見た目のインパクトを狙った殺しのシーンが多いのが印象的で、二人いる監督のうちのひとりがのちに「必殺」シリーズを手がけることになる貞永方久監督なのだが、ちょっとなるほどと思える部分もある。(永田靖がレントゲン中に刺殺されるシーンで、刃物がレントゲンに映りこんでいるのはとくに「必殺」っぽい。)最後の標的である城戸は激しい殴り合いの末に殺されるのだが、そのシーンを演じる原田芳雄と内田良平の迫真の演技が見ごたえじゅうぶん。ところで、主演の原田芳雄はこれが映画デビュー作とのことだが、既にギラギラした存在感を放っていて、デビュー作らしい初々しさがなく、元々むさ苦しいアウトロー的なイメージのある俳優だが、それがデビュー作から確立してしまっているのがすごい。(当時27歳だったらしいが、これがデビュー作だとは言われないとわからないかも。)一方の内田良平も悪役を好演しているが、この人はやっぱり「十三人の刺客」の鬼頭半兵衛のほうが悪役としては印象深い。「十三人の刺客」といえば菅貫太郎も本作に内田良平の元部下のトランプ占い師役として出演しており、一緒に画面に登場することはないが、時代劇である「十三人の刺客」とは立場を逆転させて現代劇である本作に二人そろって出ているのが面白い。でも、もう一度言うが、やはり本作はデビュー作にしてそのキャラを確立させてしまっている原田芳雄につきる映画だと思う。
[DVD(邦画)] 7点(2013-07-25 19:04:06)
848.  真夜中まで(1999)
真田広之扮するジャズ・トランぺッターがライブの休憩時間中に殺人事件を目撃した女性を助けたことから事件に巻き込まれていくサスペンス。全篇夜の街が舞台で、ジャズで統一された音楽も相まって雰囲気はかなりいい。しかし、主人公が次のステージまでにクラブに戻らないといけないと設定してるにもかかわらず、そのタイムリミットをうまく話の中に盛り込めていなかったりしてちょっと雑な印象で、サスペンスとしての盛り上げ方も微妙で、逃走劇なのだからもっと緊迫感を出したほうがよかったのではないかと思う。「真昼の決闘」のように実時間と劇中の時間を合わせたかったみたいだが、これも見事に失敗してる。(そうすると休憩時間が一時間以上になることになる。)それに主人公のトランペットの吹き方になんか違和感を感じる。和田誠監督がジャズが好きなことはなんとなく伝わってくるが、そうであれば演奏シーンにももっと説得力を持たせるべきだった。それでもそこまで思ったほどつまらなくはなかったのだが、今まで見た和田監督のほかの作品、「麻雀放浪記」も「快盗ルビイ」もすごく面白かっただけに本作はそれらと比べると数段落ちる出来になってしまっているのは残念で、また本作以降、和田監督が映画監督としての新作を出していないっぽいのもちょっとさびしい。
[CS・衛星(邦画)] 5点(2013-07-21 22:07:53)
849.  日本侠客伝 浪花篇 《ネタバレ》 
「日本侠客伝」シリーズ第2作。今回は弟の遺骨を引き取るために横浜から大阪へとやってきた健さん扮する堅気の主人公がそこでヤクザどうしの争いに巻き込まれるというストーリー。1作目とはまた違う雰囲気だが、個人的には1作目よりもこの2作目の方が面白かった。マキノ雅弘監督らしい盛り上がりのある演出がこの映画でも効いていて、とくにクライマックスの鶴田浩二の殴り込みに健さんが助太刀に入る展開は心地よく、そこからラストの二人が雪の中をあるいて行くシーンまでだれることがない。脇役陣もいい味を出していて、前作にも出演していて今回もメインキャストの一人を演じる長門裕之や、健さんが身を寄せる組の親分を演じる村田英雄(主題歌も担当。)、エピローグでちらっと出てくる屋台のうどん屋を演じる藤山寛美に至るまで抜かりなく魅力的に描かれていてあらためてマキノ監督の役者への演出のうまさも感じられた。中でも東映時代劇ではヒーロー役を演じていることが多い大友柳太朗が悪役を演じているのが印象的で、ヤクザ映画では初めて見たが、抜群の存在感を放っているのは新鮮に感じた。前作では長門裕之の恋人が南田洋子というのがややマキノ監督のお遊び的なキャスティングで面白かったが、今回の長門裕之の恋人役は八千草薫、それでいて南田洋子も出ているというひねりが面白い。鶴田浩二は前回の錦之助のような役回りではなく、さっき書いたように健さんと一緒にクライマックスで一緒に殴り込みをする役柄で、健さんを食い気味ではあるが、やはり健さんともどもカッコイイ。でも、冒頭の出演者クレジットで主演の健さんではなく、鶴田浩二がトップなのは無理があるし、一応、シリーズものなので少々違和感を感じる。
