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かたゆきさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1885
性別 男性
年齢 48歳
自己紹介 自分なりの評価の基準は、
10・超大好きな作品。完璧。映画として傑作であるばかりでなく、自分の好みと見事に合致している。
9・大好きな作品。完璧に近い完成度。手放しに歴史に残る傑作といっていい。
8・好きな作品。本当に面白い。欠点があるかもしれないが、それも含めて好き。
7・少し好きな作品。普通に面白い。欠点もあるかもしれないが、そんなに気にならない。
6・普通の作品。可も無く不可も無く。最後までストレスなく観られる。面白いけど、心に残るものはあまりない。
5・少しつまらない作品。最後まで観るのにちょっとストレスを感じた。面白い部分も多少はあった。
4・つまらない作品。最後まで観るのが苦痛だった。ほとんど面白いところが感じられなかった。
3・かなりつまらない作品。最後まで観た自分を褒めてあげたい。観終えた後に、怒りのあまりDVDを割りそうになった。
2・超つまらない作品。時間と金を返せ。観終えた後に、怒りのあまり製作者全員を殴りに行きたくなった。
1・絶望的につまらない作品。最低。観終えた後に、怒りを通り越して死にたくなった。
0・死霊の盆踊り。

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1.  バクラウ 地図から消された村 《ネタバレ》 
近代化や開発の波に取り残され、加速化する人口減少なども相まって、世界から今にも忘れ去られようとしている村、バクラウ。インターネット上の地図からもその存在を消され、警察や行政からも見捨てられたこの村にある日、正体不明の部外者が訪れる。通りすがりの旅行者を名乗る彼らだったが、その日から原因不明の危機が村を襲うようになるのだった。給水タンクに撃ち込まれる銃弾、村を監視するかのように空を飛ぶドローン、そしていつの間にか惨殺される村人たち……。いったいこの村に何が起こっているのか?だが、村の住民たちも黙ってはいない。何故なら彼らは誇り高き革命戦士の末裔だったからだ。隠し持っていた銃を手に取り、自らの村を守るため立ち上がる住民たち。彼らの命を懸けた戦いの幕がいま、切って落とされる――。南米の荒れ地に囲まれた小さな村を舞台に、武装した村民と謎の襲撃者たちの血で血を洗う抗争を濃密に描くバイオレンス・ドラマ。カンヌで審査員賞なるものを受賞したということで今回鑑賞してみたのですが、正直僕はさっぱり楽しめませんでした。これってストーリーの面白さで見せるというより、多くの謎をまず最初に提示してその真相が何なのかを延々引っ張るというスタイルだと思うんです。謎の因習に満ちた村、怪しげな雰囲気漂う住民たち、そして彼らを執拗に狙う謎の襲撃者集団……。まあ確かに、全編に横溢するこのミステリアスな雰囲気に最後まで引っ張られて見てたんですけど、残念ながら最後に明かされる真相があまりにも弱く、肩透かし感が半端ない。こちらの想像したオチを全く超えてこず、「結局それだけのことやったんかい!!」と僕は思わずずっこけそうになっちゃいましたわ。さすがにここまで引っ張っといて、肝心のオチがこれではねぇ。もっと観客の度肝を抜くような一捻りが欲しかった。作品全体に漂うこのひりひりとした空気に+1点。
[DVD(字幕)] 4点(2021-09-04 01:31:13)
2.  博士と狂人 《ネタバレ》 
制作に約70年もの月日を費やして完成された世界最高峰とも呼ばれる辞書「オックスフォード英語辞典」。その完成の裏には、博士号を持たない異端の言語学者と精神を病んでしまい妄想から人を殺めてしまったアメリカの元軍医という二人の存在があった。実話を基に、世界最大の辞書を編纂したそんな二人の天才の友情と交流を描いた歴史ドラマ。ベテラン俳優ショーン・ペンとメル・ギブソンがそんな博士と狂人を演じたということで今回鑑賞してみました。率直に言って、題材は凄く良かったとは思うんですよ、これ。世界でも有名な辞書完成の裏に隠された秘話、しかもそこには統合失調症を患った精神病患者の尽力があったなんてとても興味が惹かれるテーマじゃないですか。なのに、最後まで付き纏うこの微妙な空気感。きっと話を詰め込み過ぎたんじゃないですかね。いろんなエピソードが展開されるんですけど、どれもこれも踏み込みが非常に甘い。特に、狂人博士の方に殺された男の奥さん。この人が最初は当然、この夫を殺しながら病のせいで罪に問われず精神病院への処置入院で済んだ男へと物凄い憎悪を募らせるんです。でも、お金を貰って何度か優しくされると簡単に許しちゃう。いやいやそんな訳ないでしょ。もし事実がそうだとしても、そこに至る過程にもっと鋭く切り込んでもらわないと。これでは深みに欠けると言わざるを得ません。また、同じようにこの狂人とはぐれ者の言語学者との交流も一面的でなんとも浅い。題材は良かっただけに、もう少し脚本を練って欲しかった。イカれた孤高の天才を熱演したショーン・ペンの迫力に+1点!
