141. 映画ドラえもん のび太の宝島
《ネタバレ》 初代アニメ版ドラえもんを盛大にリスペクトした「奇跡の島」に続いて、二代目アニメ版、所謂「大山ドラ」をリスペクトした内容となっている本作。 とはいえ「野沢雅子が主役級のキャラとして復帰」というほどの衝撃は無く、リスペクト度合いとしては低めに感じられましたね。 一応、キャラデザには「大山ドラ」調のテイストも取り入れられており、特に主人公のび太とドラえもんの造形が前作までとは異なっている為 (せっかく2006年から原作通りのキャラデザになったのに……) という抵抗も大きかったのですが、脚本や声優陣はキチンと「現行アニメ版」の空気を保持している為、安心して観賞する事が出来ました。 ちょっとメタ的な分析をすれば 「フロックは新世代ファンの象徴」 「ジョンは旧世代ファンの象徴」 であり、この映画はそんな両者の和解を描いている……なんて事も言えそうなのですが、そんな事よりも何よりも、純粋に娯楽映画として「面白い!」と言える作品であった事が、嬉しかったですね。 上述の通り、脚本や声優陣の力も大きかったのですが、何と言っても、これが映画デビュー作である今井監督の演出が素晴らしい! 特に、クライマックスの流れは、本当に手に汗握るものがありましたね。 ドラえもんが地球を守る為に奮闘し、スーパー手袋やタケコプターが壊れていく中でも、身一つで頑張り続け、とうとう意識を失う。 それを受けて、のび太が怯える我が身を勇気でもって抑え込み、危険を顧みず奈落の底に飛び込んでみせる。 どちらも非常に熱い演出であり、普段のテレビ放送回にて今井監督が見せている切れ味を、映画という舞台でも如何なく発揮してくれた事が、心底嬉しかったです。 単なる「可愛いマスコット枠」かと思われたミニドラが、のび太達を救ってみせる際の、絶望の中に光を差し込ませる演出も良いんですよね~ 船で旅をする魅力、皆で外泊する魅力、美味しそうな食事シーンの魅力と「ドラえもん映画なら、ここは押さえておいて欲しい」と思える要素が、きちんと揃っている辺りも良い。 挿入歌「ここにいないあなたへ」の使い方も上手くて、その曲が流れる親子の和解場面では、涙で画面が滲んでしまった程です。 そんな具合に、褒めだすといくらでも褒められる映画なのですが……欠点というか、気になる部分も多かったですね。 まず、主題歌の「ドラえもん」に関しては、ドラえもんという作品そのものをテーマにした曲である為「映画宝島の主題歌」という感じがせず、ラストに流れても今一つピンと来なかった事。 名曲「夢をかなえてドラえもん」が流れなかった事。 「ここは俺達に任せて、先に行け」という場面が二つ存在し、最初のジャイアンとスネ夫の方は凄く熱くなれたのに、二回目になるマリアさん達の場面では(それ、さっき同じ展開やったばっかりじゃん)と思えてしまい、白けてしまった事。 そして、静香ちゃんとセーラが瓜二つである理由について、説明が為されていない事が挙げられるでしょうか。 最後の点に関しては、過去作の「奇跡の島」において「のび太とダッケが瓜二つである理由」を、タイムマシンを絡めて劇的に説明してみせた前例があるだけに、実にもどかしい。 恐らく「人のしあわせを願い、人の不幸を悲しむことのできる人」という劇中の台詞からすると、フロックもセーラもジョンも、のび太と静香ちゃんの子孫なんだよって事だとは思うんですが、そこはもっと断定的に表現して欲しかったです。 この描写だと、観賞中に(これって多分、のび太達の子孫って事だよな……いや、深読みし過ぎか?)とアレコレ考えてしまい、せっかく感動しているのに、気が散る形になっているんですよね。 ここでハッキリと「のび太とフロック達は血が繋がっている」と確信させてくれる描写さえあれば、思う存分映画に没頭して、より感動出来ていた気がします。 総評としては、前作の南極が「完成度の高い傑作」であったのとは対照的に「欠点も目立つけど、長所がそれを補って余りある傑作」であるように思えましたね。 ラストに金貨を手に取り、冒険の日々を思い出して笑顔になるのび太達という「本当の宝物は、金貨じゃなくて、そこに込められた思い出だった」と示す終わり方も、凄く良かったです。 ……そして、来年は八鍬監督による「異説クラブメンバーズバッジ」を題材にしたオリジナル映画であるらしく、こちらにも大いに期待! 予告映像からすると、再びキャラデザも原作準拠な形に戻るようですし、心から楽しみに待ちたいと思います。 [映画館(邦画)] 8点(2018-03-03 12:33:13)(良:1票) |
142. ビバリーヒルズ・コップ2
《ネタバレ》 前作に比べると、よりエディ・マーフィらしい映画になってる気がしますね。 特に「ニトロを届けに来た」と受付の女性を騙し、目当ての情報を引き出す場面なんかは、それが顕著。 爆発シーンも派手になってるし、バズーカで車を撃ったりもするしで、笑いとアクション要素に関しては「1よりパワーアップした続編」だと、胸を張って言えると思います。 ただ、自分が1に感じた「意外とシリアスで、ハードボイルドな魅力」は薄れてしまったように思えて……そこが、ちょっと残念ですね。 前作のホテル以上に「宿泊先の確保の仕方」が傍迷惑であり、豪邸の持ち主である金持ち夫婦が可哀想に思えちゃうのも、スッキリしない感じ。 元々、主人公のアクセルって「模範的な刑事とは言えない、悪党に近い人物」ではあるんだけど、本作に関しては「やり過ぎ」だったんじゃないかと。 とはいえ、欠点らしい欠点なんてそのくらいだし、基本的には「楽しい映画」でしたね。 ブリジット・ニールセン演じるカーラは「理想的な悪役美女」って感じで、男心を擽る魅力がありましたし。 アクセルの同僚であるジェフリーが、上司のトッド警部に成り切って電話に出る場面なんかも、コント的な魅力があって好き。 そして何と言っても、1で絆を育んだ「ビバリーヒルズの警官」達との友情描写が、本当に良かったです。 1のラストで友達になった二人と、2では仲良しトリオとして一緒に行動してるってだけでも、嬉しくなっちゃうんですよね。 これはシリーズ物ならでは、続編映画ならではの魅力であり、映画一本だけでは決して生み出せない味わいがあると思います。 ローズウッドの部屋で会話する三人とか、アクセルの嘘に呆れて他二人が同時にサングラス掛ける場面とかも、凄く好き。 ある意味では、続編映画というよりも、同窓会映画って感じですね。 「1で生まれた友情を、再び確認する映画」「懐かしいアイツらと再会して、また楽しく盛り上がる映画」って考えても、本作は充分に成功してると思います。 (こいつら、仲良いなぁ……)って、主人公達を微笑ましく見守るような気持ちで、エンドロールまでの時間を楽しむ事が出来ました。 [ブルーレイ(吹替)] 7点(2022-04-29 15:09:35)(良:1票) |
143. ドメスティック・フィアー
