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ゆきさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 615
性別 男性
自己紹介  洋画は字幕版も吹き替え版も両方観た上で感想を書くようにしています。
 ネタバレが多い為、未見映画の情報集めには役立てないかも知れませんが……
 自分と好みが合う人がいたら、点数などを基準に映画選びの参考にしてもらえたら嬉しいです。

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21.  ぼくのプレミアライフ 《ネタバレ》 
 姉妹編「2番目のキス」に比べると、何処か真面目で、御洒落なセンスすら漂わせている本作。   「趣味」か、それとも「愛する女性」かと、世の男性に対し二択を迫るような内容となっており、観賞後は色々と考えさせられるものがありましたね。  結論から先に言えば「一番大切なのは愛する女性、趣味は二番目」という、ごく真っ当な答えを出したエンディングとなっているのですが、主人公はアーセナルの優勝決定の瞬間には「趣味」であるサッカー観戦の方を優先させている為、ちょっと中途半端な印象も受けてしまいました。   あるいは、長年の宿願であるアーセナルの優勝を目に出来たからこそ、スッキリとした気持ちになって、一歩進んで、大人になれたという事なのでしょうか。  この辺りの心理に関しては、劇中で必要以上に説明しない演出となっている為、解釈が分かれそうなところです。    スタジアムに連れて行った父親も引いてしまうくらい、サポーター活動に熱中していく主人公の姿は、何処か微笑ましくて、好印象。  「大人が何かに夢中になって、何故悪い?」という主張にも、大いに共感を抱きましたね。  このくらい強烈に没頭出来る趣味があるというのは、羨ましい事だな、と思えます。   優勝出来なかった時の失望が怖くて「どうせ無理」「絶対に負ける」なんて悲観的な事を呟き、自らの心に予防線を張っておく主人公の気持ちなんかも、同じスポーツファンとしては、実に良く分かりますね。  それだけに、優勝決定のゴールが決まる瞬間には、完全に気持ちがシンクロして、大いに興奮する事が出来ました。   その一方で、彼とは正反対な現実的思考のヒロインに関しても、きっちりと描かれていたんじゃないかと。  一定の理解は示しつつも「父親になるのだから、もっと落ち着いて、大人になって欲しい」と訴える姿は、説得力満点。  これだけしっかり者の奥さんがいてくれるなら、多少子供っぽい旦那さんでも、家庭は安泰だな……なんて、男目線で無責任に考えてしまったくらいです。   ラストシーンにて、二人は明確に「結婚」というワードを口にした訳ではありませんが、寄り添いながら歩く姿を見ていると、無事に夫婦になれたのじゃないかな、と思えますね。  生まれてくる子供は、父親に似てアーセナルファンになってくれるのかどうかも、気になるところです。
[DVD(字幕)] 7点(2019-02-08 02:22:35)(良:1票)
22.  カオス(2005) 《ネタバレ》 
 ジェイソン・ステイサムとウェズリー・スナイプスといえば、ヒーローも悪役も貫禄たっぷりに演じられるのが強み。   そんな二人の悪役っぷりを同時に堪能出来るという、非常に貴重な一本なのですが……  改めて観返してみると、二人が同じ画面に映っているシーンが殆ど無かったりしたもんだから、ちょっと寂しかったですね。  この後「エクスペンダブルズ3」にて本格的な共演が果たされた訳だけど、あちらでは二人ともヒーロー側だった訳だし、出来れば本作にて「悪役同士」ないしは「刑事と犯人の対決」という形での共演を、じっくり披露して欲しかったものです。   とはいえ、映画単品としては手堅く纏まっており、変に期待値を上げたりしないで観賞すれば、充分楽しめる出来栄えじゃないかと思えましたね。  粗野な中年刑事と、大学出のスマートな青年刑事によるバディムービーかと思いきや、片方が途中退場して真の黒幕だったと明かされる展開なんかは、この手の刑事物を沢山観ている人ほど騙され易く、新鮮に感じられるんじゃないでしょうか。  とにかくステイサム演じるコナーズが周りから悪口ばかり言われるもんだから、普通なら彼が強盗事件を解決し、周りを見返してやる結末になるはずなのに、本作に限っては全く逆で「彼を非難していた連中の見解が正しかった」と言わんばかりの結末を迎えるんだから、実に皮肉が効いています。  1:犯人が人質を殺した事を、コナーズが責める。 2:コナーズの出した紙幣をシェーンが財布に仕舞う。 3:押収品の紙幣には、特殊な香りが付けられている。   といった場面が印象的に描かれており、それらが伏線だったと明かされる流れも気持ち良い。  本作は「主人公が犯人だった」という叙述トリックを用いているのですが、バディムービーという体裁を取って、自然な形で主人公格を二人用意し、観客が感情移入させる対象をコナーズから青年刑事のシェーンへと自然に移行させた辺りも、上手かったですね。  バイクでトラックを追いかけるカーチェイス場面なんかも良かったし「観客を楽しませよう」という意思が伝わってくる、丁寧に作られた一品だったと思います。   不満点としては、コナーズが逮捕されずに逃げ延びて終わってしまうので、後味が悪い事。  事前に見せておいた爆破シーンと、その後の種明かしシーンとで、それぞれの時間経過に差があるのは(ズルいなぁ……)と感じちゃう事。  人質を誤射してしまった元刑事のローレンツが、今度は自らが人質を取るような悪党となってしまったのを自嘲し「お前ならどうする?」とシェーンに問い掛ける場面が劇的で良かっただけに、それに対する答えを示す場面が無いのは片手落ちに思える事とか、その辺りが該当するでしょうか。   バッドエンドである事も含めて、観賞後はモヤモヤも残ってしまうんだけど……  とりあえず観ていて退屈はしなかったし、途中経過は楽しめたので、自分としては一応満足です。
[DVD(吹替)] 6点(2019-01-19 19:03:43)(良:2票)
23.  リトル・ダンサー 《ネタバレ》 