[DVD(字幕)] 5点(2021-08-09 06:00:44)
3.  ハイ・ライフ 《ネタバレ》 
新たなるフロンティアを求めて、太陽系から遠く離れた外宇宙へと片道飛行を続ける元死刑囚たちを描いたハードSFドラマ。正直、クソつまんなかったんですけど、これ。まず、冒頭のチープな宇宙描写に思わず苦笑い。だって宇宙船の船外で作業をする乗組員が、がっつり宇宙服を着てるのに無重力感がゼロなんですもん。んで、船内に戻ってきた彼が宇宙服を脱ぐと申し訳程度に手袋が宙に浮くんですけど、それも明らかにテグスで引っ張ってる感ありまくり。え、これはエド・ウッドが制作した知られざる作品とかですか(笑)。んで内容の方も変に芸術を気取った独り善がりな代物で、ちっとも面白くもなければ深みもない。無駄にエログロ描写が多いのにも辟易です。あの謎のオ〇ニーマシンに跨るおばさん描写は、演じるジュリエット・ビノシュ含め誰得なの?最後はよー分からんまま、主人公親子がブラック・ホールに突っ込んで終わり……。あまりのテキトーぶりに僕は思わず怒り狂いそうになっちゃいました。そばかす美少女ミア・ゴスちゃんのおっぱいに+1点!
[DVD(字幕)] 2点(2020-10-19 08:01:01)
4.  ハウス・ジャック・ビルト 《ネタバレ》 
この12年の間に起きた、5つの出来事で俺の人生を語ろう――。生まれついてのサイコパスにしてシリアルキラーでもあるジャック。分かっているだけで、幼い子供から年老いた老婆にいたるまで少なくとも60人以上を殺し、その死体を自身が所有する冷凍庫にコレクションしていた男。自らが無作為に選んだという5つの出来事が彼の狂気に満ちたモノローグとともに語られる。聞き手となるのは、ヴァージと名乗る謎の男性。道端で拾った高慢ちきな見知らぬ女、夫を亡くしささやかな年金で一人暮らしていた初老の未亡人、二人の息子とともに充実した日々を過ごしていた若い母親、ただ愛されることを望んでいた売春婦、そして何人ものどうでもいい男たち……。創造と破壊、欲望と理性、倫理と芸術、ジャックは自らの思想とともにヴァージに語り続けるのだった。何故彼は人を殺し続けたのか?そして二人はいったい何処へと向かうのか?デンマークの鬼才、ラース・フォン・トリアーの約5年ぶりとなる最新作は、そんないかにも彼らしい挑戦的で自虐に満ちた野心作でした。率直な感想を述べさせてもらうと、いやー、本当に変な映画でしたね、これ。カンヌでも途中退席者が続出したというだけあってかなり人を選ぶグロ描写が続出するのですが、なんだか全体的に変なユーモアがあるのが彼の鬼才たるゆえん。いかにも殺してくれと言わんばかりの高慢高飛車女をジャッキで殴り殺す冒頭のエピソード(ユマ・サーマンの無駄遣い!笑)から摑みはばっちりで、続く強迫性障害のせいで何度も殺害現場へと舞い戻ってしまうエピソードなんて思わず笑っちゃいました。