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プロフィール
コメント数 614
性別 男性
自己紹介  洋画は字幕版も吹き替え版も両方観た上で感想を書くようにしています。
 ネタバレが多い為、未見映画の情報集めには役立てないかも知れませんが……
 自分と好みが合う人がいたら、点数などを基準に映画選びの参考にしてもらえたら嬉しいです。

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221.  予告犯 《ネタバレ》 
 この映画、面白いです。   面白いんですけど……序盤の拷問シーンで「悪趣味だなぁ」と思い、終盤の感動シーンで再び同じ感想を抱いてしまったので、どうも手放しでは褒められない内容。  「良い話にしようとしているのは分かるけど、無理あるよね?」という思いが浮かんで来てしまい、中々それが消え去ってくれなかったのです。   結局のところ、本作を楽しむ上でのキーポイントは「外国人の友達が死んでしまった」→「彼は死ぬ前に父親に会いたいと願っていた」→「自分達で探しても父親は見つからない」→「日本で一番捜査力が高いのは警察。死んだ友人の名前を騙って事件を起こし、彼らを動員して父親を探させよう」という、犯人達の行動を受け入れられるかどうかに尽きるのではないでしょうか。  自分としては「死んだ友人の名前を騙って」の部分が、ちょっと受け入れられなくて、本当に友達想いの奴なら、そんな事はしないだろうと白けてしまい、残念でしたね。  作中のテーマとしては「理由があって、頑張れない奴もいる」という、社会的弱者の存在を肯定するような意図があったのだと思われます。  けれど、就職活動はともかく、父親探しにおいて主人公達が「頑張れない」理由がハッキリしなくて、真っ当な方法では探せないと諦めて、死んだ友達に犯罪者の汚名を着せるのを承知の上で、楽な手段を選んだだけとしか思えないのです。  せめて「何年もかけて自力で探したけど手掛かりすら掴めなくて、止むを得ず最後の手段を選んだ」という形なら納得も出来るのですが、そういった過程を経ていないので、主人公達が努力を放棄したようにしか見えない。  酷く典型的な台詞になってしまうのですが「そんなやり方を、本当に生前の友人は望んでいたのか?」という疑問も浮かんできます。   それらの罪を償う為の自殺オチだったのでしょうが、終盤やたらと主人公を賛美する展開になっているものだから、どうも作り手との価値観のズレを感じました。  主人公と対峙し、その思想を否定する立場だった美人女刑事にまで「全てを予告し、やり遂げた」と嬉しそうに言わせたりしたのは、ちょっとやり過ぎだったんじゃないかなと。  生き残った犯人グループの仲間が、罪を全部主人公に被せて自分達だけ助かる件も、シニカルに描くのではなく「主人公の自己犠牲の美しさ」を強調するような演出だったりするものだから(えっ、そこで感動させようとするの?)と驚いてしまったくらい。   その他、主人公が会社での陰口に気が付く件なんかも、あまりにも非現実的な「周りの人間は皆、嫌な奴」過ぎて(これ、現実なの? それとも主人公がそういう被害妄想を抱いているって描写なの?)と戸惑ってしまったし、女刑事と犯人の追跡シーンでも(どうして応援を呼ばないんだ? 刑事なら何らかの連絡手段は確保しておくべきでは?)と集中力が削がれてしまった形でしたね。  そういった諸々が伏線なのかと思いきや、全然そんな事は無かったという意味も含めて、終盤の展開が本当に残念。   「作中で明かされた真相に納得がいかなかった」というパターンの為、ついつい文句を並べてしまいましたが、以下は良かった点を。  まず、導入部から展開がスピーディーで「異常な犯人、シンブンシの目的は何か?」と観客にも推理させていく流れは、とても楽しかったですね。  映画の構成としては、序盤は刑事側の目線で事件を追いかけていく形であり、中盤以降に主人公=犯人へと視線転換して、その背景が明かされる訳ですが、順番が逆だったら冗長な話になっていたでしょうし、この導入部には「掴みが上手い」と感心。  主演の生田斗真の力によって、新聞紙で覆面をして犯行予告するシーンでも、ダークヒーロー的な恰好良さが醸し出されており、作中で彼らの賛同者が生まれていく展開に、さほど不自然さを感じさせなかった辺りも有難かったです。  ここのハードルをクリアしてくれないと、作中の世界観が根底から崩れかねないので。   犯人グループが仲良くなっていく過程も、短いながらも丁寧に描かれており、青春ドラマとしての魅力も備えている形。  主人公の「友達が欲しい」という夢が叶っていたのを示す、和気藹々としたやり取りを、最後の最後に持って来て、カタルシスを与えて終わらせた辺りも、上手かったですね。  ここで「良い友達を持つ事が出来て、幸せだ」などと口に出しては言わせず、主人公の表情や音楽などで伝えてみせる演出は、本当に好み。  決してハッピーエンドではないはずなのに、それに近い味わいがありました。   色々と気になる点は多かったのですが、それらを差し引いても面白かったし、良い映画だったと思います。
[DVD(邦画)] 6点(2016-12-28 12:09:22)(良:1票)
222.  隠し砦の三悪人 《ネタバレ》 
 黒澤明が凄い監督さんだという事は「七人の侍」や「用心棒」で充分に承知済みだったはずなのですが、こういうタイプの映画も撮れるんだなと、再び衝撃を受ける事になりましたね。  冒険活劇であり、全編に亘ってコメディ色が強く、作中で人が次々に死んでいるはずなのに、何処か呆気らかんとしている。  必要以上に緊迫感を与えたりしない為、観ている側としても、リラックスして楽しめる一品だったと思います。  やや冗長に感じる場面も、あるにはありますが、面白く観賞出来た時間の方が、ずっと長かったですね。   そんな本作独自の魅力として、特に目を惹くのは、ヒロインである雪姫の存在。  主人公であり、タイトルにもなっていると思われる六郎太、太平、又七に関しては、他の黒澤映画でも似たようなタイプの人物が見つかりやすいのに対して、彼女は非常に個性的だったと思います。  とにかく目力の凄い美人さんで、独特の甲高い声に関しても、最初は「うへぇ」と思っていたはずなのに、気が付けば「これはこれで……」と、それを個性として受け入れる心境になっていたのだから、不思議なもの。  彼女に命を助けられ、その恩に報いる為とばかりに尽くしてくれる名もなき娘さんの存在も、心を癒されるものがありました。   三船敏郎演じる六郎太に関しては、腕っぷしも強く、頭も良く、男気もあり、清濁併せ呑む度量もあってと、文句の付けどころのない人物なのですが、ちょっと主人公としては愛嬌に欠けるような印象も受けましたね。  その弱点を補うかのように、太平と又七とが愛嬌を振りまいてくれているのですが「結局、誰が主人公なんだ?」という疑念も頭に浮かんできて、観賞している間、集中力が削がれてしまったのが残念。  六郎太は作中に登場するのが遅すぎるし、太平と又七に関してはクライマックスに不在だったりするしで、どうも話の核が散漫に思えてしまいました。  特に後者の不在問題に関しては深刻で「えっ? 何で太平と又七は出て来ないの?」と、本気で戸惑う事になりましたね。  てっきり、敵方に密告しても褒美を貰えないと悟った二人が、それならばとばかりに姫様を救出し、ついでに金も取り戻す展開かと思っていただけに、大いに拍子抜け。  窮地の一行を助け出すオイシイ役は、途中から出てきた兵衛さんの担うところとなる訳ですが、六郎太に「百年の知己」と言われても、具体的にどんな過去があったかなどは語られないし、今一つ盛り上がれません。   結局、太平と又七は肝心な場面で六郎太達を見捨てて逃げ出したっきりな訳であり、いくら愛嬌があっても、主役として感情移入出来る範疇を逸脱しているように感じられました。  自分の好みとしては、もっと六郎太を中心に据えた作りの方が嬉しかったかも。   それでも、そんな臆病者の二人が殺されたり、罪人として囚われる終り方ではなく、目当ての金を僅かでも手に入れて、願いを叶えられたハッピーエンドだった事には、ホッとさせられましたね。  立派になった姫様に諭されて、すっかり仲良しになった二人。  だけど、ずっとそのままという訳ではなく、村まで帰る道中では、また喧嘩をしては、仲直りしたりもするんじゃないかな……と、微笑ましく思えました。
