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プロフィール
コメント数 614
性別 男性
自己紹介  洋画は字幕版も吹き替え版も両方観た上で感想を書くようにしています。
 ネタバレが多い為、未見映画の情報集めには役立てないかも知れませんが……
 自分と好みが合う人がいたら、点数などを基準に映画選びの参考にしてもらえたら嬉しいです。

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341.  ハンニバル・ライジング 《ネタバレ》 
 「ハンニバル」の時点で(殺人鬼であるレクターを、ヒーローとして描こうとしてるのでは?)って違和感があった訳だけど、本作では完全にヒーローに変身しちゃってますね。  「羊たちの沈黙」にて、罪の無い警官を平気で殺してた男が、良くもまぁここまで変わったもんだと、妙に感心しちゃいます。   そんな具合に、皮肉な目線で捉えるなら「レクターを正義の味方みたいに描かないで欲しい」とか何とか、文句も言えちゃう訳だけど……  意外や意外、これが結構楽しめたんですよね。  後のシリーズと切り離し、本作単体で考えるなら「妹を殺した連中と、愛する女性を侮辱した男しか殺してない主人公」って形になってるし、シンプルな復讐劇として、奇麗に纏まってると思います。   むしろ本作に関しては「主人公は後のハンニバル・レクターである」って点が、デメリットになってるんじゃないかと思えたくらい。  レディ・ムラサキから剣道を習い、それを活かして最初の殺人を行う訳だけど(それなら、後々も日本刀がレクターの得意武器となるはずでは?)って、気になっちゃうんですよね。  それと、この後レクターは上述の通り「罪の無い警官を平気で殺してた男」に変貌する訳だけど、その変貌するキッカケなども描かれていないから「殺人鬼ハンニバル・レクターが誕生した理由」ってのが、見えてこないんです。  あえて言うなら、愛する女性のレディ・ムラサキに振られた事が「復讐者」から「殺人鬼」に変わった理由かとも思えるんですが……  それにしては、エンディングにて「復讐」を完遂しようとする姿で終わってるしで、何かチグハグですよね。   素人の浅知恵ですが、本作に関しては「純粋な復讐劇」として考えるなら、自らも妹を食べていたと悟った主人公は、復讐を完遂した後に自殺する結末の方が良かったと思うし、逆に「ハンニバル・レクター誕生を描いた物語」として考えるなら、復讐の為じゃなく快楽の為に殺人を犯すようになった場面を描くべきだったと思います。  「ハンニバル」よりは面白いって思えた一作なんですが、この辺りの歪さに関しては、正直褒められないです。   その他にも「山小屋の兵士達が、それほど餓えてるように見えない」とか「失語症が治るカタルシスを描かずに、あっさり治しちゃうのは勿体無い」とか、色々と気になる点も多い映画なんですが……  レクターが返り血を舐める場面なんかは、素直に恰好良かったし「正義では裁けない悪を、悪をもって誅す」というダークヒーロー的な魅力は、しっかり描けてたと思います。   何より見逃せない功績は、本作にてレクターに美形属性が備わった点ですね。  本作で美少年としてのレクターが描かれたからこそ、後にドラマ版「ハンニバル」が生まれたのかも知れないし……  そう考えると、非常に意義のある一本だったと思います。
[DVD(吹替)] 5点(2023-05-10 03:21:23)(良:1票)
342.  海がきこえる<TVM> 《ネタバレ》 
 昔、男友達と二人で観た際には「何だ、この女は!」と意見が一致し、女性と観た際には「結構リアルだね」と言われたりして、戸惑った記憶がある本作。   そういえば一人で観た事は無かったなと思い、再観賞する事にしたのですが、特に評価が変わったりする事は無く、残念でしたね。  (大人になった今なら、ヒロインの言動も可愛らしく思えるかな?)という期待もあったりしたのですが、多少理解出来る面は発見出来たものの、やはり拒否感の方が大きかったです。   そもそも問題の発端となる「ヒロインの両親の離婚」は、父親の浮気が原因なのに 「ママが馬鹿だと思ってた」 「見過ごしていればいいのに、ワーワー騒ぐから」  なんて言い出す時点で、彼女に肩入れ出来なくなってしまうのですよね。  (結局、自分が東京から離れたくないものだから、その為に母親を悪役にして憎んでいるだけじゃない?)と思えてしまうのですが、この予想が当たっているなら「嫌な女」としか評しようがない訳で、どうにも困ってしまいます。   