母親の目の前で幼い子供を射殺するシーンなどはあまりにも倫理観を逸脱していて逆に清々しいくらい。おっぱいをえぐられちゃうジャックの彼女?の話あたりまで来るとなんだか神経が麻痺しちゃいますね。合間に挟まれるジャックのフリップ芸なんて、あまりにもシュール過ぎてR‐1でも通用するかも?!そして辿り着く驚愕のエピローグ。もはやぶっ飛びすぎてて終始唖然(笑)。何ですか、あのルネッサンスの油絵みたいな変な世界観は。文字通り地獄に堕ちた彼へと、エンドロールで「もう帰って来るな!ジャック!」とノリノリの曲調で歌われた日にゃもはや笑うしかなかったです。鬱病を患っていたころの陰鬱で重苦しい作風から抜け出し、前作辺りからトリアーはこんなヘンテコな世界へと辿り着いたのですね。うん、何処までも付いていきます!9点!!
[DVD(字幕)] 9点(2020-02-02 23:44:03)(良:1票)
5.  ハンターキラー 潜航せよ 《ネタバレ》 
ロシア国内で突如としてクーデターが勃発!異変を察知したアメリカ政府は第三次世界大戦の危機を阻止するため、陸軍特殊部隊及び偶然近くに停泊していた原子力潜水艦アーカンソーに秘密指令を下す。それは、反乱軍によって監禁されたロシア大統領を生きたまま救出することだった――。おおよそ不可能とも思われるそんな困難な任務に赴くことになった攻撃型原潜、その名もハンターキラー。彼らのロシア近海への決死の侵入をスリル満点の展開で魅せるポリティカル・アクション。前評判通り、なかなか面白いじゃないですか、これ。まあ、ベタっちゃあベタですけど緻密に考えられたであろう脚本はけっこうな完成度。ロシア近海に潜む原子力潜水艦と、かの国の基地に潜り込んだ特殊部隊員、そしてアメリカ本国で指揮を執る制服組との息詰まるようなやり取りはリアリティがあって見応え充分でした。潜水艦でのお約束の展開もちゃんとツボを押さえられていて(あの音を出せない状況で危うくスパナを落としそうになるとこなんて心臓に悪すぎ!!)、終始ハラハラドキドキ。ジェラルド・バトラー演じるアメリカ人艦長と、本来は敵同士であるはずのロシア人艦長とのただお互い船乗りとしてのプライドから結ばれる友情なんて熱い熱い。陸上で孤立無援の戦いを強いられる特殊部隊たちのドラマもそれに負けず劣らずよく出来ており、ともすれば一本調子になりそうなストーリーにいい緩急を与えています。クライマックス、ロシアの猛攻撃を受けながら決死の脱出を図るハンターキラー内での緊迫感に満ちた攻防もかなりの迫力。損傷した艦内にどんどんと海水が入り込んでくるシーンは、こういう映画で何度も見ているとはいえやはり息が詰まりそうになりますね。いやー、何度生まれ変わっても潜水艦乗りにだけは絶対なりたくない(笑)。最後の展開が若干ご都合主義に流れすぎな感もありますが、エンタメ映画として僕は充分楽しませていただきました。うん、7点!