[DVD(邦画)] 7点(2016-06-08 07:50:23)(良:1票)
223.  赤毛のアン/アンの青春 完全版〈TVM〉 《ネタバレ》 
 内容としては「教師モノ」に分類されそうな本作。   舞台も田舎から都会へと移り変わり(これは前作とは異なる面白さを与えてくれそうだ……)と期待が膨らんだのですが、終わってみれば、良くも悪くも前作と殆ど変らない品という印象を受けましたね。  主人公のアンが、気難しい老婦人の心を解きほぐして仲良くなる件なんて、特に既視感を覚えます。   新しい要素としては、生徒達との心の触れ合い。  生真面目なオールド・ミスであるブルック先生との友情。  そして「地元の幼馴染」と「都会で出会った紳士」に挟まれたアンの三角関係が挙げられるのですが、こちらは前作で自分が苦手としていた「女性向けの恋愛ドラマ」成分が、より濃くなったように感じられて、少し残念でしたね。  ちょっと意地悪な見方かも知れませんが、作風やら何やらを考えればアンが後者と結ばれる事など有り得ない訳で「どうせ幼馴染のギルバートと結ばれるんでしょう?」と、達観した気持ちになってしまいました。   前作に比べれば出番は短いけれど、マリラおばさんが相変わらず素敵なキャラクターであった事は、嬉しい限り。  終盤、地元に戻ってきたアンを出迎えて、嬉しそうに抱き締める姿を目にすると、何やらこちらの心まで温かになってくるのだから、不思議なものです。   紆余曲折はあったけれど、やっぱり最後にはアンとギルバートが結ばれて、二人が幸せになるという、予定調和な結末。  でも、この作品に関しては「それで良い」「それが良いんだ」と思えましたね。   全編に亘って落ち着いた空気が漂っており、安心して観賞しているこちらの期待を裏切らない、平和な映画でありました。
[DVD(吹替)] 6点(2016-09-02 10:29:26)(良:1票)
224.  免許がない! 《ネタバレ》 
 「あの舘ひろしが、実は運転免許を持っていない」という、出オチのようなアイディアだけで撮られたとしか思えない映画。   こういうネタである以上、やはりクライマックスでは主人公が実際の事件か何かに遭遇し、映画的なカーチェイスを繰り広げるのでは……と期待してしまうのですが、そこを外してくる惚けっぷりが、如何にも森田脚本らしく思えましたね。  全体的にユル~い空気が漂っており、退屈さも感じる一方で、何処か心地良さもあるという、不思議な作風。    作中で飛び出す駄洒落「クリープ現象。ミルクじゃないよ」も、最初はツマンなかったはずなのに、二度言われると少しクスッとしたりするんですよね。  映画全体もこんなノリであり、観賞中は(面白くないなぁ……あっ、でもここの場面は、ちょっと良いな)という反応を繰り返す事になりました。   大前提として、主演が舘ひろしでなければ成立しない話なのですが、序盤に変装して教習所に通う姿が、本当に「冴えない中年のおじさん」にしか見えない事には、驚きましたね。  それが正体を現すと、ちゃんと恰好良くなって、映画スターのオーラをビンビンに感じさせる立ち居振る舞いになるのだから、やっぱり凄い人なんだなぁ……と、感嘆。  ちょっぴり気障で、嫌味っぽいところもあるんだけど、フッと渋い笑みを浮かべるだけで色気と愛嬌が漂うもんだから、憎めないんですよね。  作中で観衆にキャーキャー言われているのも当然だなと、自然に納得出来ちゃいます。    踏切の前では窓を開けて音を確認するようにと教官に注意され「一般車で、そんな事やってるの見た事ねぇ」と反発するも「教習所では、そうすんだよ」と諭される件も皮肉が効いていて面白かったし、ミスを犯した後、教官に減点されちゃう嫌ぁ~な雰囲気なんかも、上手く表現されていたように思えますね。  特に、仲の悪かった教官が妻と復縁出来るようにと、主人公が手伝ってあげる場面なんかは、本作でも一番のお気に入り。   ……でも、その後の展開にて「純粋に合格した訳ではなく、借りを返す為に教官がハンコを押してあげた」と思える形になっているのは、それこそ大幅減点です。  そりゃあ教官だって感謝はするだろうけど、仕事に私情を挟んだような描き方をしているのは、ちょっと違うんじゃないかと。   あれだけ真面目に努力する主人公を描いておいたくせに、最終的には「映画スタッフが色々と助力して、反則まがいの方法で免許を取らせた」というのも、何とも納得し難い結末。  そこはやはり、実力で合格出来たんだと、スッキリ納得させて欲しかったところです。   中盤にて、やたらとお色気シーンが多くてウンザリさせられた事も含め、どうにも「好きな映画」とは言えそうにない本作。  とはいえ、憎み切れない愛嬌も備えているし「ここの場面は、結構好き」と言えるような部分も幾つかはあった為、何だかんだで観ておいて良かったと思えるような……そんな一品でありました。
[DVD(邦画)] 4点(2017-08-23 07:05:20)(良:1票)
225.  フィリップ、きみを愛してる! 《ネタバレ》 
 「愛」と「脱獄」を描いた映画として、非常に良く出来ていると思います。   始まって十分程で「言い忘れてたけど、俺はゲイ」と主人公が告白し、本作における「愛」とは「同性愛」であると分かるんですが、それでも戸惑いは最小限で、楽しく観賞出来ちゃうんですよね。  冒頭、自分を養子に出した母親との対面シーンだけでも「ジム・キャリーだからこその魅力」を堪能出来ましたし「可憐な乙女」としか形容しようのないフィリップ・モリスを演じ切ったユアン・マクレガーも、これまた素晴らしい。  この二人が主演だからこそ「男同士のカップル」という際どい役どころでも、自然に感情移入出来た気がします。  ・それまでの恋愛対象は髭を生やしたタイプだったのに、女性的なフィリップに主人公が一目惚れするのには戸惑う。 ・「叫び屋」を殴らせた件でフィリップが感激しちゃうのは、違和感あり。 ・ゲイの男性って、ゴルフを毛嫌いするのが普通なの?   などなど、不可解さを感じる部分もありましたが、それらを差し引いても面白い作品でしたね。  フィリップと出会う前の恋人であるジミーが、死の床にて「僕は生涯の恋人と出会ったけど、君は未だ出会ってない」と語り、自分の死後に出会うパートナーを大切にして欲しいと訴える場面は、特に感動的。  作中にて「フィリップ、きみを愛してる」と告げるシーンが二回ある訳だけど、最初の場面は思い切りドラマティックに叫び「燃え上がる愛」を感じさせて、二回目の場面では「愛の終わり」を連想させるような、静かな雰囲気の中で呟かせるという対比も、凄く良かったです。   そんな「愛」に比べると「脱獄」の方は添え物というか「フィリップに愛を伝える為には、脱獄する必要がある」という程度の描かれ方なんですが、これがまた滅法面白いんですよね。  最後の大技と言うべき「エイズ詐欺」も良かったけれど、ハイテンポで描かれる「判事の書類を偽装して保釈させる」「刑務所内で働く医療スタッフに変装して逃げ出す」「セクシー(?)な職員に変装して逃げ出す」という三つの脱獄シーンも、同じくらいお気に入り。  本当に、あの手この手で刑務所を抜け出そうとする様が愉快で、痛快でさえありました。   「約束を守る」事に拘って、看守達に止められても最後まで音楽を流そうとする囚人仲間も良い味出していたし、食堂にて特別に豪華なメニューを食べる事になり、フィリップが喜んでいる場面なんかも印象的。  ラストシーンにて、愛しい彼を忘れられない主人公が、再び脱獄騒ぎを起こし、笑いながら走る姿で終わるというのも良かったです。   実際の「フィリップ・モリス」が主人公の弁護士役としてカメオ出演している為「決定的な嘘をつく訳にはいかない」という配慮もあってか、最終的にフィリップ側は主人公に愛想をつかしたとしか思えない作りになっているのは、悲しいけれど……  それもまた、本作の魅力の一つと言えそうなんですよね。  実話ネタだからこその、ハッピーエンドになりきれない切なさが、物語に上手く作用していたように思えます。   たとえ愛を否定されたとしても、それでも求めずにはいられない男の愚かさ、滑稽さを、空に浮かんだ不思議な雲が、優しく見守っている。  この映画に相応しい、惚けた魅力のある終わり方でした。
