Menu
 > レビュワー
 > なんのかんの さんの口コミ一覧。4ページ目
なんのかんのさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 2336
性別

表示切替メニュー
レビュー関連 レビュー表示
レビュー表示(投票数)
その他レビュー表示
その他投稿関連 名セリフ・名シーン・小ネタ表示
キャスト・スタッフ名言表示
あらすじ・プロフィール表示
統計関連 製作国別レビュー統計
年代別レビュー統計
好みチェック 好みが近いレビュワー一覧
好みが近いレビュワーより抜粋したお勧め作品一覧
要望関連 作品新規登録 / 変更 要望表示
人物新規登録 / 変更 要望表示
(登録済)作品新規登録表示
(登録済)人物新規登録表示
予約データ 表示
評価順12345678
投稿日付順12345678
変更日付順12345678
>> カレンダー表示
>> 通常表示
61.  アポロ13
面白い題材をいかにもハリウッドらしくソツなく料理したという一編。難関に次ぐ難関を一つ一つ乗り越え、家族の反応なんかも折り込み飽きさせずに楽しめるが、結局それがそうであっただろう生々しさから遠ざかってしまった気もする。3回目だというのにもう飽きている大衆が背景にあって、家族よりもこっちをもっと突っ込んだほうが面白かっただろう。事故になった途端飛びついてくるテレビ。なるほどと思ったのは、もうコロンブスなどの個人の英雄の時代ではない、ってこと。どこまでも可能性を求めていくスタッフの冷静な姿勢が現代の英雄的行為なのだ。四角と丸の空気清浄器をあれこれ繋ごうとする。ライカ犬とは違うんだ、と生理データ器具を取り捨てる、なんて意地も見せ、困難を前にチームの和は固まり、無関心だった娘が家族の愛に戻ってくる、といったアメリカ人好みの「教訓」もいろいろ揃えてあります。
[映画館(字幕)] 7点(2010-02-26 11:08:06)
62.  愛の地獄(1994) 《ネタバレ》 
いわゆるオセロ症候群てヤツか。それでいて実際に妻が不貞をはたらいている余地を残しておき、曖昧に断ち切る。いかにもフランスらしい、キレよりもコクの世界。結局中心にあるのは「深まる疑い」という一本のベクトルだけなんだけど、それこそサスペンスだ、ってんでしょうね。尾行をする場面で、映画は生き生きする、個人的な視点だからか。嫉妬というのは、すべての材料を悪いほうへ悪いほうへととめどなく勘繰っていく装置で、ひとたび作動すると、そのとめどのなさがスリラーになっていくんだ。ラストで冒頭の風景が繰り返されるが、もう自転車はやってこない。水上スキーのシーンって、おそらくボートのおしりで撮影するんだろうけど、撮影シーンを想像するとおかしい。
[映画館(字幕)] 7点(2010-01-26 11:57:59)
63.  アルファヴィル
フランスってのは機知の国なんだなあ、とつくづく思う。「コインをどうぞ」で「メルシー」というプラスチック板が出てくるのとか、プールでの処刑、女性がハリウッドミュージカル映画の一場面のように順に飛び込んで死体を引き上げるのが実におかしい。全編スパイ映画のパロディで、車の追っかけやったり、何よりも音楽がおかしい。不安そうなジャーンというのをやたら鳴らす。ストーリーとしては、論理的であることに徹してすべての未来を必然としてしまう社会らしく(安部公房の「第四間氷期」みたい)、反論理的行為の罪というのがあったりする、それに対する自由意志の反抗といったものらしいが、ここはフランスらしい機知とアメリカ映画へのある種の憧れを楽しめばいいのではと割り切って楽しんだ、それでいいんでしょ。
[映画館(字幕)] 7点(2009-11-30 12:04:39)
64.  嵐ケ丘(1939)
これはもうあちらの『忠臣蔵』というか、いろんな版があり、このほかにブニュエルの、吉田喜重の、J・ビノシュのヒロインで坂本龍一が音楽やったの、を観てるが(リヴェットのは未見)、どれも独自の趣向を凝らして面白いけど、何か物足りないのも事実。これ、映画よりも連続ドラマに向いてる話なんじゃないかなあ。ヒースクリフの帰還までにモッタイをつけたいところが、映画だとそれが出来ず、キャシーとヒースクリフの愛憎のごちゃごちゃをこちらでほぐして味わう時間が足りない。キャシーがただのヒステリーに見えてきてしまう。時間を強制されたくないストーリーってこと。それでも多くの名だたる監督たちを魅了してしまう魔が、この小説にはあるんだ。この戦前白黒のワイラー版が余分な解釈のない分、基本の位置を確保していて見応えがある。私はヒースクリフなのよ、って叫ぶあたりはやはりコワい。ロウソクのゆらぎで盗み聞きしていたヒースクリフの退場を知る、なんて演出。
