Menu
 > レビュワー
 > fero さんの口コミ一覧
feroさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 204
性別 男性
年齢 46歳
自己紹介 専門は邦画とヨーロッパ映画(特にフランス)。気に入った監督や俳優がいればひたすら観つづけるので、どうしても同じジャンル・国に集中してしまうようです。(だからあまりハリウッドを観ない。)

最近引っ越してしまい、なかなか映画を気軽に観ることができなくなりました。撮りためたビデオとDVDばかりになりますが、観たものは書き込んでいこうと思っています。

表示切替メニュー
レビュー関連 レビュー表示
レビュー表示(投票数)
その他レビュー表示
その他投稿関連 名セリフ・名シーン・小ネタ表示
キャスト・スタッフ名言表示
あらすじ・プロフィール表示
統計関連 製作国別レビュー統計
年代別レビュー統計
好みチェック 好みが近いレビュワー一覧
好みが近いレビュワーより抜粋したお勧め作品一覧
要望関連 作品新規登録 / 変更 要望表示
人物新規登録 / 変更 要望表示
(登録済)作品新規登録表示
(登録済)人物新規登録表示
予約データ 表示
【製作国 : 日本 抽出】 >> 製作国別レビュー統計
評価順123456
投稿日付順123456
変更日付順123456
>> カレンダー表示
>> 通常表示
1.  EUREKA ユリイカ
長くてセピアでシネマスコープで、ちょっとしんどいんじゃないかと観る前には思っていたのだけれど、結局最後まで意識せず観てしまった。最後にスクリーンに現れる『EUREKA』の文字に、この映画のタイトルの意味を思い出して、愕然として息を飲む。はっと気付くと体が固まっていて体の節々が痛くて、そこで微動だにせず映画を見切ってしまったことに気付いた。渋い、派手とは言えない俳優ばかりを選んだキャストの活躍も大きいが、何より各シーンの構図を撮影・田村正毅と共に徹底的に考え抜いた青山監督の執念が、この大作を成功させているのだと思う。この映画のストーリーには多くの穴がある。それは、僕達がこの映画を観る中で足をとられてしまいそうな大きな穴だ。各シーンの俳優の行動、それぞれに完全な説明はなく、そこから読み取れる最小限の情報、それは言葉や表情の小さな動きだったりするのだが、観客はそれからその関係を推測するしか方法はない。特に、登場人物の過去についてはほとんど語られていない。沢井と親友シゲオ、妻弓子、父、兄の間には、何か過去のエピソードを匂わす空気が漂っている。「何かがあった」ということは読み取れるものの、そこから先は完全に闇に閉ざされる。これには観客はヤキモキしてしまう。例えば、秋彦が漏らす「昔、殺されかかった」という過去は同監督の『Helpless』に一本の映画としてまとめられている。それを考えると、それぞれの間に漂う「何かがあった」というようなエピソードは、それぞれで映画が出来るほどのストーリーなのかもしれない。しかし、それも想像だ。僕達は、映画の最小限の情報から、最大限の物を読み取り、考え、構成するという作業を続けていく、そしてその先に青山監督の示すこの映画の意図が見えてくる。青山・田村のアップで「完璧」なシーンを作り、それから引いても「完璧」だと思わせる手腕には唸るしかない。宮崎将・あおい兄妹の熱演や、役所浩司も重要だが、監督の投影とも言える光石研・斉藤陽一郎の脇二人がとても重要な役割を演じている。長い長い映画であるが、是非、二度三度観て欲しい一本だと思う。
10点(2003-11-04 01:30:06)(良:1票)
2.  青い車 《ネタバレ》 