[DVD(吹替)] 8点(2018-09-14 10:09:36)(良:1票)
226.  四十七人の刺客 《ネタバレ》 
 とにかく展開が早い早い。  なんせ冒頭いきなり「大石内蔵助は既に藤沢を出て、鎌倉に潜入していた」とナレーションで語られるくらいですからね。  大石内蔵助とは何者なのか、何故鎌倉に潜入したのか、などの説明は放ったらかしにして、どんどんストーリーが進行していくという形。  忠臣蔵映画には上下巻に分かれている代物も珍しくない為、もしや下巻に相当するディスクから再生してしまったのだろうかと、確認してしまったくらいです。   全体的に「観客の皆は、忠臣蔵のストーリーくらい当然知っているよね?」という前提で作られているようであり、予備知識が備わっていない人にとっては不親切な作りにも思えましたね。  せっかくナレーションで色々と説明してくれているのに、それも「コレはこういう役職であり、この人はこういう人で~」と理解を促すような内容ではなく、あくまでも状況説明に留まっている感じ。   大石側と色部側の謀略戦にスポットが当てられているのは面白かったのですが、どちらかといえば宮沢りえ演じるヒロインとの恋模様が中心となっているのも、ちょっぴり不満。  幾らなんでも男女の年齢差があり過ぎて、アンバランスな組み合わせに思えるのに、描き方はといえば「普通の男と女」といった感じでスタンダートに仕上げられているのが、観ていて居心地が悪かったのですよね。  ラストシーンといい、ともすれば宮沢りえのアイドル映画と言えそうなくらいの登場比率なのですが、自分としては彼女は脇役に留めておいた方が良かったんじゃないか、と思えてしまいました。   その一方で「襲撃者に足音を消されぬよう、屋敷の周りに貝殻を敷き詰めておいたりして、入念な準備を整えた上で敵を返り討ちにする大石親子」などの場面は、実に良かったですね。  切り裂く時の音が空振りしているようにしか聞こえない点など「えっ?」と思わされる瞬間もありましたが、ハードボイルドな高倉内蔵助の魅力が堪能出来たワンシーンでした。   終盤にて、黒尽くめの刺客が吉良邸の門前に集い「四十七人」と総数を読み上げられる場面もテンションが上がりましたし「握り飯と水を補給する」「刃毀れに備えて替えの刀を用意しておく」といった兵站面を重視した描写も良い。  吉良屋敷に迷路が拵えてある点などは、冒頭で知らされた際には「えっ、何それ」「そんなコミカルな忠臣蔵だったの?」という戸惑いの方が大きかったのですが、それも実際に戦う場面では、予想していたよりもシリアスな見せ方で「殺し合い」という空気を決定的に損なってはおらず、上手いなぁと感心。  いざ討ち入りになってから、唐突に「実は吉良屋敷は迷路になっていたのだ」と種明かしされる形だったら、流石に「なんだそりゃ!」と衝撃を受けてしまい、テンションだだ下がりになっていたでしょうけど、この場合は映画が始まってすぐに「迷路になっているよ」と観客に教えておく事により、自然と消化されるのを待つというテクニックが用いられているのですよね。  それが効果を発揮してくれたみたいです。   ラストの大石の一言「知りとうない」に関しては、色々と解釈の分かれそうなところ。 「武士の意地を見せる為に決起したのだから、本当は真相など、どうでも良い」 「最初は真相を知りたいという気持ちもあったが、もはや自らの死も覚悟して討ち入りした以上、真相究明などは些事に過ぎない」  などと考える事も出来そうな感じでしたね。   以下は、自分なりの解釈。  「討たれる覚えはない」「いきなり浅野が喚いて、儂に切り掛かってきたのだ」「二人の間に遺恨などあろうはずがない」という吉良側の証言を信じるなら、恐らく真相は「浅野が乱心した」というものであり、吉良を含めた幕府側が口を噤んでいたのも、浅野の名誉を慮っての事だったのではないでしょうか。  つまり、大石が「知りとうない」と言い放ったのは「真相に興味がない」ではなく「真相を知りたくない」という意思表明。  吉良の口を永遠に塞ぐ事こそが、討ち入りの目的の一つだったのではないかな、と。  そもそも大石は情報戦の一環として「浅野内匠頭は賄賂を行わなかった正義の人である」という噂を流すなど、主君を美化しようとする意志が窺える男です。  内心では薄々「殿は乱心めされたのだ」と勘付きつつも、序盤で仲間に語り聞かせた通りの「優しい殿」であって欲しかったという願いゆえに、吉良の口から真相を聞かされる事を拒み、浅野のように派手に刀を振り下ろす事なく、冷静に突き殺してみせたのではないか、と感じられました。   もし、本当にそうであったとすれば、何とも切ない映画だと思います。
[DVD(邦画)] 6点(2016-12-06 19:47:57)(良:1票)
227.  ゾンビ・ヘッズ 死にぞこないの青い春 《ネタバレ》 
 ゾンビを主人公にした映画は何本もありますが、自分にとっての「ゾンビ主人公映画」初体験がコレだった気がします。   正確には「半分ゾンビ」という設定であり、主人公は「人間を食べたい」という欲望は全く抱いていない為「食人鬼の苦悩」的な物は描かれていなかったりするので、その点については拍子抜けでしたね。  他にも「途中で死んだ仲間のクリフはゾンビ化しないの?」「ラストで主人公はヒロインと結ばれたけど、子作りとかは可能なの?」と気になる点が多く、本作における「ゾンビの生態」があまり説明されずに終わってしまうのは、かなり残念。  せっかく劇中にて「ゾンビを研究する集団」まで登場させているのだから、彼らの口を通して、もっと詳しく説明して欲しかったです。   監督であるピアース兄弟の父親は、あの名作「The Evil Dead」(邦題:死霊のはらわた)にスタッフとして参加していたとの事であり、その縁もあってか、劇中のドライブインシアターにて「The Evil Dead」を流したりと、過去のゾンビ映画に対するオマージュ描写が散見される辺りは、同じゾンビ映画好きとして嬉しかったですね。  「主人公はゾンビである」という設定が、劇中でキチンと活かされており「ゾンビを退治しようとする人間達から逃げる主人公」という、通常とは真逆の面白さが味わえる辺りも良かったです。   普通のゾンビ映画であれば、如何にも主役になりそうな黒人青年がゾンビハンターと化して主人公達を追ってくるって点も、面白くて好きですね。  この辺り、主人公のマイクが「冴えない眼鏡のモブ顔」って感じなのに対し、黒人青年は「精悍な二枚目」っていうビジュアル面の対比もあって「普通なら主人公のはずのキャラクターが敵役」「普通なら無数にいるゾンビの中の一人に過ぎないはずのキャラクターが主役」という設定の妙味を、より深く楽しめるようになっていたと思います。   同じ「半分ゾンビ」仲間である相棒のブレンドが、頭の軽いチャラ男と思わせておいて、要所要所で名台詞を吐いてくれるという意外性も、実に心地良い。  ゾンビになった事を悲観する主人公に対し「そりゃあ個性っていうべきだ」と元気付けたり「彼女の気持ちは分からなくたって良い。