 観賞後「良い家族だなぁ……」と、しみじみ呟いてしまいました。  家族だけでなく、主人公の周りにいる男の子、女の子、おじさん、おばさん、誰もが魅力的で、良い人ばかり。   それだけに、終盤にて彼らに別れを告げて旅立つシーンが、とても切なかったですね。  お婆ちゃんが、力強く主人公を抱きしめてから、あえて突き放すようにして離してみせる場面。  ずっと同じ部屋で暮らしてきた主人公の兄が「寂しくなるよ」と、弟には聞こえないように呟いてみせる場面。  どちらも素晴らしかったです。   似たような内容としては「遠い空の向こうに」という映画が存在しているのですが、あちらが夢を叶えてみせた主人公達を主題に据えた品だったのに比べると、こちらは主人公の夢を叶える為に手助けする周囲の人達を主題としているように感じられましたね。  印象深いのは、主人公にボクシングを教えていた中年のオジさん。  てっきり「バレエなんて男のやるもんじゃない」と、親父さんと一緒になって反対するポジションなのかと思いきや、物凄く親身に応援してくれるんです。  ロイヤル・バレエ学校を受験する事になった主人公の為に、小銭をかき集めて資金援助までしてくれたし、結果を不安視する主人公に対し「大丈夫、絶対に受かってる!」と励ましてくれる姿には、心温まる思いがしました。  こういった心地良い意外性って、本当に好きですね。   そして何といっても、この映画のクライマックスは、息子の夢を叶える為に父親がスト破りを決行するシーンでしょう。  あそこで興奮と感動を最大限に高めてくれたからこそ、その後の面接シーンでのドキドキ感、旅立ちのシーンでの寂寥感に、非常に巧く繋がっていたと思います。  何と言うか、観客の心の波を操る技に長けているのだなぁ、という印象ですね。   数少ない気になる点としては、面接の際、八つ当たりのような形で殴られてしまった金髪の少年に対し、主人公が謝罪してみせたり、きちんと和解してみせたりするシーンが無かった事。  それと、てっきりヒロインだと思っていた女の子が、途中から完全にフェードアウトしてしまった事でしょうか。  ただ、後者に関しては恐らく意図的に出番を減らしたのであり(序盤にて彼女の姿が、車の陰に隠れると同時に消えてしまう演出は、その暗示?)主人公の親友である少年こそがヒロインであったと判明する意外性の為の前振りでしょうから、一概に欠点とは言い切れないかも知れませんね。  それでも観賞中「あれ? あの女の子どこいったの?」と思ってしまったのは確かです。   対するに、真のヒロインと、そう呼んでも差し支えないであろう親友の少年に関しては、別れのシーンでの「失恋」を示すキスに、何とも言えない物悲しさを感じました。  片方は友情を抱き、片方は愛情を抱いている二人の映画として考えても、上質なものであったと思います。   それらの喜怒哀楽、全てが積み重なった末に、主人公が夢を叶えてみせた「未来」へと繋がるハッピーエンドの、素敵な味わい。  良い映画でした。
[DVD(吹替)] 8点(2018-10-05 01:55:17)(良:1票)
24.  ドッグ・ソルジャー(2002) 《ネタバレ》 
 冒頭にて「純銀のペーパーナイフ」が登場する時点で「じゃあ狼男が出てくるって事か」と観客に理解させてくれる、非常に親切な映画。   でも、こういった分かり易い籠城系ホラーは好みのジャンルのはずなのに、どうも最後までノリ切れないまま終わってしまった気がしますね。  恋愛要素を排した硬派なストーリーに、ユーモアの効いた会話、CGではなくあえて着ぐるみに拘った特撮部分など、文章にしてみれば褒めたくなるような要素ばかりなのに、何故楽しめなかったのか、自分でも不思議。   あえて理由を考えてみるなら、同監督の「ディセント」に比べ、全体的にカメラワークや画作りが粗削りで、洗練されていないように思えた辺りがネックになっているのでしょうか。  それと「分かり易い」を通り越して「分かり易過ぎる」脚本な辺りも気になります。  なんというか、フリが丁寧過ぎて 「どうせ狼男をペーパーナイフで倒すんでしょう?」 「このヒロインって絶対に敵側だよね?」 「これだけ伏線張ってるって事は、サッカーの試合結果も分かるんでしょう?」  と思ってしまうし、事実その通りになるのだから、全く意外性が無い。  特にペーパーナイフの件は深刻で、こんな軽い小ネタみたいな代物は、映画の中盤で窮地を脱するくらいの使い方しかしないだろうと思っていたら、とっておきの隠しネタみたいにラストで使われるものだから(そんな大層なネタじゃないでしょうに……)と、ガッカリしてしまったんです。  ヒロインが勿体ぶって正体を現したと思ったら、ヘッドショット一発で即退場しちゃう辺りも、何だか拍子抜け。  サッカーの試合結果ネタにしたって「狼男事件よりもサッカーの試合の方が記事が大きい」っていう皮肉さを出したかったとは思うんだけど、そこを写真無しで文字だけでスコアを表示しているから、写真付きの狼男事件の記事の方がスペースは小さくても重要に扱われているようにも見えちゃって、どうにもチグハグなんですよね。  その辺りに、作り手との「好みの違い」「感性の壁」があったように思えます。   狼に絡んだ童話の「赤ずきん」や「三匹の子豚」を連想させる台詞がある辺りはニヤリとさせられたし、主人公が何とか生き残るハッピーエンドに近い作りなのも好み。  低予算ながらも「面白い映画を撮ろう!」という意気込みは伝わってくる、好ましいタイプの映画であるだけに、楽しめなかった事が残念な一品でした。
[DVD(吹替)] 4点(2018-09-11 07:05:32)(良:1票)
25.  RV 《ネタバレ》 
 「ロビン・ウィリアムスの映画で一番好きなのは?」と問われたら、本作の名前を挙げます。   感動して泣いちゃうとか、ギャグに大笑いしちゃうとか、そういう訳じゃないんだけど、とにかく「面白い」というより「好き」な作品なんですよね。  良質な家族映画であり、旅行映画であり、何度も観返したくなるような魅力がある。   何故こんなに好きなんだろうと理由を分析してみると「RVの魅力を、きちんと描いている事」が大きい気がしますね。  飛び出すリビング機能とか、キッチンもシャワーもトイレも付いているとか、小さなTVで映画も観られるし、後部にあるベッドで休む事も出来るとか、そういった性能面について、自然な流れで紹介してみせている。  凄ぉ~くベタな感想だけど「こんなRVで旅行してみたいなぁ」って思わせる力があるんです。   勿論、コメディのお約束で劇中の旅はトラブル続きであり、ともすれば悲惨で笑えない空気にもなりそうなんですが、そこをギリギリで踏み止まっているのは、主演俳優の力が大きいのでしょうね。  ロビン・ウィリアムスの、あの笑顔と、飄々とした演技のお蔭で「何があっても、最後はハッピーエンドを迎えてくれる」と、安心して観賞する事が出来る。  この「安心させる」って、観客を泣かせたり、笑わせたりするよりも、ずっと難しい事でしょうし、そう考えると、やっぱり凄い俳優さんなのだなと、改めて実感します。  「反抗期を迎えていた娘が、幼い頃と同じように心を開いてくれる」 「キャッチボールを通して、息子とも仲良くなる」  といった具合に「家族の再生」が優しい空気の中で描かれているのも、凄く心地良い。  序盤は下品なネタが多かったり、中盤以降はカーアクションもあったりと「笑い」の部分は派手で尖っていただけに、そういった真面目な部分は奇を衒ったりせず、落ち付いて、穏やかに描いているのが、良いバランスだったように思えますね。  序盤の車中では、各々違う歌を好き勝手に唄っていた家族が、終盤には同じ歌を合唱してみせる演出も、非常に分かり易くて良かったです。   準主役級のゴーリキー家族も魅力的だったし、ネルソン・ビーダーマン四世ことウィル・アーネットが悪役を楽し気に演じてくれているのも嬉しい。  「やぁ、ローラ。妻はいないよ」とか「バーベキューセットを買ったからね」とか、台詞による小ネタの数々も好み。  家族に隠れつつ企画書を書き上げた時の達成感に、悪魔の峠を越えて間一髪で間に合った瞬間の安堵感なども、忘れ難いものがありました。   仕事人間だった主人公が、土壇場で良心を優先させて退職を選び、その後にちゃっかり新しい勤め先を見つけたりと、あまりにも予定調和過ぎて、都合が良過ぎるオチが付くのも、この映画らしいですね。  天丼の「勝手に動くRV」ネタを挟みつつ、最後は家族皆で笑って、楽しく唄って終わり。  ハッピーエンドが似合う、良い映画です。