[DVD(邦画)] 7点(2013-07-21 18:35:00)
850.  喜劇 一発勝負 《ネタバレ》 
親と大喧嘩をして家を飛び出した男が久しぶりに帰ってきて騒動を巻き起こすというストーリーは「男はつらいよ」の一作目を彷彿としていて、主人公の妹を演じているのが倍賞千恵子であるという共通点もあり、「男はつらいよ」の原型のようなものが感じられる。しかし、演じるハナ肇と渥美清のキャラクターの違いか、そう思って見ているとなんか違うと感じてしまうし、主人公の下の妹が実は主人公の娘であるという設定も少し重く感じる。出来もこれまで見た山田洋次監督とハナ肇のコンビ作の中ではやや落ちる方だと思うものの、それでも、主人公が自分の葬儀の最中に棺から出てくるギャグ(本当にどうなってるんだろう。)や、毒のあるラストなどはやはり後年の山田監督の映画では考えられないものであるが、こういう初期の頃の作風もけっこう好き。いちばん最後の主人公の父親(加東大介)の不気味な笑い(それこそ後年の山田監督の映画では絶対見られない。)がものすごく印象的だ。本当は6点というところの映画なのだが、このシーンに一点プラス。もうひとつ、この時期の山田監督の映画では登場人物の誰かがナレーションをしているパターンが多い(「たそがれ清兵衛」や「母べえ」など最近の作品でもそう。)のだが、今回は珍しく一切画面に登場しない専属のナレーターを三島雅夫が担当していて、映画を見ている者に話しかけるようなその柔らかな口調が印象に残る。 ただ、やはりこの映画の主人公はあまり好きにはなれず、同じようなストーリーなら寅さんのほうが魅力を感じられる。
[DVD(邦画)] 7点(2013-07-11 17:19:03)
851.  喜劇 男は愛嬌
森崎東監督の第3作。主演は渥美清でストーリー自体も長い間旅に出ていた主人公が久しぶりに実家に帰ってきて騒動を起こすという完全に「男はつらいよ」シリーズのパターンと似通っており、脇の出演者も「男はつらいよ」シリーズの面々が何人か出ている(太宰久雄、佐藤蛾次郎)が、森崎監督らしいパワフルな(「破壊的な」と言う方が正しいかも。)演出やバイタリティーあふれる癖のある登場人物たちのおかげで「男はつらいよ」シリーズの一作のようでありながらそれとは一味違う映画になっている。森崎監督がこのひとつ前に手がけた「男はつらいよ フーテンの寅」も従来のシリーズとは一味違う映画であったが、ダンプが家に突っ込むシーンの過激さや、独特の下品さなど、本作はより森崎監督らしさが出ていて「フーテンの寅」よりも面白かったし、森崎監督のこういう作風はけっこう好きだったりする。出演者の中ではなんといっても主演の渥美清がすごくイキイキとしているのが嬉しい。やはりこの渥美清という俳優は「ああ声なき友」のようなシリアスすぎる役柄よりもこういう威勢のいい元気な役のほうが似合っているし、こういった喜劇でこそ本来の魅力を最大限に発揮できる俳優なのだと思う。そんな喜劇を演じる渥美清が好きだし、さっき書いたようにこの映画は「男はつらいよ」シリーズとは一味違うのだけれど、それでも渥美清が好きなら、寅さんが好きなら一度は見ておいて損はない映画だと言っておきたい。それにしてもこんなにイキイキとした渥美清を見るのは本当に久しぶりな気がする。渥美清というのは本当に魅力的な喜劇俳優だと改めて思った。
[DVD(邦画)] 8点(2013-07-05 17:54:47)(良:1票)
852.  網走番外地 北海篇 《ネタバレ》 