《ネタバレ》 実に豪華な俳優陣。 メイン三人の「濃い顔」を見てるだけでもワクワクしちゃいましたね。 今となってはコメディ映画のイメージが強いヴィンス・ヴォーンが、悪人を演じているのも新鮮。 当時は「サイコ」(1998年)の印象が色濃く残っていたがゆえの配役かとも思えますが、元々彼って「エリートな気品」「どこか不気味で冷たい顔立ち」を備え持ってる人でもありますし、本作についても適役だったと思います。 スティーヴ・ブシェミも胡散臭くて、妙に憎めない「殺され役」を演じているし、ジョン・トラヴォルタ演じる「頼れるパパさん」っぷりも、文句無し。 子役のマット・オリアリーも可愛らしく、守ってあげたいと思えるような息子のダニーを好演してましたね。 こういったストーリーの場合、演じる「子供」の魅力如何で評価が変わってきますし、そこは文句無しに合格だったんじゃないかと。 BGMも雰囲気があって良かったし、89分と短く纏まってるのも好印象でした。 ……ただ、脚本と演出は凡庸としか思えず、褒めるのが難しいです。 一応良い所もあって「ダニーは不良少年なので、周りが中々『殺人の目撃』を信じてくれない」って展開には説得力ありましたし、そんな中で、真っ先に信じてくれたのが父親のフランクっていうのも、グッと来るものはあったんですけどね。 父子の逃亡劇になるのかと思いきや、親権争いの裁判になったりするのも、意外な展開ではありました。 でも正直、それ以上に粗が目についちゃって…… 「脚本と演出の不備を、演者の力で誤魔化してるだけ」って印象は拭えないです。 そもそもダニーから「人殺しが同じ家に住んでる」「しかもそれが、義理の父である」っていう恐怖や、緊迫感が伝わってこないのが致命的。 これに関しては、いくら子役が怖がった演技をしても「何も対抗手段を取らず義父の言いなりになってるだけのキャラクター」「だから追い詰められてる感じがしないし、恐怖が窺えない」って形になってる訳だから、脚本の責任だと思います。 フランクの現在の妻であるダイアンの影が薄いのや、ダニーの母が妊娠したのを活かせてない辺りも不満。 恐らくは「フランクの孤立感を高める」「ダニーの疎外感を強める」為の要素だったんでしょうけど、ダイアンは途中から出てこなくなるし、妊娠についても言及されなくなっちゃいますからね(一応、最後に流産したのが示唆されるけど、後味が悪くなっただけ) この手の「必要無い人物、要素が多い脚本」って、どうしても評価が低くなっちゃいます。 極め付けは終盤における「ライター自爆着火」の間抜けさで、これには本当ガッカリしちゃいました。 ダニーの母が夫を疑うキッカケにしても「夫の衣類からガソリンの匂いがするのに気付き、彼が犯人と疑う」って流れでも成立したと思うし、もっと脚本を煮詰めて欲しかったですね。 たとえシンプルなストーリーでも、細部を丁寧に作れば良作、あるいは傑作と呼べる品に仕上がったのでしょうが…… 残念ながら本作は、それに当てはまらない例に思えました。 [ブルーレイ(吹替)] 5点(2021-09-22 21:14:47)(良:1票) |
144. ウォーター・ホース
《ネタバレ》 ネッシー映画って、何故かネッシーを「人を襲い、食い殺す化け物」として描いた品が多いんですよね。 「怒りの湖底怪獣/ネッシーの大逆襲」(1982年)然り「ジュラシック・レイク」(2007年)も、また然り。 にも拘わらず、本作ではネッシーを「人間の友達」として描いているんだから、それだけでもう、嬉しくなっちゃいます。 数少ないネッシー映画の中で、最も有名なのが本作だと思うし、自分としても一番好きなネッシー映画となりそう。 そんな訳で「これぞネッシー映画の決定版」と大いに褒めたいところなんですけど、ここで思わぬ落とし穴。 実は本作における「ネッシー」には「クルーソー」という独自の名前が付けられており、それがちょっとこう……微妙にピントずれちゃってる感じなんですよね。 観ている側としては「ネッシー」と思ってるのに、劇中人物達は「クルーソー」あるいは「モンスター」と呼んでいる。 これに関しては、多少不自然になってもアンガス少年が「ネッシー」と名付けて、それが何時の間にか世間にも流布してしまったとか、そういう流れにした方が良かったのでは? なんて、つい思っちゃいました。 元々あったウォーター・ホース伝説と組み合わせ「実はネッシーの正体とは、ウォーター・ホースなのである」って展開にしたのは悪くないんですけど、どうにも取っ散らかり過ぎなんですよね。 作中で色んな呼び名、色んな属性が当てはめられてるせいで、愛着が湧き難くなってしまった気がします。 あと、クルーソーと別れる場面にて、アンガス少年に「お前は一番の友達だよ」と言わせるなら、もっと事前に両者の交流を描いて欲しかったです。 クルーソーとの絆に関しては、贔屓目に見ても「可愛がってたペット」くらいにしか思えなかったし「場面単体で考えたら悪くないんだけど、伏線が足りないから感動出来ない」って形になってるのが、本当に残念。 戦死した父の存在をドラマに絡め「もう二度と会えない存在である父とクルーソーを、それでも愛し続ける主人公」「クルーソーとの別れによって、ようやく主人公は父とも本当のお別れが出来た」という描き方にしたのも、個人的には微妙というか…… ちゃんとクルーソー(ネッシー)との絆一本で映画にして欲しかったというのが、正直な気持ちです。 とはいえ、総合的に考えると好きな映画だし、良かったと思える部分の方が、ずっと多かったですね。 冒頭にて、色んなネッシー写真で目にした「湖畔の古城」が姿を見せる場面だけでもグッと来ちゃったし、クルーソーの頭には角があるしで、ネッシー好きとしては、それだけでも満足。 写真を偽造している連中の、すぐ傍で本物が泳いでる場面なんかも、皮肉なユーモアがあって良い。 「ネス湖に怪物なんていない」と主張する、世間の代表とも言うべき母親の前に、クルーソーが姿を現す場面をクライマックスに据えてるのも、もう大正解。 ネッシー好きにとっての悲願とは「ネッシーを否定する人物に、本物を見せてやる事」だと思うし、それを映画の中で叶えてくれるんだから、本当に嬉しかったです。 ネッシーに乗ってネス湖を泳ぐという、幻想的な場面も素晴らしいですね。 これまで自分が観てきた映画の中でも、最も活き活きとして美しいネッシーが、ネス湖を縦横無尽に泳ぎ回るという、その姿を拝ませてもらえただけでも(良いもん見たなぁ……)って、しみじみ感じられました。 2023年現在、自分の口から「ネッシーは実在する」と言えば、それは嘘になってしまうと思います。 それと同様に「この映画は面白い」って言ってしまうと、それも嘘になっちゃいそうなんですが…… 夢の有る映画である事は、間違い無いと思います。 [DVD(吹替)] 7点(2023-08-29 12:13:13)(良:1票) |
145. 3人のエンジェル
