61. フランケンシュタイン(1994)
《ネタバレ》 あらすじの通り非常に原作に忠実な作りには好感が持てます。ただ2時間の尺に収めようとしているのか、展開がとっても早く取りあえずストーリーを追ったって感じでしょうか。その為に各人のストーリーは大幅に端折られており、折角数々の演技派俳優が出ているのにキャラクターの魅力が十分に出せていなかった様に思います。個人的にフランケンシュタインの最も魅力的なキャラクターは作られたのに親に拒絶させ、誰からも外見だけで憎まれる怪物だと思っているので、彼のエピソードだけは細かに追ってほしかったです。失楽園や若きウェルテルの悩みを読み、自身と照らし合わせる件が無いのは非常に残念でした。それから、とにかく音楽の使い方が下手な映画だったですね。音楽のテンションは常にクライマックス状態で本当に緩急がない。溜めに入っているシーンもか細いバイオリンが一人鳴っていて、「なんでこんなにうるさくするん?」と突っ込みまくっていました。 [DVD(字幕)] 6点(2011-11-13 22:11:23) |
62. トゥモロー・ワールド
《ネタバレ》 これは傑作!アクション映画の場合、アクションシーンが凄くても、肝心のストーリーがお座なりだったりすることが多々あるのですが、本作はアクションもストーリーも完璧でした。まず突然の暴徒の襲撃から逃げるカーチェイスと終盤の市街戦での長回しが凄すぎます。ドキュメンタリーを超えるような臨場感で本当に戦場に放り込まれたような錯覚に陥って頭がクラクラ。とにかく強烈なアクションシーンの連続にテンションはほぼ常にメーターを振り切ってました。ストーリーも素晴らしく、単純に「子どもが生まれる」ということが如何に奇跡的なことなのかということを再認識させられた気がします。戦場で赤ん坊を見て、つい殺し合っていることを忘れてしまう兵士たち。しかし現実では紛争地域の5歳未満の子どもの死亡率は25%超、1年間で20万人の子どもが戦場で命を落としている。この前(12年11月)のイスラエルによるガザ地区への爆撃ではパレスチナ側30人以上の子どもが犠牲になった。イスラエル側も1人の子どもが命を落としている。この映画のジャンルはSFですが、描かれていることは紛れもなく今現在の事実です。誰もが子どもを守ることが大切なことなんて本当は分かってる。できればその感情を忘れないようにしたいもんです。しっかしクライヴ・オーウェンは「シューテム・アップ」でも赤ん坊を守る男を演じてましたけど、なんでこんなに方向性というかノリが違う仕上がりになるんだか、謎です。 [DVD(字幕)] 10点(2011-11-05 18:40:30) |
63. アポロ13
《ネタバレ》 ロン・ハワードらしいハリウッドテイストでありつつも作家性を感じさせる作品です。子どもの時から何回も観ていますが、いつも極限状態の乗組員たちにハラハラさせられました。 [地上波(吹替)] 8点(2011-10-16 12:32:51) |
64. マチェーテ
《ネタバレ》 まさかダニー・トレホがヒーローの映画を観れる日が来るとは……。やっぱりロドリゲスは偉大です。B級アクションらしく血しぶきが飛び交い、女は無駄に露出し、車は意味無く爆発するのは素晴らしいですが、肝心の終盤のカタストロフィがグダっているのがとっても残念。といっても無茶苦茶な予告編から作られた映画なので、仕方ないのかなー。 [DVD(字幕)] 6点(2011-10-09 19:05:25) |
65. ホテル・ルワンダ
《ネタバレ》 これは弱き者の為の映画です。古今東西の虐殺を描いた映画は山ほどありますが、この映画は被害者と加害者の狭間の人間の心理を抉り出している。「虐殺はいけないこと」です。そんなことは考えれば誰でも分かる。問題は虐殺が起こってしまった時、そこで人間として正しい選択、この映画の主人公と同じ行動を取れるかということ。こういう状況で隣人に手を差し伸べる事の重要さ。同じテーマを扱った映画としては「シンドラーのリスト」以来の傑作だと感じます。キング牧師の『最大の悲劇は、悪人の暴力ではなく、善人の沈黙である。』という言葉がこの映画の全てでしょう。 [DVD(字幕)] 9点(2011-09-18 20:30:40) |