[DVD(吹替)] 8点(2018-06-21 18:38:41)(良:1票)
26.  エラゴン/遺志を継ぐ者 《ネタバレ》 
 冒頭「ドラゴンに乗った人間」の目線で戦いが描かれる演出に興奮。  飛行速度なども程好くスピーディーだし、戦闘場面には「自分もドラゴンに乗って戦ってみたい」と思わせるような魅力がありました。   ……とはいえ、根本的に「これ一本では完結していない」と思えるストーリーであり、満足度が高かったとは言い難いです。  従兄弟のローランの旅立ちなどは中々情感を込めて描かれていたのに、彼はそれ以降全く出て来ないし、最後もラスボスというよりは中ボスを倒して一段落、という感じ。  わざわざ主人公に「期待外れだ、弱いな」なんて言わせているくらいなので、恐らく作り手としても意図的に「今回倒した相手は、単なる手下の一人に過ぎない」という演出にしたのでしょうね。  それは次なる相手の強大さを予見させる一方で「本作単体ではカタルシスを得られ難い」という結果にも繋がってしまった気がします。   とかく展開が早くて、サフィラの成長速度も凄過ぎて、主人公との間に絆を感じられない辺りも、困り物。  空を飛んだと思ったら、いきなり大きくなって、いきなり喋れるようになっちゃいますからね。  飛べるようになる為の訓練を行うとか、早く大きくなれるように餌を食べさせるとか、言葉を教えるとか、そういうイベントにも尺を取った方が良かったのではないかと、つい思っちゃいます。  サフィラ自体は「えっ、メスだったの?」という意外性、熱くなりがちな主人公とは対照的に落ち着いた性格に、青い宝石のようなデザインと、魅力的なキャラクターであっただけに、実に勿体無い。   馬で先行しているお姫様に、ドラゴンに乗って簡単に追いつくシーンなど「ドラゴンに乗れる事の素晴らしさ」は、ちゃんと伝わってくる作品なだけに、もどかしい思いがありますね。  粗削りながらも、夢のある映画だと思うので、出来ればもう少し丁寧に作って、続編も拝ませてもらいたかったところです。
[DVD(吹替)] 5点(2018-04-12 12:48:06)(良:1票)
27.  ギャング・オブ・ニューヨーク 《ネタバレ》 
 序盤の乱闘シーンにて、白い雪が赤い血で染まっていく凄惨な演出は、流石スコセッシといった感じ。  少年院を出所する際に渡された聖書を、主人公が川に投げ捨てる場面なんかも、鮮烈な印象を与えてくれましたね。  これは傑作ではないか……と大いに期待が高まったのですが、その後は何だか尻すぼみ。   思うに、この映画の主軸は「主人公アムステルダムとビルの疑似親子めいた関係」のはずなのですが、その描き方が少し単調というか、シンプル過ぎるのですよね。  例えば、映画の中盤にて、主人公の父親である神父を殺したビルが「アイツは凄い奴だった」という調子で、神父を褒め称えるシークエンスがあるのですが、正直言って観客は、そんな事とっくに分かっているんです。  それは主人公も同様で、この告白を聞いても決定的なショックを受けたりしていない。  序盤の殺害シーンの時点でビルは神父に敬意を表しているのが明らかになっている訳だから、全く意外性が感じられないのです。   ベタな考えかも知れませんが、こういう話の場合は「親の仇と思って心底から憎んでいた相手が、実は良い奴だったと分かり、苦悩する」「ビルが神父に敬意を払っていたのだと知って、衝撃を受ける」という展開にした方が良かったんじゃないかなぁ、と。  本作の場合は「ビルは悪党ではあるが、一貫して憎み切れない魅力的な人物として描かれている」「最初から最後まで神父に敬意を払っているので、ビルには親の仇としての存在感が弱い」という形になっているのですよね。  主人公が最も動揺するのは「好きになった女の子がビルのお手付きだった」と知った時な訳ですが、これすらも「ビルは、その女の子に強い執着を抱いていない」と直ぐに判明する為、三角関係にすらなっていない。  咄嗟にビルの命を救った後に「ちくしょう、何で俺はあんな奴を助けてしまったんだ……」って感じに主人公が苛立つシーンさえも、観ているこちらとしては(いや、この関係性なら助けても全然おかしくないじゃん)とツッコんでしまう。  「親子」「宗教対立」「古い都市と新しい都市の対比」などといった様々なイメージが両者に投影されている事は分かるのですが、そんな代物を取り払って考えてみるに、根本的に二人が戦う理由が弱過ぎたように思えます。   だからこそ、最後の決戦も互いの想いをぶつけ合うような直接対決には成り得ない訳で、史実であった暴動や軍隊による鎮圧を絡めて、有耶無耶にしてしまったのではないでしょうか。  大砲の着弾の後に二人が倒れている姿なんて、ギャグにしか見えなかったりしますし「盛り上げて、盛り上げて、最後に肩透かし」という、一種の笑いを狙った構成なのでは……とさえ思ってしまったくらいです。   そんな本作で光るのは、やはりビル役のダニエル・デイ=ルイスの熱演。  ナイフ投げのシーンでは、惚れ惚れするような恰好良さを見せてくれましたし、一つの街を牛耳るギャングの親玉として、充分な説得力を備えていましたね。  「ビルが魅力的過ぎて、良い奴過ぎて、敵役や悪役として成立していない」と自分が感じてしまったのも、ひとえに彼の存在が強過ぎたせいかと。  戦いが終わった後に、無数の死体を見下ろして政治家が吐く「たくさんの票を失った」という台詞も、彼らにとって人命は「数字」でしかないと思い知らせてくれる効果があり、印象深い。  最後には、何だかんだで愛する彼女と一緒になってハッピーエンドという着地点な辺りも、安心感があって良かったです。   作り手としては色々考えて、力も注いで完成させた品である事は分かりますし、画面作り等のクオリティは高いと思うのですが「面白かった」とは言い切れない……勿体無い映画でありました。
[DVD(字幕)] 5点(2018-02-25 06:24:52)
28.  いつも2人で 《ネタバレ》 
