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プロフィール
コメント数 1274
性別 男性
年齢 43歳
自己紹介 嫁・子供・犬と都内に住んでいます。職業は公認会計士です。
ちょっと前までは仕事がヒマで、趣味に多くの時間を使えていたのですが、最近は景気が回復しているのか驚くほど仕事が増えており、映画を見られなくなってきています。
程々に稼いで程々に遊べる生活を愛する私にとっては過酷な日々となっていますが、そんな中でも細々とレビューを続けていきたいと思います。

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101.  タクシードライバー(1976) 《ネタバレ》 
公開当時はベトナム後遺症ものの一つとして理解されていましたが、現在の目で見れば、本作には時代や社会に縛られない普遍性があるということがわかります。トラビスがベトナム帰りであるという点は、銃器やナイフの扱いに慣れているという便宜上の設定に過ぎず(完全な素人では、クライマックスの大殺戮が荒唐無稽になりすぎてしまう)、作品の本質には何らの関係がありません。誰にでもある心の闇、それが克明に描かれているからこそ、本作は40年近くに渡って見続けられているのだと思います。。。 トラビスを完全な基地外ではなく、多くの人にとって心当たりがある範囲内でズレた人にしたという設定は、極めて秀逸でした。人と接したいんだけど、うまく立ち振舞うことができない。シビル・シェパードをナンパする時にトラビスが着ていたジャケットの絶妙なダサさ加減が(なぜ小豆色をチョイスしたんだ、トラビス)、何とも言えない哀愁を漂わせています。さらには、初デートでもこのダサいジャケットを着てくる。トラビスにとって唯一のおしゃれ着であるという点が二度泣かせます。初デートの失敗についても、彼らの周囲にはカップルが多く座っており、完全アウトの行為ではなかったという点が哀れみを誘います。ただ初デート向きではなかっただけなのですが、トラビスにはそれが分からなかった。デート先の選定ミスは男であれば誰もが経験することですが、迷惑そうなシビル・シェパードの表情と、気まずさ漂う二人の間の空気感には、自分自身の苦い経験を思い出させられるほどのリアリティがありました。。。 いくつかの失敗を重ねたトラビスは世間との関わりを諦め、自分自身の世界に閉じこもるようになるのですが、「今のみっともない自分は、本当の自分ではない。自分は、何か大きなことを成し遂げられる人間のはずだ」という漠然とした自信や、「自分を踏みつけた人間達に、いつか目にもの見せてやる」という復讐心は、誰しもが持つものです。こうした負の感情は映像化しづらいのですが、これを見事に映画で表現できているという点が、本作を傑作たらしめている要因だと思います。。。 ラスト、ちょっとした街のヒーローになったことでトラビスの虚栄心は満たされ、職場の同僚と談笑したり、自分をフった女とも大人の会話ができるようになる。あれだけ人を殺しといてオチはこれかいという脱力感も、本作のテーマに沿っていると思いました。
[DVD(字幕)] 7点(2014-02-15 15:52:15)(良:3票)
102.  ターミネーター4 《ネタバレ》 
物陰に隠れてレーザー光線を撃つのが精一杯のもっとチマチマした戦争をイメージしていただけに、潜水艦を司令部にし、空中戦もやってみせる人類の予想以上の健闘ぶりに燃えました。部隊と共にヘリから降り立つジョンの登場シーンでは「これは戦争映画だ!」という監督の心意気を感じ、「こういうのを待ってたんだ」となぜか涙目になる私。大小揃ったロボの充実ぶりに、巨大ロボからモトターミネーターが分離するギミック、また輸送船からHKが分離するギミックと、「ロボットの醍醐味は分離・合体である」という重要な基本を押さえた素晴らしいシーンの連続に感動しました。またマーカスという新キャラも良く考えられています。2003年までの記憶しかない彼が観客と世界観の橋渡しの役割を果たしており、彼が見聞きするものが情報として観客へ提供されるという巧い構成になっています。彼が頼もしい用心棒として大アクションを繰り広げる前半は旧3部作のアップグレード版であり、この過程で観客はマーカスに感情移入します。またジョン役にクリスチャン・ベールを得られたことも幸運で、本作の実質的な主人公はマーカスであり、相対的にジョンの出番は少なく、また一時的にマーカスを殺そうとするヒールの立場にもなるのですが、ベールの存在感によりカリスマ性ある人物にきちんと見えています。カイルとの出会いは素晴らしく、「命を捨てて母を守ってくれた偉大な父にようやく会えた」というジョンと、「憧れの指導者が目の前にいる」というカイルの視線が交錯する時の、ベールの表情が物凄く良いのです。カイルとの出会いに続いてT-800州知事モデルの登場でさらに因果な展開を迎えますが(なんでこのサプライズをCMで見せるんだ!!)、ここで脚本は残念なミスを犯します。2、3と「スペックで劣る善のターミネーターが、サラやジョンとの関わりの中でスペックを越えた力を見せ、新型を倒す」という展開で来ており、このバトルもそれを踏襲したものだと言えますが、マーカスの中身はT-800と同様のものなのか、それよりも劣る機体なのかを説明するセリフがないため、前作のような燃える展開になっていません。また、生前のマーカスが犯した罪についても言及されないため、「今度は良いことをしたい」というマーカスの行動もしっくりきません。死ぬ前にでもこれを告白させるべきでした。