66. 127時間
《ネタバレ》 映画の出だしが、都会の雑踏を早回し+訳の分からないスプリットスクリーンの映像から始まり、「ダニー・ボイルもオシャレ映画監督になっちゃったのか~」と思っていたのですが、これがキチンと伏線になっていて、ラストにはそれに驚きかつ、胸を打たれてしまいました。映画の内容は至極単純。所謂一昔に流行ったワンシチュエーション・スリラーってやつですね。ただそれでも十分に面白かった!主人公は最終的にあの行動に出るのですが、そこまでの過程、つまり彼がどの様な人間であり、どの様に試行錯誤したのかが、綿密に描かれているので、遂にあの行動をした時に非常に大きなカタルシスを感じられました。あの腕は彼が言っていた通り、それまでの自分一人で生きていけると思っていた彼自身だったのでしょう。だから彼は最後にあの腕を写真に収めた。それと贖罪的に決別した時に彼の人生は始まり、変わったのでしょう。 [映画館(字幕)] 8点(2011-06-25 23:24:25)(良:1票) |
67. 未来惑星ザルドス
《ネタバレ》 設定は秀逸だと思っています。実際に観終わった後で気付いたのですが、グレンラガンの設定ってこの映画のそれを完全にパクッてますね。そういう意味でも偉大な映画かと思います。ただ見た目がかなり安っぽく、ピンクのパンツ一丁で走り回るショーン・コネリーにはずっと苦笑しっぱなしでした。 [DVD(字幕)] 6点(2011-06-19 22:48:24) |
68. ウルヴァリン:X-MEN ZERO
なんというか一番苦手なタイプのスピンオフ作品。シリーズで人気のウルヴァリンを取り敢えず主役にして、あとは適当なヴィランをでっちあげ、最後にこれまでのキャラをそれとなく登場させるっていう流れ。柳の下のどじょうをすくおうとしたのがバレバレで、正直詰まらなかったです。問題は色々あるのですが、そもそもウルヴァリンという孤独を背負った男を通して何を観客に伝えたかったのか?それが全く見えてこなかった。単に私の読解力不足なのかも……。 [DVD(吹替)] 5点(2011-06-19 12:08:04) |
69. スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団
《ネタバレ》 ハッキリ言って凡庸な監督が同じことをしたら、「金返せ!」の大合唱になると思います。全編簡単に言うとおふざけで、マトモな演出は一つも無いと言っていい。それでも、この映画が良くある実験映画の様な完全自己満足作品に落ちぶれずに済んでいるのは、エドガー・ライト監督のコメディの演出が上手いからなんだろうなと思います。と言いますか、良くこれだけムチャクチャな原作を忠実に実写化出来たなと感心したいくらいです。プロットだけ抜き出すと、「美人(という設定)の彼女と結ばれるには、彼女が過去に付き合っていた7人の元彼を全員倒さなければいけない。しかも元彼達は何かしらの特殊能力を備えている!」って自分で書いててサッパリ訳が分からん。 [映画館(字幕)] 5点(2011-05-29 22:11:30)(良:1票) |
70. ニューヨーク1997
《ネタバレ》 大して予想外な展開は起きないのですが、それでも十分に面白い水準の作品だと思います。短い上映時間の中でもキャラクターがキチンと立っているから安心して物語に没頭できます。ただジョン・カーペンター御大自らの音楽だけには苦言を呈したい。終盤になってもあのゆったりとしたテクノじゃ気分が全く盛り上がらないよ! [DVD(字幕)] 7点(2011-05-29 10:04:24) |
71. 赤い影