 時間軸をバラバラにした構成での恋愛物という、今観ても目新しさを感じさせる一品。  ・同じ旅先での「食事」や「海水浴」の風景でも、若い恋人時代と倦怠期の夫婦時代とでは、こんなに違っている。 ・かつて目撃した「二人でいるのに、ずっと押し黙っている夫婦」に、自分達がなってしまっている。   等々、この構成ならではの巧みな対比、スムーズな場面転換の手法には、本当に感心させられましたね。  これは公開当時には、今以上に斬新で、御洒落なセンス漂う映画だったんじゃないかな、と思えました。   それと同時に、先駆的な作品ゆえの「未成熟さ」「手本が乏しいゆえの手探りな感じ」も伝わってきてしまい、そこは残念。  現代の観点からすると、こういった構成であれば「幸せだった恋人時代」「不幸な倦怠期」は、もっと極端に対比させても良かったと思うんですよね。  本作は「この夫婦は、若い頃から何も変わっていない」という結論ありきな為か、全編に亘って「夫婦喧嘩」「皮肉屋な男と、それに気分を害す女」を観賞させられる形となっており、少々ゲンナリしてしまうんです。   一応、若い恋人時代の方が「あの頃は貧しい旅行でも幸せだった」「トラブルがあっても笑い飛ばす事が出来た」と感じさせるような作りになってはいるですが、それが徹底していない。  例えば、プロポーズすら喧嘩中の勢いに任せて行っている訳であり、それは如何にもこの夫婦らしいエピソードなんだけど「結局、若い頃から喧嘩してばっかりじゃん。そんなの見せられても楽しくない」という印象を強める結果にもなっています。  早回しのギャグ演出には(流石に古臭いなぁ)とテンションが下がったし、両者とも浮気しているのに、男側はサラッと流されて、女側だけやたらと非難がましく描かれているのも、実に居心地が悪い。  最後のオチが「若い頃と同じようにパスポートを無くしてしまった夫と、それを見付けてあげる妻」というのも、ちょっと弱いんじゃないかなと思えました。   そんな年代差を感じさせる諸々に対し、普遍的な魅力を感じさせるのは、作中の台詞の数々。  「女は夢が叶うと傲慢になる」という一言には、思わず頷きたくなるものがあったし「愛してる?」と問われ「拷問中の自白は無効」と答えるやり取りなんかも、ユーモアがあって良かったですね。   交通整理の機械(?)の真似をしてみせるヒロインも、とびきり愛らしくて素敵。  ここが一番「オードリー・ヘプバーン主演だからこその魅力」を味わえた場面だったかと。  ホテルのルームサービスは高値で手が出ないからと、果物や缶詰をこっそり買い込んで来て、部屋で食べるシーンなんかも好きですね。  この映画を知っている女性と出会い、恋に落ちる事があったなら、是非とも一緒に真似してみたくなる。  そんな名場面を備えた、良い恋愛映画だったと思います。
[DVD(字幕)] 6点(2018-02-19 05:06:00)(良:1票)
29.  SHERLOCK/シャーロック 忌まわしき花嫁<TVM> 《ネタバレ》 
 数あるホームズ物の中でも、一番好きな本シリーズ。   舞台を現代に置き換えたアレンジが絶妙だった本編に対し、あえて原作と同じヴィクトリア時代を舞台にした番外編的な作りに、大いに期待が膨らんだのですが……結局は劇中の飛行機よろしく「現代の物語に着地した」感じなのが残念でしたね。  これは、あくまでも全十三話あるドラマの中の一話に過ぎず、さほど特別な話でもないし、これ単品で楽しめるような代物でも無かった、という形。   二十一世紀で活躍する主人公シャーロックが、薬物の作用によって垣間見た「一種の妄想オチ」となっており、それゆえに何でも有り過ぎて、観ていて興醒めしちゃうんですよね。  劇中で女装したモリアーティが「真面目にやれよ」「馬鹿々々しい」とツッコんでいるから、スタッフは確信犯的にやっているんでしょうけど、ちょっとノリ切れなかったです。   せめて「忌まわしき花嫁」事件だけは、キチっと十九世紀の世界で決着を付けて欲しかったですね。  トリックやら犯人やらは明かされているんだから、そのまま素直に事件解決として、その後に現代に視点を移した方が良かった気がします。   ……それでも、流石は「SHERLOCK/シャーロック」とでも言うべきか、魅力的な部分も一杯あって、どうにも憎めなかったりするものだから、困りもの。  「現実に存在するホームズは困った奴なのに、小説では紳士的なヒーローとして書いている」とか「私も挿絵に合わせて髭を生やした」とか、ワトソンがボヤく姿だけでも、面白くって仕方ないんですよね。  (へぇ、こっちの世界のモリーは男性なのか……)と思ったら、実は女性で男装しているオチだった辺りも、良かったです。  「本編に対する番外編なので、性別が違っている事も有り得る」という思い込みを、上手く利用された感じ。  小間使いの少年やメイドなど、十九世紀ならではの人物が登場する辺りも、本作だけの特別な魅力と言えそうですね。   それと、オールバック姿のホームズを演じてみせたカンバーバッチについては、当初こそ(ジェレミー・ブレットに匹敵するくらい素晴らしい!)と思えたのですが……途中で現代のシャーロックに視点が切り替わると(あっ、やっぱり普段の髪型の方が良いな)と思えたりもして、評価が難しかったです。  原作のホームズのルックスに近いのは十九世紀版の方なんでしょうけど、やはり自分としては、二十一世紀のシャーロックの方が好きみたい。   最後の台詞にて「僕は時代を越える男だから」と語られていた通り「現代に甦ったシャーロック・ホームズ」という本シリーズの主人公が、如何に魅力的であるかを、十九世紀の世界を通して再認識させられる。  そんな「第十話」でありました。
[DVD(吹替)] 6点(2017-11-18 01:49:38)
30.  フラッシュバック(2008) 《ネタバレ》 
 同名の邦題映画が、四つも登録されている事に吃驚。   自分が観賞したのはダニエル・クレイグ主演の青春映画でしたが、丁寧に作られた品であると感じました。  何といっても、登場人物達がデヴィッド・ボウイのファンであるというだけでも好感を抱いてしまいますね。  全編に亘ってノスタルジーをくすぐる匂いが漂っており、こういったタイプの映画としては、安心させられるものがあります。   基本的なストーリーラインとしては「ニュー・シネマ・パラダイス」との共通点が幾つか窺えました。  俳優として成功したは良いものの、今はもう落ち目と見られている主人公が、親しかった友人の死を知らされて帰郷し、そこで若き日の出来事を回想する事になる……といった形。   つまり、この亡き友との絆、友情こそが映画の骨幹となるだろうと予想していたのですが、中盤から彼の存在がどんどん薄くなってしまい、困惑させられましたね。  結局は主人公とヒロインの恋愛、そして人妻との不倫が中心であったように思えます。  それでも、メロドラマとして面白ければ構わないと頭を切り変えようとしたのですが、どうも上手くいきませんでした。   