すごい映画に出会ったと思いました。主演3人は非のうちどころのない演技というほかありません。まずARATA。金髪にサングラス、さらに無表情な顔でどのように演技するのかと興味がありましたが、口ってセリフを言わずともあれだけ表現できるんですね。屈折の度合いを見事に表現していました。格好も違和感なく、目の傷も生々しかったです。リスカの跡がもう少しリアルだと良かったなと思います。次に、麻生久美子。本当に彼女は監督によって変わりますね。心優しさの中に逞しさが表現されていて、一本筋の通った美しさがあったと思います。事故後のシーンは「あれ?出すんだ」と思いました。最後に宮崎あおい。もう完璧。唸るしかありません。10代の飽きっぽさ、自信のなさ、悲劇のヒロイン願望と、センチメンタル趣味。そして最後に現れる本当の悲しみ。この単純じゃない感情の揺れを、細かく表現できていたんじゃないでしょうか。いや、もっと複雑な心象を描いていたのに、20代の僕には嗅ぎ取れなかったのかもしれない、そうまでも思います。彼女は日本のトップ女優へ着実に近づいていると思うのは僕だけではないはずです。この若く美しい10代のうちに奥田瑛二の「少女」みたいな映画に出て欲しいと切に思っています。 ストーリーとテーマソング、カメラワークも素敵だったと思います。内容を完全に把握できたかと言えば僕にも自信はありませんが、リチオの心の中を100%説明するのは本人にもできることではなく、あえて言えば原作のよしとものみぞ知るといった所でしょう。子供をさらわれかけたトモロヲの行動と、その後のベンチでの会話など、細かく笑ってしまう部分もあり、緩急をつけたストーリー進行が良かったと思います。じっくり考えて映画を噛み締めてみたい人にお薦めの映画です。
9点(2004-12-24 01:41:39)
3.  いま、会いにゆきます 《ネタバレ》 
佳作。原作・監督・脚本・カメラなどのスタッフ陣、および、主役の二人を含めたキャストにおいて、大物や気鋭の新人といった役者は見当たらない。中村獅童にしたって、竹内結子にしたって演技がそんなに上手いわけでもない。はっきり言えばエースのいない布陣だと言いきっていいかもしれない。その、期待できないメンバーがずらずらと並ぶエンドロールを、僕は驚きと、感動で熱くなった目をゴシゴシしながらみた。うるんでた。確実に。詳細を突けばキリがない。(手帳薄すぎ!とか。)もとよりそんなに高尚なストーリーでもない。だいたい原作を読んでる他の観客が先どりして泣いている。しかし、いいよね、これは。高校時代の二人の雰囲気もいいし、大人になってからの二人もいい。ずっと寝てる所長もいいし、喫茶店で泣いてしまう竹内結子もいい。そして、エンディングでのキスもいい。誕生日ケーキもいいじゃないか。全部ベタ。しかし、それを愚直にやられたら感動するんだね。下手な演出がないのがいいよ。本当に、3人の生活がずっと続けばいいなと思ったもの。いい映画を観たと思います。みなさんが触れていますが、主題歌でマイナス1点。
9点(2004-12-24 00:58:53)(良:1票)
4.  泥の河 《ネタバレ》 
「ここはお国を何百里 離れて遠き満洲の~」きっちゃんの大人びた節回しを聴いていると、心がしんとしてきます。このワンシーンに、戦争や貧しさ、浮ついた時代への痛烈な批判、親を失った二人の悲哀など、様々な、本当にたくさんの悲しみがこめられています。この映画は、悲しいです。この映画の主題は、のぶちゃん(主人公の少年)の眼からみつめた世の中の悲しみです。泣かせようとする演出ではありません、冷静に幼い彼が感じとった世の中の悲しみを坦々と映し出しています。 この映画のことを説明すると、原作は宮本輝の同名小説(処女作・太宰治賞受賞作品)。監督はこれも新人の小栗康平、白黒の作品です。監督・原作者ともに新人であるため、観ていて映像の拙さを感じる方もおられるかもしれません。しかし、僕は宮本輝後期作品の説教臭さがなく、原作を思い切って切り取った小栗の決断力と、二人の若さも評価すべきだと思います。何度観ても考えさせられる作品ですが、やはり気になるのは銀子の存在です。廓船に住み、笑いを忘れ、過剰なほどに丁寧で控え目なその振舞い。しかし、その中に漂う消しようのない色気。陸の家庭に触れ、笑いを取り戻したかに見えるものの、その奥に隠れる歪み。彼女の存在、演技はこの映画の中でどうしても触れなければならない所です。メインキャストの田村高廣・藤田弓子・加賀まりこが玄人らしい演技をみせており、それに加えてノブちゃん・きっちゃんが拙いながらも心のこもった演技をしていることがこの映画を素晴らしいものにしていると思います。ほぼ満点の内容なのですが、音楽が少々感傷的過ぎていたので減点させていただきました。
9点(2004-06-12 00:28:49)(良:2票)
5.  人間の條件 第五部 死の脱出