[映画館(字幕)] 8点(2009-06-15 10:05:43)(良:3票)
103.  それでも夜は明ける 《ネタバレ》 
人種差別問題を扱った映画には、あまり傑作がありません。白人によるごめんなさい映画が多数を占め、歴史映画の皮を被りながらも、その内容は極端に惨い面ばかりを強調し、当時の一般的な社会情勢を描写できていないためです。この辺りの事情は、我が国において近現代史をまともに扱えた作品がない点と似ています。センシティブな問題であるがゆえに、製作者がどのポジションをとるのかに注目が集まってしまい、結果、事実関係が二の次になってしまうのです。 そこに来て本作ですが、アメリカ資本により製作された人種映画としては、過去最高の出来だったと思います。奴隷制度を抱えていた当時の社会をきちんと描けているのです。従来の作品群で私が疑問に感じていたのは、映画で描かれている通りの暗黒一色の人生ならば、黒人奴隷が反乱を起こして社会は大混乱するのではないかということでした。白人農場主と黒人奴隷の間には持ちつ持たれつの関係があったはずなのですが、何が何でも白人を悪にしなければならないという製作側の事情から、そうした描写がスッポリと抜け落ちてしまっていたのです。その点、本作は実際に奴隷生活を経験した黒人運動家による著作を原作とし、イギリス出身の黒人監督を起用、さらには脚本家にも黒人を入れるという念の入れようであり、アメリカ出身の白人監督がやれば「奴隷制度を肯定している」との批判を受けかねない描写にも果敢に挑んでいます。多くの農場主は財産として奴隷を大事に扱っていたこと、中には奴隷と主人という関係を超えた信頼関係を結ぶケースもあったことが、きちんと描かれています。また、同胞が理不尽な扱いを受けても、他の黒人奴隷は見て見ぬフリをしていたという黒人側の問題にも言及されており(最終的には、主人公も他の奴隷を見捨てて行く)、これにより当時のアメリカ社会が随分と理解しやすくなりました。感情的になりすぎないマックィーン監督の演出も、本作のアプローチには合っていたと思います。 気になったのは以下の2点。まずはブラピの登場場面。ヒーローの如く颯爽と現れ、長年主人公を捕え続けていた問題をいとも簡単に解決してしまうのですが、彼だけは現代の価値観で発言するため、作品から完全に浮いています。次は、12年という時間の重みを描けていない点。予算や撮影スケジュールに余裕がなかったとはいえ、経過時間を示す演出が皆無というのは良くありません。
[ブルーレイ(吹替)] 7点(2015-05-10 02:50:10)(良:3票)
104.  羅生門(1950) 《ネタバレ》 
殺人事件が起こったが、当事者全員(イタコを介して霊界からお話している被害者当人を含む)が「殺したのは自分だ」と主張しているという、なんとも不可解な裁判。 多襄丸:真砂を巡って金沢と正々堂々決闘し、自分が勝った。 真砂:多襄丸に傷物にされて自分を見る夫の目が変わったため、後追い自殺をするつもりで金沢を殺した。 金沢:多襄丸の女になろうとした真砂の裏切りに失望し、自害した。 しかし、第三者が目撃していた真相とは、レイプで傷物になったことを金沢に責められた真砂が逆上し、二人の男を煽って決闘させたが、決闘に不慣れな侍と盗賊はへっぴり腰の泥試合を演じた後に、ギリギリ多襄丸が勝利したというものでした。 本作が優れているのは、通常は無罪を主張して当事者達がウソをつくという法廷劇の構図をひっくり返し、全員が「我こそが犯人」と主張するという捻じれた物語を作り上げたことと、その風変わりな構図から、人間には罪を被るという実害よりも優先したいほどの強力なプライドがあるという普遍的な物語を描いたことでしょうか。 さらに、本作は俳優陣の熱演もあって登場人物3人が誰もウソをついているようには見えず、各当事者にとっては、本当にそのように物事が見えていたのかもしれないという解釈も残します。人は、自分にとって都合の良いように物事を認識し、記憶するという性質を持ちます。多襄丸は豪快な盗賊としての物語を、真砂は最後まで夫に忠実な良妻としての物語を、金沢は妻を守れなかった自分の落ち度を隠す(=そもそも真砂は守る価値のない女だった)物語を求め、それぞれの物語に合うように事実を歪めて記憶していたのではないか。そうした解釈の余地が、さらに本作の意図を深めています。 本作を最初に見たのは中学生の頃でしたが、正直言って当時は全然ピンときませんでした。内容の複雑さに加えて、セリフの聞き取りづらさもあったのですが、今回はリマスター版で音声も改善された上に日本語字幕による援護射撃もあって、「この映画はこれほど高尚なことを語っていたのか」とひたすら感心させられました。 これは黒澤映画全般に言えることですが、録音機器の問題でセリフが聞き取りづらい上に、口語では分かりづらい難解な表現も多用されるため、日本語での鑑賞がかなり困難という厄介な代物となっています。本作や『七人の侍』が国内よりも海外で評価されたのも、字幕で鑑賞している外国人には、原語で見ている日本人よりも的確にセリフの意図が伝わったからではないかとすら思ったほどです。 あともう一点難を言うと、「レイプされた女は自害すべき」という価値観が登場人物全員の口から出てくる点には、ちょっと馴染めませんでした。これは時代の問題でもあるのでしょうが、第一の被害者であるはずの真砂の扱いがあまりに酷すぎないかと。
[インターネット(邦画)] 8点(2017-11-10 18:43:47)(良:3票)
105.  スパイダーマン2