でも、お前の気持ちは確かなんだろう?」と告白を後押ししてくれたりする様が、凄く良かったんですよね。  彼の他にも、半分ゾンビではない完全にゾンビなチーズに、元軍人のクリフなど、道中で一緒になる仲間達が三人とも魅力的だったりするもんだから、ゾンビ映画としてだけでなく、青春ロードムービーとしても、しっかり楽しむ事が出来ました。   途中までは苦みを含んだ展開が多く(これは主人公とヒロインが結ばれずに終わる可能性もあるかな……)と思わせておいて、意外なハッピーエンドで終わってくれるって辺りも、嬉しかったですね。  上述の通り、細かい点について考え出すと(半分ゾンビの主人公と、人間のヒロインとで、本当に上手くいくんだろうか?)って疑念も湧いてきたりするんですが、そんな野暮な観客に対し「愛さえあれば大丈夫だよ」と言わんばかりに、それまで敵だった人間達にまで二人を祝福させて、有無を言わさず終幕させている。  その強引さと、能天気なほどの人間賛歌&ゾンビ賛歌っぷりに、初見では戸惑う気持ちもあったんですが……  (この映画は、そこが良いんだ)と、今ならそう思えちゃいますね。   明るく、和気藹々としたNG集に至るまで、ゾンビ映画らしからぬ陽性な魅力を味わえた、とても貴重な一本でありました。
[DVD(吹替)] 7点(2019-03-21 17:22:21)(良:1票)
228.  ダブルヘッド・ジョーズ<OV> 《ネタバレ》 
 双頭の鮫が二人の美女を同時に食い殺すショッキングな導入部で「掴みはOK」といった感じ。   こうして文章にしてみると残酷な印象も受けますが、実際に観てみれば「双頭」という非現実性が程好く作用している為か、あまり血生臭い映画ではありませんでしたね。  勿論、海が血で赤く染まる表現なんかは中々ドキドキさせられましたが、目を背けたくなるような人体破壊の描写は控えめという、程好いバランス。  どこかコミカルな雰囲気が漂っており、笑いに繋がってしまう場面もあったくらいです。   その最たるものが終盤の「ヒロインが双頭の間に挟まっているお蔭で食われずに済んだシーン」で、これにはテンションが上がりましたね。  (あぁ、確かに鮫からすると盲点だなぁ……)という感じで、説得力と意外性、可笑しさと馬鹿々々しさを備え持った展開であったと思います。   この手の映画だと「中々姿を見せようとしない鮫」に苛々させられたりもするのですが、ほぼ全編に亘って出ずっぱりで、その双頭フォルムを見せ付けてくれる辺りも気持ち良い。  籠城する舞台となるのが無人島(=正確には環礁)というのも新鮮でしたね。  何も考えず、画面に映る水着姿のお姉さん達を眺めているだけでも眼福であり、楽しい気分に浸れました。   勿論、ツッコミどころは多いです。  お約束の「俺達の事は良いから先に行け!」展開の際には(いや、確かに道にヒビは入っているけど……普通に通れるのでは?)と困惑しちゃったし「皆とはぐれて二人きりになる」→「二人同時に食い殺されてしまう」という展開を、終盤に立て続けに行ったのは、流石にやり過ぎだったと思います。  でも、そういう部分にツッコむ楽しさも含めて、自分としては満足度は高めでしたね。  ラストに生き残った二人も「一番頭が良く、優しい感じの兄ちゃん」「卑怯者でも見捨てず助けようとするような、気丈な金髪美女」という組み合わせで、ハッピーエンド色を高めてくれます。   あえて言うなら、折角の「ダブルヘッド・ジョーズ」な訳だから、鮫を左右真っ二つに両断するなどの、独特の倒し方で決着を付けても良かったかも。  とはいえ「最後は爆発させて倒す」というのが鮫映画のお約束でもある為、本作もそれに倣ったのは、致し方無いところなんでしょうか。   観賞前のハードルが低めだったからかも知れないけど、とりあえずそれは飛び越えてくれた一品でした。
[DVD(吹替)] 6点(2017-07-19 09:56:08)(良:1票)
229.  シモーヌ 《ネタバレ》 
 こんな映画、シモーヌを演じる女優さん次第では観ていられない代物になりそうなのに、ちゃんと「世界中が熱狂するほどの美女」としての説得力があって、立派に作品として成立しているんだから凄いですよね。   シモーヌ役のレイチェル・ロバーツは、現在アンドリュー・ニコル監督の妻となっているそうで、結果的に親馬鹿ならぬ「旦那馬鹿」的な映画となっているのも、何だか面白い。  撮影当時から恋仲だったかどうかは分かりませんが、そんな関係性の二人だからこそ、監督側は「シモーヌ」を魅力的に描き、女優側は艶やかに「シモーヌ」を演じる事が出来たんじゃないかな、と思いました。    勿論、主演のアル・パチーノも良い味を出しており、実在しない女優に振り回される映画監督の役を、見事に演じ切っていましたね。  特に終盤、シモーヌ殺害容疑で警察の尋問を受ける件なんて、演技一つで作品のカラーをがらりと変えてしまったかのような迫力があり、流石だなと感心。  個人的には、ここの主人公が追い詰められる件は無理矢理過ぎるというか(ハッピーエンドの前振りとはいえ、悲壮感を出し過ぎたんじゃない?)と、少々気持ちが冷めてしまったりもしたんですが……  それでも決定的な違和感を抱くに至らなかったのは、やはりアル・パチーノの演技力あってこそ、なのだと思います。   あとは、ラストの「政治家を目指す」オチが微妙に思えた事。  シモーヌに黒子(?)を付け足す場面が伏線かと思ったら、そうでもなかった事。  日本の新聞記事だと「シモン」になってたのが気になる事とか、難点はそのくらいでしょうか。   ニコル監督の作品らしく、ビジュアルセンスも光っていたし、脚本についても御洒落な笑いが散りばめられていて、面白かったですね。  シモーヌを消去する場面での「主人公が泣いているからこそ、シモーヌも泣いている」場面にはグッと来るものがあったし「たった一人より、十万人を騙す方が簡単だ」という台詞や、シモーヌが唄う曲の歌詞なんかも、皮肉が効いていて素敵。   また、このストーリーの場合「シモーヌの元々の開発者はハンクなのに、主人公は手柄を一人占めにした」という印象を抱いてしまいそうなのですが、ちゃんと随所に「ハンクに感謝する場面」が挟まれており、反発を抱かずに済むよう配慮されているのも嬉しかったです。  こういう「主人公を嫌な奴にしない」バランス感覚って、映画作りではとても大切だと思いますからね。   自らが生み出した存在に、段々と恐怖を抱いていく「フランケンシュタイン・コンプレックス」も丁寧に描かれていて説得力があったし、皆がシモーヌに夢中になる中「シモーヌよりもパパの方が好き」というスタンスだった娘が、最後の最後で主人公を救ってくれる展開なんかも、実に気持ち良い。   (ラストシーンの後は、シモーヌの可愛い「坊や」が成長し、子役や男優になって世界を虜にするのかな?)  (父親がシモーヌを演じたように、娘が彼を演じてみせるのかな?)  なんて妄想まで出来ちゃう、楽しい映画でありました。
[DVD(吹替)] 7点(2019-12-10 02:36:38)(良:1票)
230.  ストレンジャー・コール 《ネタバレ》 