自己憐憫に浸って 「私って可哀想ね」  と泣く姿にはゲンナリさせられたし 「あの人って馬鹿ね。付き合ってる頃は良く気の付く、優しい人だと思ってたんだけど」  と元カレの悪口を言うシーンで、決定的に幻滅。  この映画の後、主人公とヒロインは結ばれるのが示唆されている訳だけど、また何年か経ったら主人公も「元カレ」になってしまって、似たような悪口を言われているんじゃないかと思えてきます。   主人公の親友が告白してきたら 「私、高知も嫌いだし、高知弁を喋る男も大嫌い。まるで恋愛の対象にならないし、そんな事言われるとゾッとするわ」  と言い放つのですが、この頃にはもう慣れているというか、感覚がマヒしてしまって(あぁ、やっぱりそう思っていたんだ)という感想しか浮かんで来ないのだから困り物。  後の台詞からすると、この時の言葉は強がりの嘘だった可能性もあるし、彼女自身が反省もしているそうなのですが、それを直接描かずに伝聞で済ませるものだから、ちっとも真実味が無いのですよね。  終盤、同級生の女子達に糾弾される彼女が同情的に描かれているのも(自業自得じゃないの?)と白けてしまうし、立ち聞きして助けようとしなかった主人公が彼女に頬を叩かれ、その後に親友にも殴られる展開には、唯々呆然。   主人公は良い奴だとは思うのですが「ヒロインに惚れるのが理解出来ない」という意味で、徹底的に感情移入を拒む存在であり、それがエピローグで更に強調される形になっているのだから、非常に残念。  恐らくヒロインに惚れたのは、東京への同行を申し出た際の 「本当? 本当にそうしてくれるの?」  と喜ぶ笑顔がキッカケじゃないかと思えるのですが、何だかココの演出も、あざとい可愛さアピールに感じられたりして、ノリ切れなかったのですよね。  第一ヒロインは美少女って設定のはずなのに「同級生の小浜さんや西村さんの方が可愛いじゃん」と思えてしまうのだから、作中でヒロインが散々その美貌を絶賛されていても、ちっとも共感出来ない。  この辺りの感覚は、昔観た時と全く同じだったりして、そういう意味では、とても懐かしい気分に浸れました。   本来は感動すべき「高知城を見つめながらヒロインの台詞の数々を思い出す場面」でも「ろくでもない事ばかり言っているなぁ」と冷ややかな気持ちになってしまうのだから、とことん自分とは相性の悪い映画なのだなと、再確認。  「紅の豚」を絡めた遊び心など、クスッとさせられる場面もあったし「お風呂で寝る人」という形で、遠回しにヒロインから主人公への告白を描く演出は、御洒落だなと思います。  所々に、好きと言えそうなパーツは見つかるだけに、全面的に楽しむ事が出来なかったのが、実に勿体無い。   「海がきこえる」というタイトルにも拘らず、最も印象的な「海」の場面が主人公とヒロインではなく、主人公と親友の二人きりの場面というのも、何だか変な感じでしたね。  帰郷した際に二人が仲直りする流れには和みましたし、共に海を眺める場面は本作における白眉だとは思うのですが(ココで終わっておけば友情の映画として綺麗に纏まったのに……)なんて、つい考えてしまいました。   残念ながら、自分には海がきこえなかったみたいです。
[DVD(邦画)] 3点(2016-10-05 09:10:08)(良:1票)
343.  Mr.ズーキーパーの婚活動物園 《ネタバレ》 
 当初ヒロインかと思われたステファニーの言動が酷過ぎる為、早い段階で(こりゃあ別の女性と結ばれるな)と読めてしまう事が難点ですね。   どうせ結ばれない、結ばれない方が良いと思ってしまうのに、作中の主人公は「ステファニーと結ばれたい」という一心で行動しているものだから、どうしても感情移入出来ないし、その恋を応援する事も出来ないという形。  同僚のケイトに頼み「ステファニーにヤキモチを妬かせる為、恋人のフリをする作戦」を敢行する辺りからは(これはケイトと結ばれるオチか)と分かり、王道なラブコメとして楽しめましたが……ちょっと尺のバランスが悪かった気がします。   冒頭でプロポーズを断られた主人公が、今度はステファニーの方からプロポーズされて、それを断る流れなどは痛快なものがあったし、冒頭と同じようにバンドが再び現れて、陽気に唄い出すのも可笑しかったしで、終盤の展開は本当に良いんですけどね。   動物園の飼育員である主人公が、人間不信のゴリラと少しずつ友情を深めていく流れも面白かったです。  ゴリラに服を着せて店に連れて行き、そこで楽しく騒いだり、腕時計をプレゼントしてみせたりする辺りなんかは、本作の白眉かと。   