[映画館(字幕)] 7点(2009-11-05 12:02:27)(良:1票)
65.  嵐の孤児
おそらく数年前のロシア革命がダブっているだろうことは否めない。貴族の暴虐がまずあり(腕に鉛・馬車が子どもを轢く・頽廃パーティ)、それを踏まえて人民裁判の恐ろしさがまたある。とどちらにも偏らない姿勢を取っているのが、うまく逃げたな、という印象にもなってしまう。前半では「うん、貴族は悪い」と思い、後半になると「君の気持ちは分かるが、これはやり過ぎだよ」と、観ているほうの気持ちがきれいに切り替われて、何らかの統合、と言うか、暴虐と民衆とのより良い戦い方を目指さそうとはしない。まあそこがアメリカ映画の限界というか、良さでもあるんだけど。ただただすれ違ってしまうことの哀しさを歌う、その語り口だけを洗練させていく。やっと会えると逮捕されたりして、もう悲痛きわまりなく、メロドラマの語り口というものは、グリフィスで(とりわけ『東への道』で)おおかた定まり、あとはほとんど進化する必要がなかったのだなあ。
[映画館(字幕)] 7点(2009-10-23 11:58:33)
66.  アントニオ・ダス・モルテス 《ネタバレ》 
教師・牧師らが途中までよく分からなかったし、状況も十分把握していたとは言えないので、つまり「良くわかんなかった映画」の部類に入るのだが、しかし不思議な面白さのある作品だったなあ。こういう作品がすでにあったとすると、アンゲロプロスの評価は少し割り引いといたほうがいいのかもしれない。伝説と現実の混交、幻想とリアリズムの隣り合わせ、といった南米文学でも見られる特徴に加え、心理の排除、技法的には音楽効果(儀式のスタイル)の重視、長回し、などなど。ギリシャとブラジルというかけ離れた土地で似たような世界が作られている。ブラジルにもギリシャに劣らぬ古い南米文化の蓄積があるわけだ。ストーリーだけを取り出してしまうと単純で、政府のイヌだった殺し屋が民衆の一員としての己れを自覚し、雇い主を殺すというもの。ちょっと設定を変えれば、そのまま日本の任侠映画にもなる。ここに伝説的な要素を加味し、逆に現実の政治状況を重ね合わせている。これどうも現代の話らしいんだ。アントニオのセリフに「神が世界を作り、悪魔が柵を作った」ってのがあった。
[映画館(字幕)] 7点(2009-08-26 12:03:47)
67.  青空娘
シンデレラ物語を日本に移した、まあどってことない話なんだけど、そういう物語を借りてある生き生きとした瞬間を描きたかったってことなんだろう。随所に増村タッチが見られ、湿っぽくなっても仕方のないところでも、しっかり除湿されている。この人らしさを感じたのは、たとえば東京駅に着いた若尾文子の周囲の喧騒を、あおり気味に捉えたスケッチ。あるいはピンポン大会でのワンカット、顔つき合わせて、しかし無感情に人々がしゃべるとこ。セリフの内容がそれほどストーリーにとって重要なわけじゃなく、画面の中に顔が詰まり、言葉が詰まっている、そのギューギューしている感じの楽しさが眼目。先生の菅原謙ニが赤電話かけてくるカット、ぎっしり赤電話を詰めて、手前のおばさんにも思いっきりしゃべらせる。この過剰に詰まって沸き立つ感じが、もうデビュー2作目で完全に独自のものになっている。靴を絡めたのは、やはりシンデレラを意識してのことなんだろうなあ。
[映画館(邦画)] 7点(2009-08-19 11:59:05)(良:3票)
68.  あにいもうと(1953)
京マチ子という非成瀬的な女優を起用し、ドラマとしても感情をあらわにする場面が多く、しかしそれでも登場人物がゴロリと横になっていると、なんとなく成瀬の空気が満ちてくるから不思議なものだ(小津の登場人物はまずゴロリとならない)。ケンカをしつつ別れきれない不貞腐れた男女ってとこが、たとえそれが恋愛関係のない兄妹であっても、やっぱり成瀬のモチーフだからだろう。ラストで京が怒るのも、外の人船越英二に対して、身内の兄がみっともないことをしてくれた、と家の側に立っているから怒るのであって、兄と別れきれていない証拠。つまり、兄妹ゲンカは仲良しの証拠ってやつだ。兄にとって成長する妹ってのは、それだけでもう堕落と見えてしまうのだろうなあ。帰りのバスで学生がまんじゅうをパクつくのは、原作のものか水木洋子のものか知らないけど、実に辛辣。帰省の久我美子が堀雄二の家を避け遠回りしてくるような描写の細やかさ。なぜかドラマにおいて理想とされる姿は常に末娘によって象徴されるってのが、古今東西を通じ定型になっている。あの駅は登戸なのか。