理由としては、まずヒロインとの仲が、それほど濃密には思えなかった事。  自分と同じ曲を好きな女の子、というだけでも主人公が恋心を抱く気持ちは良く分かります。  一緒にレコードを聴きながら口パクし、ブライアン・フェリーとバックコーラスとになりきっている場面などは、本当に楽しそうで良い場面でした。  ただ、そこから更に深い仲になろうとした矢先に、主人公は人妻の誘惑に負けて彼女との約束をすっぽかしてしまう訳で、観ているこちらとしては「そんなの別れる事になるのが当たり前じゃないか」と気持ちが冷え切ってしまったのです。  そこから復縁する展開になる訳でもなく、更に主人公は不倫をし続けて、遂には不倫相手の娘さんの事故死を招く結果となってしまいます。  ここまできたら、流石に主人公に感情移入する気持ちなどゼロです。   何といっても、子供の死に対して悲しみや罪悪感を抱く描写が決定的に不足していたと思いますし、不倫相手の人妻にしたって、死を聞かされて言い放つ言葉が「亭主に責められる……」って、子供を可哀想に思うのが先じゃないの? 自分の保身を真っ先に考えちゃうの? と大いに興醒め。  若い男との情事を楽しみたい母親から家を追い出され、一人遊びの最中に事故死してしまった幼い女の子が、本当に哀れでしたね。  海岸に流れ着いた機雷による爆死などという、非現実的な出来事だったので、実感が湧かなかったのかも知れませんが、もっと主人公達の「子供の死」に対する苦悩も描いて欲しかったな、と思います。   この後、親友に慰められる事となり、そして冒頭に繋がるのだろう……と思っていたら、それすらも無し。  終盤、実は不倫相手だった彼女も、自分が家を飛び出した後に不遇の死を遂げていたと知って、主人公がショックを受ける展開となる訳ですが、ここまで冒頭の「親友の死」を軽く扱うのであれば、初めから彼女の死を知らされて帰郷する形の方が良かったのではないでしょうか。   結局、ヒロインは残された親友と結婚しており、幸せな家庭を築いていた事も明らかになるのですが、帰郷した主人公と、夫を亡くした彼女が再びくっ付く、なんてエンディングにならなかった事には、ホッと一安心。  故郷を後にして、元の生活に戻っていく主人公の姿に「If There Is Something」の歌詞と、それを一緒に聴いた在りし日の二人の姿が重なり合う演出は、心に響くものがありました。   全体的に「好きな映画である」とは言い難いけれど「好きな場面」は幾つも見つける事が出来る。  そんな作品でした。
[DVD(吹替)] 5点(2017-10-21 16:35:21)
31.  第三の男 《ネタバレ》 
 オーソン・ウェルズという天才に触れるにあたって、監督としての彼を知るには「市民ケーン」が、そして俳優としての彼を知るには「第三の男」が、最も適しているのではないでしょうか。   有名過ぎる観覧車での長台詞や、初登場シーンにおける不敵な笑顔にも痺れますが、特に記憶に残るのは、クライマックスにおける地下水道での姿。  それまでの飄々とした「ハリー・ライム」の姿が嘘のように、這いつくばって階段を上り、暗い地下に光を齎す出口へと手を伸ばす姿が、とても印象深いですね。  どうしようもなく「人間」そのものを感じさせるというか、これほど強烈に映画の中の人物に感情移入させてくれた場面は、ちょっと他には思い付きません。   そんなハリーが、拳銃を手にした主人公を前にして、死を受け入れたように微かに頷く表情なんかも、これまた素晴らしいのですが、この映画の特筆すべき点は、最後の最後。  これほどの存在感を放つ「第三の男」が画面から姿を消した後に、映画としての絶頂を迎えるラストシーンが待っている事にあるのだと思います。   映画は娯楽作品であると同時に、芸術作品でもあると感じさせてくれる一分間。  是非とも多くの人に体験して頂き、こんな作品があるのだという事を知ってもらいたくなる。  そんな、特別な美しさを秘めた映画でした。
[DVD(字幕)] 10点(2017-10-15 21:42:33)(良:2票)
32.  人類SOS! 《ネタバレ》 
「病院で目覚めたら、世界が破滅していた」 「自分以外の人々が盲目になっている世界」  という要素を抜き出すだけでも、後世に与えた影響の大きさが窺い知れる一本。  勿論、原作小説ありきの発想なのですが「人がいなくなり、乗り捨てられた車だけが残る街を彷徨う主人公」という視覚的なイメージなどは、映画という媒体だからこそ生み出せた代物だと思います。   こういった「元ネタ映画」というものは、それだけでも功績があるというか、高得点を付けたくなるものなのですが……正直、映画として面白かったかといえば微妙でしたね。  1960年代の映画という事もあってか、現代の目線だと「飛行機が墜落する場面」「トリフィドの毒を受けて顔が緑色になる場面」の特撮も稚拙だし、演出も全体的に緩慢なんです。  例えば、最初にトリフィドが動き出し、人を襲う場面なんかも、時間を掛け過ぎるせいで(もう植物が動くのは分かったよ……)(どうせこの人が襲われるんだろう? 早くしてくれ)って感じに、焦れてしまう。   主人公達が車に乗って、迫りくるトリフィドから逃げようとする場面もキツかったですね。  車輪が窪みに嵌って空回りし、ピンチのはずなのに、登場人物が妙に落ち着いているせいで、全然緊迫感が無い。  当時の観客なら、そんな演出の数々も自然と受け入れられたのかも知れませんが、自分としては戸惑いが大きかったです。   その一方で 「目の見えなくなった男が(恐らくは利用する為に)目が見える女の子を誘拐しようとする」 「元から目が見えなかった女性が、新たに盲目となった人に歩き方を教えてみせる」  といった感じに「もしも、世界中の人々が盲目になったら……」という思考実験の答えを示すようなシーンも数々盛り込まれており、こちらは中々興味深く、面白かったです。  (植物が相手なら燃やして倒すんだろうな……)という観客の期待に応えるように、クライマックスでは主人公が火炎放射器を持ち出し、トリフィドの大群を燃やしてみせる辺りも嬉しい。  トリフィドの弱点が「(地球に幾らでもある)海水」という意外性も、良かったと思います。   ……ただ、最後のナレーションにて「トリフィドの弱点が分かったお蔭で、人類は救われた」というオチが付くのは、ちょっと無理がある気がしましたね。  作中で文明が崩壊したのは「トリフィド」ではなく「失明」が原因なのだから、トリフィドの撃退法が判明したとしても、そこまで大きな意味は無いはずなんです。  どうしても「人類が救われるハッピーエンド」に仕上げたかったなら「トリフィドの撃退法」なんかより「失明を治す方法」を明らかにすべきだったんじゃないでしょうか。   そもそも本作は「病院で目覚め、女の子と一緒に文明崩壊後の世界を彷徨う主人公」以外にも「灯台で暮らしている夫婦」という別個の軸が用意されており、しかもそれら二つが交わる事無く映画が完結を迎えるという、トンデモない構成になっているのですよね。  これは明らかにマズいと思うし、自分のように(何時この二組が合流するんだろう?)と考えていた観客には、物凄い肩透かし感を与える形になっています。   聞くところによると「灯台関連のシーンは、試写会での不評を受けて無理矢理ハッピーエンドにする為に付け足したもの」らしいのですが、真相や如何に。   自分としては、追加された灯台絡みの話は全部カットして「主人公達が火炎放射器でトリフィドの猛攻を凌ぎ、何とか逃げ出すのに成功して、明日に希望を見出そうとする話」で纏めてくれた方が、好みだったように思えますね。  そうしていたら、胸を張って「古き良き映画」「これぞ隠れた傑作」と褒める事が出来た気がします。