その他、不満点としては、ゴリラにスポットが当たり過ぎているせいか、他の動物が殆ど目立たず、主人公の恋を叶える上で活躍していないように思えちゃった事。  そして、カラスが他の動物から仲間外れにされるネタを繰り返した以上は、最後に「カラスも動物園の仲間だ」と、しっかり皆から認められるシーンが欲しかったとか、その辺りが挙げられそうですね。   エンドロールでのNG集も楽しかったんですけど「動物虐待している訳では無い」とばかりに、主人公がダチョウに乗ろうとして転ぶシーンは「CGによる合成だった」と種明かしする件があったのは、凄く残念。  自分がお気に入りだった主人公とゴリラが絡むシーンも、大半は合成だったんだろうなぁ……なんて思えてしまい、大いに白けちゃったんですよね。  そこは何というか「気付かせて欲しくなかった」という想いが強いです。   それと、原語では凄く豪華な面々が動物達の吹き替えをやっている訳だし、どうせなら「ニック・ノルティ」「アダム・サンドラー」「シルヴェスター・スタローン」の三人が、ちらっとでも出演してくれていたら、もっと面白くなったかも知れませんね。   そんな具合に、色々と気になる点もあったけど、基本的には安心して楽しめる作品でしたし、後味も悪くない。  及第点以上のラブコメ映画だったと思います。
[DVD(吹替)] 6点(2017-11-28 21:16:00)(良:1票)
344.  ダウト ~あるカトリック学校で~ 《ネタバレ》 
 こういった論戦を扱う場合、どうしても「性的虐待の疑惑を受ける神父」が悪であり「真実を追及するシスター」が善であるという印象を与える事は避けられないと思うのですが、この映画は非常にバランス感覚が巧みでしたね。  前者は子供達に優しい人気者で、古臭い考えの教会を変えようとしている革新派。  後者は子供達に厳しい偏屈者で、古き良き教会を守ろうとしている保守派という対比なのですから、つい前者に肩入れしたくなってしまう。  けれど演じているのが、如何にも裏がありそうなフィリップ・シーモア・ホフマンと、とても悪い人には見えないメリル・ストリープだったりするものだから、観客としては「どちらが正しいのか?」と固唾を呑んで見守る事になる訳です。   特に「上手いなぁ……」と感心させられたのが、生徒から取り上げたトランジスタラジオを愛用していると、シスターが嬉しそうに語る場面。  正直言って、それは最低だよと呆れちゃいましたし、それによって「このシスターは他人に厳しいだけで自分に甘いという、信用してはならない人物だ」という印象に繋がり、最後まで「神父とシスター、どちらが正しいのか分からない」と観客に適度な「疑惑」を与える効果があったと思います。  そもそも彼女は「この教会に悪影響を及ぼす神父を追い出せれば、それで良い」と考えているフシがあり、本当に性的虐待があったとすれば真っ先に優先すべき「少年を神父から守らなければいけない」という意思が感じ取れない為、どうしても感情移入を拒むものがありましたね。  他の教会に転任させても、そこで別の少年が犠牲になる可能性もある以上、神父を追い出すだけでは意味が無いはずです。  彼女が善人であるとは、最後まで思えませんでした。   結論を言うと、この映画では結局「真実」は不明なままです。  勿論、神父は限りなく黒に近い反応を示しているのですが、確たる証拠は劇中で提示されていません。  劇中の「たとえ確信を持ったとしても、それは感情だ。事実じゃない」という台詞にも象徴されていると思います。  そもそも、そんな「疑惑」を抱かれた時点で迷惑だし、一度不名誉な噂に晒されれば、それが事実無根であっても取り返しがつかなくなるという事は、神父の説教の中でも語られています。  過去を探られるのを嫌がった事だって「過去にも同じような噂が立った事があるので、それを知られたらますます自分の立場が悪くなる」というだけかも知れません。  悪く考えるなら「過去には過ちを犯していても、今回は無罪だった」という可能性もありますし、良く考えるなら「少年が同性愛者である事は気付いていたので、彼を疑惑の渦から守る為に自分は立ち去った」という可能性だってあると思います。  だからこそ、ラストシーンにてシスターが「本当に自分は、自分の行動は、自分の過去は、自分の信仰は、正しかったのか?」という「疑惑」を抱く形で映画が完結したのでしょう。   上述の通り、映画だけで判断するなら「疑わしきは罰せず」「神父は無罪である」となる訳ですが、現実世界にて「神父に性的虐待を受けていた少年が無数に存在する」という悲しい証拠が、これまた観客の判断を狂わせるというか「もしかしたら?」