《ネタバレ》 「男が遊びで女装するのは女装趣味」 「女性への変身願望が高じてチン切り手術をするのが性転換者」 「ファッションにこだわってハデに着飾るゲイがドラッグ・クイーン」 「人生を楽しめない女装坊やは、ドレスを着ただけのガキよ」 という作中の台詞が、とても興味深い。 第三者からすると、ついつい「ゲイ」と一括りにしてしまいそうな中にも、様々なタイプがいて、それぞれ拘りを持って生きている事が窺えましたね。 本作はキャスティングだけでも「この人達が女装するなんて、それだけで面白いに決まってるじゃん!」と予見させるものがあり、この辺りは元ネタであろう「プリシラ」よりも上手かったように思えます。 作中にて、ウェズリー・スナイプス演じるノグジーマを、か弱い女性と思って絡んでくる男共には(なんて命知らずなんだ……)と逆に心配になってしまうし、案の定あっさり撃退されちゃう姿には(当たり前だろ!)とツッコミつつも、笑いを抑え切れなかったです。 パトリック・スウェイジ演じるヴィーダが勢い良くドアを蹴り開けて、夫婦喧嘩に乱入し、妻を殴る暴力夫を殴り飛ばして家から追い出す展開なんかも、実に痛快。 この辺りは、彼らがアクション映画で活躍する姿を知っているからこその面白さなのでしょうけど、初見の人でも「えっ、こんなに強かったんだ!」という衝撃を味わえて、楽しめるのではないかなと思えます。 ちょっと気になったのが「メル・ギブソンのお尻はキュートだわ」という台詞。 「ハート・オブ・ウーマン」(2000年)でも彼は「可愛いお尻ちゃん」と評されていたのですが、あれはこの作品を踏まえてのネタだったのか、それとも米国ではメル・ギブソンのお尻がキュートというのは共通認識なのか? と、そんな疑問が浮かんできて、若干集中が乱れてしまいましたね。 また、作中のドラッグ・クィーンが三人とも「喉ボトケ」が無ければ女性と見紛うような美貌という扱いなのも、戸惑うものがありました。 女装コンテストで地区優勝しているのだから、作中世界の認識では美女と分かっていても(どう見ても男じゃん……)とノリ切れない感じ。 今となっては(それも一種のギャグなんだ)と納得出来ますが、初見では違和感の方が大きかったです。 キャットウーマンやワンダーウーマンといった、有名なアメコミヒロインの名前が出てくるのはテンションが上がりましたし、終盤にて描かれるボビー・レイとボビー・リーの恋模様なんかも、実に微笑ましくて良かったですね。 心を通わせ合った女性と別れる事になったヴィーダが「愛してるわ」と言われて「私もよ」と返すのではなく「あなたに愛されて、本当に幸せだわ」と応えるのも、何だか凄く切ない。 もしも、ヴィーダが同性愛者ではなく異性愛者に生まれていたら、二人は「親友」ではなく「恋人」という関係になれたのではないかなと、ついつい考えてしまいました。 仲間から「自分の性を隠すために女装してる」と指摘され、ショックを受けていたヴィーダ。 そんな彼女が、男でも女でもない「天使」だと言われ、嬉しそうな笑顔になる姿には、本当に爽やかな気分を味わえましたね。 ラストにて、ハリウッドの女装コンテストに優勝してジュリー・ニューマーに祝福されるのも、ヴィーダの方が良かったんじゃないかと思えたのですが、この辺りは「第三の天使」とも言うべきチチの成長を示す為、仕方ないところなのでしょうか。 涙を流すような感動とも一味違う、笑顔になれるタイプの感動を味わえる。 そんな、魅惑的な映画でありました。 [DVD(字幕)] 7点(2016-10-04 05:43:42)(良:1票) |
146. スパイダーウィックの謎
《ネタバレ》 子供が活躍する映画は好きなはずですが、今一つノリ切れませんでした。 ファンタジーでありながらスケールが小さくて「籠城物」の要素がある辺りも良かったとは思うのですが、どうも心に響いてこない。 単純に演出やら何やらが好みに合わなかっただけかも知れませんが、こういう「好きな映画のはずなのに何故か楽しめなかった」パターンって、非常にモヤモヤしますね。 基本的には「好き」に分類される為、欠点を論うような真似をすれば罪悪感が生まれるし、かといって積極的に褒めるのも気が咎めるという、何ともコメントに困る状況。 とはいえ「理由は良く分からないけど微妙だった」で済ますのも不誠実でしょうから、以下は自分なりに感じた長所と短所を。 冒頭で姉がフェンシングをやっている事や、窓に塩が付いている事が実に分かり易い伏線となっており、それらがキチンと回収される点など、脚本はしっかりしていたと思います。 鳥好きのホグスクィールが「美味しいところを頂いていく」オチも良かったですね。 昆虫のアップや粘液の描写なども一応ありましたが、嫌悪感を抱くような描き方でなかった辺りも、嬉しいポイント。 で、気になる点としては……両親の離婚問題についてが挙げられるでしょうか。 最終的に主人公の少年は「母親と一緒に暮らす」という結論を下し、そこは中々感動的に仕上がっていたけれど、これって「父親が他に女を作っていた」と知った上での選択なので、作中の事件に密接に関係していないのですよね。 別に世界の危機を救うような体験をしていなかったとしても、そりゃあ母親の方を選ぶのが当然だよなという感じで、ちょっとエピソード間の繋がりが弱かったんじゃないかと。 ここで(今回の事件を通じて母子の絆が深まったのだ。だからこそ主人公は父親ではなく母親の方を選んだ)と感じさせるものがあれば、作品全体の印象も変わっていた気がします。 正直、退屈に感じた時間の方が長かったりもしたのですが「花の中から妖精のスプライトが飛び立つシーン」や「魔物が見えるようになるリングを手にし、フェンシングの剣で戦う女の子のシーン」など、印象的な場面も幾つかありましたね。 その為、それなりに(観て良かったな……)と思えた一品でした。 [DVD(吹替)] 5点(2017-03-29 05:17:12)(良:1票) |
147. ミリオンダラー・アーム
《ネタバレ》 ストーリーの概要を知った段階で「これは好みの映画のはず!」と予測していたのですが、それが当たっていて嬉しかったですね。 人物間の絆が育まれるまでの過程にて、さほど劇的なイベントは起こらない点。 そして、目標が「プロで活躍してみせる事」ではなく「プロになる事」に設定されている点など、実話ネタゆえの物足りなさのようなものは感じましたが、それ以上に胸をときめかされるものが多かったです。 涙腺を刺激された場面も幾つかあって、特に印象深いのは、父と子の別れの件。 母国インドを離れ、アメリカで野球に挑戦すると息子に告げられた父親が「お前なら、きっとやれる」と、強く抱き締めて送り出してあげる。 当初は息子の野球挑戦に反対していた、頑固者の親父さんとして描かれていただけに、この展開には「えっ、認めてくれるの!?」という意外性も内包されていて、凄く良かったと思います。 それは裏を返せば「何故、急に息子の事を認めて応援してくれたのか、描写が不足している」とも言えるのですが、少なくとも自分は全然気になりませんでした。 それまでは父親の言いなりになって生きてきた、内気な息子であった事が示唆されていただけに、はっきりと目を見て意思表示してくれた姿が、親父さんとしては嬉しかったのだろうな、と推測します。 上述のシーンが凄く良かったもので、そこが本作のクライマックスかなと思っていたら、それを裏切ってくれた辺りも素敵。 ラストのプロテストの場面。 「君達が成功する事は、インドの子供達に夢を与える事に繋がる」という通訳の言葉には、本当に感動させられましたね。 それによって勇気を与えられ、見事にプロ選手になってみせた二人。 そしてエンディングでは、彼らを真似して野球に興じるインドの子供達が描かれるとあっては、もう脱帽。大満足です。 良い映画だったと、確信を持って言える一品でした。 [DVD(吹替)] 8点(2016-06-19 10:05:43)(良:1票) |
148. フレフレ少女