[DVD(字幕)] 5点(2017-10-12 04:58:18)(良:1票)
33.  ゾンビハーレム 《ネタバレ》 
 冒頭「The Evil Dead」(邦題:死霊のはらわた)のコミック片手に熱弁を振るうオタク男が出てきた時点で、掴みはOKといった感じ。  他にも、恋人と別れたばかりの男、ゲイの男、プレイボーイに、離婚の危機を迎えている男という、バラエティ豊かな面子が、彼女や彼氏や妻の罵倒を背に旅に出る導入部は「Wild Hogs」(邦題:団塊ボーイズ)っぽいしで、どちらの映画も好きな自分としては、嬉しくなっちゃいました。   そんな中年男達のドライブ旅行にて、バスの運転手を務め、唯一の女性メンバーとなったキャンディが、あっさりゾンビ化しちゃうのだから、意外性も抜群。  何せ彼女、メンバーの誰かと恋人になりそうな気配があったし、鹿の死体を片付ける件では、一番男らしく(?)て頼もしい姿を見せていましたからね。  彼女だけは紅一点としてゾンビ化せずに、一緒に戦ってくれるんだろうなと予想していただけに、それを気持ち良く裏切られました。  舞台となる町に子供の姿が見えない事を含め、徹底的に「男VS女」という構図に拘ったからこそ、思い切り良く彼女を序盤で退場させたのでしょうね。  結果的に、それは大成功だったかと。   斧を持った花嫁ゾンビに、両手に鋏を装備した美容師ゾンビと、登場する女ゾンビ達が個性豊かなのも嬉しい。  中盤にて、今まで遭遇した女ゾンビの中で、誰が可愛かったかと男達が品定めするシーンなんて、如何にも「旅の夜」ならではの会話って感じがして、楽しかったです。   上述の場面に限った話ではなく、全体的に男性目線で作られた品であり、女性ゾンビを指して「あいつらは頭が悪い」なんて言い放つシーンもあるから、女性が観ると、ちょっと抵抗があるかも知れませんね。  物を投げたら女ゾンビの巨乳に命中して跳ね返る場面とか、思わず笑っちゃったけど、上品とは言い難いです。   玩具屋で即席の火炎放射器を作る件はワクワクさせられたし、ゾンビ映画ではお約束となりつつある「ゾンビの振りをして、襲われないように移動する」が「女装して襲われないように移動する」になっている辺りも、クスッとさせられました。   ラストも物凄く爽やかで、仲間の絆を確認し合い、皆で笑顔になって、走って終わりというハッピーエンドっぷり。  彼らの背後には大量の女ゾンビが迫っており、根本的な解決にはなっていないのですが、それでも友情の強さの前には、些細な問題と思えてくるのだから凄いです。  ショッピングカートに男を乗せて、それを押しながら爽やかに終わるのは「What to Do in Case of Fire」(邦題:レボリューション6)の影響もあるのかも知れませんね。   気になった点としては、そんな終わり方で「友情は素晴らしい」と感じさせる内容であるにも拘らず、作中で友達の中から死者が出てしまっている事が挙げられそう。  皆して楽しそうに笑っているけど、友達が死んだばかりなんだよなぁ……って事が、どうしても引っ掛かっちゃうんですよね。  ちょっと残酷な物言いとなりますが、所謂「殺され要員」ならキャンディや、途中で出会った軍人さんもいる訳だし、こんなに明るいハッピーエンドで纏めるなら、男友達グループの死者はゼロにしても良かったんじゃないかなと。  その方が、ラストの爽快感も強まったように思えます。   とはいえ、総合的には満足感の方が大きかったですね。  こういう「当たり」と出会えるから、ゾンビ映画の棚を漁るのを止められないんだよなぁ……と、しみじみ感じました。
[DVD(字幕)] 7点(2017-09-11 04:38:38)(良:1票)
34.  ストレージ24 《ネタバレ》 
 ダメ男が自分を馬鹿にする男友達や元カノを見返してみせるという、非常に分かり易い映画。   である以上、自分としても感情移入しやすい内容のはずなのですが、どうにもノリ切れない気持ちの方が強かったですね。  主人公が男友達に対し 「俺を利用してた」 「間抜けな俺といればクールに見えるもんな」  と言い放つシーンなんかは、妙にリアルに感じられたりもして、何だか落ち込んじゃったくらい。  こういったやり取りを中盤で描いた以上「女を巡って喧嘩はしたけど、やはり友情は本物だった」というオチになるんじゃないかな~と予想していたのですが、結局それは外れて、男友達にしろ元カノにしろ最後まで「嫌な奴ら」としか思えなかったのも残念です。   主人公が成長する良い映画、と言えなくもないですが、自分としては彼が逞しくなったという以上に「主人公以外の人物が酷過ぎて、相対的にマシに見えるだけなのでは……」なんて思えてしまいました。  最後の「閉鎖された空間からやっとの思いで脱出したら、外の方が地獄だった」というオチもお約束過ぎて、目新しさは皆無。   主人公達が武器らしい武器を持っておらず、玩具のぬいぐるみや花火を利用して戦うという辺りは面白かったし、もうちょっと明るいコメディタッチで作られていたら、印象も変わったかも知れませんね。  モンスターの造形も嫌いじゃないし、低予算ながらに頑張って良い映画を撮ろうとしている気概は、ちゃんと伝わってきました。
[DVD(吹替)] 4点(2017-07-12 07:09:04)
35.  PUSH 光と闇の能力者 《ネタバレ》 