という「疑惑」をかき立てる訳で、本当に上手くて、そして狡い作品ですよね。  こういった具合に、煙に巻くというか、あえて真相を明らかにしない映画も嫌いではないのですが、本作は論戦をクライマックスに据えておきながら「神父もシスターも、どちらも勝者とは思えない」「神父は心に傷を負ったまま栄転し、シスターは目的を達成するも罪の意識を抱いている」という、痛み分けのような形であった事が、どうもスッキリしない。   この映画のテーマを考えれば、観客にも「疑惑」を残したままで終わらせるのが正解だったと思いますが……  自分としては明確な「真実」を示してもらいたかったなと、つい考えてしまいました。
[DVD(吹替)] 6点(2016-12-22 03:41:56)(良:1票)
345.  鬼教師ミセス・ティングル 《ネタバレ》 
 最後がハッピーエンド過ぎて納得いかない映画ってのがありますが、これもそんな一本。  主人公のワトソン達と、ティングル先生。どっちが悪いかといえば「ワトソン達」で、どっちが被害者かといえば「ティングル先生」なのに「前者は無罪放免」「後者は教師をクビになる」って結末を迎えちゃいますからね。  最後は主人公三人で、笑顔の卒業式を迎えて終わる訳だけど (……それで良いのか?)  とツッコむしか無かったです。   「スクリーム」「ラストサマー」「パラサイト」と同じ脚本家(本作では監督も兼任)という事で、90年代のティーンズ映画らしい魅力が詰まってる事。  舞台の大半が「ティングル邸」に限定されている為、小さな世界の「舞台劇」めいた魅力を味わえる事など、良い点も色々あるんですけどね。  主人公ワトソンの犯行動機というか、ティングル先生と戦う主因が「ママと同じ人生は歩みたくない」っていう想いゆえなのも、非常に残酷で良い。  これ、ママさんが酷い母親って訳じゃなく、娘想いの優しいママさんだし、母娘仲も良いはずなのに、それでも尚そう思ってしまうというのが、何ともやるせないんですよね。 (たとえ夜勤で毎日大変でも、夫に逃げられようとも、娘に愛情注いで育ててる立派な母親じゃないか)  と、自分としてはそう感じる訳ですが、それでも娘側の「こうはなりたくない」って想いに、説得力があるよう描かれてる。  「親のようになりたくない」「自分が思い描く理想の大人になりたい」という感情のままに行動する主人公ってのは、等身大の若者らしくて、リアルだったと思います。   それと、悪役になるティングル先生が魅力的なのも良かったですね。  そりゃあ彼女は日頃から意地悪だし、不倫もしているしで「悪い人」なんだろうけど、作中で描かれている限りでは「監禁されている被害者」な訳で、どっちかというと彼女側を応援したくなりますし。  作中で何度か言及されている「エクソシスト」の悪魔のように、巧妙に話術を駆使して窮地を脱しようとする姿は、文句無しで主人公達より恰好良かったです。  あと、不倫相手のウェンチェルコーチが、彼女との逢引では「従順な奴隷」となっちゃうのは、如何にもって感じで笑っちゃいましたけど……  個人的には、日頃偉そうな態度のティングル先生の方が「奴隷」になっちゃう関係性の方が、ギャップがあって可愛く思えたかも。   脇役&女友達枠のジョー・リンの描写も面白くって、主人公のワトソンより華やかなルックスなのに「私は脇役じゃないわ」って劇中で言わされちゃうのが、実に皮肉が効いてましたね。  「女優の才能が無い」と言われた仕返しのように、ティングル先生を騙すのに成功するのも痛快でしたし……  三角関係の泥沼を乗り越え、主人公ワトソンとの友情を選ぶ展開になったのも、嬉しかったです。  こういう「報われない女友達」枠が好きな自分としては、とても好みのキャラクターでした。   ただ、唯一のメイン男性キャラであるルークについては不満があるというか……正直言って、魅力を感じない存在でしたね。  そもそもの発端というか、諸悪の根源と言えるのは「答案を盗んだルーク」のはずなのに、なんか「優しい王子様」みたいな扱いを受けてて、違和感が拭えなかったです。  成績の書き換えを提案したのも彼だし、作中で一番「悪魔」と呼ぶに相応しいのはワトソンでもティングル先生でもなく、ルークじゃないかと思えました。   ……とまぁ、そんなこんなで、劇中では散々な目に遭ったティングル先生だけど、生徒のワトソンに「皮肉」の意味を教える事が出来たって意味では、少しだけ報われたのかも知れませんね。  クビになった後の彼女については一切描かれていないけど、何とか立ち直って欲しいものです。