やたらおもしろかったです。ピーターのしょっぱすぎる生活がブルーな前半ですが、絶妙なタイミングでユーモアを入れてくれるおかげで「X-MEN」のように辛気臭くならないのがよしです。とくに、糸を出せなくなったスパイダーマンがエレベーターで帰るシーンは映画史上屈指の名シーンです。本当、前半のピーターはかわいそうすぎですよ。しかもその悩みってのが「バイトをクビにされた」「彼女ができない」「家賃を払えない」「単位がヤバイ」などいちいち日常的すぎるので、一方なんの特殊能力もない私でも理解可能な切なさでした。スパイダーマンを見に行ったはずなのに、私まで「ヒーローなんてやめちまえ」と思いましたからね(「部活なんてやめちまえ」に近い感覚で)。しかし、その悶々のおかげで後半が活きてくること。スパイダーマンを求めてる人はいる、それを知ってからの躍動感は最高です。そして、付き合いたいのに付き合えないMJ、彼女に正体を見られた時の開放感も共有できました。よかったね、ピーター。スパイダーマンってのは気のいいお隣さんみたいな人なんです。ちなみに私はキルスティン・ダンスト懐疑派なのですが、前作に輪をかけてブ○イク問題は深刻になってませんでしたか?あと、MJの彼氏の宇宙飛行士を見て、なぜか「スピーシーズ2」を思い出してしまいました。
8点(2004-07-15 17:31:46)(良:3票)
106.  電人ザボーガー 《ネタバレ》 
私が産まれる以前の作品なので、オリジナルは未見です。ウルトラマンでも仮面ライダーでもないほぼ忘れ去られていたヒーローを復活させるという企画に関心を持ったので鑑賞しました。。。 ザボーガー登場からテーマ曲までの演出は完璧。バカバカしくもカッコいいヒーローものの醍醐味をわずか数分で再現しており、鳥肌が立つほど興奮させられました。しかし、そこからはグダグダ。終始くだらないギャグでお茶を濁していて、ただの一度も映画が引き締まることがないのです。映画中盤においては、それまでΣ団を倒すことこそが正義だと信じてきた大門に迷いが生じ、そのために愛するミスボーグとザボーガーの両方を失うという劇的な展開を迎えるのですが、その場面すら真剣に描かれていないという有様。失意からもぬけの殻となっていた中年大門が、わが子との出会いによって再びガッツを取り戻すという後半部分に至っては完全にコントとなっており、この映画は演出のやり方を根本的に間違えています。。。 この映画、必要な駒は揃っています。70年代風の雑なデザインを引き継ぎながらも、適度な修正を加えてピカピカな姿で蘇ったザボーガーは充分にカッコいいし、CGと実写を組み合わせた変形シーンは驚くほどスムーズです。若き日の大門を演じた古原靖久はコメディもアクションもできて、おまけにダサイ決め台詞も様になっているという奇跡の逸材だったし、山崎真実と佐津川愛美は女優としてかなり恥ずかしい役柄ながらこれを全力で演じていて好感が持てます。大量のイベントを捻じ込みながらも終始スムーズにまとめられた脚本の質も高く、スタッフ・キャストは素晴らしい仕事を披露しています。だからこそ、根本的に方向性を間違えた演出が残念で仕方ないのです。。。 そんなことを考えながら映画を観ていたのですが、エンドクレジットで流されるオリジナル版の映像を観てビックリしました。オリジナルは本作以上にバカバカしいのです。70年代の子供向け番組なので大した作品ではないだろうとは思っていたのですが、ラストで目撃した光景はそんな予想をも遥かに下回るトンデモないものでした。リアルタイムで観ていた世代は、子供心にも「これは変だ」と感じていたはず。ならば本作のわざと外した演出もあながち間違っているとは言えず、これはオリジナルを観ていないと映画の評価はできないなと思いました。よって無難に6点。
[DVD(邦画)] 6点(2012-08-16 10:19:42)(良:3票)
107.  告発のとき 《ネタバレ》 
これは困りました。まったく面白みのない捜査が90分以上も続くため酷い評価をしてやろうと思っていたら、ラスト30分で監督の意図がわかった瞬間に傑作になってしまいました。まったく面白くないが、素晴らしさは十分に伝わってくる映画。とても評価に困ります。 タイトルの” the Valley of Elah”とは古代イスラエル軍とペリシテ軍の決戦の地。ペリシテ軍が誇る巨人兵士ゴリアテにイスラエル軍は戦意喪失し、誰も戦いを挑まない状態が40日に及んでいました。そんな中ゴリアテ退治に名乗りを上げたのがダビデという羊飼いの少年でしたが、その小さな体では甲冑を身につけることも刀を振ることもできないダビデは、小石5つとパチンコだけを手にゴリアテに挑みます。絶望的な戦力差の戦いでしたが、ダビデは恐怖に負けず冷静に石を放ち、見事ゴリアテの額を砕いてこの戦いに勝利しました。。。 この物語が示すことは、勇気を持てば大きな力が与えられるということ。本作の主人公ハンクも、息子達に勇気を持つことを求めました。しかし現実は伝説ほど容易ではありません。もしゴリアテが都合良く倒れてくれなかった場合、ダビデはどうなっていたのか?それが明かされるのが本作のクライマックスです。「勇気を持て」という親達の期待に応えてイラクに出征した若者たちは戦争の狂気に勝つことができず、完全に壊れた状態で祖国へ戻ってきました。ハンクは息子を殺した犯人を探して執念の捜査を続けてきましたが、その捜査の果てに、若者を戦地に送り込んだ自分達こそが息子を死に追いやった加害者であることを思い知るのです。ハンクには息子を救うチャンスがありました。戦争の狂気に直面したマイクがハンクに助けを求めて電話をかけてきたのですが、ハンクは息子のSOSに気付かず、ただ「戦友に涙を見せるな」というアドバイスだけをして会話を終わらせてしまいます。もしここで息子の弱さを受け入れていれば、息子を狂気で失うことはなかったのですが。。。 本作は戦場の狂気というよくあるテーマを扱っており、その内容は「ディア・ハンター」「フルメタル・ジャケット」はたまた「ランボー」とも似通っているのですが、ダビデの物語を絡めることでテーマを普遍的な親子の葛藤にまで敷衍している点がポール・ハギスの抜群の構成力の為せる技。本作は評価に困る映画ではあるものの、この惚れ惚れするほどの構成の巧さに8点以下は付けられません。 
