241. レ・ミゼラブル(2012)
《ネタバレ》 基本的にミュージカルが苦手で、この監督の前作「英国王のスピーチ」もその芸術的価値は充分に認めるのだけど、どうも僕とは合わないなぁって感じだったので、今作も特に興味もなかったのだけど、世間でやたらと評判だったし、ラッセル・クロウも出ているしということで鑑賞してみました。いやぁー、まさにこれぞ王道ミュージカル(笑)。全登場人物たちが最初から最後までひたすら喉を潰すかってくらいの勢いで歌い続けます。フランス文学史上に燦然と屹立する、あの気宇壮大なメロドラマの世界と見事にマッチしておりました。この暑苦しいくらいの徹底的な人生賛歌はやっぱり好きになれないけど、圧倒的な映像美と楽曲のクオリティの高さは確かに認めざるを得ませんね。ヘレナ・ボナム・カーターが出ているシーンに、どう見てもティム・バートンの「スウィーニー・トッド」と酷似したシーンがあるのはご愛嬌。俳優陣の熱演も見応え充分だし、ミュージカル好きな人は存分に楽しめると思います。ミュージカルに極度のアレルギーがある人は絶対に観てはいけません。死にます(笑)。 [DVD(字幕)] 6点(2013-10-28 22:34:26) |
242. くるみ割り人形(2009)
《ネタバレ》 せっかくのクリスマスの夜なのに家でお留守番をすることになった少女メアリー。不貞腐れながらも伯父さんから貰ったくるみ割り人形と共にベッドで眠っていたら、突然、その人形に話しかけられ、そして夢とも幻想ともつかないネズミに支配された王国へと迷い込んでしまう。という、いまどきディズニーだって創らないだろう、何処にも新しい部分の全くない恥ずかしいくらい超オーソドックスなメルヘンファンタジー作品でした。こういう作品って、現実から幻想世界へと移行する描写が肝となるもんだけど、この作品はその部分がとにかく弱い。くるみ割り人形と一緒に部屋のドアを開けたら、クリスマスツリーが大きくなっていて部屋の天井もなくなってて、ただそこを登っていくだけって安直過ぎるって。それに魅力的な登場人物がほとんど居ないってところがもう致命的。ピエロとドラマーなんて完全に普通のおっさんじゃん(笑)。こういう作品を観ると、いかにティム・バートンが才能に満ち溢れた映画作家なのかが実に良く分かる。でもまあ、お金をたくさん集めて頑張って良い映画を創ろうとした監督の情熱(センスはないけど)と、ナチスという歴史的汚点のメタファーとしてネズミ軍団を描こうとしたところ(成功してないけど)は好感が持てたので5点。 [DVD(字幕)] 5点(2013-10-27 19:54:17) |
243. もうひとりのシェイクスピア
《ネタバレ》 誰もが知る文豪シェイクスピアの遺した数々の名作群が、実はとある貴族が匿名で書いたものだった、という大胆な仮説と、王位継承を巡る愛憎渦巻く政治ドラマを絡めて描いた宮廷絵巻。シェイクスピアとは全く無縁の、お馬鹿アクション映画界の巨匠ローランド・エメリッヒが、突然こんな正統派な文芸作品を創ったということで、ちょっと興味を惹かれて思わず鑑賞しちゃいました。まず、現代のニューヨークの劇場から始まり、そのまま中世イギリス社会へと移行したかと思うとそこからさらに5年前へと溯り、そこからまたまた40年前へと大きく溯るという「なんじゃそりゃー!」な冒頭部分にびっくり。そして、誰が誰だか分かりにくい登場人物たちが織り成すいつの時代のどのエピソードなのか皆目つかめないシーンの数々に辟易。ようやく話が分かってきたのは1時間以上経ったころ。さすがにこれは映画としてはマイナスでしょー。あと、こんなにドロドロの人間ドラマなのに、なんだか全体的に薄っぺらい印象なのはさすがエメリッヒ君だね。それでも「いつまでもお馬鹿映画の巨匠だなんて言わせないぞー!」と頑張った感はひしひしと伝わってきたので、努力賞ということで5点あげる。 [DVD(字幕)] 5点(2013-10-26 21:55:29) |
244. キック・アス
