241. 戦争のはらわた
血まみれサムの異名通りの戦闘描写を観ているうちにどうした訳か眠くなってしまいそのままリタイアする事4回。ジェームズ・メイソン出演作なのでこのままじゃアカンという事で私的禁じ手のネタバレ起承転結を読んでから鑑賞し5日目にしてようやく完走できました。あ~、しんどい。シュトランスキー大尉のキャラやシュタイナーが「全ての将校が嫌いだ」と大佐に言い放つのに監督の私怨が重なって見えました。ストーリーは戦況も作戦も戦術もなく「攻めてきたぞ~」「迎え撃て~」(インディアンの襲撃のよう)の繰り返しであり、これでもかのスローモーション映像が退屈。ジェームズ・メイソン演ずるブラント大佐の人物像も何の魅力も感じず。かなり面白くない作品でした。シュトランスキーがトリービックに「彼(ブラント)の声の調子が嫌だ」と吐き捨てるのに、何ちゅうこと言うんや(怒)、もしかして監督もそう思ってるのかなぁ(笑)すごく印象に残るシーンでした。 [DVD(字幕)] 3点(2018-06-20 14:20:20) |
242. 謀議<TVM>
《ネタバレ》 1942年1月20日にヴァンゼー湖畔の邸宅(元はユダヤ人宅)にて開催されたヴァンゼー会議の模様が描かれた作品。党・内閣・省庁・国務事務・治安機関・占領地責任者・親衛隊の15名の出席者の内13名が知らされていなかった議題は「ユダヤ人問題の最終的解決」議長ハイドリヒと腹心アイヒマンの中では方針及び方策は決定済みであり、本件の権限を親衛隊に集約させる事も含めて全会一致の可決に向かって会議を進めてゆく。各々の立場から出される意見はユダヤ人を人間と思っておらず、口蹄疫の対策会議のよう。とりわけ印象深いのが激しく反対したニュールンベルグ法作成者のシュトゥッカートの「抹殺は法にもとるもので強制去勢で種を絶やせ、その際の混血におけるユダヤ人の定義を明確に」コリン・ファースの熱演もあいまって腸が煮えくり返った。人間が持ち合わせている感情から反対したクリツィンガーとて度合いが少ないものの鬼畜に変わりない。 他作品でゲスの権化だったハイドリヒは物腰は柔らかいものの発言の封殺や個別の恫喝で着地点に向かって突っ走り、アイヒマンは執事のように物静かにハイドリヒを補佐する。「白い巨塔」の教授会を見ているようだった。 後片付けする邸宅の使用人達も無邪気に雪合戦をして主人を待つ運転手達もヨーロッパ各地のユダヤ人達も謀議の内容を知るはずもない事が何ともやるせない。アイヒマンによって破棄された会議資料の内、戦後発見された№16のコピーの所有者はクリツィンガーだったのだろうか。 ほぼ全編に亘る室内会話劇は緊張が途切れない見応え満点の秀作。 [DVD(字幕)] 8点(2018-06-18 15:38:53)(良:2票) |
243. バグダッドの盗賊(1940)
1940年製作のイギリス映画での映像美は、映画の旧称が活動写真と言われたのを思い起こさせる動く写真の魔力をまざまざと見せつけられるもので心底惚れ惚れしました。孫が小学生になったら是非とも一緒に観たい、それまで自分が元気でいなければ、その為にすべき事をし、してはならない事をしないようにしなければと痛感させられた作品。 [DVD(字幕)] 9点(2018-06-17 20:40:09)(良:1票) |
244. 銃撃犯
発見された多数の射殺体の中で唯一の生存者であるアランが、身代金目的の誘拐事件被害者ウィリアムスの行方を追う警察の聴取に答える形で進む物語。 8年ぶりに会いに来た腹部に銃弾を受けている息子ダニーからの、自分が死んで妹の心臓移植のドナーになる。代わりに誤って殺してしまったウィリアムスの替え玉になってくれ。金を受け取ったらボスは人質は殺すだろうからその時は死んでくれとの申し出を、愛する娘の為に、そして過去のダニーへの非道な仕打ちの罪滅ぼしにと受け入れる。 ダニーのコロコロ変わる作り話に何が真実なのか分からずにたどり着いた結末に、どんな親でも親に違いなく、どんな子供でも子供に違いない血の繋がりを思わされる。 こういう父親像を何度か演じてはまり役であるジョン・ハートは今作でも今になってそんなに苦しむという事を当時は分からんかったんやねというアランを好演して存在感を示している。 キャリー=アン・モス演じるリーが中途半端な悪役で盛り上がらなかったのが駄目な邦題と共に残念なところ。 [DVD(字幕)] 7点(2018-06-15 00:33:09) |
245. 三十九夜