[DVD(吹替)] 6点(2021-10-08 02:16:16)(良:1票)
346.  永遠の0 《ネタバレ》 
 「上手い」と感じる部分と「ズルい」と感じる部分とが混在しており、評価が難しい一品ですね。   まず、本作はフィクションであるはずです。  にも拘らず、さながら事実をそのまま映像化したような印象を与えてしまう。  これは創作物として非常に優れた点であると同時に「現実と虚構の区別をつかなくさせる」作用も大きく、純粋に「映画」として楽しむ事を妨げているようにも思えました。   実質的な主人公である宮部久蔵というキャラクターは、非常に魅力的ですね。  軍人でありながら命を惜しみ、誰にでも敬語で礼儀正しく接して、端正な顔立ちの二枚目。  大人しくて卑屈な性格かと思いきや、仲間の尊厳が踏み躙られた時には上官に反抗だってしてみせるという、正にフィクションだからこそ許される存在。  この映画のタイトルに「実録」なんて付いていようものなら(これ、絶対美化しているよね?)と疑ってしまうのは避けられなかったはずです。  積極的に戦争に参加していないくせに、実は凄腕のパイロットであるという矛盾した一面も良い。  同僚と「模擬空戦」を行い、瞬時に相手の背後を取って、鋭い眼光で睨み付けている時の姿なんて、とても格好良かったです。   上述の「ズルい」部分に該当する話でもあるのですが、この映画って「戦争は良くない」という基本スタンスでありながら、空戦シーンは非常に面白く撮っていたりするのですよね。  主人公が零戦を宙返りさせる姿にも、思わず見惚れてしまうような魅力があり、そういった意味においては「軍人に憧れる子供」を生み出してしまう可能性はあるかも。   その一方で「上手い」と感じたのは、作中において大きな謎である「何故、命を惜しんでいたはずの宮部が特攻したのか」に対して、明確な答えを出さなかったという事。  作中の情報から推測する限りでは、教え子達が次々に特攻して死んでいくのに、自分だけが生き延びるという罪悪感に耐えられなかったからだと思えます。  ただ、自分としては、この「理由を知りたいのに決して知る事が出来ない」という現象が「何故なら、その人は死んでしまったから、訊きたくても教えてもらえないのだ」という答えに繋がっているようにも感じられたのですよね。  恐らくは戦争行為における最大の喪失であろう「人の死」が「決して明かされる事のない謎」を生み出してしまったという、何とも悲しい結末。  だからこそ、特攻していく宮部の姿を最後までは描かず、不思議な笑みを浮かべさせたまま、戦死の直前で終わらせたのだと思われます。  一度死んで0になってしまったものは、永遠に0のまま、1には戻らない訳です。   面白いというか、少々意地悪なユーモアを感じられたのは、現代パートにおいて宮部の孫が「特攻と自爆テロの違い」について語る場面。  ここは作中の流れを踏まえて考えれば「特攻は無差別に民間人を狙ったりしない。空母だけを狙うのだから、自爆テロとは違う」という結論で終わらせても良かったはずなのです。  けれど、本作においては議論の相手から「昔の日本軍を美化して考えるのは、今現在の自分に不満があるがゆえの逃避行動だ」という指摘が行われており、結局それに対して宮部の孫は反論出来ず、大声で怒ってから逃げ帰るというストーリーにしている。  この「特攻を美化して話す人間の格好悪さ」を、意図的に描いているような辺りは、良いバランスだなと思えました。   山崎貴監督は、基本的には好きな監督さんですし、本作においても家族愛を軸に据えて、万人が感動出来るような形に仕上げてみせたのは、実に見事だと思います。  ただ、どうも演出過剰な面もあり、ラストに零戦の幻影を見るシーンなんかは、それが悪い方向に作用してしまった気もしますね。  あそこは、もう少し静かに余韻を残して、平和になった現代の姿を映し出すだけでも良かったかも。   その一方で、過剰だからこそ良いと思えたのは、宮部の戦友である景浦が感情を発露させる場面。 「特攻がどんなものか、見ていますよね?」 「殆ど敵艦に辿り着けていないって!」 「殆ど無駄死にだって!」  と訴える姿には、大いに心を揺さ振られるものがありました。  もし、この映画に何らかのメッセージが込められているとしたら、それはこの叫びに尽きるのではないかな、と思う次第です。
[DVD(邦画)] 7点(2016-08-11 19:58:46)(良:1票)
347.  レッド・ライト 《ネタバレ》 