竜子の死体が痛々しく、墓を巡る丹下と梶の議論なんてどうでもよくなってくる。死を前にして思想が何をしてくれるのか?僕は、いま思想を持っていないので言葉に詰まるが、焚火を前にして捨てられた少女を思う梶の心が、僕には戦争の矛盾と伴に、思想の矛盾として強く響く。大きな流れの中では人は流されるしかないのか?それとも沈んでしまうだけか?殺人マシーンと化してゆく梶の苦悩は、僕には理解できないほども深く、暗い。美千子という美しく、純粋に彼を愛してくれるものに対して、彼はこのことをどう語るのだろうか?それを考えると、その苦しみの一端だけでも突き刺さってくる。梶は、歩哨の生活を考えただろう。歩哨がロシアの家族のもとで、美千子と同じように愛する妻のもとに帰りたがっていることを感じただろう。戦争とは、どれほど多くの矛盾を抱えながら進行してゆくのだろうか?思想とは、国家とは、それほどまでに重要なものだろうか?僕にはわからない。娘役の中村玉緒の溌剌とした笑顔が、僕の脳裏に刻み込まれる。この作品の持つ悲しさをより引き立てるこの笑顔を、僕は想像でも踏みにじることは出来ない。戦時下にない僕には想像すら出来ない、凄惨なことが、戦時下・敗戦下という名目で行われていたことに、僕たちは眼を背けてはいけないだろう。
9点(2004-03-14 17:38:55)(良:1票)
6.  アカルイミライ 《ネタバレ》 
「浮遊するポストモダン」この映画に解説をつけるのならば、さしずめこんなタイトルにするだろう。日本のポスト近代への移行が、共同体の解体に伴い、規範を壊し続けているとしたら、そこに生み出されるものは何であろう?その答えが、真水に生きるクラゲと、街を闊歩する少年達だ。フワフワと漂うクラゲ、そして、フワフワと生きる少年達は、一見してただ流されるだけの存在でしかない。社会から外れ確固とした意思を持つわけでもなく、気分だけで生きる彼ら。それが日本のミライだと言われれば、多くの人は戸惑うに違いない。海でしか生きられないはずのクラゲは、水槽という閉じた系から、あるとき外界へ流れ出す。それはこれまで淘汰さてきたはずの存在が社会に溢れだしたこの10年を模している。宮崎勤、宅間守、数多くの不可解な事件が世を騒がせた。オタク、トラウマ、家族崩壊、、、メディアは理由を探し社会は憎むべき者を探して彷徨った。「責任能力を有する」つまり「正常」な彼らがなぜ平然と「異常」な犯罪を犯したのか。そのパラドキシカルな問いに向かい合えない我々は、「不可解」の一言で片付けてきた。しかしクラゲの毒に理由があるだろうか?クラゲの心がわかるだろうか?それは、完璧なる断絶である。守のように社会の規範や価値観から離れたアウトロー(宮台真司は『脱社会的存在』と呼ぶ)は、我々の言葉では語ることができない。これは村上龍の示すような、楽観的アウトローの姿ではない。真水の東京で生きる力を獲得しても、クラゲ(=アウトロー)は危険で駆除されるべき存在でしかない。しかし未来を予言する仁村は確信を持って答える。「彼等はきっと帰ってくる」と。アウトローと共生することのできる唯一の存在である少年達の胸には、戦いの中で死んだゲバラがイコンとして刻まれている。彼らは「アカルイミライ」を支え歩き続ける。(それがエンディングで示されたようにフィクションだったとしても!)黒沢清の提示したミライ。それは日本のポストモダン像に他ならない。過去を生きる者達は傷つきながらも「許す」のだろうか。それとも、徹底的な駆除を試みるのだろうか。この映画のタイトル「アカルイミライ」は近代批判、または、ニヒリズムではない。我々はそれを受け入れるしかない。黒沢は淡々とそれを描いている。
[DVD(字幕)] 9点(2004-02-29 06:12:52)(良:1票)
7.  人間の條件 第四部 戦雲篇 《ネタバレ》 