[DVD(吹替)] 8点(2011-10-27 21:18:24)(良:3票)
108.  ボウリング・フォー・コロンバイン
この映画はたしかに退屈しない作りになっています。つまらない映画ではありません。ただし、これはドキュメンタリーですよね。ドキュメンタリーとしてはなかなかの欠陥品です。何かを訴えてるようで、その実、視点が一定してないんです。前半は「アメリカは銃社会だ。銃が簡単に手に入るからいけないんだ」と主張してたわりに、中盤カナダへ行くと「カナダではこんなに簡単に銃が手に入ります。でも銃犯罪は少ない」と言い出すもんで、何を問題にしたいのかサッパリわかりません。トレンチコートマフィアの肩を持つのか持たないのかもはっきりしないし。そのわりにコロンバインの被害者をスーパーに連れて行き、「これがあんたらの商売の被害者です。銃の販売はやめてください」でしょ。弱者を持ち出して物言えぬ空気を作ってから自分の主張をするってのは、非常に汚いやり方です。被害者にも失礼です。スーパー側と話し合い、ムーアが論理で勝利した上での結果ならともかく、あの場で反論すれば利益第一主義の悪魔として扱われるだけですから、スーパーとしてもムーアの意見に従わざるをえないわけです。実際、あの場でムーアが何か言ってスーパー側を納得させてました?弱者の権力で押し切っただけじゃないですか。そういうのを言論って言うんですか?徹底して取材を行う行動力、そしてドキュメンタリーを面白く見せる才能ではマイケル・ムーアは卓越してると思いますけど、物を考えることに関しては平均以下ですね。この映画には新しい発見も、納得できる結論も特に見当たりません。これではドキュメンタリーとは言えませんね。というわけで、はえある1点をここに進呈します。
1点(2004-06-03 23:51:27)(良:3票)
109.  猿の惑星:創世記(ジェネシス)
「『猿の惑星』の前日談を作ろう」…こんな企画が面白いわけがないのですが、本作はそんな困難な企画を大満足の仕上がりにしてしまった奇跡の傑作でした。監督したルパート・ワイアットなる人物はサンダンス映画祭で絶賛されたスリラー(日本未公開なのでその出来を確認することはできませんでした)を一本撮っただけのド新人なのですが、そんなインディーズ出身の新人がいきなり9000千万ドルもの予算を背負わされ、おまけに映画史に残る名作との比較に否応なくさらされるという重圧の中で、よくぞここまでの作品を作ったものだと感心しました。ジェームズ・キャメロンやティム・バートンですらうまくまとめられなかった企画ですからね、これ。。。本作は大風呂敷を広げず描写の細かさを徹底したことが勝因でした。「創世記」という大層なサブタイトルを付けられてはいるものの、映画の内容は主人公である猿がいかにして人類に愛想を尽かし、猿を組織化したかというだけのものです。前半はシーザーの生い立ちが丹念に描かれ、ついに革命を起こしても、サンフランシスコを突っ切ってゴールデンゲートブリッジの向こうにある森を目指すのみ、すべてが半径数十キロで収まってしまう小じんまりとした物語なのです。そして、この小じんまり感が正解でした。第一作は「惑星」という大層なタイトルとは裏腹に、実に小じんまりとした物語でした。メインの舞台はたったひとつの集落だったし、登場するキャラクターもそれほど多くありません。限定した舞台でのドラマやサスペンスを重視したことが第一作の勝因だったのですが、2001年のリメイクを含む続編はスケールの大きさにこだわる余り、どんどん大味になっていきました。本作はそんな続編の罠をうまく回避しているのです。それでいて、ラストのオチで「創世記」としての面目は保っているのですから、これぞ第一作の精神を受け継ぐ素晴らしい続編であると思います。
[映画館(字幕)] 8点(2011-10-14 18:14:15)(良:3票)
110.  タイタニック(1997)
構造はターミネーターと同じで、不満を抱きながら日常を送っている女性の元にある日イケメンが現れ、襲いかかる脅威から全力で自分を守ってくれる中で愛が芽生え、数日の間に一生分の恋愛を経験するという女のファンタジー。このイケメン、顔だけでなく中身も完璧で、ありのままの自分を愛してくれると同時にいざという時には身を呈して守ってくれる理想の男性。このように少女マンガみたいなベースにアクションを作るのがキャメロンの独特なところです。ただ、ターミネーターの時にはこの傾向にもさほど違和感はありませんでしたが、タイタニックでは特殊な方向にまで進化しています。女性視点で話を展開するどころではなく、フェミニズムへの迎合が見えるのです。「女だからと言って自分の人生を生きられないのはイヤだ」というローズの嘆きはかなりストレートで、女性を縛りつける昔ながらの社会をはっきり悪と位置付けています。婚約者キャルはローズを束縛し、思い通りにならなければ暴力も振るうDV男だし、その対極にあるジャックは「君は人として自由になりなさい」とローズを導きます。キャメロン作品には珍しく一方的な価値観が作品を貫いており、それは物語のバランスを崩しかねないほど。