[映画館(邦画)] 7点(2009-08-15 11:56:43)(良:1票)
69.  甘い夜の果て 《ネタバレ》 
元太陽族も、いつまでも遊んでいられるわけがなく、しぶしぶデパートの店員に納まって、でも、いつかデカイことしてやるんだ、と鬱屈しながらイキがってる。そんなリアリティがあった。自分ではいっぱしのワルのつもりで狼のようにのし上がってるイメージなんだろうが、外からはバレバレで座談の笑いにされてしまう。鋳物工場社長未亡人にも嵯峨三智子にも簡単に嘘をバラされ、そして自分自身は「結婚してあげる」の嘘に引っかかって笑われる。自分がからかわれること・馬鹿にされることに過敏なのに、ここにいない年寄りを笑うことでしかその鬱屈をはらせない。別に元太陽族に限らず、いつの時代どこにでもいた若者のタイプであろう。「むしゃくしゃしたのでやった」となったりする連中のひとり。自分では成功したつもりの勝利感に酔う場所が、デパートの屋上のちゃちな観覧車ってのがお似合いか。観覧車の回転性は、無人の競輪場でオートバイでぐるぐる回るところにもあって、外に向かえないエネルギーの空回りを思わせる。太陽族のシンボルだったモーターボートも、湖上で止まってしまうし。画面の外の音が神経をいらだたせるように強調されて入ってくるのが、効果的。
[映画館(邦画)] 7点(2009-06-26 12:01:20)
70.  阿部一族(1938)
これは原作の謎でもあるのだけど、何を否定し何を肯定してるのかが、簡単には割り切れない話だ。たしかに侍の世界の馬鹿馬鹿しさは描かれているが、その馬鹿馬鹿しさをより高い目で肯定しているようにもとれる。冒頭の淡々と日常の中で殉死していく者たち、腹の据わった者たちと見つつ、やはり気味悪い。悲壮な討ち死にをあっぱれと思い、また愚かだと思う。女たちの涙を批判とも見られるし、浄化とも見られる。我々日本人には、けっきょく自分たちが肯定したがってるのか否定したがってるのかよく分からない情動があり、どうもそれがせめぎ合うところが好き、という困った趣味があるようなのだ。義理と人情、とか。映画の中の言葉で言えば「情は情、義は義」。そこらへんがボヤけたまま、この国は数年後に阿部一族のように全世界に対して立て籠もったわけだ。監督は戦時中右翼団体を主宰していたくらいの人で、おそらく肯定的に彼らを見ていたのだろう。武家屋敷の美しさの見事さなど、精神性を託されているよう。縁側を渡りに見立てて、先代が自死の場へ飄然と謡いつつゆき、滅びの前に翫右衛門がそれを繰り返す。死のために親類一同が法事か何かのように集まってくる、あの気分の延長に一億玉砕の思想が生まれてくるんだなあ。そういった美しくも危ない気分が正直に表現されている映画です。
[映画館(邦画)] 7点(2009-06-11 12:08:21)
71.  穴(1957) 《ネタバレ》 
京マチ子って『羅生門』の時からして、すでに貫禄。森雅之と互角に渡り合い、三船敏郎をあるいは凌駕していたかもしれない。身体も貫禄充分。で、普通なら“貫禄”ってものと“キュート”ってものとは、対極にあるはずなのだが、この映画の京マチ子は実にキュートなのだ。彼女がこんなにかわいく見える映画は珍しい。七変化を見せるんだけど、化粧の濃い娘になったり、田舎ものになったり、それが何と言ったらいいか、その変装の“うまくなさ”がかわいいの。やっぱり女性映画の監督なんだな。彼女が船越英二を頼ってしまうあたりがサスペンスになってて、キュートぶりが生きている。銀行のひそひそ話・ルポに怒る刑事・クビになった京マチ子とバラバラに始めて、つながっていくあたりに監督ならではの才気。ラストもみなが早口にしゃべりまくり、娘がボソッと「あー、たいくつ」というリズム感が、監督のタッチだった。このころでも繁華街のデパートのすぐ裏あたりに、まだ焼け跡のような空き地が広がっていたんだなあ、戦争終わって干支が一巡りしてるのに。