[DVD(字幕)] 7点(2019-11-14 23:08:04)
6.  ハッピーエンド(2017) 《ネタバレ》 
フランス北部の街カレーで大豪邸に住むとある裕福な家族。会社を経営する長女を中心に三世代が同居する、この一見幸せそうな家族の生活にある日、長年離れて暮らしていた長男の前妻の子供が引き取られることに。エヴというもうすぐ13歳になるその少女の母親が自殺未遂を起こし、しばらく入院することになったのだ。数年ぶりに出会った父親との同居に初めは戸惑いつつもエヴは、少しずつ新たな生活に馴染んでゆく。すると、一見幸せそうに見える家族の隠された本当の姿が炙りだされていくのだった――。認知症を患う祖父は死への誘惑を抱え、エヴの父親である長男は浮気相手とチャットでエロトークをし、会社を経営する長女は社内での訴訟問題に頭を悩ませ、彼女の息子である孫は連日のように深酒をして問題を引き起こし、そしてエヴ自身もまた心に暗い闇を抱えていたのだった。そんなもはや崩壊寸前の家族が最後に辿り着く〝ハッピーエンド〟とは?社会の不条理や人生の生きづらさを透徹した目で描き続けてきた鬼才ミヒャエル・ハネケ監督の最新作は、SNS時代における家族のありようを皮肉たっぷりに描いたヒューマン・ドラマでした。あのハネケがハッピーエンドなんて撮るはずがないと分かっていましたが、いやー、これがまた相変わらずのハネケ節(笑)。すっかり冷め切ってバラバラになってしまった家族の醜悪なドラマが、ただ淡々と、それでも知的で気品に満ちた映像でもって描かれておりました。無駄を削ぎ落したシンプルなストーリーの中にたくさんのヒントを散りばめ、現代社会が抱える様々な問題を観客自らに考えさせるというその手法は並みの才能では出来るものではありません。そして迎える皮肉なハッピーエンド。長い人生を生きてきた老人とこれからも生きていかなければならない若い少女がともに達したこの結論に、果たして人生に生きる価値などあるのかと鋭いナイフで自分の倫理観をえぐられるような思いをさせられてしまいました。ミヒャエル・ハネケ、70歳を過ぎてもいまだ衰えぬその負のパワーは凄いです。正直、僕は嫌いですけど(笑)。あと、関係ないけどエヴ役をやった女の子の存在感は凄いですね!むちゃくちゃ可愛くてキュートで、久々に僕のロリコンレーダーにびしばしくる逸材を見つけてしまいました。ファンティーヌ・アルデュアン、これから要注目!!
[DVD(字幕)] 6点(2019-06-14 23:37:40)
7.  パターソン 《ネタバレ》 
ニュージャージー州、パターソン市。その街で長年バスの運転手として働く、寡黙な青年パターソン。毎日同じ時間に家を出て、毎日同じルートを辿るバスを運転し、毎日同じ時間に帰宅すると一緒に暮らしている彼女のあまり美味しいとは言えない手料理を食べ、そして一日の締めくくりとして愛犬のブルドックの散歩がてら行きつけのバーでビールを一杯だけ飲む。そんな何処にでもいるような平凡な青年の唯一の趣味は、大事な秘密のノートに書き綴っている詩だった――。何気ない日常を生きる平凡な青年のさして何事も起こらない一週間をしっとりと切り取ったポートレート。インディペンデント映画界の巨匠ジム・ジャームッシュ監督の約4年ぶりとなる待望の新作は、そんな地味ながらも光り輝くような詩情が随所に散りばめられた佳品でありました。事件らしい事件など何も起こらない淡々とした作品なのに、最後までずっと観ていられるのはこの監督の人に対する暖かな視線の賜物なのでしょう。