最近の戦争をテーマとした作品を観ていると、戦局を冷静に判断して「生きる」ことに重点をおいているクレバーな人間を主役にしている事が多い。この『人間の條件』という作品もそうだ。この物語は戦争に翻弄された男の悲しい物語である。しかし、もっと悲しいのは「大日本帝国」を本当に信じ込んで、自分を守ることも出来ずに「軍国主義を信じた愚か者」になってしまった人々なのかもしれないな、そんな事を思った。そういう観点では、梶はまだ幸せなのかもしれない。たまに、僕の田舎には今でも戦時の武勇伝を語る老人がいるが、見ていて暗澹たる気分になる。今回の梶は、初年兵を教育する事に努力する。しかし、それは上手くいかず空回りだ。敬礼の不備によって古兵から懲罰を受けるシーンなどは、その空回りが如実に出ていて哀しくなる。梶の思想は完全に偏りすぎていて、青臭くて、正直馬鹿らしくなる。純粋であるよりも愚直、つまり愚かさが先にくる。それは、沖島や影山などの平衡感覚を持った人間をそばに置く事により際立ってくる。それが、梶の背負った悲哀ともいえるかもしれない。梶の、上官を絞め殺すシーンはこの人間の條件という作品でも屈指のハイライト。戦争の悲惨さをダイレクトに伝えるエピソードとして重く、考えさせられるシーンだ。美千子はどうしているだろう?左遷された沖島は?老虎嶺ではまた岡崎の搾取が再開されただろう。王はちゃんと逃げおおせただろうか?人間の隣りには人間がいるのか?悲しい第四部であった。
9点(2004-02-01 21:45:24)(良:2票)
8.  老人と海(1999)
この映画は、「レンブラント技法」と呼ばれるガラス板に絵を書いて、重ねていくという方法で造られているのですが、独創的で美しい映像が大きな魅力になっています。ストーリーも原作に忠実で(カットも挿入もない)、ヘミングウェイの名作を完璧に映像化したと言っても過言ではないと思います。NHKのTVで観たのですが、完全にファンになってしまいました。どう考えても量産できるタイプの手法ではないので、数年に一本になるとは思いますが、この監督には是非頑張って欲しいと思います。
9点(2003-12-13 14:06:58)
9.  チンピラ(1996)
僕が青山作品が大好きだからそう思うのかもしれませんが、「実はすごくいい映画なんじゃないですか?」と真剣に思います。ストーリーは、84年の映画のリメイクなんですから、そのまんま古臭いチンピラ映画という感じです。しかし、感動という言葉が適切かどうかはわかりませんが、なんとも言えない不思議な心の高まりがありました。「うぉー!」と言いたい気分なんですが、これは涙を流すような性質の心の高ぶりじゃないです。観ていない人に薦めたいのが、とにかく大沢たかおとダンカンの演技が最高です。大沢たかおの、チンピラな社会に揉まれてガサガサに擦り切れていく感覚(下手な言い回しですが、)は、恋人役の片岡礼子との関係もあってとてもいい味をだしています。この時の片岡礼子も非常にいいです。しかし、それにも増してダンカンの「望んでもいない、意識してもないのに何故だか転落してしまう男」という存在は、「そうとしか生きられない運命」をすごく的確に示していて、「そういう人生」ってなんというか「哀れだなぁ」と同情とか憐憫だとか、とても切ない気分になりました。(しかし、ここで青山真治は涙を流すような描写をしたわけではない。)ダンカンは本当に、本当にいい俳優さんだと思います。一番好きなシーンはセスナを発見した瞬間です。この瞬間の顔がいいです。それに、その後の会話もいい。他にも「みっちゃん~」の歌がまた切ないんですよ、胸がキリキリ痛みます。話がこんなに単純なのに、こんなにガツンと心にくるとは思いませんでした。もう一度書きますが、この映画は涙を流すような描写は一切ありません、しかし切ない、しみじみと感じさせる映画です。
9点(2003-12-12 00:44:49)
10.  ワンダフルライフ
老婆とスタッフが面談をしているシーン、赤い服を着て踊っていた幼女時代の思い出を語ったお婆さんの所で、いきなり何の前触れもなく「ドドドドド」と感情が湧き出てきました。普通、感動する時と言えば少し前から「感動するぞ感動するぞ」というサインが頭の中で点灯していて、涙腺がちょっとウルウルなって、背筋にちょっと緊張感が走って、ジワジワジワジワと感情が高まっていくものなのですが、今回は突然何の予告もなく来ました。ビールの缶を開けたら実は炭酸が思いっきり振ってあって、いきなり発泡して慌てて「うひょー」と思ってしまうように、自分の中から溢れ出した感情をどう処理すればいいのかわからず、それよりまず第一に何故こんなシーンで感動してしまったのかわからず、ビデオを一時停止するくらい狼狽してしまいました。ホントこんな経験初めてです。