《ネタバレ》 文学少女が高校球児に恋をして、少しでも彼に近付く為に応援団に入る。 そんな導入部を経て、以降は「部活物」映画お約束の「挫折→修行→成功」の流れを辿ってくれるという、安心して楽しめる一品でしたね。 団長に任命されるまでの流れが強引だとか、ヒロインが恋した球児が転校までするのは不自然だとか、物語としての欠点と呼べそうな部分は沢山ある。 「GWに合宿やっただけで一人前の応援団になれる」「彼女達が応援したら、卓球部も柔道部も将棋部も、関東大会で優勝出来る」など、ツッコみを入れたくなる部分も沢山ある。 それでも、上述の通り王道の魅力をしっかりなぞる形になっているので、細部に粗があったとしても、全体としては綺麗に纏まっていたんじゃないかな、と思えました。 特に、序盤にて「即席応援団」のダメダメっぷりを見せ付けられた後、彼らが「立派な応援団」に成長した姿を見せてくれる展開とか(ベタだけど、やっぱり良いなぁ……)って、しみじみ感じちゃうんですよね。 ヒロインが一人前の「団長」になった事を「眼鏡を外す」という形で、視覚的に分かり易く表現している辺りも良い。 合宿にて、最初は練習がキツくて食事も喉を通らなかったのに、後半には皆して食欲に満ちていて、次々に皿を空にしちゃう演出なんかも、気持ち良いものがありました。 中でも一番好きなのが、夜明け前の海を、皆で座って眺める場面。 特に気の利いた台詞がある訳ではなく、本当に黙って海を見つめているだけなんだけど、何となく「青春」って感じがして、心に残るものがあるんですよね。 その直前にある「応援団を続ける意味」について皆が言い争う場面も、演技は稚拙かも知れないけど、熱意は確実に伝わってくる。 その不器用さ、未熟さが、泥臭い魅力を生み出しているように思えました。 「野球部は、応援団よりもっと厳しい練習をしている」という一言により、その野球部が快進撃を繰り広げる様を、素直に応援出来た事も大きかったですね。 この一言が有るか無しかによって、かなり印象が変わっていた気がします。 それだけに、最後の逆転サヨナラ3ランの場面は、もっと「野球物」としての魅力も感じられる演出に出来ないものかという不満もあるんですが……映画としては、その後の「応援団と野球部の和解」「エール交換」をクライマックスとした作りである為、仕方の無いところでしょうが。 肝心の応援シーンにて、ヒロインの声が思いっきり裏返っているのは「ちょっと無理し過ぎていて、痛々しい」と感じられたし、最後に学ランからセーラー服に戻って終わりというのも、拍子抜けな結末ではあります。 でも「軽い」「明るい」「爽やか」な青春映画としては、このくらいの、粗も見つかるくらいの出来栄えの方が、かえって愛嬌を感じられて、良いのかも知れませんね。 「良い」「悪い」ではなく「好き」か「嫌い」かで判断して、この映画は好きだと結論付けたくなるような……そんな好ましい映画でありました。 [DVD(邦画)] 6点(2018-03-21 03:40:35)(良:1票) |
149. 9か月
《ネタバレ》 94年のフランス映画「愛するための第9章」を95年にアメリカでリメイクしたという、風変わりな一本。 残念ながらフランス版は未見の為、詳しい比較などは出来ないのですが…… これ単品で評価する限りでは、中々良く出来た映画だったと思います。 結婚前の優雅な「恋人時代」が冒頭に描かれている為、そんな幸せな日々を奪われてしまった男として、妊娠に戸惑う主人公にも自然と感情移入出来ちゃうんですよね。 「赤ん坊の健康の為、飼い猫は捨てた方が良い」「二人乗りのポルシェは、買い替えた方が良い」と言われてしまう場面などは、本当に主人公が可哀想になったし「父親になるのを嫌がる男」として、きちんと説得力があったと思います。 それと、本作は豪華なキャストが揃っている点も特長なのですが、中でもやはり、ロビン・ウィリアムスの存在感は凄かったですね。 もう画面に彼が出てきた途端「ヒュー・グランド主演のラブコメ」が「ロビン・ウィリアムスの映画」に変わっちゃうくらいのパワーがある。 本作の場合、主演のヒューも魅力たっぷりな俳優さんである為、ギリギリでバランスが取れていたけど…… もっと地味で華の無い主演俳優さんだったら、完全にロビン・ウィリアムスに圧倒されて、歪な映画になっていた気がしますね。 そのくらい、彼の存在は光っていたと思います。 子供を産むデメリットについて、ヒロインが色々と語った後「それでも欲しいの」「私の中で、命が生きてるのを感じるのよ」と訴える場面なんかも、女の強さというより、母の強さが感じられて、印象深い。 母親は生まれてくる子が「自分の子」だって分かるけど、父親にとってはそうじゃないという普遍的なテーマについても、さらりと触れていたりして、この辺も良かったですね。 我が子の為なら、たとえシングルマザーになっても生きていくと、早々に決意を固めたヒロインに対し、中々煮え切らない主人公の姿に、リアリティを与えていたんじゃないかと。 主人公が小児精神科医という設定に、あまり必然性を感じない事。 途中何度か出てくる「蟷螂」の姿が怖過ぎる事。 車に関しては「ファミリーカーに買い替えた」とあるけど、飼い猫はどうなったのか明かされず仕舞いな事など、欠点というか、気になる点も多いんだけど…… まぁ、決定的な短所とまでは思えなかったです。 それと、自分は男性である為、どうしてもこの主人公は優し過ぎるというか (妻に対し、妥協し過ぎ。自らを犠牲にし過ぎ) って思えたりもしたんですが、それも観終わる頃には、あまり気にならなくなっていましたね。 女性の「産む苦しむ」に比べたら、そのくらい軽いもんだろって、クライマックスの出産シーンで諭されたような感じです。 産まれたばかりの赤ん坊を抱きながら「僕らは家族だ」と言ってキスする場面も、二人が「恋人」から「夫婦」になった事を感じられて、凄く良かったですね。 「一人の男が、父親になる物語」として、しっかり楽しませて頂きました。 [DVD(吹替)] 6点(2020-02-27 04:30:10)(良:1票) |
150. アフリカの女王
《ネタバレ》 呑気な川下り映画というイメージだったのですが、久々に再見してみて、序盤は意外と陰鬱な事に吃驚。 ヒロインの兄が精神を病んで死ぬ場面とか(あれ、こんな映画だったかな……)と戸惑っちゃうくらいでしたね。 この辺りは、やはり戦争を扱った映画なんだなと、しみじみ感じさせるものがありました。 とはいえ、川下りが始まってからはイメージ通りの「呑気さ」に溢れており、ホッと一安心。 一応、道中では色んな災難に見舞われて苦労するんだけど、それもお約束の範疇というか、安心して観ていられる感じなんですよね。 裏を返せば「緊迫感に欠ける」って事でもあるんですが、自分としては長所に思えました。 現地人の描写とか、蚊の大群が合成丸出し(ヒロインが「こんなに刺されて」と主人公を気遣うけど、刺された痕なんて全然分からない)とか、現在の観点からは気になる点も多いんだけど、まぁ御愛嬌。 舟を止めて水浴びしたり、雨が降ったら狭い屋根の下で男女同衾したりと「ラブコメ映画」としての魅力を備えている点も、良かったですね。 最初は兄にさえ「器量が悪い」なんて言われていたヒロインのローズが、どんどん綺麗に見えてくるし、ボガート演じる主人公も髭を剃ったら二枚目だしで、観ているこっちとしても、主人公カップルの好感度が徐々に上昇していく様が気持ち良い。 アフリカが舞台って点を活かし、色んな動物を拝ませてくれるし、急流の場面は迫力あるしで「旅映画」「アドベンチャー映画」としての魅力も、文句無しでした。 ただ、これは勿体無いなと思えたのは…… ちらちらワニの存在を匂わせておきながら、結局ワニとの戦いになる場面が無かった事ですね。 流石のジョン・ヒューストン監督も、後の「ワニ映画」需要までは予見出来なかったのでしょうか。 もしワニと戦う場面があったら「川下り映画の元祖」というだけなく「ワニ映画の元祖」としても語られたかも知れないし、つくづく惜しいです。 最後は目的通り「ルイザ号」の爆破に成功し、アッサリ終わるんだけど…… なまじ爆破後も長々と尺を取っていたら(ご都合主義過ぎる)って印象が強まっていたでしょうし、スパっと終わらせて正解だったんでしょうね。 死刑執行直前に主人公カップルの結婚を認めたりと、ルイザ号の船長も良い人だったので、船が爆破されても生きてる描写を挟んであるとか、そういった細かい配慮にも感心させられました。 昔の名作映画って、格調が高い代わりに「一度観たら充分」って気持ちになる事も多いんですが…… これは例外的に、また忘れた頃にでも観返したくなる。 そんな味わい深い一本です。 [DVD(字幕)] 7点(2020-10-14 19:09:22)(良:1票) |