《ネタバレ》 物語の佳境、不吉な弦楽器のコンチェルトをバックに、暗く澱んだベニスの街並みを、主人公が彷徨い続ける。コンチェルトも、美しいベニスも、カメラへの収め様によってこれだけ恐ろしいものに変貌するのかと、大変驚愕しました。この一連のシーンを観れるだけでも、この映画は価値があると思います。面白いサスペンス映画に必須の伏線の回収も実に良くできていると感じました。またこの映画の語り草になっているベッドシーンは矢張り素晴らしい出来でした。中年のカップルのラブシーンにおいて、本作ほど相手への愛情を感じられるベッドシーンを私は他に知りません(大した映画の本数観ていないということもあるでしょうが……)。古さを感じさせない傑作サスペンス映画でした。 [DVD(字幕)] 9点(2011-05-08 16:24:57) |
72. ヘイヴン 堕ちた楽園
監督が脚本も兼任しているので、パルプ・フィクション以後のことをやりたいのはハッキリしているのでしょうが、最終的に作品として大して面白くないのが玉にキズでしょうか。元々はスラップスティック・コメディと相性がいい題材に悲恋という要素を突っ込んだアイデアは面白いと思うのですが……。これ見よがしな撮影・編集テクニックも無かった方が良い様な気がします。でも初監督らしいのに、有名俳優を使ってやりたいことをしている姿勢は好きですね。 [DVD(字幕)] 5点(2011-03-15 01:00:38) |
73. ラブ・アクチュアリー
《ネタバレ》 群像劇で恋愛モノをするというのは非常に難しいことだと思うんです。ただのロマンス映画でさえ、1カップルの恋のすったもんだを二時間かけて必死こいて描いているんですから当たり前でしょう。なので冷静に見ると、この映画には結構穴がある。ポルノ俳優のカップルなんて何の障害も無く恋愛が成就してしまいますからね。……でも、そんなツッコミが野暮に感じる位、この映画は恋に一歩踏み込む勇気を確実に与えてくれる。恋愛映画ってたまにこういう理屈抜きで「良い!」と思える作品があるので侮れません。 [DVD(字幕)] 7点(2011-03-14 00:18:26) |
74. ロッキー・ホラー・ショー
《ネタバレ》 全編に渡って繰り広げられるビザールでサイケデリックな変態世界にテンションあがりまくり!正にホラー・ショー、正にカルト映画の名にふさわしい突き抜けっぷりですが、私にとっては大好物です。フランクン・フルター博士がマントを脱ぎ捨てた時の衝撃は忘れられない。人によっては拒絶反応を起こし、人によってはこのハイテンションな変態世界に魅入られるでしょうね。 [DVD(字幕)] 9点(2011-01-23 01:59:42) |
75. ウォレスとグルミット/ベーカリー街の悪夢<TVM>
《ネタバレ》 相変わらずの高いクレイアニメーション技術を惜しげも無くみせてくれるのですが、やや「ウォレスとグルミット 危機一髪」と被るストーリーだったので、またこの展開か…と思ってしまったのが残念なところ。次に演出ですが、オープニングからニック・パークお馴染みの古典サスペンスホラーへのオマージュが炸裂していて十分に面白いのですが、過去の様なスピーディーなアクションシーンが少なくなってしまったのも勿体無いかな。いや、このクオリティでも30分の短編として十分素晴らしいんですけど。「犬でも分かる電子監視」や「パピー・ラブ」など文字ネタは相変わらず面白い。 [地上波(吹替)] 7点(2010-12-28 14:44:08) |
76. キック・アス
何というか……、この映画を作った人達の趣味が丸分かりの映画でしたね。それはつまり、アメコミ!バイオレンス!ロリコン!ギャング!マカロニ・ウエスタン!ですね。これらを一本の映画の中に「これでもかッ!」と詰め込んでいるんですから、いやはや大したものです。それでもこの映画が作り手の自己満足映画になっていない理由は、その基礎から綿密に積み上げられた高い映画作りの技術があるからでしょう。これだけエンターテイメント性の高い作品に仕上げながら、ギャグも沢山入れつつ、かつ間延びせず、最後には正義とは何かという重いテーマを持つ作品なんて中々観る機会は無いでしょう。 またアメコミ映画(特にスパイダーマンとバットマン)のパロディを入れつつも、パロディ元をバカにされた気がしないのは、作り手がパロディ元が持つテーマを十分に理解しているからと思いました。スパイダーマンは「大いなる力には、大いなる責任が宿る」という正義のヒーローが持つ宿命を描きましたが、キック・アスのテーマは「じゃあ大いなる力を持たない一般人には責任は宿らないのか?」という事。こういう事をキチンと描ける映画ってのは稀な気がします。勿論、コメディ映画としても非常に面白く、私が観た劇場では観客全員がゲラゲラ笑いながら観ていました。劇場でこれだけ笑わせてくれる映画も余り無いと思いますので、鑑賞する際は映画館をお勧めします。あとヒットガールとビッグダディ最高 笑。 [映画館(字幕)] 9点(2010-12-22 19:47:14)(良:2票) |