今回は冒頭から刑務所が登場し、刑務所内での物語が展開するのかと思いきや、釈放された橘真一(高倉健)が千葉真一扮する刑務所仲間にあることを頼まれ、トラックで北海道の大地をゆくという内容。トラックに乗り合わせる人々の人間ドラマがそこそこ面白く、見ていてあまり退屈はしないし、健さんもいつもどおりカッコイイのだが、やはりアクション映画なのかロードムービーなのかややどっちつかずの印象が残る。今回も悪役は安部徹なのだが、中盤に登場する小沢栄太郎扮する親分に食われてしまっており、このシリーズで安部徹が演じる悪役の中ではいちばんしょぼく感じてしまった。前回登場した時には強烈な悪役だった杉浦直樹がトラックに乗り込むわけありの男を演じていて、前回よりは今回のほうが役柄的に似合っている感じがする。アラカンも前回のような貫ろくのある親分役もいいが、このシリーズでは鬼寅として登場するほうがしっくりする。映画としては物足りない部分もあるのだが、思っていたよりは面白かったので少々甘めかもしれないが6点。そうそう忘れていたが、ヒロイン役が大原麗子で、若くてあどけなさがありながらも既に後年の面影をどことなく漂わせていたのが印象的だった。
[DVD(邦画)] 6点(2013-06-26 13:27:30)
853.  なにはなくとも全員集合!! 《ネタバレ》 
ドリフターズの映画デビュー作。ドリフの映画を見るのはこれが2本目だが、やはりみんな若くてイキイキとしている。草津を舞台に駅とバス会社が温泉を訪れる客を奪い合うという内容なのだが、本作の主人公はドリフの面々ではなく、三木のり平演じる新任の駅長で、ハチャメチャコント映画というよりは普通に人情喜劇の体裁のため、駅前シリーズのスピンオフでも見ているような雰囲気がある。三木のり平の主演映画というのは初めて見た気がするのだが、ここでもライバルのバス会社の宴会を自分の歓迎会と勘違いして出席したりして、社長シリーズなどと同じように笑わせてくれるのが嬉しい。(この人は本当に宴会とかよく似合うよなあ。)一方のドリフはそんな三木のり平の引きたて役に徹しているのかと思えばそうではなく、いかりや長介(先日、「踊る大捜査線」のDVDを見たばかりなのでなにか異様に若く見える。)が目覚まし時計を食べ、腹の中で時計が鳴り出すシーン(これには思わず爆笑してしまった。)など(全員にではないが)ちゃんと見せ場が用意されている。とりわけメンバーの中で目立っていたのはやはり駅員の一人を演じた加藤茶で、駅長の娘(中尾ミエ)に惚れ、なんとか振り向かせようと奮闘する姿がどこまでも滑稽だが、憎めず愛すべきキャラクターなところが好感を持てて良い。見る前は少し不安な面も多かったが、素直に楽しむことができた映画だった。少し甘めの8点を。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2013-06-09 09:27:55)
854.  ズンドコズンドコ 全員集合!!
ドリフの映画って初めて見た。筋立て自体はまあ可もなく不可もなくというところなんだけど、みんな若くていきいきとしててとても面白かった。世代的に荒井注が正式メンバーだった頃を知らないのだが、志村けんのいない違和感は全く感じることはなかった。この時代のドリフはいかりや長介が憎まれ役なのは前もって知ってたけど、本当に見ていて腹が立つほど憎たらしい役回りで後半いかりやにいじめられていた加藤茶と立場が逆転した時には思わず爽快感を感じた。女性のような髪型(そのせいで最初誰だか分かんなかったけど。)の宍戸錠も最高。
[ビデオ(邦画)] 6点(2013-06-08 08:47:39)
855.  続・網走番外地 《ネタバレ》 
シリーズ第2作。出所した健さん扮する主人公・橘真一が宝石強盗事件に巻き込まれるストーリーで、なんと刑務所すら出てこないのだが、シリーズとして続けるにはさすがに刑務所内だけではストーリーが作りづらいのだろう。続編(シリーズ化)が急遽決まり、脚本執筆開始からクランクアップまで3週間ほどしかなかったということでつまんないかもと思っていたが、つっこみどころ満載なところも含めてけっこう楽しく見れた。健さんは後年の主演作だとストイックで無口という印象が強いのだが、この橘真一という主人公は饒舌で明るく、健さんの従来のイメージとはかけ離れているが、それが新鮮で見ていて楽しい。とくに啖呵売をするシーンではその品物をあの高倉健が口上述べて売っているという画がもうおかしく、つい声を出して笑ってしまった。(まさか健さんでこんなに笑うとはかなり以外。)健さんのピンチに突如現れるアラカン演じる鬼寅の存在感や、宝石強盗団のボスを演じる安部徹の悪役ぶり(いつもこの俳優の演じる悪役は見ていて本当に憎たらしくなる。)も素晴らしい。突貫工事的に製作されている映画だが、前作は白黒で、ほぼ男しか出ていなかったのに対して今回はカラーになり、ヒロインも登場するというものになっており、これだけでも東映がこの続編に期待をかけていたことが分かる。けっして手放しでほめられる映画ではないが、面白かった。