「なんだったんだろう?」と振り返ってみるに、上手く言えないんですが、「生きた喜び」みたいなものをシンプルかつ素直に、真正面から表現していたからなんじゃないかな、と思います。観終わって、ぼーっとしながら考えてみると、映画全体を見てみても、ストーリーが秀逸、俳優も良く揃えてあり、映像も素敵、どれも素晴らしいものです。しかし、何よりこの映画の主役は「もし自分が死んだら・・・」ということを真剣に考えて、ちょっとテレながら思い出を語ってくれた素人の出演者の方々だと思います。彼らは、どんな俳優さんよりもリアルで、美しかったです。本当にいい映画を観たと、満足している次第です。
9点(2003-12-02 14:48:36)(良:1票)
11.  A2
Aの続編ですが、合わせて4時間ぶっとおしで観てしまうほど熱中した作品です。コンセプト、何を伝えたいのかはっきりしないところの多かった「A」に比べて映像的にも観やすくなっているし、解りやすくなっていると思います。荒木浩氏は、なんだかずいぶん老けたように見えますが、やはり心労と食事面が厳しいのでしょうか?「A」からの変化にちょっと驚きます。右翼の登場するシーンなど、ドキュメントにしても凄いなと感心する、ビックリするほどの取材能力です。アレフ側のみじゃなく、もっと広い視野を取り入れているところなど、前作よりもグレードアップしている感もあります。それにしても、これは考えさせられる作品です。是非、是非おすすめ。
9点(2003-11-23 20:44:33)
12.  
この作品を観て、オウムが一番メディアに取り上げられていた、僕が中学生だった頃の事を思い出しました。僕はその当時、彼らの拠点の一つ(それは松本サリン事件や坂本弁護士殺害事件などの一連の事件よりもかなり早くからあった。)の近くに住んでいたのですが、テレビの中の"現実"、それは日常から遠く離れたフィクションに近い"現実"と、自分の身近にある"現実"のニアミスに興奮し、テレビに熱中していました。一億総オウム評論家と誰かが揶揄していましたが、僕の愚かな頭の中にはどのサティアンにどんな施設が隠されているか、オウムの幹部の人物像と宗教名、それに警察の動きなどがこと細かく納められていました。今はもう、その当時どんな気持で彼らに熱中していたのか、はっきりとは思い出せないのですが、(もちろん、オウム自体の詳細なんて完全に霧散している。)ただ、「オウム信者がカッターナイフ所持で銃刀法違反で逮捕」というニュースに大きな疑問を感じた事だけは記憶しています。その当時、僕の性格ならばたぶん周囲の大人にこの疑問を尋ねたはずなのですが、その返答はまったく記憶に残っていません。適当にあしらわれたのでしょうか、それともきちんとした返答を受けたにもかかわらず僕が記憶から失ったのでしょうか。どちらにしても、納得はしていなかったはずです。(だから違和感だけが残っている。)気付けば僕は、その当時の僕なら「大人」だと思った年齢にまでなっていました。僕が、あの時の僕を納得させられるかは自信がありません。あれから僕は何を考えて生きてきたんだろう?何を学んできたんだろう?そんなことを考えました。あの当時、"正常"と言える眼で事件をみつめていた人がどれだけいたのでしょうか?いや、過去に限ったことではなく今、9.11後の世界を冷静に見詰めることができる人がどれだけいるのでしょうか?澄んだ瞳で、世の中を見渡せる人間になりたい。そんなことを考えました。
9点(2003-11-23 20:37:18)
13.  青い春 《ネタバレ》 
"青春"という言葉は、漠としてつかみどころのない、あの年齢でしか認識する事が出来ない言葉だと思う。高校を卒業して数年経って「あの頃は青春してたな」と思い出す時の"青春"は、実際に10代の僕が感じた"青春"とは異なっているだろう。あの時感じていた感情を、僕はいま「自分を認めてくれない社会への不満と将来の不安」と言葉にするけど、たぶんそんなに簡単に言い表せる言葉でもない。その時は確実に感じていた、けれどもはっきりと言い表せない、それが青春だと思っている。そんな"青春"の空気を見事に映像化したのがこの映画。冒頭の度胸試しから観客を虜にし、九條と青木を中心として話が進む。このメインキャストにおける起承転結に、木村・吉村のエピソードをクロスさせ、最初は爽やかですらあったシーンは気付けば"青春"という鬱屈に塗りつぶされている。だんだん暗くなってゆく展開の中で、九條が一人妖しく光る。繊細さと凶暴さ、それが美しさのなかで龍平が一段と映える。最後のクライマックスに鳴り続けるギターは、青木の存在まで切り裂く。 観終って、僕が初めてミッシェルのCDを買った日のことを思い出した。ミッシェルを聴かなくなった時、僕の青春は終わったのかもしれない。 