151. パーフェクト・ゲッタウェイ
《ネタバレ》 ミラ・ジョヴォヴィッチの悪役は珍しいけど、結構良い感じだなぁ……と思っていたら、最後の最後で裏切りというか、彼女も被害者であったかのような展開になるのが残念。 元々彼女ってキツい顔立ちの美人さんですし、今回は徹底して悪女という路線を貫いても良かったんじゃないかと思えました。 同監督作の「ピッチブラック」が「悪人だと思ったら実は善人だった主人公」の話であるのに比べると、今作は「善人だと思ったら実は悪人だった主人公カップル」の話となっており、どうしても後味は悪かったですね。 途中から登場するカップル二組に主人公交代しているし、そちら目線で見ればハッピーエンドなのでしょうが、今一つその目線の変換がスムーズに行われておらず、彼らに感情移入する前に映画が終わってしまったという形です。 法螺噺っぽく口にした「頭蓋骨をチタニウムで埋められた」という一言が伏線となっている点には感心させられたし、練り込まれた脚本なのは分かるのですが、何というか「気持ちの良い裏切り方じゃなかった」という感じですね。 この手の「主視点の人物こそが犯人である」ネタって、よっぽど上手くやってくれないと褒める気になれないし、本作においては「自分達が犯人のはずなのに、何故か他のカップルに怯える主人公達」の描写が頻繁に出てくるので、ちょっとアンフェアな印象が強いです。 結婚式の映像で二人の顔が映らなかったり、脚本家のはずなのに映画の話になると歯切れが悪くなったりする時点で、観客としても「この主人公カップルは怪しい」と勘付くから、それほど意外性がある結末でもないし、その一方で「じゃあ、結局なんで他のカップル達に怯えていたの?」という疑問が残ったまま。 答えとしては「自分達が犯人だとバレるのを恐れていた」「別に犯人とか関係無く危ない奴らだと思っていたので怯えていた」「完全に被害者カップルになり切って演技を楽しんでいた」などが用意されているのでしょうけど、作中で明確にコレと示される訳でもないので、宙ぶらりんな印象なのですよね。 オチをバレないようにする為の紛らわしい演出が多過ぎて、そういうのは「上手い」っていうより「姑息」なんじゃないかと思ってしまいました。 物語の舞台となるハワイの景観は素晴らしく、観ているだけでリゾート気分を味わえる辺りは、好印象。 それと、普通なら真っ先に容疑者リストから外してしまうような怪しい男を演じていたのが、今やすっかり大物となったクリス・ヘムズワースというのも、上手い配役でしたね。 当時は単なる脇役に過ぎなかったのでしょうが、現代の目線からすると「怪し過ぎるけど、彼が演じているなら意外と犯人って事も有り得るかも……」と思える為、目眩ましとして非常に効果的であった気がします。 上述の通り、オチには納得出来ませんでしたが、程好い緊張感が味わえたし、なんだかんだで楽しめた一品でした。 [DVD(吹替)] 5点(2017-04-18 23:02:08)(良:1票) |
152. パーティー・ナイトはダンステリア
《ネタバレ》 「青春映画」って言うと、高校生や大学生くらいの主人公を連想するものですが、こういうのも立派な「青春映画」じゃないかって思えますね。 一流の大学を出たのに「本当にやりたい仕事が見つからない」とボヤいて、実家暮らしでバイトを続けてる主人公。 そんな彼がパーティーの一夜を経て、未来に向けて前進するまでが描かれていますし、年齢など関係無く「青春」を感じさせてくれる内容だったと思います。 ラストシーンにて、鬱屈とした日々を共有していた主人公達三人が再び揃って、笑顔を見せ、朝食の為に車を走らせる場面で終わるというのも、凄く爽やか。 全編に亘って懐かしいテイストの80年代音楽が流れているし、基本的には「楽しい映画」「後味の良い映画」だったと思います。 ただ、色々と欠点も目立っちゃって…… 脚本の粗とか、稚拙な演出とか、そういう部分なら「愛嬌の内」と笑って受け流す事も出来るんだけど、本作の場合「主人公の魅力が薄い、感情移入出来ない」っていう根本的な部分にも不満があるもんだから、困っちゃいましたね。 序盤の段階で職業を詐称したり、車泥棒したりといった展開になるのもどうかと思うし、もうちょっと「こいつは良い奴だな」と感じさせる場面が欲しかったです。 車泥棒の結果として、当然のように捕まる訳だけど、そこで警官の父親に揉み消してもらって助かるっていうのも、凄く恰好悪い。 ここの場面、親友のバリーは「俺一人で盗んだ」と主人公を庇っているのに、主人公はバリーを庇う素振りを全然見せないもんだから、そこにもガッカリしちゃったんですよね。 「お前は未だ負けてないぞ。本気でチャレンジしてないからな」 「負け犬と名乗る資格すらない」 という父親の台詞は良かったけど、上述のアレコレが引っ掛かってしまい、イマイチ感動出来なかったのも残念。 この後、主人公は同級生の前で演説したり、度胸試しに挑んだりで「男を見せる」感じになるんだけど、それまでのマイナスが大き過ぎて挽回しきれなかった気がします。 個人的には、車椅子暮らしのカルロスの方が主人公より魅力的に思えたくらいでしたね。 プロ野球選手を目指していたのに、事故で歩けなくなったとか、それでも金融業界で立派に働いてるとか、凄くドラマティックな人生を送っていますし。 見栄を張って自分もカルロスの同僚と言い張る主人公に呆れつつも、仕方無く同調してあげる場面とか、どう考えてもカルロスの方が主人公より「良い奴」に思えたし、出番が僅かなのが勿体無かったです。 そんな訳で、総評としては「そんなに悪くない、ちょっと良い感じの青春映画」くらいに落ち着くんですが…… 劇中曲の数々が凄く良いもんで、また何時か観返したくなっちゃいそうですね。 そうしたら、初見では欠点に思えた部分も違った見方が出来るかも知れないし、今からその時が楽しみです。 [DVD(吹替)] 6点(2020-08-06 18:43:31)(良:1票) |
153. アドベンチャーランドへようこそ