 舞台となる家の造形が良いですね。  (こんなところに住んでみたいなぁ……)と、羨望の溜息が漏れちゃいます。   そんな家の内装と、ヒロインを眺めているだけでも楽しい映画……と言いたいところなのですが、そういった気分も、中盤に差し掛かる頃には流石に醒めてしまいました。  その理由としては、まず、犯人が出てくるまでが異様に長い。  勿体ぶって、これでもかこれでもかと引き延ばした割りに、その正体は意外な人物でも何でもなく、初対面のオジサンだったりするのだから、大いに肩透かしです。  喧嘩中の彼氏と、女友達だけでなく、ベビーシッターとして派遣された先の家庭にもメイドやら大学生の息子やらを思わせぶりに配置していたのは、全てミスリードを誘う為だったのでしょうか。  子供達の姿が全く見えないから「実は既に殺されている」「実は最初から存在しなくて夫婦の妄想の産物」なんて展開も予想されるのですが、これまた全部外れ。  もしかして、退屈な留守番を任されるベビーシッターの心境を観客にも理解してもらう為に、意図的に冗長な演出にしたのではあるまいか……とも考えられますが、きっとこの推理も外れなのでしょうね。   何よりもキツかったのは、この映画において最大の衝撃を受けるであろう「実は犯人が屋内にいる」という部分。  これって有名な都市伝説が元ネタなので、観客である自分もとっくに知っていた事なんですよね。  仮に知らなかったとしても、序盤のアラームが鳴った件やガレージが開きっぱなしだった描写やらで「犯人が潜入している」というのは、すぐに気が付いたと思います。  だから当該のシーンで衝撃を受けるヒロインに対しても(えっ? 今更?)という印象を受けてしまい、どうしても感情移入出来ません。  せめて守るべき対象となる子供達との間に絆があれば応援出来たのでしょうが、それも無し。  そもそも子供達の台詞が極端に少なく「守りたい」「この子達には何とか生き延びて欲しい」と思わせるような描写すらも乏しいものだから、困ってしまいます。  ヒロインが恐怖のあまり精神を病んでしまったかのような、後味の悪いバッドエンドなのも、好みとは言えません。   何だか不満点ばかりを並べる形となりましたが、犯人を撃退する「暖炉の装置」に関しては、完全に忘れていたので意表を突かれたし、良かったと思います。  パトカーの中からヒロインを見つめる犯人の眼光にも、ゾクっとさせられるものがあって、印象的。  恐らくは意図的に血を映さず、適度な「怖すぎない怖さ」を提供してくれた事にも、好感が持てます。  それでも「ここを、もっとこうすれば面白くなったんじゃないかな?」という思いが頭を離れない……そんな映画でありました。
[DVD(吹替)] 3点(2016-04-16 17:47:36)(良:1票)
231.  渚のシンドバッド 《ネタバレ》 
 これほど赤裸々に同性愛を描いた内容だったのか、と吃驚。  それなりに耐性は出来ているというか、同性愛者が主人公の映画でも意外と楽しめてきた経験があるはずなのですが、本作に関しては生々し過ぎて、ちょっとキツいものがありましたね。   (邦画なので、洋画よりも身近で現実的に感じられて、物語として割り切れないのかも……)と途中までは思っていたのですが、終盤にて(いや、やはりコレは、この映画が特別なんだ)と確信。  何せクライマックスとなる浜辺のシーンが「男を愛せない男を徹底的に詰る」という内容だったりしますからね。  男を愛してしまう男が詰られるシーンなら何度も観てきましたが、その逆というのは珍しいし、何よりこの件だけで二十分近くも尺を取っていたりするものだから、もうお腹一杯。  長回し演出ならではの緊張感も相まってか、ラスト十分くらいは神経が擦り減ってしまい、観ているのが辛かったです。   終わり方に関しても、不思議な爽やかさがあり、好みな演出のはずだったのですが(でも、結局は明確な答えを出していないよなぁ……)という考えも頭をチラついてしまい、残念。  好意的に解釈すれば、観客に自由な解釈の余地を与えてくれる結末。  意地悪を言うならば、答えを出す事から逃げてしまった結末であるようにも思えました。   作中で最も印象的だったのは「優しいフリ」という言葉。  主人公が「自分は同性愛者である事」「キミを好きだという事」を親友の吉田君に告白した際に、彼は優しく受け入れてあげようとするのですが、抱き付いてキスされたりすると、最終的には主人公を拒否してしまうのです。 「本当に優しいなら、ちゃんと告白を断るべきだった」 「相手は親友だから傷付けたくない、などと遠慮するべきではなかった」  等々、色んなメッセージが込められているように感じられて、非常に興味深かったですね。   吉田君は、それまで基本的に「良い奴」として描かれていただけに、終盤にて本性が明かされるというか、その優しさが「フリ」でしかなかった事を暴かれてしまう流れが秀逸。  主人公の前では色々気遣っていても、当人のいないところで何気なく「あいつは変態」と言い放ってしまうシーンなんかは、特に衝撃的でしたね。  結局のところ「自分は同性愛者を差別するような人間ではない」と相手にアピールして、曖昧な反応をするだけでは、本質的に優しい人間とは言えないのかも知れない……と、身につまされるものがありました。   自分に告白してきた吉田君を無下に扱うヒロインに「私が女だから好きになっただけ」「ヤリたいだけなんだよ」と言わせた辺りは、本当に思い切ったなぁ、と感心。  ただ、これに関しては、ともすれば「同性愛者=肉欲に囚われない精神的な愛を求める人」という極端な美化に繋がってしまうというか、さながら「男を愛せない男は酷い奴だ」と言われているかのようで、やはり抵抗がありましたね。  そりゃあ同性愛を否定するのは間違っているけど、だからって異性愛を否定するかのようなメッセージを込めるのは、ちょっと違うんじゃないかなと。  他にも作中のアチコチにて、女性蔑視というか「男に比べて女は醜い」と訴えているかのような表現が目立ったのも気になりました。   主役の三人に負けず劣らず、脇役も個性が光っていたのは、青春群像劇といった趣があり、嬉しかったですね。  落ち込んでいる女子生徒を元気付ける為に、男子生徒が宙返りを披露するシーンなんかは、特に素敵。  後者の男子に関しては、第四の主人公とも言えそうなくらいにスポットが当たっており、作中で最も共感出来た人物かも知れません。  些細な誤解から、友達の自転車を川に沈めてしまうという間違いを起こした後、思い直して自転車を川から拾い上げる姿なども、何だか憎めない。   そんな具合に、好きなシーンと、嫌いなシーンとが綯交ぜになっており、非常に判断の難しい一品。  正直「良い映画だった」とは思えなかったのですが……  観ていて圧倒されるような、力強い映画であったのは間違いないと思います。
[DVD(邦画)] 6点(2016-06-28 10:46:35)(良:1票)
232.  RV 《ネタバレ》 
 「ロビン・ウィリアムスの映画で一番好きなのは?」と問われたら、本作の名前を挙げます。   感動して泣いちゃうとか、ギャグに大笑いしちゃうとか、そういう訳じゃないんだけど、とにかく「面白い」というより「好き」な作品なんですよね。  良質な家族映画であり、旅行映画であり、何度も観返したくなるような魅力がある。   何故こんなに好きなんだろうと理由を分析してみると「RVの魅力を、きちんと描いている事」が大きい気がしますね。  飛び出すリビング機能とか、キッチンもシャワーもトイレも付いているとか、小さなTVで映画も観られるし、後部にあるベッドで休む事も出来るとか、そういった性能面について、自然な流れで紹介してみせている。  凄ぉ~くベタな感想だけど「こんなRVで旅行してみたいなぁ」って思わせる力があるんです。   勿論、コメディのお約束で劇中の旅はトラブル続きであり、ともすれば悲惨で笑えない空気にもなりそうなんですが、そこをギリギリで踏み止まっているのは、主演俳優の力が大きいのでしょうね。  ロビン・ウィリアムスの、あの笑顔と、飄々とした演技のお蔭で「何があっても、最後はハッピーエンドを迎えてくれる」と、安心して観賞する事が出来る。  この「安心させる」って、観客を泣かせたり、笑わせたりするよりも、ずっと難しい事でしょうし、そう考えると、やっぱり凄い俳優さんなのだなと、改めて実感します。  「反抗期を迎えていた娘が、幼い頃と同じように心を開いてくれる」 「キャッチボールを通して、息子とも仲良くなる」  といった具合に「家族の再生」が優しい空気の中で描かれているのも、凄く心地良い。  序盤は下品なネタが多かったり、中盤以降はカーアクションもあったりと「笑い」の部分は派手で尖っていただけに、そういった真面目な部分は奇を衒ったりせず、落ち付いて、穏やかに描いているのが、良いバランスだったように思えますね。  序盤の車中では、各々違う歌を好き勝手に唄っていた家族が、終盤には同じ歌を合唱してみせる演出も、非常に分かり易くて良かったです。   準主役級のゴーリキー家族も魅力的だったし、ネルソン・ビーダーマン四世ことウィル・アーネットが悪役を楽し気に演じてくれているのも嬉しい。  「やぁ、ローラ。妻はいないよ」とか「バーベキューセットを買ったからね」とか、台詞による小ネタの数々も好み。  家族に隠れつつ企画書を書き上げた時の達成感に、悪魔の峠を越えて間一髪で間に合った瞬間の安堵感なども、忘れ難いものがありました。   仕事人間だった主人公が、土壇場で良心を優先させて退職を選び、その後にちゃっかり新しい勤め先を見つけたりと、あまりにも予定調和過ぎて、都合が良過ぎるオチが付くのも、この映画らしいですね。  天丼の「勝手に動くRV」ネタを挟みつつ、最後は家族皆で笑って、楽しく唄って終わり。  ハッピーエンドが似合う、良い映画です。