不満があるにせよれっきとした婚約者がいるのに、昨日今日出会ったばかりの男とフラフラ遊び回るのはさすがにマズイでしょとか、貴族社会が息苦しいと言っても、庶民では一生食えないものを食い、欲しいものをいくらでも買えて貴族社会に属する恩恵も十分受けてるんだから、ちょっとはガマンなさいよとか、この映画のモラルには脆弱な部分がいくつもあります。悪役とされるキャルにしても、貴族社会の中では十分浮いているローズの行動を忍耐強く見守っており、また彼女を取り戻すべく沈没寸前のタイタニックに残るなど彼なりに彼女に対して最大限の愛情を注いでいて、一方何不自由なく生きられるはずのローズを貧乏生活に引き込もうとするジャックが正しいとも言い切れません。つまりこれは女性の自立を絶対的な善とするフェミニズムに立脚した物語であり、これをなぜ男性であるキャメロンが作ったのかはよくわからないところです。別に私はフェミニズムが悪いとは思わないのですが、一面的な主張がこの作品の奥行きを奪っているのは確か。ローズの母やキャルの思いも平等に描いて観客に考える余地を与えていれば、もっと良い映画になったと思います。
[DVD(吹替)] 7点(2009-01-02 03:39:46)(良:3票)
111.  偽りなき者 《ネタバレ》 
男女平等意識の強い北欧において、数少ない「男の本分」たる鹿狩りのイメージが度々登場したり、クララの父は長男にばかり目をかけて娘は部屋で大人しくしていればいいと考える家父長制の権化のような人物だったり、主人公が放り込まれるのは女性だけの職場だったりと、作品の至る所に男女の対立構造が見て取れます。さらに、主人公を追い込んだものは何だったのか、救ったものは何だったのかという点までを考慮すれば、本作の裏テーマはジェンダー問題ではないかと思います。。。 また、「男性から見た女性の姿」の表現も、本作の特徴となっています。疑惑を知った時の園長先生やクララの母親の反応がそれなのですが、感覚的に受け付けないと判断した時点で、いかなる弁解にも耳を貸さなくなるあの態度。主人公の言葉が耳に入ることすら汚らわしいと言わんばかりに園庭を逃げ回る園長先生の姿は滑稽でしたが、男性であれば、人生のうちで一度や二度は似たような目に遭わされたことがあるのではないでしょうか。粗野な男も悪いのですが、聞く耳を持たなくなった時の女性の頑なさには手強いものがあります。さらには、主人公が息子に会うことを徹底的に妨害する元妻の存在など、本作には、監督が女性に対して抱える恐怖心や反感というものが随所に見て取れます。。。 センセーショナルな内容である上に、上記の通り監督の個人的な女性観が全体を貫いていることから、本企画は独りよがりの内容になってしまうリスクを多分に孕んでいたと言えるのですが、その点を抜群の構成力で乗り切ったという点には感心しました。例えば事件の発端部分。【恋心を拒否されて、女の子が小さな嘘をつく→園長先生は、管理者としての責任からセラピストを呼ぶ→セラピストは、性的虐待があったという先入観から少女に対して誘導尋問を行う→専門家によるお墨付きを得たことで、架空の犯罪が事実として一人歩きをはじめる】。主人公は、事件発覚後の数日間は自宅待機を命じられており、初動段階で誤解を解消する機会を得られなかったという細かい動きまでよく考えられており、まったく隙がありません。事件の解決部分にしても、教会という舞台を選択して加害者と被害者以外のオーディエンス(神を含む)を多数配置したことで、「この環境であれば、主人公の熱弁は聞き入れられるだろう」という説得力を持たせています。
[DVD(字幕)] 8点(2013-11-10 02:42:25)(良:3票)
112.  マーキュリー・ライジング 《ネタバレ》 
国家機密をプロテクトしている暗号コード「マーキュリー」の安全性を確かめるため、市販のパズル雑誌にマーキュリーを用いたメッセージを忍ばせていたら、9歳の少年に解読されてしまった。焦ったNSAは、暗号を解読した少年を殺しにやってくる…この設定の時点で「?」です。たった一人の子供に解読できるのなら、これを解読できる人間が他にもいると考えるのが自然でしょう。なぜ、この子を殺せば暗号を守ることが出来るのか、NSAの浅はかな発想には負けてしまいます。アレック・ボールドウィンはなかなか板に付いた悪役演技を披露するものの、陰謀の根本があまりに下らないので、彼の演じるクドローという人物も薄っぺらに見えてしまいます。彼の率いる殺し屋も実にお粗末で、9歳の子供を2度も見失うわ、白昼堂々銃を振り回して防犯カメラに顔を撮られるわと、尋常ではないドン臭さを披露。殺しのプロフェッショナルという設定なのですが、まったく怖くありません。さらにこの映画の凄いところは、彼らNSAに対抗するブルース・ウィリスが、NSAの上をいくほど考えが足りない大馬鹿野郎のバカボン君だったということ。殺し屋が大量の証拠や目撃者を残しているのですから、FBI本部に少年を連れ帰って保護すれば済む話なのですが、たった一人で子供を連れ回るという最悪の手段をとってしまいます。「おいおい、なんでそんなややこしいことするんだよ」ということを重ね、どんどん自分を窮地に追い込んでいく様には呆れ果てました。そしてさらに凄いのが、中盤以降に突如現れるステイシーなる女性の意味不明ぶり。初対面であるアートへの協力を惜しまず、素性の知れないアートを簡単に家に入れて一泊させてしまうという浮世離れした行動を披露。「親切な人」の一言では片付けられないほど都合の良いヒロインぶりには驚き呆れました。。。この映画は理屈で詰めるべき部分が非常に甘く、子供を殺すという異常な行動をとらざるをえなかったクドローの政治的背景や、アートが一人で戦わざるをえないほどの巧妙な仕掛け等、設定を観客に飲みこませるためのディティールが完全に不足しています。そして、脚本がボロボロな一方で見せ場も地味で、これといって盛り上がるアクションもなく、監督やプロデューサーは一体何がしたくてこの映画を作ったのか、実に理解に苦しみます。