《ネタバレ》 前に、「スーパー!」っていう映画を観終わって本サイトを覗いてみたらやたらとこの映画のことが引き合いに出されていて、気になってずっと借りたいと思っていたのだけど、いくら探しても近所のビデオ屋さんには置いてなくて、この度たまたま立ち寄ったツタヤで偶然発見。ツタヤだけといううたい文句に「なんだよ、ツタヤ限定だったのかよー。そりゃゲオでいくら探したってないはずだよー」とちょっぴり不貞腐れながら鑑賞。うん、正義と独善の差をシニカルに取り上げた「スーパー!」と違い、こちらは何処までもオタクで童貞の冴えないティーンエイジャーの妄想力爆発のエンタメ作品でした。こういう馬鹿馬鹿しい映画って昔からけっこう好きなのだけど、ちょっとおれの好みとはずれてるかなー。もっとハチャメチャしてくれても良かったと思うのだけど、ビックダディ&ヒットガールに比べて肝心の主人公のキックアスがおとなしすぎるのがおれには物足りなかったです。それでも、紫頭にアイマスク姿で屈強な男どもを次から次へと薙ぎ倒すヒットガールのポップでキュートな可愛さには、ちょっぴりロリコンの気があるおれとしては完全にノックアウトされちゃいました。ヤバい、可愛すぎるって、ヒットガール!あぁー、おれもヒットガールちゃんに無茶苦茶にされたい!!ということで+2点(笑)。スピンオフで、彼女を主人公に一本映画を撮って欲しいなー。ってもう彼女は成長してしまってるから無理なんだろうけど。そんな女の子の成長の速さが、ロリコンとしては辛いところっす(笑)。 [DVD(字幕)] 8点(2013-10-15 10:26:43)(良:1票) |
245. 裏切りのサーカス
《ネタバレ》 あのゲイリー・オールドマンが念願のアカデミー賞候補になった(取れなかったけど)、東西冷戦期の英国諜報部内での二重スパイを巡る重厚なサスペンス劇。ということで、大嫌いな「ぼくのエリ」を作った監督の作品だったのだけど、けっこう期待して鑑賞。うーん、やっぱり僕の感性とは全く合わないのか、あまりのつまらなさに途中で寝てしまったエリ同様、今作も僕には単純につまらない作品としか思えなかった。観客のことなど一切お構いなしに進む分かりにくいストーリーに、それをさらに助長するかのような無駄としか思えないシーンの数々、意味不明な回想シーン……。溜息混じりに「つまらない映画だなぁ」とゲンナリしながら、なんとか最後まで観たのだけど、最後の最後までその思いは一切変わりませんでした。 事前に原作を読む、ある程度ネットで調べてから観る、相関図を用意して適宜確認する(映画館では不可能でしょ)、そんな事前準備がなければ理解できない作品て、やっぱり映画としては失格だと僕は思うのだけど。 [DVD(字幕)] 2点(2013-09-29 21:28:36) |
246. 007/スカイフォール
《ネタバレ》 007シリーズって個人的に興味なくて、今まで一切観てこなかったのだけど、それは何故かというと「どうしてジェームズ・ボンドというスパイが時代も俳優も超えて今でも第一線で活躍してるの?彼は何年かに一回整形してるわけ?てか若返りの秘薬でも飲んでいるの?それとも輪廻転生を繰り返してるん?」と観る前から突っ込んでしまうからで、だからおれの好きな監督が製作していてもひたすら観てこなかったのだけど、今作は、今まで後味の悪い映画ばっか作ってきたサム・メンデスが監督ということで、「えぇー、あのエンタメ映画とか全く無縁のあいつが007ってどんな感じなんの?」と興味を惹かれ思わず鑑賞。なるほど、エンタメ映画の枠を借りながら、よく観れば相変わらずアメリカのホワイトカラーな中間管理職の悲哀と閉塞感(嫌味な上司にはイジメられ、新入社員からは旧世代の遺物扱い、必要がなくなればすぐにでも首を切られる、いったい自分は何のために働いているんだー!みたいな)が巧妙に埋め込まれた、やっぱりヤな感じな映画でありました。でも、相変わらず極彩色の映像美とバルデムの嫌らしい悪役っぷりが良かったので6点。 [DVD(字幕)] 6点(2013-09-28 22:34:05) |
247. The Lady アウンサンスーチー ひき裂かれた愛