事件に巻き込まれた男が追われながらも追う展開がテンポ良く進み片時も目が離せない。男ハネイに今一つ深みがないのが物足りないものの、瑞々しいロバート・ドーナットの熱演が光る。「そういうことか!」と驚くと共に「それ、ペラペラ口にするか?」という真相が印象深い。秀作に対する邦題のセンスの無さに呆れる。 [DVD(字幕)] 7点(2018-06-11 03:32:31) |
246. ピグマリオン
「決然とした眼差し」というとジョン・ギールグッドに次いで思い浮かぶのがウェンディ・ヒラー。26歳時の本作でもその片鱗が見て取れ、加えて瑞々しい美しさに見惚れる。ヒギンス教授の他人は全て愚かであるとする言動に嫌気がさし、二人の仄かなロマンスにも感じ入るものがなかったのが残念。 [DVD(字幕)] 7点(2018-06-08 16:42:42) |
247. 四枚の羽根(1939)
《ネタバレ》 代々軍人の家系で父親が将軍であるハリーは詩を愛する少年。成長して否応なく入隊したものの出征の段になって婚約者エスネを思い除隊する。 周りの非難の中で従軍した親友三人から卑怯者の証である白い羽根を送られ、エスネまでも彼に白い羽根を。 借りを返す一念からアラブ人に化け(その際額に焼きゴテをあてられるのに耐える)一敗地に塗れた三人の命を救い、ハルツーム奪還に貢献する。その常人を遥かに上回る勇敢さは製作年から戦意高揚を思わされると共に良心的兵役拒否について考えさせられた。 何度も泣かされてしまったのがラルフ・リチャードソン演ずるジョン・ダランス大尉。 失明し全滅して誰もいない砂漠で自殺をはかる姿に。思いを寄せるエスネの名を口にする姿に。自分の命を救ってくれたのがハリーだったと知った際にエスネに宛てた手紙に。 言いがかりの類だけど、ラストでのハリーの額に傷痕一つ無いのはいかがなものか。彼の生き様の証なのに。-1点。 砂漠での大迫力の戦闘シーンが人間ドラマに花を添える力作。 [DVD(字幕)] 8点(2018-06-07 00:27:52) |
248. ハムレット(1948)
今作のローレンス・オリビエにかけた期待がハズレでガックリ。表情から喜怒哀楽が滲み出ておらず、立て板に水の如く放つ台詞に何の重みも感じられない。というか監督・脚本・主演としてのナルシスト臭が鼻についてしまって、まさかメル・ギブソンに劣るとは思わなかった。オズリックがピーター・カッシングに似てるなぁと思ったのがその通りだったのが唯一の収穫。 [DVD(字幕)] 4点(2018-05-27 20:49:01) |
249. 荒鷲の要塞
《ネタバレ》 軍服が素敵だと感じたドイツ軍の余りにもマヌケな描かれ方に戦闘シーンの緊張感は皆無で、リチャード・バートンのアクションシーンも気楽に眺められる。彼が正体を現すのを今か今かと待っていた期待が外れたのが何とも残念。作戦の真の目的もお粗末な演出で何の盛り上がりもなくこれまた残念。作り方次第で傑作になった惜しい作品。 [DVD(字幕)] 6点(2018-05-26 19:56:35) |
250. ブラッディ/ドクターローレンスの悲劇
《ネタバレ》 「ロリータ」で三人が観ている映画に登場していたピーター・カッシング。怪奇役の第一人者と共演するジョン・ハート目当ての鑑賞。彫像が喋っているような端正且つ不穏な顔立ちでバイオリンなどを弾いているピーター・カッシングは豹変する事無く終了。何でやねん、アカンやろ。一方でカッシングの雇われ庭師であるジョン・ハートは終始一貫の狂乱模様で今回も女と格闘して反撃も食らっている、だけ。本作はジョン・ハートの役者人生において糧になったのか消えない過ちなのか知りたいところ。ローレンスのインドにおける悲劇が語られないのは脚本がそこで尽きたのか? 極め付けがお出ましになったグールで街中でたまにこういうオッチャン見かけるよなぁ、というシロモノに口アングリ。亡くなった妻の写真に実際に亡くなられた夫人の写真を使用したという名優カッシングにとっても不本意だったんじゃないかと思われる滅茶苦茶な作品。 [DVD(字幕)] 2点(2018-05-14 03:49:06) |
251. ロード・ジム(1965)