[DVD(字幕)] 2点(2010-11-07 21:35:04)(良:3票)
113.  ドラゴン・タトゥーの女
ハリウッド最強の脚本家と監督が組んだ作品だけあって安定感は抜群。娯楽性と芸術性の間で見事にバランスをとっています。主演2人はもちろん脇を固める俳優陣も素晴らしく、映画としての完成度は非常に高いと思います。しかし、とにかく上映時間が長い。目を見張る展開やド派手な見せ場のない本作で2時間半オーバーは厳しすぎます。。。 インディーズスタジオだったニューラインシネマズで「セブン」と「ゲーム」を成功させて以降、デヴィッド・フィンチャーはスタジオからの口出しを受けずに映画を撮れる地位を確立しましたが、それ以後に彼が撮った映画はどれも長い。確かにこの監督のヴィジュアルは完璧であり、どのシーンも美しく撮られているためにすべてを使いたくなることは理解できるのですが、同時に映画全体をどうまとめあげるのかという視点も持っていただきたいものです。同じくヴィジュアルの巨匠であり、自由に映画を撮れる立場にいるリドリー・スコット師匠などは毎回本編を短めに刈り込み、DVD化の際にディレクターズ版を発表することが恒例となっています。リドリー・スコットは”適正な上映時間”というものを常に意識しており、時には個々の場面の重要性よりも映画全体のテンポを優先させるという判断を下しているのです。フィンチャーも、早くこの域に達して欲しいものです。
[DVD(吹替)] 6点(2012-06-23 02:16:33)(良:3票)
114.  エクスペンダブルズ2
矛盾もあれば中弛みもある、映画としての完成度は7点くらいかもしれませんが、ある特定の人種にとっては『アラビアのロレンス』クラスの大傑作に仕上がっています。もちろん私もドンピシャの世代であり、本作には数年ぶりの10点を付けさせていただきました。このキャストを見てグッとくるものを感じた方には是非とも映画館に直行していただきたい作品です。絶対に期待は裏切りませんから。。。 本作は基本的に前作の路線を引き継いでいるのですが、そのパワーアップの加減は『T1』→『T2』をも超える程であり、前作で感じたモヤモヤ(敵が弱すぎる、大物がほとんど動いていない)は解消されてお釣りがきます。今回の悪役はなんとヴァンダム。「俺が俺が」のアクション俳優の中でもとりわけ我の強いヴァンダムが悪役を引き受けたというだけでも驚きですが、その上さらにスタローンとヴァンダムがサシで勝負するという究極のカードまでが準備されています。驚きのカードはそれだけではありません。ピンチに陥るとチャック・ノリスやシュワルツェネッガーがフラっと助けに現れ、クライマックスではスタ・シュワ・ウィリスが横一戦に並んでマシンガンを乱射し、ノリスがその援護を買って出るという夢のような見せ場が待っています。シュワとウィリスがお互いの名台詞を交換したり、ノリスが自分についての噂話を茶化してみたりと遊びも利いており、笑って興奮して大変でした。。。 そんなレジェンド世代の頑張りの一方で、現役世代も負けてはいません。クートゥアとクルーズはコメディリリーフとしてエンターテイメントの幅を広げているし、ラングレンもMIT卒という自身の経歴をネタにして笑いをとります。元アスリートのステイサムは惚れ惚れとする程の美しいアクションを披露しており、彼とスコット・アドキンスによるナイフ戦は、大御所によるファンサービスの意味合いが強い本作において、数少ないガチンコの見せ場となっています。。。 とにかく本作はアクションバカにとっては至福の作品であり、この企画でやるべきことは完璧にやりきっています。もし、今回の大ヒットを受けて『3』が製作されるとなれば、それこそイーストウッドを引っ張り出すくらいのサプライズが必要になるでしょう。
[映画館(字幕)] 10点(2012-10-21 00:20:43)(良:3票)
115.  アイアンマン2 《ネタバレ》 
序盤は最高でした。無許可の強力兵器が好き勝手に飛び回っているのでは、国はその規制に乗り出すはず。さらに、ライバル企業や軍事独裁政権はこれと同等のものを作ろうとし、もし自前で作れなければテクノロジーを奪おうとするはず。そんな、「もしアイアンマンが登場したら、世界はどう反応するか?」を突き詰めた視点はよく考えられています。マスクによって匿名性を維持していた従来のヒーローとは異なり、自分はアイアンマンであると公表しているトニー・スタークは公聴会に召喚されますが、ここでの振る舞いもスタークらしく、またスタークの不遜な態度をマスコミや市民が拍手で迎える様からは、アイアンマンがみんなのヒーローとして認識されていることが伝わります。こうした、第二作の世界観を伝える場面をきちんと入れてきている配慮は評価できます。また、モナコにおけるウィップラッシュ登場シーンも強烈でした。只者ではないオーラを漂わせて表舞台に乱入するや、F-1マシーンを真っ二つに切り裂くという尋常ではない力技を披露。悪役登場場面にはインパクトが必要ですが、この登場は百点満点だったと思います。さらに、携帯式アイアンスーツという意表を突いたアイアンマン登場にも大興奮。逃げ惑っていた観客達が、アイアンマンが登場するや身を乗り出して彼を見ようとする細かい演出も最高です。