 クリス・エヴァンスとダコタ・ファニングの共演という、二人が好きな自分にとっては夢のような映画です。   彼らが画面に映って、動いて、喋ってくれるだけでも満足……と言いたいところなのですが、ちょっと厳しかったですね。  監督の前作は「ラッキーナンバー7」との事なので、きっとドンデン返しが好きな人なのだろうなと推測しますが、どうも自分とは相性が良くないみたいで、残念。  思えば、あの作品も「ジョシュ・ハートネットが主演なのは嬉しいけど、内容の方は……」という感想だった為、それと同じ現象が再び起こってしまったようです。   細かい粗を指摘し出すとキリが無いのですが、大まかに三つだけ。  まず一つ目は、ヒロイン(カミーラ・ベル演じるキラの方)に感情移入出来ないというか、応援する気持ちになれない事。  なんせ彼女、登場して早々に「二人組の敵の片方を洗脳し、相棒を弟の仇だと思い込ませた上で、殺させる」なんて所業を披露してくれますからね。  これは流石に、やり口が悪役過ぎるというか、観ていてドン引きしてしまいました。  恐らく「洗脳によって殺人を行わせる事も出来る」と事前に描いておき、ラストの伏線にする意図があったのでしょうが、それ以前の問題として(こんなヒロイン、嫌だなぁ)と思ってしまった以上、どうしても受け入れ難いものがあります。  二つ目は、銃の弾切れのお蔭でピンチを脱するという展開が二度ある事。  まぁ、気にする程ではないかも知れませんが、そこはせめて一度っきりに留めて欲しかったなぁ、と。  あるいは、それも超能力のお蔭だったのかも知れませんが、自分が観ている限りでは「また弾切れかよ!」とツッコんじゃいました。  三つ目は、作中でスッキリと話が完結していない事。  キャシーの母親を救出する事が出来たかどうか不明だし、ラストのシーンも相手を殺せたかどうかハッキリ描いていないんですよね。  続編を意識していたのかも知れませんが、何とも消化不良な感じ。   超能力の演出はベタだけど、決して悪くないと思うし、演者の力もあってか主人公ニックとキャシーのコンビは好きだっただけに、物語に入り込めなかった事が残念です。  「状況を変えるにはスキルアップが必要」との台詞通り、作中で主人公の超能力が成長している辺りも観ていて楽しかったので、欲を言えばそれに説得力を与えるというか、細かい修行描写みたいなのがあれば、もっと好きになれたかも。   面白かったから続編が観たい……というよりは「これじゃ満足出来なかったから、続編で挽回して欲しい」「キャラクターや能力設定などは魅力的で、面白くなりそうな可能性は感じるから」という理由で、続編が観たくなってしまいました。
[DVD(吹替)] 5点(2017-02-06 07:41:01)(良:1票)
36.  ライフ・オブ・デビッド・ゲイル 《ネタバレ》 
 クオリティの高さは分かるのだけど、どうにも作中の価値観やらメッセージやらが肌に合わなくて「面白い」と素直に言えないタイプの映画があります。  残念ながら本作もそんな一つとなってしまったみたいで、脚本の騙しのテクニックやら演出やらに感心させられつつも、観賞後は「うーむ」と腕を組んで考えさせられる破目になりました。   まず、この映画の最大のオチに関しては「無実の人が死刑された確かな証拠があれば、死刑停止に追い込める」という台詞をデビッド・ゲイルが耳にするシーンがある以上、多くの人が途中で気が付かれたのではないかな、と思います。  自分も、この台詞が飛び出す時点(映画が始まってから三十分程)でオチは読めていたので、衝撃という意味では薄かったのですが、ラストに長々と説明せず「デビッド・ゲイルも彼女が自殺であると承知の上であり、一連の計画の協力者であった」と映像で示すだけで、スパッと終わらせる演出は見事でしたね。  こういうパターンの場合、つい「こんな分かり易い伏線があるんだから、気が付くに決まっている」と作品を見下してしまいそうにもなりますが、ラストの演出で説明を最低限に済ます以上、このくらいのバランスで丁度良かったのではないでしょうか。  観客に対して、きちんと「推理する材料」を提示するという意味でも、非常に誠実な作りであったと思います。   で、上述の「肌に合わない」部分に関してなのですが……これ、どう考えても「死刑制度の問題点」を指摘しているとは思えないのですよね。  自分で死刑になるように行動しておいて「実は冤罪なのに殺されちゃいました」って、自業自得としか思えないし、この場合に明らかになった問題点とは「自ら積極的に死刑になろうと色々と工作した人間を死刑にしてしまう可能性がある」という話でしかない訳だから、台詞の通りに「死刑停止に追い込める」とは考えられないのです。   デビッド・ゲイルの動機としては「取材を受ける報酬として手にした大金を、別居中の妻と息子に贈りたい」「もうじき病死してしまう恋人と心中したい」という想いの方が強かったのではないかな、とも思えますが、劇中ではそれらの感情的な動機よりも、あくまで「死刑制度の是非」という点に重きが置かれている為、やっぱり「そんなやり方で死刑制度を廃止出来る訳ないじゃん」という結論に至ってしまう訳で、何とも中途半端。  本当に死刑制度の問題点を指摘したいなら、倫理的に許されないのを承知の上で「無関係な第三者を犯人に仕立て上げ、彼が必死に無実を訴えても死刑が宣告されるのを見届けてから、執行の直前に全てを自白する」という作戦を取った方が、よっぽど効果的だったのではないかと。   そんな困った人物である彼を、過度に美化する事は無く「公開討論番組で、知事に言い負かされた仕返しをしたかっただけ」「権力者を馬鹿にして、自分の方が利口だって証明したかっただけ」と示す描写も挟むなど、作り手の器の大きさというか、公平な視野を感じさせる辺りは、好ましく思えます。  それだけに、話の核となる部分から説得力が伝わってこなかった事が、実に勿体無く思える一品でありました。
[DVD(吹替)] 6点(2016-12-22 10:36:31)
37.  ハミングバード 《ネタバレ》 
 まさかジェイソン・ステイサム主演の恋愛映画を拝める日が来るとは思っておらず、驚かされましたね。  互いに心の傷を抱えた者同士の、束の間の交流。  二人の心情が、とても丁寧に描かれている作品だと感じました。   そこかしこにアクション映画としての要素が含まれている事に関しては、嬉しくもあったのですが、やや焦点がズレているようにも思えて、少し残念。  主人公が精神的な病を抱えているという設定も、ちょっと感情移入しにくいものがありましたね。  終盤にて「見えるか? ハミングバードだ」と言われても、今一つ共感出来なくて、どうしても距離を置いてしまいます。   一番の難点は、ヒロインがドレス姿に着替えて会いに来てくれたシーンにて、主人公ほどの衝撃と喜びを味わえなかった事でしょうか。  非常にマニアックな発言で申し訳ないのですが、彼女に関しては「眼鏡をかけたシスター」としての普段の姿の方が好みだったもので、着飾った姿には(なんか……普通の美人のお姉ちゃんだなぁ)と、あんまりテンションが上がらなかったりしたのですよね。   ラストも微かな救いはあるけれど、ハッピーエンドとも言い難いものがあり、これも好みではありません。  けれど「人並みに生きられたこの夏を、君と過ごせて良かった」という告白に対しては、胸を打たれるものがあったし、悲劇的であるがゆえの美しさのようなものは感じられましたね。  子供時代に性的虐待を行っていた大人を殺傷したというヒロインの過去には同情出来たのに対し、戦場で仲間を殺された腹いせに無関係な民間人を殺したという主人公の過去には流石に同情出来ない点がマイナスだと思っていたのですが、それに関しても(あぁ、だからヒロインと違って主人公は自殺のような末路を辿るのか……)と、一応は納得。   ビターな味わいの、大人の映画でありました。