[DVD(邦画)] 6点(2013-06-05 00:33:13)
856.  さらばラバウル 《ネタバレ》 
昭和19年のラバウル戦線を舞台にした東宝の戦争映画で、本多猪四郎監督と円谷英二のコンビが「ゴジラ」の直前に手がけた作品としても知られている。怪獣や宇宙人、変身人間など一切出てこない本多監督の作品は初めて見たが、「ゴジラ」には及ばないと思うものの、この映画も人間ドラマがしっかりとしていてとても良かった。でも、主人公の鬼隊長と言われる若林大尉を演じる池部良はストイックに演じているもののちょっと鬼隊長というには貫禄不足のような気がする。この鬼隊長が捕らえた米軍パイロットの取り調べで米軍と日本軍の違いに愕然とするあたりから変わっていくという展開なのでもっと演じる俳優に貫禄がほしかった。「ゴジラ」で芹沢博士を演じていた平田昭彦が本作でも若林の部下役で出演しており、ここでも現地の女性(根岸明美)と悲恋を演じる役どころというのがちょっと興味深い。男中心に展開する映画にもかかわらず岡田茉莉子(可愛い。)や中北千枝子、根岸明美といった女性の登場人物の描き方がうまく、エンドマーク直前もこの女性たちが船の上で「ラバウル小唄」を合唱するシーンで終わりというのが本多監督らしいところ。実録映像も交えた円谷英二による空中戦の特撮も見事。ほとんど機会がないのが残念だが本多監督の怪獣映画やSF映画以外の映画ももっと見たいと思う。
[DVD(邦画)] 8点(2013-06-01 16:14:15)(良:1票)
857.  踊る大捜査線番外編 湾岸署婦警物語 初夏の交通安全スペシャル<TVM> 《ネタバレ》 
「歳末特別警戒スペシャル」と「秋の犯罪撲滅スペシャル」の間に放送された番外編で、本作で初登場する篠原夏美(内田有紀)を主役に据えている。警察学校を卒業し、湾岸署交通課に配属された夏美と、彼女の指導担当で、ほかの暑から応援に来ている鬼婦警・桑野(渡辺えり子)のコンビを描いていて、その関係は青島(織田裕二)と室井(柳葉敏郎)や和久(いかりや長介)との関係を彷彿とさせていて、やや焼き直し感もあるのだが、夏美はもともと「女青島」を目指して考え出されたキャラクターらしいのでこれでいいのだろう。いつものメンバーは脇に回り、脚本家も君塚良一ではないが、最近のモノと比べるとやはり面白く、夏美と桑野の関係も手抜きがなくしっかりと描かれており、何より夏美の成長ドラマとして見ごたえのあるものになっている。夏美を演じる内田有紀はそれほど好きな女優というわけでもないのだが、なにか本作では非常に魅力を感じるのは不思議。夏美はこの12年後に作られた劇場版第3作「ヤツらを解放せよ!」から刑事課の刑事として再登場するわけなのだが、本作はこの直後に作られた「秋の犯罪撲滅スペシャル」や劇場版第1作に引き続き夏美が登場していても別におかしくはないような終わり方をしているので、逆にこの後の続編には一切登場せず、本作の放送から12年も経って作られた「ヤツらを解放せよ!」でなぜ唐突に再登場したのかはちょっと疑問に感じる。(ところで交通課で夏美といえばアニメ「逮捕しちゃうぞ」を思い出してしまうが、本広克行監督のことなので、おそらく「篠原夏美」という名前は辻本夏美と「機動警察パトレイバー」の篠原遊馬あたりから採られているのだろう。)シリーズ作品として見た場合、青島と室井の出番は極端に少ないし、いつもとは少し違う路線の作品に仕上がっているが、それでもこのシリーズらしい雰囲気はよく出ており、全体としてはまぎれもない「踊る大捜査線」の1本としてじゅうぶんに楽しめた。
[DVD(邦画)] 6点(2013-05-16 14:34:19)
858.  いいかげん馬鹿 《ネタバレ》 
