1. 資金源強奪
刑務所に収監されるまでの一気呵成の展開は苦手な深作監督テイストで冷めた目で眺めていました。そこから結末まで一瞬たりとも目が離せず、大藪晴彦作品を思わせる女に溺れない清元武司(北大路欣也の肉体美とギラギラ発散するオーラに惚れ惚れ)と黒川博行作品を思わせる軽妙洒脱な能代文明(梅宮辰夫の味わい深い演技に北大路欣也以上に惚れ惚れ)を軸にキャスト全員が躍動していました。ギョッとした空港シーンでの結末もお見事。大傑作。 [DVD(邦画)] 10点(2019-05-15 19:37:35) |
2. 狐の呉れた赤ん坊(1945)
寅八の一挙手一投足、一言一句に胸を打たれました。質屋の親爺さんの言葉も胸に染み入るものでした。終戦直後の制約の中でこれほどの作品が作りあげられた事にも深く感動しました。 [DVD(邦画)] 10点(2014-07-04 22:15:19) |
3. 丹下左膳餘話 百萬兩の壺
完璧な脚本と演出と展開でもって、左膳、お藤、安吉、源三郎、萩野の味わい深い面々が織りなす人情時代劇に、爆笑し、苦笑し、ホロリとし、ハラハラし、これ以上ない心地良さに感動し通しでした。痛快無比の大傑作に出会えた事にも感激しています。 [DVD(邦画)] 10点(2011-10-25 20:41:43)(良:2票) |
4. マルサの女
伊丹監督作品の中でこの作品が私にとって最高です。知恵と度胸の板倉亮子への憧れと、査察部の面々の一丸となっての仕事振りを観た時の羨ましさは、当時も今も変わりありません。受けて立つ権藤との攻防は手に汗握りました。この作品を作り上げた方々の一丸となっての仕事振りにも敬意を表します。 [映画館(邦画)] 10点(2004-09-13 00:58:02)(良:1票) |
5. 飢餓海峡
《ネタバレ》 三時間の長さを全く感じなく、片時も目が離せませんでした。十年ぶりに再会したシーンに考えさせられます。願いを叶える事を心の支えに生きている時の幸せは成就した時に終わりとなる。ままある事なのでしょう。犬養の涙は八重を思ってのものではなく自身を思ってのものでしょう。犬養の自ら幕をひいた行為に、人の一生は大小の差はあれ飢餓の中で過ごすものであり、如何なる時においても貪り尽くす行為は身の破滅を招く事を知らしめられます。日本映画ここにありの作品です。 [ビデオ(邦画)] 10点(2004-07-13 17:10:41) |
6. 鬼畜
ラストの親子のシーンは、自分が見た日本映画の中で最も印象に残るものである。高校生の時以来何度見ても泣けて、泣けて、泣けて・・・映画を見て涙した唯一の作品。 10点(2003-12-23 20:35:45)(良:1票) |
7. ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー
休みが一日だけ一致した娘と共に鑑賞。 その昔家族5人で熱中したスーパーマリオ64。 大迫力映像に魅入り無敵モード音楽に鳥肌。 大満足で劇場をあとにして二人で思い出話に花を咲かせたひととき。 製作に携わった皆様に唯々感謝であります。 [映画館(吹替)] 9点(2023-05-05 19:44:04)(良:2票) |
8. 女渡世人 おたの申します