《ネタバレ》 遊園地を舞台にした映画なのですが、肝心の「アドベンチャーランド」の魅力が伝わって来なくて、その点が寂しかったですね。 こういう映画であれば「アドベンチャーランドに行ってみたい」「自分も主人公のようにココで働いてみたい」って思わせてくれる事を期待してしまうものなのに、そんな期待が見事に外れてしまった感じ。 景品を取られないようにする為、園内のゲームには色んな仕掛けが施してあるって説明していく件は面白かったんですが…… 舞台が遊園地である必然性が感じられる場面なんて、精々そこくらい。 ただ単に「バイト先で出会った女の子と、紆余曲折を経て結ばれる主人公の話」ってだけなので、せっかくの舞台設定を活かし切れていないように思えて、勿体無かったです。 ・主人公は仕事が見付からず、嫌々ながら遊園地で働く事になる。 ・競馬ゲームの実況が下手で、それを経営者に叱られる場面がある。 という伏線があった以上、主人公が遊園地で働く喜びに目覚めていくとか、実況が上手くなって周りに認められるとか、そういう展開になるのかなと思ったのに、それも無し。 終いには主人公もヒロインもアドベンチャーランドから立ち去って、ニューヨークで恋の決着を付けて終わるというんだから、吃驚したし、同時に落胆もしちゃいましたね。 「主人公達はアドベンチャーランドから卒業して、大人になった」というメッセージなのかも知れませんが、それならエンドロールでアドベンチャーランドのCMを流して終わるのはチグハグだと思うし、どうもスッキリしない。 面白そうな舞台設定を用意したは良いけど、それを活かしきれなかったなぁ……っていう想いが強いです。 他にも「ヒロインのエルは不倫している」という秘密について、観客は序盤の段階で分かるようになっているのに、主人公は終盤になってから知る形なので、感情移入を阻害している事。 八十年代が舞台とはいえ、妻子のあるコンネルではなく、エルばかり非難を浴びる形なのは納得がいかない事。 主人公の勃起ネタを二回もやったのは、流石に狙い過ぎで白けちゃった事とか、色々と不満点が多い映画なんですよね。 主演は「ゾンビランド」のジェシー・アイゼンバーグ、監督は「スーパーバッド 童貞ウォーズ」のグレッグ・モットーラという事で、期待値も高かっただけに、手放しで絶賛出来ない内容なのが、非常に残念。 とはいえ、青春映画としてはキチンとツボを押さえた作りになっているし、決して嫌いな作風じゃないというか…… むしろ「好きな映画」と言えそうなんですよね、これ。 仕事終わりに同僚と酒を飲みながら駄弁るとか、プールで可愛い女の子と戯れるとか、そういう青春時代ならではの魅力的な一時が、しっかり描かれている。 「神様は信じないけど、愛なら信じる」「愛には、どんな事も良い方向に変える力がある」という主人公の台詞を裏切るかのように、宗教の壁によって結ばれないカップルが出てくる辺りも、良かったですね。 こういう挫折感、やるせなさも青春の醍醐味だよな、と思えたりして、しみじみ沁みるものがありました。 初めてのキスシーンや、好きな子と一緒に花火を眺める場面など「ロマンティックな場面では、ちゃんとロマンティックな音楽が流れる」という作りなのも、嬉しかったです。 こうして列挙してみると「気になった点」や「不満点」の方が「良かった点」よりずっと多いはずなのに、それでも終わってみれば(なんだかんだで、この映画好きだな……)と思えちゃうんだから、全くもって不思議ですね。 劇中にて、主人公とヒロインが惹かれ合うキッカケは「互いの好きな音楽」だったんだけど、自分としても「BGMのチョイスや、使い方が良い」ってだけで、この映画を好きになってしまったのかも。 また何年か経った後、今度は懐かしさと共に観賞してみたくなるような、そんな青春映画らしい青春映画でありました。 [DVD(吹替)] 6点(2019-04-19 12:54:36)(良:1票) |
154. ソルト
《ネタバレ》 「主人公の身辺に、もう一人ロシア側のスパイがいる」という事は、途中で察しが付くように作られていますね。 自分は彼女の夫を疑っていた為、あっさりと死亡したのに驚き「何かと主人公を庇ってくれていた同僚がスパイ」というオチには、素直に騙される事が出来ました。 予想が外れて悔しい思いもありますが、映画を楽しめたという意味では、こちらの方が正解だったと自分を慰めたいところです。 それと、この手の「続編を意識したような終わり」って、どうも印象は良くないのですが、本作は何となく毛色が違うようにも思えました。 続編を作るつもりなら「主人公の夫」「スパイとして育てた師」「同僚」と、続編に活かせそうな重要人物を三人も殺しているのが不自然というか、如何にも勿体無いのですよね。 インタビュー動画などによると、どうやら監督さんも続編には気が乗らないみたいで、これはあくまでも「主人公にとっての始まりの物語」として完結させたようです。 自分としては、上記の「重要人物でも必要なら殺す」という思い切りの良さが、続編の可能性を薄めた代わりに、本作の完成度を高めていると感じられましたね。 しかしまぁ、アンジェリーナ・ジョリーという女優さんは本当に身体を張る人なんだなぁ……と、今更ながらに驚嘆です。 映画本編を観た限りでも「これってスタントマンじゃないよね?」と思えるアクションでしたが、特典映像をチェックしたら、やっぱり本人だったみたいで、大いに納得。 高層マンションの窓を伝い歩くシーンの迫力も凄かったですが「手錠をはめられたままで相手を絞殺してみせる姿」が、アクロバティックで恰好良くて、特にお気に入り。 どちらかといえば、男性がアクションをこなす映画の方が好みだったりもするのですが、彼女くらいの根性を見せられると、もう「参りました」と脱帽する他ありませんね。 脚本の細部が気になったりもしたけれど、素直に面白いと思えた映画でした。 [DVD(吹替)] 7点(2017-02-08 04:01:06)(良:1票) |
155. 映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争 2021
《ネタバレ》 ドラ映画としては監督&脚本が新人コンビである為、不安も大きかったのですが……中々の仕上がりになってたと思います。 まず、何と言ってもアクション描写が素晴らしい。 小説版を読んだ時点では「アストロタンク」だの「アストロスラスター」だのといった兵器名が並んでるのを見ても、全然ピンと来なかったのに、映画本編を観た今となっては、こうして名前を書き込んでるだけでもワクワクが甦って来ちゃうくらいですからね。 火力重視の戦車モードと、機動力重視の戦闘機モードを使い分ける戦闘シーンが、本当に見事でした。 正直、最初は(どうして戦車に名前を付けたの?)(変形する必要あったの?)って疑念を抱いたりもしたんですが、それが映画を観ていく内に「名前を付けて正解だった」「変形させて正解だった」と思えてくるんだから凄い。 この「謎が解き明かされていく」ような感覚は、ちょっと独特な楽しさがありましたね。 例えば、原作漫画では「パピ君が銃を使って探査球を撃ち落とす場面」が、本作では「スパナを投げて探査球を破壊する場面」に変更されているんです。 (何故?)と思っていたら、後に「野良猫のクロの口に翻訳ゼリーを投げ込み、説得するパピ君」という場面に繋がって、そこで(おぉ、なるほど! だから事前にパピ君のコントロールの良さを示しておいたのか……)と納得出来ちゃう。 この改変、原作で一番不可解な部分である「窮地に追い込まれたパピ君が、突然謎の超能力でクロを洗脳して助かる」という場面を、自然に変える事にも成功しているんだから、本当に効果的だったと思います。 悪役のドラコルル長官も「原作以上に知的で、部下想いな一面がある軍人」というキャラに生まれ変わっていたんだから、嬉しかったですね。 