 超能力者と、その真贋を見極めようとする科学者との対決というテーマは、非常に興味をそそられます。   けれど、この映画の場合は意図的にそれをクライマックスに持ってこなかったというか、結果として「本物の超能力者VS偽物の超能力者」という形になっているのですよね。  これには意表を突かれましたが、最初の路線通りに話を進めて欲しかったなぁ……とも思ってしまいました。   なんせ、大物俳優であるデ・ニーロと、シガニー・ウィーバーの対決になるのかと思われた中で、後者が唐突に途中退場する形ですからね。  衝撃的な展開ではあるのですが、疑り深い性分なせいか「これ、本当に死んだの?」なんて思ってしまい、今一つノリ切れませんでした。   超能力は本物か? 偽物か? とデ・ニーロに視点を集中させておいたところで、主人公であるキリアン・マーフィの存在によって「本物の超能力は存在する」と証明されるオチは、素直に面白かったです。  伏線も丁寧だったし、当人が予め「自白」していた事が明かされるフラッシュバック演出なんかも、心憎い。   ただ、それは結果的に「憎きインチキ超能力者の嘘を暴く」というカタルシスを薄める形にもなっている気がします。  きちんと科学的な考証によって「偽の超能力」を否定してみせて、決着を付けた後に、エンディングにてサラっと「実は主人公こそが超能力者」と明かしたりするような形の方が、好みかも。   幽霊屋敷のラップ音の正体、机を浮かしてみせるトリック、電波を使った読心術暴きなど、前半における「超常現象の謎解き」部分が面白かっただけに、後半の展開は残念。  それでも、主人公が「超能力」を証明してみせた事が、ラストの「生命維持装置を切る」行為に繋がる脚本には、唸らされましたね。  実際に死後の世界があるかどうかは分かりませんが、この映画の中では存在していて欲しいものです。
[DVD(吹替)] 5点(2016-06-02 21:43:23)(良:1票)
348.  顔(1999) 《ネタバレ》 
 喪服のままで強姦されて、純潔を散らす事となった主人公の正子。  そんな彼女が相手の男に対し「これ、あげる」と香典を渡すシーンが印象的でしたね。  流石に気味が悪かったのか、突き返そうとする男を罵倒するように「取っとけ!」と啖呵を切る姿なんかも、妙に格好良くて、惚れ惚れする思い。  美しい妹を殺してしまったがゆえに、逃亡犯としての旅に出る事となった正子だけど、本当の意味で「生まれ変わった」「旅する決意をした」のは、この瞬間であったように感じられました。   その妹との確執に関しても、短い尺の中で巧く描いており「お姉ちゃんの存在が恥ずかしかった」と言わせた辺りなんかは、大いに感心。  他人ならば何ともないのに、家族だからこそ「その存在が恥ずかしい」という感情が湧き出てくる訳で、それを的確に表現している台詞ですよね。   全体的に、暗い作風とも明るい作風とも言い難いものがあって、暗いというにはあっけらかんとしているし、明るいというには陰鬱過ぎるという、不思議なバランス。  この独特の空気感を心地良く感じる人もいそうですが、自分としては、ちょっと苦手だったりもしました。   妹殺害のシーンなども「直接殺した光景は描かないで、まず主人公が風呂場で自殺未遂を起こす姿を描く」→「その後に旅支度を始める主人公の足元で、妹が死体となって倒れているのを、サラッと映し出す」という演出になっており、上手いなぁと感心する気持ちと、ちょっと回りくどいよなと思う気持ちが半々になったりして、どうも素直に褒められない、肌に合わない部分が目に付いてしまったのです。  作中で最も悲劇的に描かれていた「流産」に関しても、主人公が信じる「輪廻転生」に共感が持てなかったりしたもので「あぁ、彼女なりに妹を愛していたんだなぁ……」と冷静に考える程度で終わってしまい、感動にまでは至らず、残念でした。   その代わりのように、主人公が成長するロードムービーとしての魅力は感じ取る事が出来て、そちらに関しての満足度は高め。  旅の中で、周りの人達と交流し、自転車の乗り方を習い、泳ぎ方を習い、それが結果的に「土壇場で逮捕の手を逃れる手段」に繋がるストーリーが、実に皮肉で面白いんですよね。  主人公のモデルになった、ホステス殺人事件の犯人と思しき女性と、喫茶店で会話を交わしていたと判明する瞬間なども、観ていて驚かされ、印象的な場面でした。   また、本作においては、実際の事件と違って「整形」という要素を用いなかった辺りも、良い判断だったかと。  何せ主演の女優さんが演技巧者なものだから、最初は生気を失った顔だった主人公が、段々と生き生きして魅力的になり、まるで別人のような「顔」に変わっていく様を、説得力満点に演じてくれているのですよね。  