[DVD(吹替)] 5点(2016-11-04 08:03:10)(良:1票)
38.  赤毛のアン/アンの青春 完全版〈TVM〉 《ネタバレ》 
 内容としては「教師モノ」に分類されそうな本作。   舞台も田舎から都会へと移り変わり(これは前作とは異なる面白さを与えてくれそうだ……)と期待が膨らんだのですが、終わってみれば、良くも悪くも前作と殆ど変らない品という印象を受けましたね。  主人公のアンが、気難しい老婦人の心を解きほぐして仲良くなる件なんて、特に既視感を覚えます。   新しい要素としては、生徒達との心の触れ合い。  生真面目なオールド・ミスであるブルック先生との友情。  そして「地元の幼馴染」と「都会で出会った紳士」に挟まれたアンの三角関係が挙げられるのですが、こちらは前作で自分が苦手としていた「女性向けの恋愛ドラマ」成分が、より濃くなったように感じられて、少し残念でしたね。  ちょっと意地悪な見方かも知れませんが、作風やら何やらを考えればアンが後者と結ばれる事など有り得ない訳で「どうせ幼馴染のギルバートと結ばれるんでしょう?」と、達観した気持ちになってしまいました。   前作に比べれば出番は短いけれど、マリラおばさんが相変わらず素敵なキャラクターであった事は、嬉しい限り。  終盤、地元に戻ってきたアンを出迎えて、嬉しそうに抱き締める姿を目にすると、何やらこちらの心まで温かになってくるのだから、不思議なものです。   紆余曲折はあったけれど、やっぱり最後にはアンとギルバートが結ばれて、二人が幸せになるという、予定調和な結末。  でも、この作品に関しては「それで良い」「それが良いんだ」と思えましたね。   全編に亘って落ち着いた空気が漂っており、安心して観賞しているこちらの期待を裏切らない、平和な映画でありました。
[DVD(吹替)] 6点(2016-09-02 18:26:31)(良:1票)
39.  シーズンチケット 《ネタバレ》 
 この映画はハッピーエンドなのかバッドエンドなのか、それを読ませないバランス感覚が、非常に優れていたと思います。  正直に告白するならば、銀行強盗を企てる直前までの流れにて、少年二人の破滅的な最後も覚悟していただけに、あの心温まる結末には意表を突かれましたし、安堵もさせられましたね。  本来望んでいた通りの形では無かったけれど、彼らなりの「シーズンチケット」を手に入れる事が出来た……というのは、凄く良い終わり方だと思います。  奉仕活動が十二ヶ月という期限付きなのも、上手いなぁと感心。   その一方で、少し気になったのは、作中で一番悲惨な境遇だと思われる主人公の姉、ブリジットの顛末が語られず仕舞いだった事でしょうか。  彼女の行方が不明のままだったので、ラストの爽快感も薄れてしまった印象があるのですよね。  意地悪な言い方をするならば、意外なハッピーエンドに繋げる為に不幸な要素を数多く盛り込み過ぎて、それを回収しそびれたという印象も受けてしまいました。  主人公達が悪事を働いているのを誤魔化すかのように、父親や教師などの「もっと酷い悪役」を登場させてバランスを取ってみせたかのような部分も、あまり好みとは言えません。  チケットを買う為の貯金を、最悪な父親に奪われてしまうのは確かに可哀想なのですが、あんまり同情的に描かれてしまうと(それって、元々は悪い事して貯めた金でもあるんだよね?)と、疑問符も湧いてきました。   でも、やっぱり全体的には「良かった」と思える部分の方が多かったですね。  特に印象的なのは、主人公が父親と一緒にサッカー観戦した思い出を語る場面。  (へぇ、あの親父さんも昔は良い人だったのかな……)などと感じていたところで、実はそれが主人公本人の思い出ではなく、親友から聞かされた思い出話を、さも我が事であるかのように語っていただけなのだと明かされる件なんかは、とても切ない気持ちに襲われました。   チケットを「二人分」手に入れるのではなく「一人分」だけ手に入れて、それを交互に使ってはどうかと親友が提案するも、主人公が首を振って否定するシーンなんかも良い。  二人で観戦しなければ意味が無いんだよ、という友情が伝わってきて、犯罪者であるはずの彼らを、ついつい応援したくなってしまいましたね。   焚火を前にして、一度はチケットを手にするのを諦めた親友が「結構、楽しかったよ」「最低の暮らしの中で見た、一つの夢さ」と語る場面なんかも、忘れ難い味わいがあります。  その後、銀行強盗で捕まり、夢破れた後も奇妙に満足そうにしていた彼の姿が、何だか象徴的。  結局、この映画ではラストにて夢が叶った形なのだけど、夢を叶えたという結果以上に「夢を叶えようと頑張る」過程にこそ、本当に大切なものがあるのかも知れないな、と思わされました。
[DVD(吹替)] 7点(2016-06-15 07:10:52)
40.  未来は今 《ネタバレ》 
 例の「丸いアレ」に関しては、最後まで謎のままなのかなと予想していたのですが、中盤にてアッサリと正体が判明。  しかも名前も機能もそのまんま「フラフープ」とは、意表を突かれましたね。   (これって、もしかして実話物だったりするの?)と思っていた矢先に終盤は「突然の時間停止」→「天使との対話」なんてトンデモ展開が飛び出すものだから、もう吃驚。  呆れる気持ち半分、笑ってしまう気持ち半分、といったところですが、こういった悪ふざけ演出は、決して嫌いではないです。  ……でも、出来ればもう少し伏線を張っておいて欲しかったなぁ、と思わされたのも事実。  ここを、もう少し丁寧に描いてくれていたら、もっと楽しめたかも知れません。   コーエン兄弟の作品にしてはブラックユーモアが薄めで、とても観やすい作りとなっているのも特徴ですね。  自分としては嬉しかったのですが、それによって個性を感じられなくなったという、痛し痒しな面もありそう。   善良だった主人公が出世によって心を歪ませてしまい、そこから改心して元に戻った後にヒロインと結ばれるハッピーエンドに関しては、非常に道徳的な作りだったと思います。  上述の「悪ふざけ」な演出と、この「道徳的」なストーリーラインのチグハグな感じを受け入れられるかどうかで、評価が変わってきそうな一本です。   とはいえ、あんまり難しく考えないで、子供向けのファンタジー映画のような感覚で観賞するのが、一番楽しめる方法なのかも知れませんね。  勤続四十八年になる主人公の同僚や、エベレーターボーイなど、脇役達も個性的で、魅力的。  ティム・ロビンスとポール・ニューマンの共演という一点に限っても、観る価値はある一本だと思います
[DVD(吹替)] 5点(2016-06-08 08:04:17)(良:1票)
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