急にギターを弾きたいと言ってみたりカップケーキを売りたいとオーブンでひたすらまずそうなケーキを焼き始めたりする彼女、いつも家族に対する愚痴ばかり言う会社の上司、一人でチェスをするのが趣味のバーのマスター、そして彼女に振られて狂言自殺をするダメ男まで誰しもがそれぞれに憎めない魅力を持っています。主人公がささやかな日常をヒントに豊かな想像力を働かせて書く数々の詩も、そんな平凡な人たちの生活を魅力あふれるものに変えてゆくのに一役買っています。愛犬である悪戯好きのブルドック(最後の最後にこいつがやらかしてしまいます!)なんてまさにキュート!最後に唐突に現れる、永瀬正敏演じる日本の詩人もこの何気ない物語の締めくくりとしてこれ以上ないくらい良い雰囲気を醸し出していました。それ以外にも一瞬だけ登場するキャラクターたち――コインランドリーでラップを歌う黒人やパターソンと同じく秘密のノートに詩を書く少女、バスで猥談する下世話な乗客たちまでもそれぞれに他にない魅力を発していました。まさにジム・ジャームッシュの円熟の技が光る、大人の魅力に満ちた良品と言っていいでしょう。
[DVD(字幕)] 8点(2019-03-10 00:36:47)
8.  裸足の季節 《ネタバレ》 
トルコの閉鎖的な田舎町で厳格な叔父に育てられる5人姉妹の抑圧された青春の日々を、息を呑むほどの美しい映像で描いた抒情的な作品。なんとなくソフィア・コッポラの『ヴァージン・スーサイズ』みたいな感じなのかなと思いながら今回鑑賞してみました。確かに彼女の作品の影響を色濃く受けているのですが、これはこれでなかなか面白かったですね。コッポラ作品にはない本作ならではの美質は、美しい映像の裏に適度に配された明確な政治的メッセージでしょう。すべての女性を男の都合のいい価値観の元に縛り付ける前時代的な考え方――結婚するまで処女を守り通すことが最上の貞節とされ、初夜の夜にわざわざ夫の家族がシーツが血に染まっているかを確かめに来るような――に対する怒りが、作品の通奏低音となって詩的で美しい映像にいいアクセントをくわえている。また美しい5人姉妹を演じた少女たちの自然な演技も素晴らしく、特に末っ子を演じた女の子が時おり垣間見せるきらきらと輝くような笑顔なんてとても良かったです。うん、なかなかの良品でありました。8点!
[DVD(字幕)] 8点(2017-10-08 23:54:18)
9.  ハンナ・アーレント 《ネタバレ》 
「聞いたでしょう、アイヒマンは法律に従っただけ。彼は自分で手を下していない。ただ、ユダヤ民族抹消という上からの命令に従っただけ。その証拠にアイヒマンは、自分にユダヤ人への憎悪はないと主張している。そう、彼は単なる役人なの。ホロコーストという、想像を絶する残虐行為と彼の平凡さを同列に裁くことは間違っている」――。1960年、多くのユダヤ人をガス室へと送ったナチス戦犯アイヒマンが、イスラエル諜報機関によって南米で逮捕される。すぐにイスラエルへと移送された彼は、人道に対する罪で裁判にかけられるのだった。ドイツ系ユダヤ人であり、自らも迫害された過去を持つ高名な哲学者ハンナ・アーレントは、彼の罪を冷静に見つめようと、すぐにイスラエルへと飛ぶ。「こんな残忍な怪物はすぐに処刑すべきだ!」という空気に満ち満ちたそんな裁判を傍聴していく中で、ハンナは彼が裁くに値しない凡庸な人間であるという考え方を強めていく。やがて、「ホロコーストという未曾有の悲劇を起こしたのは、彼のような人間だけではなく、ユダヤ人にもその責任の一端がある」という主張を表明すると、彼女に嵐のような批判が巻き起こるのだった……。実話を基に、ナチス戦犯であるアイヒマン裁判をあくまで冷徹に見つめた一人の女性哲学者の凛とした生き様を淡々と描いたヒューマン・ドラマ。