《ネタバレ》 数ある切った張ったの作品の中で傑作と呼べる出来映え。渡世人としての筋を通す生き辛さ、手を差し伸べてあげた堅気のオバサン達に刺すような視線で毛嫌いされ、業火の中命懸けで救い出した赤ん坊をひったくるように取り上げられすすり泣く姿がやるせない。そんな彼女に「姐さん、やくざは日蔭の花だ。日向に咲こうなんて考えたら、てめえが惨めになるだけですよ。どんなに日蔭に咲こうが、おめえさんの花の美しさは、私にはわかっています」静かに語りかける菅原文太に鼻の奥がツーンと。渡世人としての意地を貫き通した姿は彼の言葉通りに息を呑む美しさでありました。 美しいと言えば、私的「この世にこんな美しい人が居てるのか!」ランキングはアヌーク・エーメ、ジェーン・シーモア、キャロル・ブーケ、ナスターシャ・キンスキー、ブルック・シールズでありますが、藤純子がアヌーク・エーメの次にランクインしました。 練り上げられた脚本、キャスト全員の名演、道行きシーンが無いのを始めとする大胆でキレの良い演出、お見事。拍手。 [DVD(邦画)] 9点(2022-04-10 01:04:53)(良:1票) |
9. 美女と液体人間
初見。50年前位にTVで観た「人食いアメーバの恐怖」で理髪店シャンプー台から徐々に湧き出たアメーバに気づかず青年の頭を突っ込む・・・唯一記憶に残るシーンが蘇りました。また観たいですね(思わされたところに+3点)。 観るに堪える起承転結で映像も精一杯頑張っていてまずまず楽しめました。瑞々しい平田昭彦の台詞回し&歌う姿のすらりとした白川由美のお姿が好印象です。 [インターネット(邦画)] 9点(2021-04-25 13:29:15) |
10. 長い散歩
50歳を超えてから涙腺が弱くなったのですが、それ以前に映画で泣いたのは2作のみで共に緒形拳さん。敬愛する俳優さんの中で永遠に絶対一位の存在であります。15、6年ぶりのお姿はやはり沁み入るもので、正座して慟哭する姿は「鬼畜」が重なりやはりすすり泣きが止まらない堪らないシーンでした。虐待されて育った母親がわが子を虐待する連鎖、妻子を蔑ろにして仕事を勤め上げた男の懺悔。最小限の台詞と最小限の回想シーンは出来事の本質を考えさせられるもので、監督の手腕が冴える秀作です。 人生は長い散歩・・・ですね。 [インターネット(邦画)] 9点(2021-03-16 15:25:44) |
11. 赤ひげ
《ネタバレ》 初見。赤ひげが仕切る小石川養生所を舞台にした新米医師保本登の成長物語。弱き者には慈悲深く強き者からは金を巻き上げる三船敏郎の重厚さに対する加山雄三は清々しくて凛々しくて引けをとらない存在に驚く。赤ひげが語るところの「病気の陰には恐ろしい不幸が隠れている」が、各エピソードによって示される。狂女の帯使い、蒔絵師の娘の絞り出すような一言一句、佐八とおなかが再会した時の風鈴の音、床を磨くおとよ、また盗みをしてしまった乞食にしときゃよかったと謝る長次。言葉通りの恐ろしさとやるせなさでとにかく息苦しい。そんな中にあって賄の4人が見せる人情が殊更胸に沁み、この世も捨てたものではないと思わされる。井戸に向かって長次の名を叫ぶおとよの回復した姿は保本にとって医者の務めを果たしたと言えるのでしょう。赤ひげが枯れ木を折るように手足をへし折る立ち回りシーンがマイナス0.1。製作に携わった全員の渾身の思いが感じられる傑出した作品。感服しました。 [DVD(邦画)] 9点(2016-05-31 01:51:11)(良:1票) |
12. 有りがたうさん
テレビのドキュメンタリー番組のようなロードムービー。悲哀と疲弊に満ちた人々の世相を、これ程までに温かく明るく描き切られている事に感嘆。単なる能天気ではない、酸いも甘いも噛み分けた有りがたうさんが発する「ありがと~」の響き共々余韻の深さが凄い。清水監督は溝口・小津・山中監督が「天才」と呼んだらしいが、納得させられる不思議な味わいを持つ作品。 [インターネット(字幕)] 9点(2016-01-08 22:27:24) |
13. 人情紙風船