しかし、モナコの場面が終わると映画は急激に失速します。複数のドラマが詰め込まれているものの、そのどれもが描き込みが不足していて中途半端。スタークの病には苦悩や絶望感が少ないため「どうせ治療法が見つかるのだろう」という妙な安心感が漂っているし、ウィップラッシュの狂い方も「俺の鳥」だけでは全然足りていません。突然社長に就任したペッパーの戸惑いや、親友を裏切ったローディの苦悩、ブラックウィドウの謎の美女としての煽り、どれもが不足しています。しかし、終盤になると映画は再び息を吹き返します。ザクキャノンを思わせるハマーロボ、そしてフルアーマーガンダムを思わせるウォーマシンら、ハマー社製の無骨さ!そしてラスボスはヒートロッドを扱うグフ!これ考えた奴は絶対ガンプラ好きですよ。これらハマー社製を迎え撃つは、新エネルギーによってパワーを増したアイアンマンMk-6。この上さらに、スターク社製のMk-6とハマー社製のウォーマシンとの共闘を見せられたのでは、ロボット魂に火を点けられまくりです。
[映画館(吹替)] 7点(2010-07-08 08:41:19)(良:3票)
116.  ワイルド・スピード/EURO MISSION
アクション映画史上に残る傑作だった前作を越えるべく本作も特盛状態なのですが、老舗アクションシリーズの宿命か、本作は盛りすぎの域に達しており、お話も見せ場もインフレ状態となっています。。。 前作からのヴィン・ディーゼル、ドウェイン・ジョンソンに加え、ミシェル・ロドリゲスの復活に、女性格闘家ジーナ・カラーノ、『ザ・レイド』のジョー・タスリムの新規参戦と、本作ではアクションの出来る人間が随所に配置されているのですが、まずこれがマズかった。いろんな人がいろんな場所で戦っていて、話が分散しているのです。このことがアクション映画に必要な求心力を奪う原因となっているし、さらには物語をムダにややこしくしています。本作の観客は頭空っぽにして楽しめるアクション映画を観に来ているのだから、ムダに頭を使わせる話にすべきではありませんでした。。。 さらに、アクションも懲り過ぎ、やりすぎです。確かに前作もやりすぎではありましたが、あちらはシンプルなカーチェイスをやたらド派手にやったもので、第一作から続く『ワイルド・スピード』のDNAは確かに継承されていました。一方本作は、戦車を走らせたり輸送機を落としたりと、カーチェイスに付随する破壊ではなく、破壊そのものが見せ場となっており、前作までとはかなり毛色の違うアクションとなっています。もはや『ワイルド・スピード』の新作ではなく『トリプルX3』だと考えた方がしっくり来るほどであり、『ダイ・ハード』や『リーサル・ウェポン』同様、シリーズを重ねる毎にアイデンティティを失っていくというアクション映画の典型的な衰退サイクルに入ったように見受けられます。また、カーチェイス以外の要素が加わったことで見せ場は複雑になり、さらにはカット割の異常な速さとも相まって、目の前で何が起こっているのかよく分からないという状況にも陥っています。本作の方向性は、今一度見直すべきだと思います。。。 以上、本編には少なからず不満があったのですが、それでもラスト1分には大興奮させられました。『ワイルド・スピード』シリーズは我々の想像を越えた領域を目指しているのではないかという、そんな熱い期待感を抱かせるほどのインパクト。今回は不十分な出来でしたが、これはこれ。次回も絶対観ます!
[映画館(字幕)] 6点(2013-07-06 23:20:18)(良:3票)
117.  トム・ヤム・クン!
さらわれた象を探して悪党を倒すという狂った話でありながら、これが実に当たり前のことのようにマジメに描かれている辺り、タイのみなさんの象への愛情と愛着が感じられました。象をいじめるやつは死ねばいいんだというネイチャーへの熱い思いが日本人の私にも十分伝わり、野生動物を食材としか思わない中国人を倒しまくる場面には大興奮。敵に対する容赦のなさではスティーブン・セガールを超えているトニー・ジャーの魅力がよく出ていました。こういった単刀直入な展開とカンフー(この映画ではムエタイですが)の相性は抜群にいいですね。Xスポーツ軍団にはじまり、カンフー、カポエイラ、剣術、プロレス、オカマというマンガのような異種格闘技バトルはもう最高。トニー・ジャーの圧倒的な身体能力に頼りきった「マッハ!」よりさらに進化し、夢のような対戦カードを準備。それぞれの敵が十分にキャラ立ちしているのがうまいところで、また各自の特性を活かしたアクション演出にも目を見張ります。スタントだけでなく撮影や編集も相当に高度でセンスがあり、格闘バトルをここまでうまく撮るのはハリウッドでもちょっと難しいレベル。絶賛された「007/カジノロワイヤル」冒頭の肉体アクションよりも、こちらの対Xスポーツ戦の方が良くできていたと思います。とまぁカンフー映画としては大満足なのですが、マッハで成功した監督が色気を出そうとしたために映画のバランスが悪くなっているのが残念。前述したようにカンフー映画はシンプルであればあるほど面白いのですが、本作では警察の汚職やマフィアの権力争いなどの不要な展開が盛り込まれてしまっています。またそれが面白ければいいのですが、あまりにもシナリオが下手くそすぎて意味がよくわからないのが致命的。タイ人警官やタイ人コールガールが味方として登場するものの(良い人はたいていタイ人)、結局何の役にも立たないのではいない方がマシ。特にコールガールなどは登場の仕方はいかにも重要なヒロインという感じだったのに、その後何の役割も果たさず、トニー・ジャーを含む主要登場人物との絡みもなく、画面にもほとんど登場しないという素敵な状態。あの女優さんに撮影の途中で何かあったのかなと、こちらが心配してしまうほどでした。