《ネタバレ》 ビルマ独立の英雄を父にもちながらも、平凡な生活を英国で営んでいたアウンサンスーチー女史。母の病を機に祖国へと戻った彼女は、祖国が直面する理不尽な現実を目の当たりにし、次第にその身を賭して民主化運動へとのめり込んでゆく。ミャンマーの民主化に多大な貢献をした実在の女性の半生を描いた伝記作品。確かに、ノーベル平和賞授賞式での息子のスピーチを古ぼけたラジオで必死に聴く姿や、ずっと支え続けてくれた夫との死別のシーンなど、現実の重みがあるからこそ印象に残るのだけど、なんだろう、このそこまで胸に響かない感じは。自分なりにそれを考えてみたのだけど、やっぱりそれは登場人物の誰にも人間らしさを感じなかったからだろうと思う。そんな理不尽な現実に家族が引き離されたのだから、子供たちはもっと嘆き苦しんだであろうに、そして所詮は赤の他人のために自分たちを放り出した母をもっと憎みもしたであろうに。夫ともそれこそ離婚すら考えるくらいに口喧嘩もしたであろうに。そんな剥き出しの人間の感情のぶつかり合いの果てに、そんなシーンがあるからこそもっと多くの人の心に響くのだろうと思うのに。どうして、そんな理不尽な現実の前に泣き叫ぶような人間の感情をちゃんと描かなかったのだろう。いや、描けなかったのだ。そんな最近の彼の作品に通ずる軽さが、良かれ悪しかれリュック・ベッソンという監督の今現在の才能の限界を示していると僕は思う。 [DVD(字幕)] 5点(2013-09-08 23:21:02) |
248. バンデットQ
《ネタバレ》 何気なく立ち寄ったツタヤの、良品発掘というコーナーでふと手に取ってみたら、なんとテリー・ギリアム監督の初期の作品だと知って思わずレンタルして鑑賞。うん、さすがに画質とか特撮とかは時代を感じさせるものの、主人公の少年の部屋に現れた髭もじゃの小人たちとの時空と凡人の発想を遥かに超えた奇想天外な物語に、やっぱりこの頃からギリアムって天才だったんだとあらためて再確認だわ、これ。沈没したタイタニックから逃げ出したら、人喰い鬼の乗る船に引き上げられ、なんとか鬼に食べられそうになる危機を脱したと思ったら、今度は巨大な海の巨人の頭の上に乗っかっていた……。そんな、一歩間違えたら単なる悪ふざけになりかねない、ブラックユーモアと奇想とファンタジーとが絶妙に入り混じったイマジネーションの奔流に最後まで圧倒されっぱなしだったし。埋もれていた良品との奇跡の邂逅に、主人公の少年のように今夜は良い夢見れそうです。 [DVD(字幕)] 8点(2013-08-31 02:32:12) |
249. わたしを離さないで
《ネタバレ》 とある医術革新によって、人間の平均寿命が100歳を超えた世界。しかしその裏側では、ただ臓器を提供するためだけに生まれてくるクローン人間たちという残酷な現実があった。世界から隔離された寄宿舎学校ヘールシャムのなかで、クローンであるキャシー、トミー、ルースという3人の若者たちもまた、普通の人間と同じく恋をし、悩み、傷付きながら青春を過ごしていた。だが、卒業とともに過酷な運命はそんな彼らを容赦なく呑み込んでゆく――。カズオ・イシグロの、そんな儚く絶望的なお話なのに何故か読み終えたあとは切ない気持ちにさせてくれる原作が大好きだったので、映画化された今作もかなり期待して鑑賞してみました。でも、DVDに記された収録時間100分という情報を知って、「あの濃厚な世界をたった100分で大丈夫なのか!?」と一抹の不安を覚えながら観始めたのだけど、残念ながら僕のそんな懸念は見事に的中してしまいました。何が不満かといえば、原作では3分の1を占めていたヘールシャムの描写が大幅にカットされてしまったこと。おかげで彼ら3人の関係がいまいち分かりづらく、後半の展開にまったく活かされてこなかった。もっと長くなってもいいから、原作の美点であるヘールシャムでの今にも壊れそうな主人公たちの瑞々しい青春の日々ををもっと濃厚に描いて欲しかったですね。そしたら後半の、自らに課せられた使命感と愛する人と共に幸せになりたいという誰もが願う平凡な希望との狭間で葛藤する彼らの心理がより浮き彫りになったであろうに。詩的で静謐な雰囲気は上手く表現できていただけに残念です。 [DVD(字幕)] 5点(2013-08-10 10:44:42) |