全体のストーリーラインをなぞれば、非常に胡散臭い話であるはずなのに、不思議なくらい真実味を帯びて感じられたのは、やはり彼女の存在が大きかったからなのだろうな、と思えます。   お世話になった女性の律子さんに電話を掛け 「ごめんなさい」「ありがとう」  という想いを伝える件なんかも、凄く良かったですね。 「死ぬぐらいやったら、逃げて」「お腹が減ったら、ご飯食べて」  という励ましの言葉を、手首に傷のある律子さんが口にするのだから、何とも切なくて、情感溢れる名場面。   恐らく、本作の主人公は「逮捕されてしまえば罪悪感に耐え切れず、留置場や刑務所で自殺してしまう」と分かっているからこそ、懸命に逃げ続けているのだと思われます。  そんな事情を加味したとしても、現実逃避、罪から逃れるという行いは、間違いなく悪い事なのでしょう。  それでも、たとえ悪だとしても死よりはマシだ、前を向いて走って、逃げ続けて生きるべきなんだ、というメッセージが窺える、味わい深い映画でありました。
[DVD(邦画)] 6点(2016-08-01 09:04:31)(良:1票)
349.  包帯クラブ 《ネタバレ》 
 監督が堤幸彦で、原作が天童荒太。  「この組み合わせ、上手くいくのかな?」と不安に思っていたのですが、杞憂に過ぎませんでしたね。   どうしてもコメディタッチな作風になってしまうんじゃないかという不安は「鬱屈とした展開が続いても、どこか可笑しみがあって、重苦しくならない」という形で、良い方向に昇華されていましたし、真面目な場面はキチンと真面目に撮るという切り替えが、しっかり行われている事にも感心。  職人監督と呼ぶに相応しい、手堅い仕事ぶりだったと思います。   幾つか不満点もあったのですが、その一つとして主人公達の身勝手さ、まだ未熟ゆえの「厨二病」っぽさが挙げられて、そこは観ていて痛々しく感じられましたね。  青春映画には付き物な話だし、だからこそリアルなのだとも考えられるのですが 「上から見下ろしてモノ言ってんじゃねぇよ」 「アンタが世間の何を知ってるって言うんだよ」  と不良娘が金持ちの友達に説教するシーンでは、どう見ても不良娘の方が「上から目線」で「世間知らず」じゃないかと思えたりして、感情移入し難いものがありました。  学校側に包帯クラブの活動がバレた際に、自分達がやった事じゃないとしらばっくれて「私達のこと信じてくれないんですか?」と泣き真似する件なんかは、正直言ってドン引き。  騒動を巻き起こして警察に捕まった後に「親父さんが偉い人だから釈放してもらえた」というオチが付く辺りも、凄く恰好悪かったです。  また、原作者の著作に関しては「家族狩り」と「永遠の仔」くらいしか読んでいないのですが、その二つに続いて子供の性的虐待が扱われていたものだから「またかよ」と、少々食傷気味になってしまう気持ちもありましたね。   それらに対し、良かった点はと言えば、まず「包帯クラブ」の活動を行う姿が、とても楽しそうであった事が挙げられます。  ともすれば「癒し」「許し」「救い」などのイメージばかりが先走って、宗教的な画面にもなってしまいそうなのに、あくまでも「若者達のクラブ活動」である事を忘れておらず、観ていて「自分もやってみたいな」と思わされるような魅力がありました。  特にお気に入りの「鉄棒に巻き付けた包帯を逆上がりさせる」件が、実は伏線であり、ラストシーンにて鮮やかに回収される流れなんて、凄く嬉しかったですね。  飲食店に皆で集まって、美味しそうに料理を頬張りながら「将来の夢」を語り合うというのも、微笑ましくて良い。   「誰も知らない」で抜群の存在感を放っていた柳楽優弥が、立派に成長した姿を見せてくれるのも嬉しかったですね。  彼が演じるディノが経験した事件と、その後の顛末に関しては「被害者だけでなく、加害者も、難を逃れた第三者さえもが、傷を負っている」という形になっており、色々と考えさせられるものがありました。  罪悪感を乗り越えて、久し振りに再会した男友達と交わす会話の内容が「包帯クラブに所属している女の子達は可愛いかどうか」なんていう下世話な内容である辺りも、実に良い。  「包帯も自分で巻けるようになった」という台詞によって、彼が自力で立ち直ったのだという事を、端的に示す辺りも上手かったと思います。   包帯そのものには傷を治す力なんてなかったとしても「自分の事を想って、包帯を巻いてくれた人がいる」という事実によって、人が癒される事もあるのだなと、しみじみ感じられる。  ちょっぴり痛みも伴うけれど、それ以上に優しい映画でした。
[DVD(邦画)] 6点(2017-01-25 13:30:07)(良:1票)