[DVD(吹替)] 8点(2017-10-25 01:31:52)(良:1票)
233.  ダブル・ミッション 《ネタバレ》 
 「アジアの鷹」シリーズの一本……という訳ではなさそうですね、残念ながら。  冒頭にて往年のジャッキー作品の映像が流れるし、中でも「プロジェクト・イーグル」(1991年)の映像が数多く引用されている為、つい続編かと考えたくなるんですが、主人公の性格が違い過ぎるし「ライジング・ドラゴン」(2012年)とも繋がらない。  じゃあ「タキシード」(2002年)の続編なのかといえば、これまた無理があるし、ちゃんと独立した作品なのだと思われます。   そんな訳で「前作では○○だったのに、今作では××になってる」なんて思う事も無く、純粋に一本の映画として評価出来る品なのですが……  「面白いかどうか」で言うと、ちょっと厳しいです。   まず、クライマックスの戦いを自宅の中で済ませてるのがスケール小さくて拍子抜けだし、長女のファレンが父親について「絶対戻ってくる」「このまま放っとくはずない」と言っていたのに、その父親が結局登場しないまま終わったりで、作り込みが甘いんですよね。  ヒロイン(?)のジリアンに関しても、芸術家設定が全然活かされていないし、主人公がスパイと知った後の態度が冷た過ぎて、最後にアッサリ復縁するのが不自然なんです。  「物語の中で必要じゃないのに、面白そうだと思った属性をアレもコレもと詰め込み過ぎてしまった」という形であり、悪い意味でアマチュアっぽい作風だったと思います。   でも「好きか嫌いか」で考えれば、間違いなく好きな映画だったりするので……  褒めようと思えば、いくらでも褒められちゃうんですよね、これ。  凄腕のスパイが、普通の主婦が毎日こなしてる「子育て」に翻弄されちゃうって基本軸も、ベタだけど王道な魅力がありますし。   それに何といっても、主人公と交流して懐いていく、三人の子供達が可愛らしい。  思春期で反抗しがちな長女のファレンに、やんちゃ少年なイアン、幼く純真無垢なノーラと、三人ともキャラが立ってるんですよね。  ファレンと「屋根友」になる場面、イアンがスパイに憧れて家出する場面、ノーラが砂糖を食べて暴れ回る場面といった具合に、それぞれに印象的な見せ場があるのも良い。  母親であるジリアンの影が薄い事も併せて考えると、本作は、あくまでも「主人公と三人の子供達の物語」って事なんだと思います。   梯子に自転車など、道具を駆使したアクションが随所で挟まれるのもジャッキー映画らしい魅力があったし「作中でプールが出てきたら、ちゃんとそこに人が落ちる」って作りなのも、安心感がありましたね。  ファッションに拘るラスボスに向かって、イアンが「だっさい服だな」と言い放ちムッとさせる場面とか、悪役にも程好い愛嬌が備わってるのも良い。  憎たらしい悪役を倒してスカッとする、勧善懲悪な魅力を目指すのではなく、悪役でも憎めないような、優しい世界を崩さないバランスに仕上げてあり、観ていて心地良かったです。   面白い映画っていうよりは、優しい映画という……  そんな言葉が似合いそうな一品でした。
[DVD(吹替)] 6点(2023-09-06 10:08:44)(良:1票)
234.  ブロークンシティ 《ネタバレ》 
 マーク・ウォールバーグとラッセル・クロウの共演という事で、楽しみにしていた本作。   始まってすぐに 「あれ? これってもしかしてラッセル・クロウは悪役?」  と気付いてしまうような構成だったのは残念でしたが、それを補って余りある魅力的な演技を見せてくれたと思います。  悪役としての貫録もたっぷりだったし、逮捕後の見苦しい捨て台詞も最高。  むしろ主人公よりもオイシイ役だったかも知れません。   「アルコール中毒」「恋人との不仲」に関しては、中盤以降あまり必要性が感じられず、残念でしたね。  むしろコレらの設定がある事によって 「どうせなら逮捕されて刑務所で酒断ちし、彼女とも別れた方がスッキリするんじゃないか」  と思えてしまい、主人公の最後の選択における「自己犠牲」的な意味合いが薄まっているようにも感じられました。    そんな中で癒しとなっているのは、主人公の助手であるケイティの存在。  大物俳優が多い作品の中で、彼女は初めて見る顔だったという事もあってか、とても新鮮な印象を受けましたね。  可愛らしい彼女と、出所後の主人公が無事に再会出来た事を願いたいものです。
[DVD(吹替)] 6点(2016-06-04 16:26:09)(良:1票)
235.  Mr.&Mrs. スミス 《ネタバレ》 
 ヒッチコックの「スミス夫妻」を連想させるタイトルですが、特に関連は無し。   それを知って少々拍子抜けする気持ちもあったのですが、内容はといえば、素直に楽しめる娯楽作品でしたね。  後に実生活でも夫婦になったという主演二人の掛け合いも息ピッタリで、銃を用いての夫婦喧嘩や、情熱的な仲直りの風景なんかも、楽しく、面白く、魅力的に演じられていたと思います。   二人で射的遊びをして、ムキになって全弾命中させてしまうという「殺し屋の夫婦」らしいやり取りと、カーテンの好みが合わないという「普通の夫婦」らしいやり取りを、等しく描いている点も上手い。  どちらか片方のみに偏ってしまうと「殺し屋である必要が無い」「余りに一般人とかけ離れているので、感情移入出来ない」という形になっちゃいますからね。   その点、この主人公夫婦は非常に親しみやすく、それでいて有能な殺し屋である事も、しっかり伝わって来る。  妻のジェーンは「思い出のぬいぐるみを破かれて、嫌そうな顔をする」「エレベーターを部下に爆破された際には、思わず夫の身を案じてしまう」という場面が非常にキュートだったし、夫のジョンも何処か惚けた魅力があって、同性から見ても嫌味に感じないんですよね。  嘘みたいな設定と、嘘みたいに整ったルックスなのに、これほど親近感を抱かせてくれるのは、やはりスターであるアンジェリーナ・ジョリーとブラッド・ピットだからこそ、と思えます。   赤ん坊を抱っこするシーンが意味深だったので、伏線かと思ったら全然そうじゃなかった事。  ヴィンス・ヴォーン演じるエディが良い味を出していたのに、主人公夫婦に警告を発する場面を最後に、出番が無くなる事。  「二つの組織を敵に回してしまった」という悲壮感を醸し出していたにも拘らず「気が付けば、襲い来る敵を全員倒していた」という呆気無いオチは如何なものかと思える事。  等々、欠点と呼べそうな部分も幾つか見つかるんですが「面白い」「良い映画だ」と思える部分の方が、ずっと多かったですね。  緊迫したカーチェイスの最中に、二人が「前にも結婚した事がある」「結婚式に呼んだ両親は偽者」と互いの秘密を告白し合い、喧嘩しつつも、しっかり敵を撃退しちゃう場面なんて、特に好き。   結局、ラストにおいても二人は「第一陣」を撃退したのみであり、今後も巨大な組織相手に戦い続ける日々を送るのかも知れませんが(この二人なら、まぁ何とかなるだろう)と思えちゃいますね。  組織の方が白旗を上げて、二人を夫婦と認めて復職させるか、あるいはエディや元部下達の協力も得て、二人が組織の方を壊滅させちゃうか。  描かれていない先のハッピーエンドまで、自然と思い描けてしまう、楽しい映画でした。