《ネタバレ》 無言で懐剣を抜くおたき。その背中は泣いているかのようで鬼気迫る姿に息を呑みました。ひたすら媚びへつらう又十郎の姿と併せて考えさせられる武家のプライド。小悪党新三や長屋の面々のしなやかな力強さとの対比が鮮やか。巧みな展開と見せない演出の見事さと、おたきの意地の象徴が流れ去るラストショットに感服です。 [DVD(邦画)] 9点(2014-06-01 01:47:27)(良:1票) |
14. 日本のいちばん長い日(1967)
理性無き愛国心の恐ろしさを黒沢年男と天本英世の鬼気迫る言動から痛感させられます。戦争を終結させた天皇陛下のお姿に、開戦阻止が叶わなかった残念さをあらためて感じました。陛下は民を思って涙なされた。すすり泣く幹部達は何を思って涙したのか。綺羅星の如き俳優陣。一人一人が歴史の証人として後世に伝えたいという気迫でもって見せた史実に2時間半もあっという間でした。 [DVD(邦画)] 9点(2013-09-25 22:19:13) |
15. 探偵はBARにいる
大泉洋と松田龍平のコンビは刺身と刺身のツマの様で絶妙。脇を固める面々も高嶋政伸をはじめいい味を出しています。ギラギラしていて雪を融かすかのようなエネルギッシュな街を舞台に彼らが織りなす物語は見応え十二分で惹き込まれました。けたたましい男性及び大泉洋は苦手なのに魅力を感じるなど・・・我ながら不思議であります。黒電話とマスターの昭和テイストも素敵でした。 [DVD(邦画)] 9点(2012-10-01 23:47:05) |
16. 洲崎パラダイス 赤信号
おどろおどろしい娼婦ものかと思いきや、人情味溢れるカラリとした青春物語。最大の功労者は飲み屋のおかみさんで、彼女を中心に物語は回っていました。さらに玉子ちゃんの瑞々しさが作品に彩りを添えていました。起承転結全てが見事な一品。 [DVD(字幕)] 9点(2012-10-01 00:33:52) |
17. サンダカン八番娼館 望郷
《ネタバレ》 後世に語り継がれるべき作品。「人にはその人その人の都合ちゅうもんがある」と語る、多くの人の身勝手な都合によって幼年から老年まで辛酸を舐め尽くしたおサキさん。それなのに田中絹代演ずる彼女の姿は菩薩様でした。 [DVD(邦画)] 9点(2011-08-16 18:55:51) |
18. 近松物語
《ネタバレ》 上下の隔てのある不義密通。命で償わねばならぬ時代に自分の心に正直に生きた二人。手を繋いだ二人の面持から本懐を遂げた喜びを汲み取れる一世一代の晴れ姿が、覚悟の死地への行進であるラストシーンのこれ以上ない非情さ。その背中にかける言葉がありません。合掌するのみでした。 [DVD(邦画)] 9点(2011-06-22 23:52:34)(良:1票) |
19. 切腹
《ネタバレ》 生き恥を晒す事を良しとしない侍、妻子の為に恥を忍ぶ侍、竹光で切腹を強要する情けを見せぬ侍、お家の体面第一に幕を引いた恥を知らない侍、主君に忠義を立てて切り死にした家臣達。それぞれの境遇での武士としての価値観が、見事な脚本、端正な映像、重厚な演技により浮き彫りにされます。半四郎の覚悟が那辺にあるかが明らかになるまでの息詰まる緊迫感、明らかになる瞬間の鬼気迫る姿は何度思い返しても痺れます。結末に、皆が絶対的な善にも悪にも断ぜられなく、詰まるところ「恥」が命のやり取りになってしまう武家社会そのものの功罪に考えが及ぶ作品でした。 [映画館(邦画)] 9点(2009-09-23 21:04:36) |
20. 残菊物語(1939)
《ネタバレ》 風雪や泥に耐えた上下の隔てのある恋が報われる舟乗り込みのシーンはまさに圧巻。お徳の身は灰となってもその魂は菊之助に生き続けるのでしょう。一つ一つ丹念に作り上げられたシーンが一層心に染入ります。 [DVD(邦画)] 9点(2009-08-20 02:19:00)(良:2票) |