恥ずかしながらハンナ・アーレントというこの哲学者もアイヒマン裁判もほとんど知らずに本作を鑑賞してみたのですが、これがなかなか見応えのある人間ドラマの佳品へと仕上がっておりました。とにかく、本作の主人公であるハンナ・アーレントが人間としてすこぶる魅力的!!ヘビースモーカーだった彼女が煙草をくゆらせながら(ほんと、ず~~~っとプカプカ煙草喫ってます笑)延々とディベートする姿がとにかく格好良い!!どれだけ批判に晒されようと絶対に自分の信念を曲げない鉄の女であった彼女。でも、家庭では一人の女性として夫を気遣う姿がとても印象的でした。そして、ユダヤ人でありながら、自らの感情よりも冷静な知性でもって真実を見つめようとしたハンナの姿勢は大変興味深いものでした。誰もが自分で考えることを放棄し、ただ上からの命令や時代の空気に流されてホロコーストという未曾有の悲劇を巻き起こしてしまった人類……、今回も感情に流されてアイヒマンを死刑にしてしまったら私たちは何も時代から学ばなかったことになるというハンナの思想は、徐々に右傾化する現代日本に警鐘を鳴らしているようでもあります。時代の風潮に安易に流されることなく、自分で考え判断することの重要さをあらためて教えてくれる佳品でありました。
[DVD(字幕)] 7点(2015-06-25 12:45:19)
10.  ハウンター 《ネタバレ》 
パパもママもきっと信じてくれない。私だけが気付いているの、毎日同じことが繰り返されるって!私、ずっと16歳になる前日のままなのよ――。16回目の誕生日を明日に控えた平凡な少女、リサ。ちょっぴり反抗期を迎えているものの、それなりに充実した日々を過ごしている。だがある日、彼女は気付くのだった。「私たち、ずっと同じ日をループしてる!!」。いつも洗濯機からなくなる衣服、空想上の友達と遊ぶ弟、どこからともなく聞こえてくる自分を呼ぶ声……。永遠に繰り返されるそんな出口のない迷路のような生活から、なんとか逃げ出そうともがき始めるリサ。果たしてここは何処なのか?なぜ自分はこんな悪夢のような事態に陥ってしまったのか?そして彼女は無事にこの無限ループから抜け出し、ちゃんと16歳の朝を迎えることが出来るのか?低予算ながら、誰も見たことがない斬新なアイデアと練られた脚本の力さえあればいくらでも面白い映画が創れると世界に知らしめた名作『キューブ』で鮮烈なデビューを飾ったヴィンチェンゾ・ナタリ監督。今回も相変わらず低予算(だってセットはほぼこの一軒家のみだし、ループモノだから映像さえも使い廻しが…笑)なのだけど、そこはやっぱりナタリ監督、この映像への半端じゃない拘りはさすがでしたね。特にこの一軒家に濃密に漂う不気味な雰囲気は一見の価値あり。ただ、残念ながら誰も見たことのない斬新なアイデアは今回ありませんでしたけど。てか、これってP・ジャクソン監督の愛すべき失敗作と僕が認めてやまない『ラブリー・ボーン』と設定がまるかぶりのような気が…。他にも色んな有名映画で見たようなシーンがチラホラ…。とはいえ、こういう思春期少女の精神世界をミステリアスに描き出すゴシック・ホラーってもろ僕の好みなんですよね~。それに後半の様々な少女たちの精神世界が重層的に絡み合うパラレルワールドをちゃんと破綻させずに描ききったところなど、なかなか見応えありました。主役を演じたぽっちゃり女子もけっこう可愛かったしね。ホラー映画としても普通に怖かったんじゃないかってビビリの僕なんかは思ったりもします。そんな訳で、僕の好みを良い感じにビシバシ突いてくるこの作品、ちょっぴり甘めの8点!