[DVD(吹替)] 7点(2018-02-02 14:06:20)(良:1票)
236.  噂のアゲメンに恋をした! 《ネタバレ》 
 海外ドラマ「オレンジ・イズ・ニュー・ブラック」にて、女子刑務所内で本作が上映される場面があったもので、興味を抱いて鑑賞。   かなり煽情的な場面が多く、コレをノーカット上映で観せられたら、囚人達は相当興奮しちゃうんじゃないかと、そんな風に思えましたね。  「噂のアゲメン」となる主人公の設定も面白く、上手く考えたもんだなと感心。  愛を交わした相手が別の男(次の男)と結ばれちゃうという、悲惨な呪いのはずなのに、それが転じて「この男と寝れば、次の男と幸せになれる」と女性達に認識されて、一夜限りのモテモテ男となる訳ですが……  この映画は、そんな「悲惨さ」と「モテモテになれる優越感」その両方を均しく描く事に成功してるんですよね。   後者に関しては「女を取っかえ引っかえ」してる場面を愉快に描いてたりするし、オスの本能で、つい嬉しくなっちゃいます。  この場面、レズビアンの警官には制服を着せたまま交わったりしてるし、何ていうか「男心」を分かってる感じなんですよね。  他にも信心深い女性とか、性転換した元クラスメイトとか、面白いキャラが色々揃っており、彼女達が文字通りの「使い捨て」な扱いだった事が、惜しく思えたくらい。  終盤にて、遠くに旅立つヒロインを止める為、主人公が空港に向かうというラブコメお約束の展開があった訳だし……  そこで婦警さん達が再登場して、主人公の手助けをしてくれる展開なら良かったのにって、そんな風に考えちゃいました。   美人とは言い難い女性に「目を瞑って、綺麗な女の人を想像して」と悲し気に訴えられ「キミを見てる」と応えてから事に及ぶ場面は、ちょっと感動しちゃったし、こんな設定にも拘わらず主人公が「良い奴」キャラだったっていうのも、ポイント高いですね。  そんな主人公が、ヒロインを失いたくない一心で暴走してしまい、他人の迷惑を考えないストーカー男になりかけるんですが、土壇場で踏み止まり、元の「良い奴」に戻ってヒロインと結ばれるって構成なのも、実に気持ち良い。  ペンギンの求婚に因んで「石」を渡すプロポーズも御洒落だったし、本編では拝めないままだった「三つの乳房」をエンドロールで見せてくれるサービス精神も、嬉しい限りでした。   そんな本作の難点としては……  ヒロインがドジっ子キャラだったのに、その属性が途中から忘れられた形になるのが、勿体無く思えた事。  そして最後の「南極でのキスで舌がくっ付いたオチ」は洒落にならないし、二人が心配で笑えなかったとか、そのくらいになるでしょうか。   こんなの低俗だと眉を顰める人もいるでしょうけど、こういうのも立派に「観客の見たいものを見せてくれる映画」だと思うし、自分としては素直に評価したいですね。  中々面白い、良い映画だと思います。
[DVD(吹替)] 6点(2022-10-18 15:06:21)(良:1票)
237.  スーパーサイズ・ミー 《ネタバレ》 
 「この実験は明らかにおかしい」「条件が偏り過ぎている」「監督側は意図的に身体を壊す為、無茶をしているとしか思えない」等々、書きたい事は沢山あります。  でも、どうやら実験に対する批判というか、検証については既にやり尽くされた感があるようですね。  「一ヶ月マクドナルドのメニューだけを食べ続けても、必ず身体を壊す訳ではない」「むしろ健康になる事もある」「ダイエットだって出来る」という事が世界各地で実証されており、作中の実験結果に文句を付けるのは、遅きに失するように思えます。   なので以下は、なるべく純粋に映画としての評価を。   場面転換などで多少ぎこちなさを感じる部分もありますが、音楽やアニメーションを駆使して、観客を飽きさせないような作りとなっているのは嬉しいですね。  S、M、L、スーパーサイズのポテトの袋や、ジュースの紙コップを並べる事によって、視覚的に大きさを分からせる演出なども、テンポ良く行ってくれています。  作中で繰り返される主張は酷く歪んでいるように思えるのですが、一応「アメリカ人の健康に対する危機意識を高める為」という大義名分が掲げられている為、嫌悪感を和らげてくれるのもありがたい。  「ビッグマックを毎日食べているけど、全然太っていない」「運動をして鍛えているので平気」というタイプの人達を登場させているのも、一応の公平性を感じられました。  「病院にもマクドナルドがある」「大統領やキリストを知らない子供達も、ドナルドは知っている」「小学校で、生徒がコーラとスナック菓子の昼食を取っている」という場面が挟まれるのもショッキングであり、問題提起に成功しているかと。  エンディング曲も、何だかクセになる魅力があったと思います。  これらの点は、長所と呼べそうですね。   で、短所というか、気になる点なのですが……これは、ちょっと多過ぎて挙げ切れないです。  あえて一言で表すなら「悪趣味」な作りである事でしょうか。  わざわざ吐瀉物を映し出すという視覚的な悪趣味なんかは、まだまだ可愛い範疇。  ちゃんと医者から「脂質の摂り過ぎには注意してね」と言われて、笑顔で握手した上で始めたはずなのに、全然注意していなかったり「摂取カロリーを減らして」と助言を受けているのに、それでも減らさなかったりしたのには、流石に呆れましたね。  ここの場面は「マクドナルドのメニューは脂質が多い」「カロリーが高い」という印象を与える為には外せなかったのでしょうが「医者の忠告に反して意図的に暴飲暴食している主人公が卑怯なだけ」としか思えませんでした。  食品業界側の言い分を提示する際にも、その直前に「彼らは圧力団体」「非難の矛先を他の物に向けようと努力する」というナレーションを行い、たっぷりと偏見を植え付けた上で弁明する人を映し出しているのだから、やり切れない。  極め付けはラストの演出で「スーパーサイズは、もう止めにしないか?」→「サンダンス映画祭での上映から六週間後、マクドナルドはスーパーサイズの中止を発表」→「マクドナルドでは、この映画との関連は無いとしている」って流れには(うへぇ)と声が出そうになりました。  観客に「映画の影響でスーパーサイズが販売中止になったんだ。この監督は凄い!」と思わせたいのでしょうけど、あからさま過ぎてゲンナリです。  ただでさえ胡散臭くて偏向的な内容だったのに、これでトドメを刺されちゃった気分。  ここで「現在、スーパーサイズの販売は中止されている」くらいのテロップ表示で済ませてくれていたら、もう少し本作に対する信頼度も回復出来ていたかも知れません。   ちなみに、本作の主演と監督を務めているモーガン・スパーロック氏は「デスバーガー」というスラッシャー映画にもカメオ出演しているのですが、本当にチョイ役といった感じで、印象に残りませんでしたね。  そちらの映画を先に観賞済みの自分でも、全く憶えていない役柄でした。  こういった品を作った人だからこそ、マクドナルドを連想させるスラッシャー映画にカメオ出演させたのでしょうし、それなら作中で無残に殺されてしまう役の方がオイシかったんじゃないかなぁ、と思います。  いっそ犯人役にしても良かったかも知れませんね。
[DVD(吹替)] 2点(2017-06-18 11:57:20)(良:1票)
238.  ワイン・カントリー 《ネタバレ》 