《ネタバレ》 お目当てジェームズ・メイソンの他にピーター・オトゥール、クルト・ユルゲンス、ジャック・ホーキンス、イーライ・ウォラック、ポール・ルーカス、エイキム・タミロフと重厚な俳優陣にビックリ。更に伊丹十三(この時は一三)出演に二度ビックリ。異国情緒溢れる舞台で、消えない過ち(事故シーンの迫力は特筆もの)に苦しみながら転落人生を懸命に生きるジムを熱演するピーター・オトゥールが素晴らしい。手に汗握った戦闘シーンの決着にハッピーエンドで良かったと思った時に、ジェームズ・メイソンが登場していない事に気がついた。??? 1時間48分を経過して、ペストよりも多数の人を殺したという鬼畜船長、人呼んで「紳士のブラウン」としてご登場。 クルト・ユルゲンスを子供扱いする貫録を示し、ジムの本質を見抜くあたりは流石の存在感。しかし、小汚い真似でジムを破滅に追いやる極悪人ぶりがステレオタイプで迫力に欠けたのが残念。 死をもって過ちの呪縛と訣別しようとするジムと彼を連れて帰ろうとするスタインとのやりとりに胸が詰まる。 長かったもののブラウン船長登場以降のシーンは本作にとって欠かせないものだった。 ジムの生涯を描いたスケールの大きい冒険活劇且つ人間ドラマとして十二分に楽しめた逸品。 [DVD(字幕)] 8点(2018-05-14 02:54:49) |
252. ウォーターシップダウンのうさぎたち
原作未読。野ウサギ達のサバイバル物語。水彩画のような風景とアート・ガーファンクルの澄んだ歌声が幻想的。一方で、ジョン・ハートを始めとする名優達の誇張の無い語り口で描かれる世界観は、弱肉強食、環境破壊、果ては全体主義までシビアであり小学生にはとてもじゃないが見せられない強烈さ。生き抜く事を考えさせられた余韻の残る秀作。 [DVD(字幕)] 7点(2018-05-09 13:46:25) |
253. ジョージー・ガール
《ネタバレ》 「自分の気に入らない役は絶対に引き受けない」と公言していたというジェームズ・メイソンが本作に出演したのが不思議。自分のお屋敷の使用人の娘ジョージーに恋をして愛人契約を迫りキスをし、奥さんがあっさりと亡くなって、挙句の果てに結婚までしちゃう。「ロリータ」の仇を本作で討ったかのようだけど大きく違うのはジョージーがおとぼけキャラですごいブサイクであること。唇を奪う前・最中・後の欲望が滲み出た生々しい目をこの娘に向けるのはアカンわ。何処にどう惹かれたのかさっぱり分からん。アラン・ベイツとシャーロット・ランプリングのどうしようもなく鬱陶しいアホバカカップルとは絡みなくコメディ劇の中で浮いた存在だった。笑うところも殆どなく主題歌もなんだかなぁ。「意外と面白くない」4点だけど、惚れ惚れする美貌で他人を切り捨てる姿を見せてくれたシャーロット・ランプリング20歳のデビュー作に「他人様に薦められなくもない」7点に。 [インターネット(字幕)] 7点(2018-05-08 00:59:44) |
254. 第七のヴェール
「ある日どこかで」のクリストファー・プラマーとジェーン・シーモアを彷彿させるニコラスとフランチェスカの関係。迫力に圧倒された二度のコンサートシーン(グリーグ:ピアノ協奏曲第1&3楽章、ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番第1&3楽章)において、フランチェスカを見守る屈折した男ニコラスの眼差しに、芸術だけではなく彼女も愛しているのが透けて見え胸をかきむしる思いに。ベートーヴェン:ピアノソナタ第8番第2楽章を弾くフランチェスカへの一緒にいてくれとの必死の懇願が聞き入れられず激昂する姿も切なさで身悶えする。恋敵二人はニコラスに敵うはずもないのだが刺身のツマの如く無くてはならない存在だった。本作で完全に虜となったベルベット・ボイスのジェームズ・メイソンに酔い、クラシック音楽も堪能出来た逸品。赤ワインを買ってきてもう一度最初から鑑賞しほろ酔い気分で3つのシーンを何度も何度も観直してはキュンキュン。映画って本当にいいもんですね。 [DVD(字幕)] 8点(2018-05-06 21:15:16) |
255. ブラジルから来た少年
ヨーゼフ・メンゲレという実在した鬼畜医師を演じたのが「アメリカの良心」ともいうべきグレゴリー・ペックというのに仰天。私だって一度はこういう役をやってみたかったんだよと言わんばかりの怪演が特筆もの。ナチハンターのローレンス・オリビエ(この人もメンゲレ役が似合いそう)との肉弾戦はご老体同士とは思えない迫力で、それ以上にドーベルマンとの肉弾戦もどうやって撮影したのだろうと思うもの凄い迫力。意図が不明な陰謀の全容が明らかになってゆく過程に引き込まれ、荒唐無稽であるのに妙なリアリティがあり余韻が残る。お目当てジェームズ・メイソン(この人が一番メンゲレ役が似合う)の存在感の薄さを補って余りある秀作。 [DVD(字幕)] 8点(2018-05-06 00:17:27) |
256. イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密
《ネタバレ》 ベネディクト・カンバーバッチ出演以外の知識無く、prime videoで適当に選んだ何の期待も無く観た作品が大当たり。 天才数学者に纏わる物語が見事に交通整理された三つの時系列でもって描かれた奥行きの深い作品。 第二次大戦時ドイツ軍の暗号解読に成功した勲章ものの功労者に対するヒトラー総統と大して違いのない国の仕打ちが余りにも酷い。チャーチルは何をやっとったんじゃ(怒) 収監よりホルモン治療を選び衰えてしまったチューリングがクリストファーと別れたくないと泣く姿に胸を衝かれる。非業の最期をテロップのみで示してくれた演出により、悔し涙が止まらない事態は避けられた。半世紀の時を経ての謝罪やら恩赦に、国としての取り返しのつかない損失を思い知ればいい。 主役はベネディクト・カンバーバッチ以外考えられず、一世一代の名演技に拍手喝采。 [インターネット(字幕)] 8点(2018-05-03 23:02:26) |
257. ラビング 愛という名前のふたり
《ネタバレ》 1958年のバージニア州に於いては白人と有色人種の結婚を禁止する法律が存在した。曰く自然の摂理に反する、混血児が生まれてはならないだなどというヒトラー総統のような発想で自由の国アメリカが聞いて呆れるもの。ミルドレッドがロバート・F・ケネディ司法長官に手紙を書いたのが発端となり1967年6月12日合衆国最高裁判所が異人種間結婚禁止法は違憲であるという判決を勝ち取るまでのラビング夫妻10年の歳月を描いた物語。ほんの一瞬だけあった裁判シーンで弁護士の「二人の結婚がバージニア州にとって何の脅威を与えるのでしょうか・・・」陳述とラビング一家の真っ当で慎ましく仲睦まじくキチンとした食卓風景が重なる光景に、心底「その通り!」と心打たれました。あまりにも地味で淡々としているのが難と言えなくもないですが、罵り合いが一度たりともない夫婦の姿に「コレリ大尉のマンドリン」での「燃え上がった情熱が恋で、その燃えカスが愛」の至言がまざまざと浮かぶ秀作です。 [DVD(字幕)] 7点(2018-05-01 21:54:57) |
258. アシャンティ
予備知識はフライシャー監督作のみ。オープニングクレジット冒頭に、アフリカにおける人身売買は今なお存在する、本作は実話に基づくと示され、郷愁を誘う音楽と共に流れるオスカー受賞者が居並ぶキャストの豪華さに、まだ見ぬ傑作を引き当てたんじゃないかとワクワクしたのだが、奴隷商人にかどわかされた妻(最初は同僚にしか見えなかった)の奪還劇に過ぎないハズレ作品だった。レックス・ハリソン、オマー・シャリフ、ウィリアム・ホールデンは脚本を読んだ上で出演したのだとすれば、監督に「こんな役なんだけどちょっと出演してくれないか」「う~ん、何じゃこりゃ、ま、暇だし、君の頼みでもあるから出るよ」という事なのだろうか?ピーター・ユスティノフは倫理観の「り」の字もない商売人を好演。マイケル・ケインはどこか傍観者のようなこの人特有の味わいを見せる。初めて観るカビール・ベティは可もなく不可もなく。この三人のホテルの一室での対決模様はそれぞれの胸の内が透けて見える本作唯一の名場面で点数の全てを。ラストショットはフライシャー監督とは思えない凡庸さで残念無念。 [DVD(字幕)] 5点(2018-04-29 00:19:41) |
259. 潜入者
《ネタバレ》 メイザーとアルケイノの友情が何だか切ない。同じ状況で「お前だから許す」と名台詞を残した作品がありましたが、今作で信頼を重んじるアルケイノ一家は裏切りを一生許さないと思いました。演出上の事なのでしょうが、新郎新婦を逮捕せず潜入者とばらしてしまってはこの先命が無いんじゃないでしょうか。以降も潜入捜査官を続けたというのに何だかなぁと釈然としません。 [DVD(字幕)] 7点(2018-04-16 00:31:57) |
260. わたしは、ダニエル・ブレイク
フードバンクでのケイティの自分を恥じて泣く姿に号泣。 そうなるんじゃないかと薄々感じていた通りの結末がやるせない。 血の通わない行政システムを改善しようとする気はないのか、公僕という言葉は死語なのか。 危機管理が要る年齢なのに日々の暮らしに追われているだけの自分に警鐘を鳴らしてくれる作品。 [DVD(字幕)] 7点(2018-04-15 20:01:24) |