山田洋次監督、ハナ肇主演による「馬鹿シリーズ」第2作。「馬鹿まるだし」や「馬鹿が戦車でやって来る」に比べるとハナ肇演じる主人公 安吉の暴れっぷりはなんか物足りないが、後の山田作品に通じるような人情喜劇になっていて、「馬鹿シリーズ」3作中いちばん山田監督らしさを感じられる作品だと思う。劇中出てくる女性歌手の名前や島を出て行ってしばらくすると帰ってくる安吉などは「男はつらいよ」シリーズを思わせていて、とくにラストシーンの啖呵売をする安吉の姿はまるで寅さんそのものに見えてまさしく「男はつらいよ」シリーズのパイロット版という感じがする。この後、「馬鹿が戦車でやって来る」でもヒロインを演じる岩下志麻であるが、この頃の岩下志麻は後年の怖いイメージはなく、清楚な美人という感じがある。(でもラスト近くで子供を叱るシーンは思わず「鬼畜」を思い出してしまいちょっと怖かった。)この映画を見て「男はつらいよ」シリーズでマドンナを演じる岩下志麻もぜひ見てみたかったなあとつい思った。
[DVD(邦画)] 8点(2013-05-06 22:14:22)(良:3票)
859.  踊る大捜査線 THE LAST TV サラリーマン刑事と最後の難事件<TVM> 《ネタバレ》 
完結編劇場版公開を前に放送された「踊る大捜査線」の久々となる新作テレビスペシャル。前半はただごたごたしているだけに見えるし、メインとなる事件も劇場版第3作「ヤツらを解放せよ!」で登場した中国人研修生(滝藤賢一)と結婚することになっている女性が実は・・・という展開だが、「ヤツらを解放せよ!」で登場した新キャラクターは、和久伸二郎をのぞいて着任エピソードが描かれぬままいきなり当たり前のようにそこにいたこともあり、馴染みが薄く、そういうキャラをメインに持ってこられても感情移入がしにくく、困るだけ。メインの事件自体も扱いが軽く、このドラマって初期はコミカルなところはコミカルだけど、シリアスな部分ももっとちゃんとしていたように思うのだが。やっぱり長く続けすぎると作る側も惰性になっていってつまんないものしか出来なくなるんだろうな、という感想しか出てこない。
[地上波(邦画)] 3点(2013-05-06 22:02:32)
860.  踊る大捜査線 歳末特別警戒スペシャル<TVM> 《ネタバレ》 
連ドラ版が放送された年の暮れに放送された「踊る大捜査線」初のスペシャル版。連ドラ最終回で交番勤務となった青島(織田裕二)が湾岸署に復帰し、再び刑事課に配属されるまでを描いたストーリー。新作映画公開に合わせた再放送で久しぶりに見たが、最近のダラダラしたシリーズを見慣れていたためか、あまりのテンポの良さと、脚本のうまさ、そしてその面白さに逆に驚いてしまった。復帰した青島が署内でお荷物扱いされ、署内の各課をたらい回しにされるというのは、黒澤明監督の映画を意識したシーンやエピソードをやることが多いシリーズだけに「生きる」で公園を作ってくれと要望する市民たちが市役所の各課をたらい回しにされるシーンをなんとなく思い出してしまったが、あくまで参考にしたのかな程度のことなので、この後の映画シリーズのような露骨感は皆無。クライマックスの刑事課占拠事件もちゃんと緊張感をもって描かれているし、コメディーとシリアスのバランスも絶妙。こういうのが本来の「踊る大捜査線」らしさなのだとあらためて思うし、定年退職した和久(いかりや長介)が指導員として復帰することになる展開も、いかりや長介が故人となってしまった現在に改めて見直すと、やっぱりいかりや長介演じる和久平八郎は「踊る大捜査線」というドラマになくてはならない人物で、彼が出てくると画面がビシッと引き締まる感じがする。いかりや長介にはやっぱりもっと長生きしてほしかったな。それにしても今改めてこの作品を見ると当たり前だがみんな若いし、見ていてなんだか懐かしい気持ちにさせられる。それに今では売れっ子となっている当時無名の仲間由紀恵や伊藤英明が出演していたりして、出演者は今からすればけっこう豪華。特に仲間由紀恵は殺人事件の目撃者というかなり重要な役柄で出ている。それに対し、逆にアイドルとして人気が出始めていた頃の広末涼子がチョイ役というのが意外だった。犯人役の稲垣吾郎のキレた演技も見もの。杉並北署時代の青島の上司役が谷啓なのだが、もし当時存命であればこの役はハナ肇が演じていたかもしれない。
[地上波(邦画)] 7点(2013-05-04 11:52:37)
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