9点(2003-11-04 01:44:21)(良:1票)
14.  ポーラX 《ネタバレ》 
残念ながら、僕はこの作品に対してまだまだ理解ができていない。そこで自分なりに考える手段として、いくつかのフラグメントを書き出してみる。 ピエールを愛するマリー(母であり姉と呼ばれる)、イザベル(姉と名乗る)、リュシー(恋人)の3人の女性。血縁のある2人の女性は自殺し、恋人はピエールを待つ。同様に血縁のあるティボーも死亡。 ピエールの最初のペンネームは"アラジン"作品名「光の中へ」、後に"ロック"と名乗る。 イザベラの出身地は「東側、内戦、黒髪」を考えると旧ユーゴ? 外交官の父は栄光を掴むが、のちに失脚する。 「人間は臭い」がきっかけで少女は死亡する。ピエールは「よかれと思った。」 3人が身を寄せた集団は"音楽"と"軍隊"を基礎とする。指導者は「世の嘘を見抜く男」。 ピエールの構想は編集者からは「古い」「ピエールの本質は未熟」「世間を断罪すると、必ず自分に返ってくる」などと否定される。 "ロック"の作品は「混乱と妄想の産物で、模造」と批判される。 これは、映画のプロットで重要と思った部分のみ挙げてみたものです。他に気になったのは、セックス描写に力を入れていた事と、集団に対して批判的な描写をしていない所、集団の住居で扉の描写に力を入れていた事。まだ理解できていないが、この3つは大きなヒントになりえるのではないかと思う。現在の自分の理解はまだまだ中間地点なので、いくつかの作品との相互関係を考慮して、ゆっくりと頭の中でこねまわして理解が深まってゆければいいなと思う。個人的に、僕は難解な作品を「監督の自己陶酔」と片付けるのだけは嫌なのでどうしても理解したいと思っている。なんだか、わからないものをロジックもなしに批判すると馬鹿っぽく見られそうで嫌だ。映画の観方・楽しみ方なんて人それぞれなんで、一度観て終わってもいいし、ずーっと考え続けてもいい。一度で終わる人が多くて、その総意でこの作品が「駄作」と片付けられても別にいいし、この作品が平均5点でもしょうがないかな、と強がりを言ってみたりする。
8点(2004-03-15 18:10:57)(良:1票)
15.  人間の條件 第三部 望郷篇 《ネタバレ》 
この作品に対して、僕はとても悩んでいる。この作品が日本映画史に残る名作であり、俳優の熱演と、スタッフの努力と、熱い信念によって成された大作であることはわかる。戦争や民族差別という絶対悪に対抗しようとする一人の男。最初、紅い思想にその理想を求めるも、彼は気付く。そこにも彼の求めるものはない。重苦しい戦争の中で疲弊してゆく彼は、ただ、愛する妻の胸の中に戻りたいとだけ願い、死んでゆく。このプロットが素晴らしいことはわかるのですが、どうしても梶をあの正義感に走らせる原動力がみつからない。人が強くなるとき、それは宗教、思想、愛などいくつかあるだろうと思う。しかし、この映画の中の梶にはそれが見つからない。美千子への愛にしても、思想にしても、正義感に付随するもので、それはその原動力とはなりえていない。あえて言えば、一昔のハリウッド映画の主役のように、気は優しくて力持ち、頭がキレて正義感がある、理想化した英雄像に成り下がってしまっている。これが哀しくて仕方がない。この第三部では、家庭のいざこざと軍隊の厳しいシゴキに耐え切れずに自殺してしまう二等兵小原が登場する。彼の、自殺に追い込まれるまでの過程や、自殺の瞬間の悲哀はなんとリアルなことか。そして美千子と梶の一夜の逢瀬。美千子の裸を求める梶と、それに応えて泣く美千子の涙。素晴らしいシーンだと思う。 しかしながら、後半の吉田への憎悪、また丹下への投合の部分は、その描写の少なさから妙に違和感を感じるもとになっている。歴史的な大作にそれを求める事はいけないことだろうか?