ギルモア将軍から「有人兵器ではなく、無人兵器を用いるように」と命じられた際の 「我々の犠牲を恐れているのでしょうか?」 「……将軍が恐れているのは反乱だ。我々ですら信用ならんのさ」 という副官とのやり取りなんて、もう痺れちゃうくらいに良い。 万策尽きて敗れた後、巨人と化したジャイアンに対しても一切怯まず「長官から手を離せ!」と銃を向ける副官という描写も、ドラコルルの人望が伝わってくるものがあり、好きな場面。 最後まで毅然とした態度を貫き、降伏する代わりに部下の安全を保障して欲しいと交渉するドラコルルの姿は、作中で一番恰好良いと思えたくらいです。 それと、地球人であるのび太達だけでなく、ピリカ星の人々が頑張って「自分達の手で自由を掴もう」と独裁者に立ち向かう要素がアップしているのも、良かったと思います。 これに関しては、旧アニメ版の「宇宙小戦争」でも同じような試みが為されていたのですが、本作の方が更に徹底しているし、戴冠式におけるパピ君の演説などによって、市民による革命に至る流れも、とても自然になっていましたからね。 「原作を改変し、原作より面白くなった映画」という意味合いでは、間違い無く本作の方が上だと思います。 「アストロタンクの戦闘シーンが素晴らしかっただけに、ラストの巨人VS小型兵器という戦いが見劣りして感じる」「自由同盟のリーダーが恰好良くなっていただけに、出来れば本職の声優さんを配して欲しかった」など、細かい不満点は色々あるんですけど…… 明らかに長所の方が多いので、まぁ良いかって気持ちになっちゃいますね。 なんていうか「才能は豊かだか、経験が足りない若手監督」っぽさを感じる作風というか「ここは、もっとこうすれば良いのに」って思える箇所が多い映画なんだけど「ここは素晴らしい、本当に素晴らしい!」って箇所も同じくらいあるっていう…… 悪く言えば完成度の低い、良く言えば破天荒でパワーを感じる品に仕上がってたと思います。 あと、出木杉くんの扱いが良かったというか「皆の仲間外れにされてる」感じが薄くって、むしろ「出木杉くんも皆の仲間」って形になってたのも、凄く嬉しかったですね。 冒険に参加出来なかった理由も「塾の合宿で不在だったから」と、きちんと理由が説明されているし、ラストにて一緒に「宇宙大戦争」を観て、冒険の顛末をのび太達から教えてもらう事になるのも、良いオチだったと思います。 おまけ映像からすると、次回作は「創世日記」か「ブリキの迷宮」が有力に思えますが…… いっそ出木杉くんと一緒に冒険するような、オリジナルストーリーの映画でも良いなぁと思えちゃうくらいでしたね。 そんな「禁じ手」を用いたとしても、きっと面白くなると信じられる程に、今のドラ映画はクオリティが高い。 また来年も、映画館に足を運ぼうと思えるような、良い映画でした。 [映画館(邦画)] 8点(2022-03-04 12:48:39)(良:1票) |
156. ドラゴンハート
《ネタバレ》 王道のファンタジー映画として、綺麗に纏まっていますね。 何よりもドラゴンに存在感があって、彼が動き、喋り、飛ぶ姿を見ているだけでも楽しい。 ただ、主人公の設定が「凄腕のドラゴンハンター」というわりに、全然凄みが感じられないというか、ハッキリ言うなら強く見えないせいで、今一つ没頭出来なかったように思えます。 血生臭い発想ですが、彼がドレイコと出会う前の段階「凄腕のハンターとして各地のドラゴンを狩りまくる」話の方が面白くなるんじゃないか、なんてついつい考えてしまいました。 ストーリーの流れとしては「ドレイコと組んで村人相手に詐欺行為を働くほどに堕落していた主人公が、本物の騎士になる」という形でカタルシスを生み出そうとしているのは分かるのですが、その「詐欺行為」のパートが非常に楽しそうで、あんまり悪事を働いているようには見えなかった辺りも残念。 最後にドレイコが死ぬ自己犠牲展開になるのも、事前に「死んだら星座になりたい」と語られた通り、星座になってハッピーエンドというのが分かり切っており、完全に予定調和の内であるように思えて、ノリ切れませんでしたね。 この辺りは「王道の魅力」と褒める事も「先が読める退屈な内容」と貶す事も出来そうな、難しい部分。 そもそもドレイコが「心臓を分け与えて瀕死の王子を救う」理由が「善行を積めば死後に星座になれるから」というのだから、本作は非常に宗教的な話なのでしょうね。 その辺りが、信仰心の薄い自分の心には響かなかったのかも。 視覚的には十分に楽しめるし、キャラクター造形なども悪くない。 ハッピーエンドなので後味も良い。 色々と魅力的な要素は揃っているだけに、肌に合わない事が勿体無く思えた映画でした。 [DVD(字幕)] 5点(2017-01-30 03:37:17)(良:1票) |
157. 猫の恩返し
《ネタバレ》 「猫舌のお前さんには向くまい」「お前こそ鳥目だろ」 という鳥と猫とのやり取りが印象深い。 作品全体の印象としては、丸く綺麗な小石、といった感じですね。 尖って良い部分も無く、悪い部分も無いという。 児童向け作品らしく、伏線とその回収も分かり易くて ・幼少時に出会っていた猫との再会。 ・「何処かで見たような……」という台詞。 ・遅刻していた主人公が成長したのを表す為に、早起きするようになる。 等々、微笑ましい気持ちで各シーンを見守る事が出来ました。 猫好きな観客の欲求に応えてくれるように、作中の猫達は魅力的に描かれていたと思いますし、その時点で、ある程度は満足。 じゃあ不満点は何だろうと考えてみると、終盤の盛り上がりに欠ける事が挙げられそうですね。 もう少しこう……画面を見ているだけで楽しくなっちゃうような、動きのある活劇要素が欲しかった気がします。 折角バロンと王様との一騎打ちがあったのに、あっさりと前者が勝って終わりというのでは、如何にも寂しい。 それと「恰好良いから」という子供っぽい理由で好きだった男性に興味を無くす事を、前向きに描いているはずなのに「主人公がバロンを好きになった理由」が「恰好良いから」としか思えない辺りも気になります。 見た目に囚われず、内面の恰好良さが分かるようになったという意味なのかも知れませんが、バロンというキャラは見た目の時点で恰好良く描かれている訳だし、何だか中途半端な印象が残りました。 エンディング曲については、凄く良かったですね。 「猫の国から現実世界に戻ってきた主人公が、いつでも傍にバロンがいてくれると思いながら日々を生きていく」という感じで、歌詞も作品に合っていたかと。 正直、退屈に感じた時間も長かった映画なのですが、この曲が流れ出すラストシーンだけでも「観て良かったな……」と思えました。 [DVD(邦画)] 5点(2017-05-15 10:44:12)(良:1票) |
158. 地獄のデビル・トラック