 作中にて「私達みたいなグループを見ると、どうせすぐに喧嘩するんだろうと思いたがる」という台詞があるんですが、その台詞通りに喧嘩が始まるんだから、困っちゃいましたね。  そりゃあ「女だけのバケーション」ってテーマの時点で「喧嘩を通して、皆の絆が深まる」っていうお約束展開やるんだろうなとは思ってましたけど……  こんな開き直りみたいな演出されても、困惑するばかりです。   レストランで有名人に遭遇したり、タロット占いしてもらったりと、休暇を彩るイベントが色々用意されているんですが、そのどれもが「小ネタ」って感じで、面白みに欠けるのも困りもの。  恐らくは意図的に大きな事件を起こさず、リアルに仕上げてみせたんだと思いますが、流石にコレは山場が無さ過ぎた気がします。  「実は仕事をクビになってた」「実は乳ガンかもしれない」って仲間に告白するのも、これまた既視感のある展開で、サプライズ感が皆無でしたし……   唯一(おっ?)と思わされたのは、レズビアンの女性とウェイトレスの恋模様くらいでしたね。  てっきり結ばれるかなと予想していたもので「もっとクールな子じゃないと」という一言で振ってみせるのは、中々意外性があって良かったです。  あとは、風景が綺麗だったとか、ゲストハウスの女性オーナーは魅力的なキャラだったとか……良かった探しをするなら、そのくらいかな?   こういう「休暇」「旅行」的な映画は好きなもので、好意的に評価したいんだけど、ちょっと褒めるのが難しいですね。  そもそも本作の場合、主人公グループの関係性が「若い頃、一緒にピザ屋でバイトしてた」と台詞で語られる程度なので、根本的に絆が伝わってこないというか、情報量が少な過ぎて、感情移入出来ないんです。  終盤にて、男性の医者に対し「女性蔑視よ」と難癖つける主人公達の姿にも引いちゃったくらいだし……  どうも疎外感のある内容というか、観客の自分としては、最後まで主人公達の「仲良しグループ」の輪に入りきれなかった気がします。   この場合、そんな「仲良しグループ」の輪に入れるような人が観たら、中々楽しめたんじゃないかと思えただけに、惜しい一品でした。
[インターネット(吹替)] 5点(2020-05-21 14:31:25)(良:1票)
239.  ロード・キラー 《ネタバレ》 
 ポール・ウォーカー主演作品なのですが、彼がスターのオーラを全く漂わせておらず「等身大の若者」を演じ切っている点が素晴らしいですね。  同年には「ワイルド・スピード」でタフガイの刑事を演じているはずなのに「寮住まいの大学生」「精神的には、まだまだ子供」っていう主人公像にも、自然と馴染んでみせている。  彼の他作品を考えれば「こんなストーカー紛いの殺人鬼なんて、ポールに掛かればイチコロじゃん」「酒場でポールに因縁付けるとか……たったの三人じゃあ、どうせアッサリ撃退されて終わりでしょ?」となってもおかしくないのに、殺人鬼に怯える姿や、何とか喧嘩せずに場を切り抜けようとする臆病な若者としての姿に、しっかり説得力があったんだから、これは凄い事じゃないかと。  彼の人気の要因は「何処にでもいそうな、気の良い兄ちゃん」という独特の雰囲気にあったのでしょうが、演技力においても確かなものを持っていたんだなって、再確認させられた思いです。   相方となるスティーヴ・ザーンも良い味を出してあり「傍迷惑な兄貴なんだけど、憎めない」って、主人公だけでなく観客にも思わせているんだから、お見事でしたね。  本作は明らかに「激突!」(1971年)が元ネタの作品なのですが、オリジナルの魅力を感じられたのは、彼らが演じる主人公兄弟の存在あってこそ、って気がします。  中年男の孤独な戦いを描いた「激突!」に対し、本作は若い兄弟の掛け合いが主となっているし、ヒロインであるヴェナとの三角関係を交えた「青春映画」としての味わいもありましたからね。  自分としては、この「車での三人旅」になる中盤の件が凄く好きなもんで(殺人鬼とかもう出て来ないで、このまま青春ラブコメ物として進めて欲しいな)と思えたくらいです。   久し振りに再会した兄が「弟のルイスと、ヴェナの関係をあれこれ詮索する」という形で、主人公ルイスとヒロインのヴェナの関係性を、観客にも分かり易く伝えている点。  そして、精神的な恐怖に訴えかける演出であり、血生臭い描写が殆ど無い点など、ライト層の観客に配慮した作りとなっているのも、嬉しい限りでしたね。  本作を初めて観賞したのは、スプラッター映画などに全く耐性の無かった十代の頃だったんですが、それでもしっかり楽しめたのは、作り手側がちゃんと「そういう層の観客でも楽しめるように」と、色々計算した上で作ってくれたお蔭なんだと思います。   今になって改めて観返すと、元カレが「危ない感じ」という冒頭の台詞が伏線じゃなかった事が肩透かしとか、犯人が逃げ延びて終わるのでカタルシスに欠けるとか、欠点も目についちゃうんだけど……  それよりは、色褪せぬ魅力の方を強く感じ取る事が出来ましたね。   感動するとか、強烈な衝撃を受けるとか、そういう類の作品じゃありませんが「軽い気持ちで楽しめる一本」として、オススメです。
[DVD(吹替)] 7点(2019-02-22 20:21:58)(良:1票)
240.  俺たちダンクシューター 《ネタバレ》 
 ウィル・フェレル主演作の中では本作が一番好き……と言いたいのですが、ウディ・ハレルソン演じるエドの方が実質的な主人公に思える内容な為、ちょっと困っちゃいますね。   とはいえ「途中で主役交代しちゃう出鱈目な映画」ではなく「ギャグパートの主人公はウィル演じるジャッキー・ムーンであり、シリアスパートの主人公はエドというダブル主人公物」だと解釈すれば、良く出来た品だと思います。  バスケシーンも意外と本格的だし「観客を増やす為に色んなショーを行う主人公達」という場面が、試合の合間の良いアクセントになってる。  チャンピオンリングを掴んだベテラン選手だけど、優勝の際にはずっとベンチウォーマーだったというエドの設定も良いですね。  彼が「試合に出てなくても、俺はプロとして戦った」と演説し、チームの意識改革を行うシーンはグッと来たし、完全なギャグ路線かと思って観ていた自分に、心地良い不意打ちを与えてくれました。   そんなエドと、チームで一番才能がある若者のクラレンスとの衝突と和解が描かれ、次第に二人が師弟関係のようになっていく展開も良い。  クライマックスではリーグの首位チームであるスパーズに勝利する訳だけど、当時は戦術として確立されていなかったであろうアリウープを駆使したお蔭で勝利出来たって形になっているのも、上手かったですね。  1970年代の世界を2000年代に描くという利点をフル活用している感じで、ちょっとズルいけど説得力がありました。   クラレンスがスパーズの誘いを振り切る形で、主人公チームのトロピックスを選ぶ場面を劇的に描いたのに、試合後には結局スパーズを選ぶのは拍子抜けとか「背の低い人々には、この世に生きてる理由がない」なんて曲を楽しそうに唄う場面は引いちゃったとか、欠点と呼べそうな場面もチラホラあるんだけど……  「おふざけギャグ映画かと思ったら、意外としっかりしたバスケ映画だった」というサプライズも含めて、満足度は高めでしたね。  劇中曲の「ラブ・ミー・セクシー」も、最初に聴いた時には何とも思わなかったはずなのに、エンドロールにて流れた際には(もしやコレって、名曲なのでは?)と思えたんだから、全くもって不思議。   それと、ラストの台詞「どこかな、クマちゃん?」は最初意味が分からなかったんだけど、今になって考えるに、あれは映画館だからこその「映画館の中に、劇中で逃げ出したクマがいるかも知れないよ」という、上映中の暗闇に包まれた観客に対しての、恍けたメッセージだったんでしょうね。  その辺も含めて(これは、出来れば映画館で観たかったなぁ……)と思えた、意外な掘り出し物の一本でした。
[DVD(吹替)] 7点(2019-01-30 11:02:20)(良:1票)

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