[DVD(字幕)] 8点(2015-03-13 18:37:48)
11.  パッション(2012) 《ネタバレ》 
大手広告代理店で若手キャリアウーマンとして働くイザベルは、同じく優秀なキャリアウーマンである上司の下、めきめきと頭角を現していた。ある日、自分が思いついた画期的なアイデアが上司であるそんなクリスティーンに横取りされそうになった彼女は、先手を打ってネット上へと自らが製作した広告動画を流すのだった。それが人々の評判を呼び、本社の社長からも認められ、イザベルは本社勤務へと栄転することに。だが、彼女は知らなかった。そんな、すっかり鼻をあかされた格好の上司クリスティーンは実はライバルを貶めるためには手段を選ばない、とんでもない悪女であることを――。あらゆる手法を駆使され次第に追い詰められていくイザベルだったが、そんな折、謎のクリスティーン殺人事件が発生してしまう……。これまでサスペンス映画の名作を数多く残してきた巨匠ブライアン・デ・パルマ、彼の最新作はそんないかにも彼らしいフランス上流階級でプライドと愛憎が激しく交錯しあう女たちの戦いを妖艶に描き出すサスペンス・ミステリーでした。確かに、今まで築き上げてきたキャリアに裏打ちされたであろうデパルマの巧みな演出(画面二分割や長廻しショット、散りばめられた謎が謎を呼ぶ数々の伏線等々)が随処に感じられて素直に良かったとは思うのですが、物語の構造上の不満を言わせてもらえば、「肝心の殺人事件が起こるまでが長ーーい!」。それに、「全然エロくなーーーい!!」。過去にデパルマが撮った、映画としてみれば大したことないのだけど、洋物ソフトポルノとしてみれば傑作だと僕が認めて止まない『ファム・ファタール』のように、男のみならず女たちまでも虜にする妖艶な悪女クリスティーンをもっと大胆にもっとエロティックに描いてくれたら僕の興味もまだ持続しただろうに、バ〇ブやらハメ撮りやらセクシーランジェリーやらを登場させてエロっぽい雰囲気でお茶を濁すだけって、おい!!うーん、デパルマもさすがに歳とっちゃったってことですかね~。それでも、クライマックスでの畳み掛けるように展開される、夢とリアルと妄想がミステリアスに交錯しあう美麗な映像はぼちぼち見応えありましたです。
[DVD(字幕)] 5点(2015-01-27 19:07:55)
12.  ハード・ラッシュ 《ネタバレ》 
裏社会の運び屋として世界的に活躍していたクリスも、いまや引退して警備商品を扱う会社の経営者となり、家族とともに平凡な生活を送っていた。ところがある日、そんな彼の幸福な生活をぶち壊しにするかのように、ヘロインの密輸に失敗し凶悪なヤクの売人に脅された義理の弟が、彼の元へ助けを求めてやってくる。二度と犯罪には手を出さないと誓ったクリスだったが、家族との生活を守るため仕方なく偽札の密輸へと手を染めることに。かつての仲間を集め、綿密な計画を打ち立てたクリスは意を決してパナマへと乗り込んでゆくのだが、様々な男たちの思惑から、完璧だったはずの彼の計画はどんどんと破綻の兆しを見せ始めるのだった。リアリティを重視したみたいだけど、なんだかストーリーのテンポが悪く登場人物たち誰もがいったい何がしたいのかいまいちよく分からないせいで、残念ながら僕はそんなに乗り切れませんでした。リアルに拘ったわりには、密輸に頑張っていたクリスが途中から何故かギャングたちの強盗作戦に加わりいつの間にか警察と銃撃戦しちゃってるし(笑)。なんでやねーん!それに、アル中男の陰湿な暴力描写があるかと思えば、最後は主人公とその仲間たち誰もがみんな最高に幸せになるという薄っぺらいラストを迎えちゃったし(気付いたら、主人公たちが百億円の価値のある絵を手に入れちゃってましたって、おい!笑)。うーん、何をメインに描きたかったのかいまいちよく分からない作品でありました。相変わらずお美しいケイト・ベッキンセールが、ぼっこぼこにされちゃうシーンにはびっくりしましたけど。あ、あとあのアル中男、ケイトが死んだと思い込んでコンクリ詰めしようとする前に、脈ぐらい確認しろっつーの!