8点(2004-01-20 17:53:47)
16.  海と毒薬
前半、結核患者の手術に際して白黒の画の中で流れる血が、白黒なのに異様にリアルで赤く見えそうなほどで、震えながら観たことが鮮明に記憶に残っています。その時はまだ、僕は原作を読んでいなくて、「白い巨塔」のような医師の世界の矛盾だとか、戦争の悲惨さを伝える映画だと思っていました。しかし今は、もっと深い宗教性と、「白い人・黄色い人」に近い日本人ゆえの悲しみに似たものを感じています。特に、ラストでの勝呂と戸田の会話は、どちらも、この社会の真理の一端を突いており、「殺人」を犯した者が得たことが何だったのか、それを語っているように感じました。また、原作では愚鈍で純朴な印象の強い勝呂医師を、奥田瑛二という適役だとはとうてい思えなかった俳優さんが見事に演技していることに意外な驚きを感じました。それに対してクールな戸田に渡辺健を持ってきていることには二重の驚きでしたが、その役を上手く使いこなせていたと思います。ヒルダ夫人と上田看護婦のエピソードは非常に大きなインパクトを与えています。大連で死産になった子供が、ちょうどヒルダ夫人の娘と同じくらい。「白人の肌って切りにくいのかしら?」と口走った彼女の、冷たい心のうちが透けて見えます。 原作を読んでいる方にですが、実は遠藤周作の「海と毒薬」には続編があります。「悲しみの歌」というタイトルで、「海と毒薬」とは全く違った毛色の作品ですが、勝呂医師のその後をこの作品で読む事が出来ます。
8点(2004-01-19 06:37:54)
17.  人間の條件 第二部 激怒篇 《ネタバレ》 
この映画の世界は、一人梶の腕で支えられているのだろうか?昔原作でこの作品を読んだとき、僕はひたすら梶に熱中して読んでいた。その見方で行けば、美千子は梶の付属でしかなく、梶の心の支えとなり、迷いとなり、原動力となるその存在であった。しかし、ここで美千子を生身の女優が演じていることで、美千子が俄然存在感のある登場人物として輝きだす。美千子にとって梶とは全てであり、その尽くすべき愛すべき相手であるのに対して、梶にとっての美千子は何だったのであろうか?生まれながらの羊飼いの番犬に、その仕事以外は必要ないのであろうか?この作品を通して現れる梶の不器用さ、先に”愚”という文字がくるほどの愚直さ、ある種のペシミストぶり、さらにスーパーマン的な万能な才能は、時間が経つにつれて美千子から梶を引き離してゆく。これこそ美千子を主役とした悲劇である。この映画の中で残念なことは、原作にある王享立の手記がカットされていることである。梶と王享立という「人間の隣りの人間」の関係性がはっきりと描写されず、何故に梶がそれほどまでに王の主張するヒューマニズムに感化されていくのかがわかりにくい。飼い主に歯向かい始めた梶の行動が、正義感という一元的な感情ではなく、自尊心や戦争に対する悲観や、独善的な生への渇望とない交ぜになったところをもう少し見て取れたらなと思う。今回のキーとなる岡崎の心の動きは良かったと思う。彼の平衡感覚と、正直な恐れや嫌悪感、反抗的意志は、これからの梶と比較する上でいいインデックスとなるのではないか?