250. 少年は残酷な弓を射る
《ネタバレ》 腹を痛めて産んだ自分の息子が、成長するにつれ、とてつもなく残酷な怪物となって母を苦しめる…。というなんとも後味の悪い嫌な映画。でも、そんな映画が嫌いじゃない自分としては、冒頭からの〝なんだかとてつもなく嫌なことが起こりそう〟という思わせ振りな雰囲気にずっと期待して観ていたのだけど、残念ながら途中からただ不快なだけの退屈な映画になってしまった。恐らく、意図してなんだろうけど、息子の学校生活や最後の凶行を一切見せないという演出は、個人的に失敗していると思う。そのもっとも観客が興味を持っているであろう部分が、最後まで何も分からないままだから、なんともしまりの悪い映画になってしまっている。残念。でも、時系列を行ったり来たりする演出が冴えていたのと、主人公の女優の抑えた演技が見応えあったので、5点。 [DVD(字幕)] 5点(2013-07-07 01:34:46) |
251. シド・アンド・ナンシー
《ネタバレ》 今では伝説と化した、パンクロッカーの一組の恋人たちの、その自堕落で破滅的な姿を描いた作品。だが、事実を基にしているとはいえ、あまりにも展開がたるすぎる。それに、ここまで破滅的なカップルを描いているというのに、まったく画面から悲愴感が伝わってこないというのも珍しい。若かりし日のゲイリー・オールドマンの、その狂気の片鱗を覗かせるようなリアルな演技だけは良かった。 [DVD(字幕)] 4点(2013-05-21 10:55:42) |
252. マチェーテ
《ネタバレ》 グラインドハウスという優れた企画映画のなかで恐らくしゃれで作られたであろう、架空映画の予告編を本当に大真面目に一本の映画に仕上げてしまいましたな作品。僕は昔からこのロドリゲスのいかにもお下品で猥雑でお馬鹿でエロくって、それでも最高にクールな映画が大好きなのだけど、さすがにマチェーテを主人公に一本の映画にするには無理があったのではないか。途中までは確かに無茶苦茶面白いのだけど、後半はちょっと失速気味。それにマチェーテのキャラが濃すぎて、ちょっと周りのキャラがかすんでしまったのも残念なところ。 [DVD(字幕)] 5点(2013-05-09 16:39:13) |
253. ハンニバル(2001)
《ネタバレ》 僕の大好きな映画の続編なんだけど、期待していた分、ちょっと残念な出来でした。だらだらと続く冗長な退屈な映像は見ていて辟易だし、前作で神々しいまでの魅力を放っていたジョディ・フォスターは出ていないし、ゲイリー・オールドマンもいまいち地味だし。やっぱりリドリー・スコットって僕には合わない(エイリアンだけは大好きだけど)。最後の脳味噌ソテー・シーンだけはインパクトがあったのでぎりぎり5点。 [DVD(字幕)] 5点(2013-05-08 17:51:49) |
254. エイリアン
《ネタバレ》 初めて観たのは小学生のころ。暗ーい生活観溢れる宇宙船内で繰り広げられる、船員たちと侵入してきた謎の生命体とのスリリングな攻防は本当に衝撃的だった。もう腹を食い破って出てくるエイリアンの幼体のグロテスクさといったら今でも他に類をみないほど。そして次第に大きくなるエイリアン。深い暗闇に身を潜め、決して全形を現さないその不気味さに何度もおしっこちびりそうになりました。H・R・ギーガーの描いたおおよそ凡人には考え付けないであろう、そのグロテスクでシュールな世界観とエイリアンの造形は、本当に素晴らしい。そしてそんな世界観を見事に映画化してみせたリドリー・スコットの才能に素直に拍手。 [DVD(字幕)] 9点(2013-05-08 17:26:26)(良:1票) |
255. 英雄の証明(2011)
《ネタバレ》 シェイクスピアの古典劇を現代にアレンジしたドラマティックな悲劇。なのだけど、どうしてこの仰々しい台詞回しが延々と続く戯曲を現代に移し変えて撮らなければならなかったのかかなり疑問。このひたすら続く情熱的に絶叫するような演技やセリフって劇場の舞台のうえでこそ映えるのであって、画面展開がどんどんと切り替わる現代の映画のなかでは明らかに浮いてしまっている。この違和感のせいで最後まで映画のなかに入り込むことが出来なかった。ジェラルド・バトラーが好きなだけに残念な作品だった。 [DVD(吹替)] 4点(2013-05-05 14:41:23) |
