1. シェルブールの雨傘
《ネタバレ》 ずっと観損ねていたのを、劇場でデジタル・リマスター版を鑑賞した。すごくラッキーだったと思う。色あいも音楽もとてもきれいで、愛らしくおしゃれな小品に仕上がっている。悲しいラストシーンが白と黒を基調とした雪の吹きすさぶ夜であるのに対し、二人が愛し合っていた日々はカラフルで鮮やか、陽気な音楽とともに描かれる。二人が簡単に永遠の愛を誓うようすはいかにも若気の至りではあるけれど、この映画はそれを否定しているわけではなく、あくまでも美しい思い出として、彼らが成長してからも人生の宝物になりえるような記憶としてとらえているように思える。 それにしても、エッソのガソリンスタンドまでおしゃれなアイテムにしてしまうのだから、フランス人というのは空恐ろしい人種だ。 [映画館(字幕)] 8点(2009-06-01 12:06:50) |
2. シベールの日曜日
《ネタバレ》 これよりももっと感情移入のしやすい、わかりやすい感動作はたくさんある。もっと夢中になれる面白い作品はいくらでもある。しかし不思議なことに、これ以上に鮮烈に記憶に焼きついた映画はひとつもなかった。 精神が壊れてしまった男と、感受性の豊かな少女の束の間の絆。あどけない彼らの姿はなんだか足取りも覚束ない小さな生き物を見ているようで、可愛らしさになごむ反面、いつ怪我をするかとひやひやしてしまう。あやういまでの繊細さが、最後には破滅が待っていることを予感させる。 また映像の清らかさも本作を忘れ難いものにしている。湖に広がる波紋、空に入ったひび割れのように広がる木の枝、ガラスや水晶に砕かれた風景。自然物の上手な使い方にはタルコフスキーの『僕の村は戦場だった』を思い出した。 しかしなんといっても衝撃的なのは、悲劇を悲劇のままに投げ出す結末だろう。おそらくこの映画に強く共振してしまう人は、ある種の痛みを知っている人だと思う。大切なものが砕けてしまう痛み、きれいなものが汚されてしまう痛み、誰かを守れなかったという痛み――決して取り返しのつかない、圧倒的な喪失の感覚。苦い絶望のなかに、ただ優しい記憶だけが残る。 他にも同じような方がいらっしゃるので告白してしまうと、生涯で一番好きな映画を問われれば自分もこの作品を挙げる。もっと面白い、バランスの取れた映画は他にもあるとわかっているのだが、なぜかこの映画を選んでしまう。きっとこの映画が描くような痛みは、心のもっとも深い場所に眠っているもので、そこを突かれると自分が根本から揺るがされてしまうのだろうと思う。 失うことの痛み。それは辛く哀しく、しかしけっして忘れたくない大切な痛みだ。 [ビデオ(字幕)] 10点(2006-02-09 01:46:32)(良:2票) |
3. 人生は、時々晴れ
悪くはないけど、『秘密と嘘』を観た後ではいささか新鮮味に欠ける。最初は喧嘩ばかりしていた家族がトラブルを境に再生のきっかけをつかむ、という大まかな流れは同じ。しかしどうも中途半端な感が否めない。近所の他の家族の話はあれでおしまい? ストーカーはなんだったんだ? 娘が妊娠してしまう話もあれでお終いとは……。挿話にきっちりと結末が付けられていないのはリアリティを追求した結果なんだろうか。どうせ途中で投げ出すのなら、もっとさらっと流すだけにしておけばよかったのに。もっとタイトな構成にできたはずだ。 [ビデオ(字幕)] 6点(2006-01-17 19:56:32) |
4. 白い家の少女
サスペンスとしてはそんなに面白くはないが、ジョディ・フォスター演ずる幼い殺人者のあまりにも痛ましい姿が印象に残っている。エンディングを聴きながら、誰も彼女の側にいてくれない、この子を守ってくれる人はどこにもいないのだという実感が、きりきりと胸に食い込んでくるのを感じた。こんなにも淋しい、やりきれない結末はなかなかない。 [ビデオ(字幕)] 7点(2006-01-03 04:20:25) |
5. シビラの悪戯
何をしたいのかがよくわからない。シビラがなぜあの普通のおじさんを好きになったのかもわからなければ、そもそも彼女の性格もわからない。おじさんも、シビラに恋する少年の心情も細かく描写されず、終盤一気にドラマチックになっても説得力がない。この脚本で主要登場人物に感情移入するのが難しいのは致命的。 脇役とそのエピソードの方がよほど面白い。シビラを中心に据えてセックスに関するユーモラスな群像劇を描くのかと思ったが、核となるべきエピソードが一番つまらないのでがっかりした。詩的な原題に比べて、なんて空虚なドラマなのか。無理やり劇的なラブストーリーにしようとしなければ面白かったかもしれない。 (後、シビラの声が汚い。鼻詰まりの少年のような声で、ハスキーとかそういうレベルじゃなく、汚い。個人的な好みだが、声の汚い女性は嫌いなので彼女の魅力も半減した。) 3点(2005-01-24 04:24:36) |
6. 少女首狩事件
確かにつまらない、ありきたりな話。でも実話に基づいているだけに描写のリアルさにはぞっとさせるものがある。血の痕跡を探すルミノール反応で、部屋の壁一面に反応が出る辺りは結構怖かった。しかし最後の刑事の行動、バカ過ぎないか? 勝手な判断で不法侵入、犯人ばかりかその罪のない家族まで死なせて…… 3点(2004-05-02 13:59:40) |