350.  ハンター(1980) 《ネタバレ》 
 始まって十数分、粉塗れになる乱闘シーンで「あれ?」と思い、そこから更に三十分後の爆発シーンで、ようやくコメディ映画なのだと気が付きました。  かと思えば、クライマックスにおける電車上のアクションは中々の迫力であったりして「一粒で二度おいしい」タイプの作りとなっていますね。  これが遺作であるというスティーヴ・マックィーンが、色んな面を見せてくれたという意味においては、非常に嬉しい内容。   ただ、自分としては正直コメディ部分は退屈だったりもして、残念でした。  その分、終盤のアクションパートでは画面に釘付けになる事が出来たのですが(どうせなら両方を楽しんでみたかったな……)と、切なく感じてしまったのですよね。  好きな俳優さんの作品であるだけに、全面的に肯定出来ない事が、もどかしかったです。   ラストに関しては、ほのぼのとしたハッピーエンドで締められており、驚くと同時に癒されるものがありましたね。  西部劇、刑事ドラマ、脱獄物と、シリアスな作風の品に出演している印象が強いマックィーン。  そんな彼が、何とも優しい手付きで赤ちゃんを抱き上げて、父親として笑ってみせている。  その姿が、最高に似合っていて、最高に決まっているのだから、本当に凄い事だと思います。   映画の内容そのものよりも、最後の出演作までマックィーンは格好良くて、魅力的だったという、そちらの方に感動させられた一品でした。
[DVD(吹替)] 6点(2016-06-21 12:56:14)(良:1票)
351.  クライムダウン 《ネタバレ》 
 映画「エラゴン」で主演を務めたエド・スペリーアスの数年後の姿を拝めるという、非常に貴重な一品。   自分としては、劇中で彼がどんな活躍をしてくれるのかに期待していたのですが……良い役とは言い難いものがありましたね。  一応、副主人公に近いポジションなのですが、どうにも憎まれ役というか「主人公の好感度を下げない為に、マイナスな言動を代わりに行うキャラクター」って感じなのです。  最後も(えっ? 死んだの?)って戸惑うくらいにアッサリ撃たれて退場するし……  何だか凄く不憫で、応援したくなりますね、エドさん。   それで映画本編の方はといえば、これが中々面白い佳作。  登山を楽しむ主人公達が、地中に女の子が埋められている事に気が付き、慌てて掘り起こして木箱を開けるシーンのドキドキ感なんて、凄く良かったですね。   その後に少しずつ謎が解き明かされていくのかと思いきや、かなり早い展開で「彼女は誘拐され、ここに閉じ込められていた」「誘拐犯の二人組は、すぐ近くにいて、銃を手に主人公達を追跡している」と分かるので、これにも吃驚。  謎解きを放棄した、追いかけっこに特化した作りだったとは、完全に予想外でした。   舞台が山の為か、危険な崖を降りるシーンもあるのですが、そこに関しては「急がなければいけないのに、危険だから慎重に、ゆっくり降りなければいけない」というのが何だかチグハグで、緊迫感を削いでいたように思えて、残念。  そんな崖のパートを過ぎて、河の急流に差し掛かる辺りからは、ようやく演出もスピーディーになり、以降はノンストップで楽しめたように思えます。   「追ってくる奴らの狙いは、その子だけだ」と言い出し、女の子を犠牲にして助かろうとするかと思われた男が、自ら囮になって他の皆を逃がしてあげる展開なんかも(そう来たか!)という感じで、実に好み。  誘拐犯の一人が「以前、人質の男の子と仲良くなってしまった事がある」と語り出し、その子が苦しまないように後ろから頭を撃ち抜いてやったと話す件なんかも、彼の恐ろしさと人間味を同時に感じられて、良い場面だったと思います。   最終的には、主人公と女の子の二人は何とか助かるので、ハッピーエンドと呼ぶ事も出来そうな本作品。  でも「実は女の子の父親が悪どい権力者であり、誘拐犯は彼の手によって無残に殺される」というオチまで付いているのは、ちょっと蛇足に感じられましたね。  誘拐された側が絶対的な正義ではない、という深みを持たせたかったのでしょうが(後味が悪くなっただけじゃない?)というのが正直な感想。   どちらかといえば、楽しめた場面の方が多いのですが(ここ、もうちょっと何とかなったらなぁ……)と細部が気になってしまう。  そんな映画でありました。
[DVD(吹替)] 6点(2017-01-31 13:20:15)(良:1票)

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