[DVD(字幕)] 7点(2007-03-31 17:41:53)(笑:1票) (良:2票)
118.  ミッション:8ミニッツ 《ネタバレ》 
公開時に劇場で鑑賞したものの、お恥ずかしいことに話を理解できなかったのでレビューを書くことを断念。それから2年、この作品の存在を思い出してブルーレイを手に取ったのですが、2度目の鑑賞で、ようやく映画の内容を理解することができました。。。 本作のキーとなるのは、原題にもなっている「ソースコード」と呼ばれるプログラム。これは、死者の脳を利用して並行世界へとアクセスするためのプログラムなのですが、生者では当該並行世界への旅行ができないことから、植物状態にあり、死者に限りなく近い身となっている兵士が、このプログラムの一部として利用されています。この基本設定を押さえておくことが本作の理解への第一歩となるのですが、初見時にはバーチャルリアリティの変種だと勘違いしたために、私は途中でお話を見失ってしまったようです。。。 中盤、主人公は8分後のテロ事件を知る自分の行動によって、列車に乗り合わせた人々を救うことができることに気付きます。彼はそのことをプロジェクトの責任者であるラトリッジ博士に報告するのですが、こちらの世界の住人である博士では、そのことの価値を共有することができません。「並行世界で人助けをしたところで、俺らの世界には何の影響もないんだよ。そんなことより、さっさと犯人探しをしろよ」。こちらの世界で生きる者にとっては当然の意見です。しかし、こちらの世界では植物状態でプログラムの一部に過ぎない身であるが、あちらの世界では人間として生きることができる主人公にとっては、あちらの世界を救うということが非常に重要となってきます。それがクライマックスの決断へと繋がるのです。。。 以上の理解にまで漕ぎつければ、本作のテーマは、監督の前作『月に囚われた男』と共通していることが分かります。システムの一部として非人道的な形で生かされていた男が、その呪縛から解き放たれるべく挑む戦い。相変わらず70年代チックなテーマを掲げているのですが、本作についてはその戦いが報われる美しいエンディングを準備したことで、従来のどのSF映画とも似ていない、独自の作品となりえています。なかなかうまいまとめ方だと思いました。。。 本作の欠点は、ラトリッジ博士を完全な悪人にしてしまったということです。博士を悪人にしなければ、より多面的に楽しめる作品となっただけに、その点だけは惜しいと感じました。
[ブルーレイ(吹替)] 7点(2014-01-03 01:50:59)(良:2票)
119.  キャビン 《ネタバレ》 
個人的に、ホラー映画の進化は『悪魔のいけにえ』で終わっていて、以降はシチュエーションを変えながら同じパターンを繰り返しているのみだと感じています。ホラーの作り手達も同様のことを考えているのか、『スクリーム』を皮切りに、『スリザー』や『フィースト』といった、ホラー映画あるあるを柱としたホラー映画は少なからず製作されています。本作もそんな作品のひとつなのですが、世界最強のオタク・ジョス・ウェドンが脚本を書き、それを『クローバーフィールド』のドリュー・ゴダードが監督したとなれば、ただの映画ではないだろうとの期待をさせられます。。。 が、しかし、内容は驚く程グダグダでした。被害者と仕掛人を交互に映し出すためスリルが持続しないし、さらには過去のホラー映画を上回るほどのインパクトある殺戮場面も作り出せておらず、正直言って眠かったです。「これはホラーのパロディですから」と言って作り手側が真剣勝負から逃げているような雰囲気さえ感じて、少々不快でもありました。「これでいいのか、ウェドンさんよぉ」と、心の中で何度も何度も叫びましたよ。。。 が、しかし、舞台が地下の実験施設に移り、話の核心部分に触れた辺りから、映画は異常な勢いで疾走をはじめます。『モンスターズ・インク』実写グログロ版、本当に最高でした。中盤をグダグダにしていたのも、このクライマックスを盛り上げるためだったのねと非常に納得。「疑ってすまんかった、ウェドンさん」と、心の中で何度も何度も謝罪しましたよ。モンスターパニックでお腹いっぱいになった後に、ダメ押しのシガニー・ウィーバー投入。この畳み掛け方は非常に素晴らしいと感じました。さすがはジョス・ウェドン、オタク心のくすぐり方をよくご存知で。 
[ブルーレイ(吹替)] 7点(2013-11-12 01:31:20)(良:2票)
120.  神様メール
アイデアの奇抜さや、そのアイデアを観客に伝えるためのストーリーの整理の仕方など、この監督の手腕には恐れ入るのですが、『ミスター・ノーバディ』に続き、私との相性は良くありませんでした。 この監督はアイデアで引っ張る一発ネタ的な作風である割りには上映時間が長めだし、極端な設定から人類普遍のドラマを導き出すのかと思いきや、その核にはそれほど訴求力のあるメッセージがなかったりと、結局技巧を楽しんでいるだけという印象がしてしまいます。 比較すべき相手かどうか分かりませんが、例えばチャーリー・カウフマンのように、物凄く奇抜な設定やキャラクターを選択しながらも、見る者の共感を呼ぶような着地点を見出せる作風の方が、より万人受けするのではないでしょうか。
[インターネット(吹替)] 6点(2017-10-31 18:40:12)(良:2票)

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