《ネタバレ》 監督と脚本をスティーブン・キングが担当したという、それだけで映画史に残ってしまいそうな一本。 こういう場合、いっそ「破滅的に酷い出来栄え」であれば、カルト映画として人気になってたかも知れませんが…… 本作は「一応そこそこ楽しめる」ってタイプの品なので、評価に困っちゃいますね。 勿論、粗は多いです。 例えば冒頭にて、機械が勝手に動き出す場面も、映像だけ見れば不気味なのにBGMがロックなAC/DCなので、何かチグハグなんですよね。 キング当人がAC/DCのファンであるがゆえの選曲なのでしょうが、ミスマッチとしか思えなかったです。 男がトラックに轢かれる場面でも「止まってる車に男の方からぶつかってる」としか思えない撮り方してるし、演出の拙さが目立ちます。 脚本に関しても「新婚夫婦の車だけは暴走しておらず、人間が自由に動かせる」って事が伏線だろうと思ってたのに、全然そんな事は無くて、理由が説明されないまま終わっちゃうんだから、もう吃驚です。 主人公達が籠城するガソリンスタンドの地下には、武器がたんまり秘蔵されており、戦力的に主人公側の方が有利っていうのも、ちょっと歪なバランス。 わりと序盤の段階から「バズーカあるから勝てるじゃん」って思えちゃうし、途中で出てきたマシンガン搭載の車に対しても、わざわざ主人公が近付いて手榴弾で爆破なんかしなくても「バズーカ使えばいいじゃん」ってなってしまう。 そんな感想が間違ってなかった証のように、最後は普通にバズーカ撃って、敵の親玉トラックを倒して終わりだし…… 観客に違和感を抱かせない為には「切り札であるバズーカを中々使えない理由」を、ちゃんと描いておくべきだったと思います。 本業は小説家のキングだから、演出は拙くとも脚本には光るものがあるだろうと期待していたのに、それさえも裏切られた気分。 そんなこんなで、欠点を論ったらキリが無いんだけど、ちゃんと良い所もあるというか…… 「長所」っていうよりは「愛嬌」を備えてるタイプの映画だったので、不思議と憎めないんですよね。 まず、予算は問題無く確保出来たようで、トラックが破壊される場面はキチンと描いているっていうのが嬉しい。 「玩具の車を口に突っ込み死んでる犬」とか、同じキング作品の「クリスティーン」や「クジョー」を知ってるとニヤリと出来ちゃう場面があるのも、程好いファンサービスって感じがしましたね。 他にも「芝刈り機は襲ってくる」し「下水パイプの中を移動する」しで、さながらキング作品のオールスター状態。 それらの「元ネタ当てクイズ」をするだけでも楽しめちゃうし、ちゃんと「スティーブン・キングが脚本を書き、監督を務めた事」に、意義のある作品だったと思います。 キング作品ではお約束の「可愛らしい子供」も登場しているし、キング当人も冒頭にカメオ出演しているしで、嫌々撮った訳ではなく、きっと楽しんで撮ったんだろうなって思えるような、微笑ましさがあるんですよね。 最後の気象衛星オチも、非常に馬鹿々々しくて「何じゃそりゃ!」と、呆れながら、笑いながらツッコむ事が出来ました。 面白かった……とは言い難いんだけど、それなりの満足感は得られたし、また何時か気が向いたら、観返したくなっちゃいそうですね。 話のタネになるという意味でも、観ておいて損は無い映画だと思います。 [DVD(吹替)] 5点(2022-02-02 11:50:11)(良:1票) |
159. 赤い珊瑚礁 オープン・ウォーター
《ネタバレ》 見渡す限りの大海原で、船が転覆。 いずれ船は完全に沈んでしまう為、助かりたければサメがいる海を泳ぎ、陸を目指すしかない…… その、陸地までの距離が16から20キロという設定なのが絶妙でしたね。 これが10キロなら迷わず決断出来たと思うし、100キロなら多分諦めて船に残って救援されるのを待っただろうなと思える、程好い塩梅。 実際には20キロ以上の距離があったらしく「やっぱり船に残っていれば良かった」とグループ内で言い争いに発展する辺りも、非常にドロドロしていて良かったです。 そんな中で、陸地を見つけた時の安堵感といったらもう、観ているこちらまでホッと息を吐いちゃうぐらい。 実話ネタという事もあってか、主人公達の装備が貧弱であり、食糧も武器も殆ど持ち合わせてないから、心細さが半端無いんですよね。 だからこそ「サメと戦う」という選択肢は有り得ず、ひたすらゴールの陸地を目指すしかない。 それはともすれば「退屈さ」にも繋がっちゃいますし、実際自分も中盤で(なんか飽きてきた……)という考えが頭をよぎったりもしたんですが、終わってみれば、その手法は正解だったように思えます。 とにかく、余計な可能性を与えたりしない。 唯一にして絶対のゴール目指して、ひたすら泳ぐしかない。 勝利条件、助かる方法は「陸地に辿り着く」事しか無いんだという、この単純明快さこそが、本作の特長であったかと。 最後の最後でヒロインは無事に陸地に辿り着き、生き延びるも、未だ海中にいたルークは引き上げられる直前で殺されるという辺りも、その「陸地に辿り着けば大丈夫」という価値観に則してるんですよね。 だから「主人公格のルークが殺される」という終わり方にも拘らず、理不尽さを感じさせない。 この辺りは、本当に上手かったです。 「地味」「堅実」「単調で退屈」「シンプルで力強い」と、貶す事も褒める事も簡単に出来そうな本作品。 自分としては「生存ハッピーエンド」ならぬ「一人だけ生き残ってしまったバッドエンド」とも言うべき、重苦しい終わり方まで含め、なんだかんだで楽しめた一品でした。 [DVD(吹替)] 6点(2017-08-17 01:11:24)(良:1票) |
160. 恋するベーカリー
《ネタバレ》 大好きな「ホリデイ」と同じ監督さんという事で、期待を込めて観賞。 女性目線で男二人と三角関係になるという、感情移入しにくいストーリーなのに、しっかり楽しむ事が出来て嬉しかったですね。 特に感心させられたのが、高齢の主人公に対し 「俺達、一緒に歳取るべきだ」 「年齢も君の魅力も一つだよ」 と男達が口説いてみせる件。 (うわぁ、これは言われたら嬉しいだろうなぁ……)と思えたし、普通なら負い目に感じそうな部分を肯定してあげるという、優しい作風である事が伝わってきて、ほのぼのとさせられました。 「元旦那がセックスフレンド」と笑いながら女友達に話す件なんかも、女性の逞しさと、姦しさまで感じられて、好きな場面です。 そんな具合に「これは良い映画だな」と途中までは思っていたのですが「元旦那とヨリを戻すのは止めにして、新しい恋人と良い感じになる」という結末には納得がいかず、全面的に肯定は出来なかったのが残念。 そもそも新しい恋人と急接近したのが「今の妻を優先させる元旦那への当てつけ」という動機にしか見えなかった時点で、あまり二人を応援出来なかったのですよね。 結果的に「元旦那は、今の妻と子供と別れる」「父と母が復縁すると思っていた我が子達を失望させる」という、二重の悲劇が起こってしまった訳で、それまでのコミカルな作風とのギャップが大き過ぎたように思えます。 元旦那が別れを告げてきた妻と子供の姿が、終盤には全く出て来ないというのも、何だかズルい気がして、受け入れ難い。 「傷付いた母子の姿が描かれたら、主人公が嫌な女に思われてしまうから」という理由なのは分かるのですが、だからこそ、そこは逃げずにやって欲しかったなぁ、と。 それでも後味が悪くなかったのは、やっぱりナンシー・マイヤーズ監督の演出が、自分の好みに合っていたからなのでしょうね。 登場人物全般に、何とも言えない愛嬌があって、妙に憎めない。 娘婿となるハーレイの存在なんて、特にお気に入りです。 一人だけ主人公達の不倫に気付いてしまい、他の家族にバレないようにと右往左往する姿が、実に愉快で、応援したくなる。 最後に、家族が分かり合えた事を喜び「僕も入れて」と一緒になって抱き合う姿も、微笑ましくて、温かい気持ちに浸れました。 本作のMVPには、彼を推したいところです。 [DVD(吹替)] 6点(2017-01-27 13:03:58)(良:1票) |