[DVD(字幕)] 4点(2014-02-18 12:07:41)
13.  パフューム/ある人殺しの物語 《ネタバレ》 
18世紀、悪臭渦巻くパリの下町のゴミ溜めで生を受けたジャン・バティスト。しかし彼は類稀なる天才的な嗅覚の持ち主だった。成長して革なめし職人となった彼は、街で偶然出会った一人の女性の匂いに衝撃を受け、衝動的に彼女を殺してしまう。なんとか逃げ延びたジャンは、死んだ彼女の匂いを甦らせるかのような情熱でもって香水職人となり孤高の道を歩み始めるのだが、しかし彼は誰にも言えない歪んだ欲望を胸に秘めていたのだった。こってり濃厚な映像で描かれた、ペドロ・アルモドバル作品を髣髴とせるそんな変態的ストーリーに否が応にも期待が高まっちゃいました。捻れた欲望がどんどんとエスカレートし、犠牲となる美しい処女たちをまるで物を愛でるかのように愛する主人公のいかにも変態っぽい気持ち悪~い顔つきに「これは凄い映画になるかも!?」とドキドキしながら観ていたのだけど、最後の30分で拍子抜け。主人公はいったい何がしたかったの?幾多の女性を犠牲にし、自らも絞首刑にまで追い込まれながら創り出した香水の匂いを嗅ぐと、何故か人々が彼に平伏ししかも無茶苦茶エッチしたくなっちゃったので皆でヤリまくったのでしたって薄っぺら過ぎるって!普通にあのフェチ路線をどこまでも突き詰めてくれたら良かったのになー。こういう映画を観ると、いかにアルモドバルが芸術的なまでの変態映画作家なのかが実によく分かる。残念ながら、今作は変態のふりをした凡人が無理に変態を装って撮った、奇をてらっただけの凡作でありました。途中までは、そこそこ良かったけどね。
[DVD(字幕)] 6点(2013-12-17 18:21:47)
14.  パラノイドパーク 《ネタバレ》 
近所の不良たちが集う、線路脇に違法に造られたパラノイド・パークという名のスケボー公園。そこに顔を出すようになった少年アレックスは、今まで自分が知らかった世界や人があることを知り、そしてそれがどんどんとリアリティを持って自分の周りに形作られていくことに戸惑いを覚えながらも、必死に馴染んでいこうとする。でも、そんな彼に現実はどこまでも残酷だった。何事にも無気力だったけど、どこかに無垢な心を持った少年の今にも壊れてしまいそうな世界を、スローモーションを多用した抒情的な映像で綴ったいかにもガス・ヴァン・サントらしい青春映画。と、言うとどうしても「エレファント」を思い起こさせるのだけど、こちらはちょっといかにも小さくまとまり過ぎていてどうも物足りなかった。雰囲気は良いと思うのだけど、やはり「エレファント」亜流どまりだというのが僕の率直な感想です。
[DVD(字幕)] 5点(2013-08-07 14:49:21)
15.  バーン・アフター・リーディング 《ネタバレ》 
かつての作品のキャッチコピーで、「人生はおかしくも悲しい」とうたわれたコーエン兄弟の映画も最近は、「人生はおかしい」という部分だけがどんどんと突出していっているような気がする。この映画もお馬鹿な人間ばかりが出てきて、何をやってもうまくいかず、どんどんと皆が皆どうしょうもない袋小路に陥ってしまう。果たしてこれを笑えるかというと、僕は甚だしく疑問に思う。
[DVD(字幕)] 5点(2012-04-27 22:11:12)
16.  バベル 《ネタバレ》 
聖書に出てくるあまりに有名なバベルの塔のエピソードをモチーフに、人と人が永遠に分かりあうことが出来ない世界で起こる悲劇を群像劇として描いている。素直に娯楽作として楽しめる映画でもないし、上映時間も長いのだが、それでもちゃんと最後まで興味を逸らすことなく観ることが出来たのはさすがだと思う。だが、あまりテーマとしてまとまっていない印象を受けた。それぞれのエピソード(特に砂漠を延々と彷徨う中年女性の話は心が痛む)を東京で纏めてしまったのは、明らかに失敗。こんな不条理な世界を生き抜くパワーを、少なくとも全裸で泣く菊池凛子からは感じられなかった。
[DVD(字幕)] 5点(2012-04-25 22:42:43)
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