256. THE EXPERIMENT ジ・エクスペリメント
《ネタバレ》 もう既視感満載の低予算ホラー映画。なんだか、まだ映画学校に通う生徒たちが自主制作で撮ったような、どこかで何度も見たことがあるようなシーンが延々と続き、最後まで一ミリたりとも楽しめませんでした。あと、どうでもいいですけど、字幕の「実話を元にした」とか「エレベーターに乗車」といった明らかな日本語の間違いにも苦笑するしかなかったです。 なんだか全体的にやっつけ仕事な映画でありました。 [DVD(字幕)] 3点(2013-05-05 12:33:01) |
257. ターミネーター4
《ネタバレ》 最低最悪だった前作のこともあったので、どうせ今回も…、と全く期待せずに観たのだけど、前半の畳み込むような迫力のアクションシーンを見て「これはひょっとしてひょっとするかも?」と思ったのも束の間、ものの見事に後半は失速(笑)。まあ、ターミネーターの最新作というより、凡百のアクション映画の一作として観ればそこそこ楽しめます。 [DVD(字幕)] 6点(2013-04-30 17:43:36) |
258. ブラックブック
《ネタバレ》 あの変態映画監督が第二次大戦時のヨーロッパを舞台に、歴史に翻弄されるある一人の女性の運命を真面目に撮ったと聞いて幾分かびっくりしながら観たのだけど、ちゃんと見応えのある歴史ドラマに仕上がっていて一安心。次々と襲いくる理不尽な現実に「悲しみに終わりはないの!」と叫ぶ主人公の悲哀が胸を打つ。でも、やっぱり変態監督だから、物語にほとんど必要ないようなあの男どもの汚物を主人公の頭からぶっかけるシーンの力の入れ方はさすがですね(笑)。 [DVD(字幕)] 7点(2013-04-29 23:05:49) |
259. ラストエンペラー
《ネタバレ》 まさに栄華衰勢――。清朝最後の皇帝として生まれ、何不自由ない優雅な生活を送りながらも、辛亥革命により宮廷を追われ、その後アジア侵略を目論む日本軍に満州帝国の傀儡皇帝に祭り上げられたものの、終戦後は中国共産党の収容所に送り込まれ、最期は平凡な庭師として死んだ男・愛新覚羅溥儀。濁流のように押し寄せてくる歴史の荒波に、その運命を翻弄され続けた彼の波乱万丈の人生を、恐らく映画監督としては間違いなく絶頂期を迎えていただろうベルトルッチ監督が絵画のように美しい映像と気品に満ちた音楽の数々で描き出した伝記映画の傑作。もう何も言うことはありません。巨大な歴史のうねりの中でただ必死に自分の命を燃やした溥儀の哀切な人生は、善悪を超越してただただ胸に迫ります。 そんな作品世界に見事にマッチした、坂本龍一の壮大さと繊細さを併せ持つ音楽も素晴らしい。いったい彼の人生とはなんであったのか?観終わるころには、この現代という時代も様々な運命を生きた多種多様な人々の人生の積み重ねであり、そしてたった今この瞬間にも僕たちだってその歴史のただ中に居るということをあらためて思い起こさせてくれる、ベルトルッチ監督の最高傑作だと思います。 [DVD(字幕)] 9点(2013-04-27 17:25:43) |
260. ナイロビの蜂
《ネタバレ》 アフリカの人道支援活動の裏で暗躍する大手製薬会社のダークな側面を告発する社会派サスペンス。この監督って、出世作『シティ・オブ・ゴット』でも感じたことなんだけど、ようはいかに第三世界が先進国の利益のために過酷な環境に置かれているかということを主要なテーマにしているのだろう。重厚で見応え充分なのだけど、もっとそんな過酷な環境を突破する力強さみたいなものが欲しかった(シティオブゴットみたいに)。それでも、いまアフリカで美名の名の下になにが行われているのかという現実を痛烈に分からせてくれる良作。 [DVD(字幕)] 7点(2013-04-25 00:02:16) |