77. スパイ・ゲーム(2001)
出来は悪くない。決して悪くないのですが、ややストーリーの展開の遅さにやきもきしてしまった感はあります。トニー・スコット監督にしては、落ち着いた印象の作品でしたが、個人的にはいつもの雰囲気よりもこちらの方が好みです。ロバート・レッドフォード、ブラッド・ピットという二大スターを共演させておきつつ、落ち着いた作品にしあがっている事にも好感が持てます。 [DVD(字幕)] 5点(2010-12-12 17:29:55) |
78. ウォレスとグルミット/チーズ・ホリデー
シリーズの他の作品と比べると、ニック・パークの真骨頂(と私は思っている)である古典サスペンスの演出が余り感じられず、やや退屈してしまいます。強引なストーリー展開やコミカルな登場人物たちは相変わらず素晴らしい。 [DVD(吹替)] 5点(2010-12-12 17:25:48) |
79. エイリアン
《ネタバレ》 本作について素晴らしい点を身も蓋もない言い方で言うと「気持ち悪い」の一言である。それはスプラッターホラー映画の様な、「内臓がデロデロ飛び出して気持ち悪い」とか、「血がビュービュー出て気持ち悪い」とかとは違う、謂わば「ヌメッとした気持ち悪さ」、そういう気持ち話悪さでこの映画は満ちている。それはゆっくりと開くエッグチェンバーであり、顔にへばりつくフェイスハガーであり、腹を突き破って奇声を上げるチェストバスターであり、体液を飛ばしながら暴れるアンドロイドのアッシュであり、言わずもがな成体となったエイリアンである。 その気持ち悪さは性行為の気持ち悪さに通じるものがあると思う。行為自体は勿論ロマンチックなものであるが、とどのつまり粘膜や内臓の触れ合いである。その感触がこの映画に気持ち悪さを感じる根本的な原因であるのだろう。 またエイリアンの造形が男性器のメタファーというのは有名な話だが、そう考えるとこの映画は男性器そのものに襲われるストーリーである。それまでもドラキュラや狼男など、男性性が恐怖の対象として捉えられることは良くあったが、男性性ではなく、もっと直接的に男性器そのものに襲われる恐怖を描いたのだとするとこれは画期的だろう。またエイリアンのデザインに携わったギーガーがとんでもなく良い仕事をしてしまった。だから今観ても矢張り気持ち悪いし、恐ろしい。 個人的にこの映画が好きなのは、映画が始まって暫く誰が中心のキャラクターなのか描かないことだ。結局はリプリーが主人公になる訳だが、彼女の顔は特にアップで映されることなく序盤はずっと進む。つまり誰が死ぬかわからない恐怖感が常にある。主人公がリプリーとなってからは、彼女の女性としての強さに惚れ惚れする。彼女は機械にも強く、船長に対しても毅然と自身の意見をぶつけ、論理的に行動する強い女性だ。これは常に泣いているもう一人の女性乗組員ランバートとの対比から明らかだろう。そんな彼女が男性器のメタファーに対し立ち向かい勝利するのだ。本作は優れたホラー映画であり、女性映画でもあるのだと思う。 [映画館(字幕)] 8点(2010-11-22 02:38:17) |
80. 第三の男
個人的には、良く考え抜かれた脚本、演出、構成を楽しむ作品と思っています。流石に巨匠の業と言いましょうか、非常に丁寧に作られています。ハリーが闇の中から登場する名シーンと、終盤の地下水道での逃走劇は、当時のフィルム・ノワールを代表する映像美でしょう。なので、あーだこーだイチャモンは付けられませんが、全体を通すとやや平凡な気もします。 [地上波(字幕)] 7点(2010-11-21 13:13:43) |