8点(2004-01-17 18:00:33)(良:1票)
18.  人間の條件 第一部 純愛篇
僕は昔から、映画よりも読書に熱中していた学生で、この作品も原作を高校時代に読みました。それまで戦争といえば遠藤周作の「海と毒薬」程度のもので、本格的な戦争小説を読んだのはこれが初めてです。また、父が初めて僕に薦めた小説である事も印象に残っています。父はこの小説の内容をきちんと把握できる年齢になったと判断したんでしょう。渡されたこの本の奥付けには、僕が生まれる前の1974年62刷という刻印があります。僕は、この作品を震えながら読みました。日本軍の残虐さ、社会の矛盾と汚職、それと闘う梶の熱い正義。今思えば僕はこの小説を本当に理解できていたとは言えなかったでしょう。日本人としての自分に軽く鬱になったことを覚えています。それから僕は大学に入り、この作品のことも忘れていました。書架の片隅に並べてはいたものの、手にとるたびにその世界が重く蘇り、読み返すことはありませんでした。そんなとき、この映画に新規登録要望が出されていることを知りました。いつも行くレンタルビデオ屋には5本並べて置いてあります。キネマ旬報でかなりの評価を受けていることも知っています。そこで、初めて僕はこの作品に再度向かい合うことになったのです。キャストは全て日本人。仲代達矢と新珠三千代は、今からすれば古臭い演技ですが、かなりの熱演をみせています。国内での撮影だと思われますが、荒涼とした満州のステップ、砂嵐、そして坑道にいたるまで綿密にロケーションが組まれていることがわかります。小説の世界をイメージ化する力は存分にあることがわかりました。これから凄惨な世界が幕を上げる、そう思うと次の巻に移るのが恐ろしい、そんな気になりました。
8点(2004-01-16 01:15:19)
19.  贅沢な骨 《ネタバレ》 
この作品を二回目に(というのも、一度目は麻生久美子の裸の無いベッドシーンに「何故だ?」とか思いながら観たので、邪念が渦巻いていた。)観た感想ですが、真面目に観てみると三人の心理描写がハッキリと描かれていて、その心の動きの見事さに素晴らしいと感じました。特に上手く描かれているのがサキコの心理ですね。父親と義母に「汚い」と言われた単純なトラウマかと思いきや、後半で継母を登場させる事によってもっと複雑な心の鬱屈を感じさています。新谷さんに打ち解けるまでの心の機微も、つぐみの表情が見事に表しています。それに対してミヤコも、サキコを新谷さんに託す気持と、その後悔、嫉妬、自らのサキコへの愛の確認をその表情、行動、手指の小さな動きが表していて、とてもいい演出だと思いました。新谷さんですが、さすがに永瀬正敏は外しませんね。静的な動きと動的な動きが持ち味の彼ですが、それが上手く苛立ちや戸惑いとして表現できていたと思います。ミキサーの中の金魚という設定も、かなりきわどいですが、観るものがドキドキとして手に汗握るような、映画の緊張感を増していい小道具となったと思います。と、ここまで書いて思ったのですが、少々わかりやすく造り過ぎなのではないかと思います。心の中のセリフや、ミヤコのサキコへの告白など、表情やしぐさで伝えられていたぶん、口に出してしまうとちょっと作品が重くなってしまったのではないかと思います。それに、暗喩が直接的過ぎて、もう少し難解でもいいくらいのものでした。しかしながら、心理描写をきちんとおろそかにせずに描いた作品として、日本映画ではとても気持のいい作品だと思います。僕は、こんな真面目な映画をもっともっと評価して欲しいなと思いました。
8点(2003-12-29 12:09:56)
20.  クロエ(2001)
ともさかりえさんって、非常にいい演技をする女優さんなんですね。一言で言えば、自然体。映画らしくなく、まるでほんの横にいる彼女と会話しているような、どこにでもある、普通の会話を上手く表現しています。それが一番良くあらわれていたのは、「え?」とか「なになに?」とかいう瞬間の演技。眉間の皺、ちょっととがった口許、困ったような眼、どれも媚びるわけでなく、甘えるわけでなく、突き放すわけでなく、お互いの距離を表情だけで演出してしまうのは、その上手さに感服したという気持です。それを、少しずつ、少しずつ病気の進行とともに変化させていったのは、監督の力でしょうか、女優の力でしょうか、本当にこの演技には驚かされました。それにあざといと感じる方もいるかもしれませんが、篠田昇の映像力。(岩井監督作品の撮影もほとんど彼。)彼は光線の使い方が秀逸です。現在、日本で日光を映したら一番のカメラマンなんじゃないかと思います。ストーリーのファンタジックさに少々無理があったのが惜しい気がしますが、"キタノ"という設定やそれにつながる英助とヒデミのストーリーの流れに、心を締め付けられたので良しです。神の存在や、何のために生きてんだ!ってことにもう少し突っ込んでくれたら・・・と、期待の8点です。 あ、そういえばキタノ役は青山真治でしたね。青山監督映画「EUREKA」に出演した利重剛と、利重監督映画「クロエ」に出演した青山真治。「ベルリン」助監が青山真治だったことも考えれば、なんだか深いつながりを見て取れますね。しかし、俳優としては圧倒的に利重剛が上手い!
8点(2003-12-25 12:36:48)
全部

■ ヘルプ
© 1997 JTNEWS