[映画館(邦画)] 7点(2009-05-15 12:18:22)
72.  アヒルと鴨のコインロッカー 《ネタバレ》 
後半の種明かしのとこ、同じ構図で反復されるのが映画ならではの楽しみ。原作は読んでないけど、映画向きでないようでいて、かえってこれ映画向きの話だった。大きな仕掛けをくらませるために、小さな仕掛けをバレやすいように据えてあるのが憎く、少なくとも私は引っかかった。仕掛けとは、ただアッと驚かせるだけでは駄目で、ネタが分かった瞬間に「あ、なるほどね」と、いちいちの伏線が思い出され納得できるように仕掛けておいてもらいたいもの、これはそうなってた(ああ教科書ね、ああ広辞林ね、うんうんオニギリ買うとこね…)。また別方向の伏線として、鳥葬の話が終盤でイキるとこも見てて嬉しい。本屋襲撃のとき歌い続ける「風に吹かれて」にグッときた。復讐の歌というより追悼の歌であって、そしてもちろん相棒を導いてくれた神の歌でもある、照れくさくならないように時間計測の歌という名目が付いてるのもいい。大塚寧々の役割りがちょっと中途半端だったような。
[DVD(邦画)] 7点(2009-01-25 12:10:58)(良:1票)
73.  アイズ ワイド シャット
最初のパーティー会場の冷え冷えとしたまぶしさに、一番この監督らしさを感じた。あとは夫婦の会話が、切り返しの積み重ねで緊張を高めていくあたり。まあこれだけでもけっこう満足できたが、ただ肝心の仮面パーティーがどうも弱い。その死を抱えた弱さそのものを描いたのかもしれないし、冒頭の見知らぬ者のパーティーの陰画かもしれないが、イタリアの監督だったらもっとノリノリで見せてくれるところだなあ、と思ってしまう。ここらへんで歯車が狂ったまま、うまく乗り切れずに見終わってしまった。この人はずっと理性の外側の世界に興味を抱き続けてきたわけで、制御不能なものに取り巻かれ・あるいは制御不能なものを抱え込んで生きている人間を見つめてきた。本作もその線はあるのだけど、キリキリと絞り込まれていくいつもの力は感じられなかった。これ原作読んでみたけど、世紀末ウィーンという背景の中で生きる物語って気がしたな。だから『バリー・リンドン』みたいな、克明に時代を再現する種類の映画にした方が良かったんじゃないか。まあそれをするだけの体力がもうなかったんだろうけど。ショスタコーヴィチの物憂げなワルツとリゲティのピアノ曲、ワルツとリゲティって言ったら『2001年…』と同じ組み合わせだ。
[映画館(字幕)] 7点(2008-11-15 12:03:01)
74.  アザーズ
冒頭のヒロインの悲鳴が、終わってみると意味深長で。召使たちが怪しく、ヒロインも怪しく、観客はどこにも足を落ち着けられずに、この家を見守ることになる。最初のうちは姉のいたずらという可能性を残しているところも膨らみ。死者の写真は気味悪く、二階からの音も効果満点。でも終わって一番怖かったのは、カーテンを閉め切って太陽の光を避け、暗い部屋で息を殺してじっとしている存在って、いまここに集まっていた映画館の観客である我々のことではないか、と思ったとき。キャーッ。
[映画館(字幕)] 7点(2008-07-14 10:49:41)
75.  藍色夏恋
やっぱり青春は自転車だな。音楽もスカルラッティのソナタのような清潔なピアノの響きで、自転車に合う。学校の床に貼られたラブレターを剥がそうとする二人、最初のうちは丁寧に手でやっているのだが、あとは足になる。するとまるでダンスを踊っているよう。そういえば後半、講堂にきちんと並べられた椅子の間でのケンカも、しだいにダンスを思わせていく。やさしい接触は恐いけど、叩き合うなら自然に触れあえる。ケンカもダンスの一種なんだ。自転車という道具だてがありながら、相乗りはしないで、それぞれのチャリンコを走らせ続けているのもいい。
[映画館(字幕)] 7点(2008-05-11 12:21:37)(良:1票)
76.  あるスキャンダルの覚え書き 《ネタバレ》 
不満を先に言っとく。自分は傷つかぬ“天井桟敷”から世間を冷笑している人間のおぞましさをジュディ・デンチが完璧に造形したのに、レズビアンを絡めたことで彼女の孤独が特殊なものになってしまい、話を狭めてしまった。ラストの方では次の獲物をあさるサイコホラーのモンスター扱いで、これでは観客の方が安全な天井桟敷からバケモンを見物してる映画になってしまう。彼女の孤独は、誰もが共有しかねないもっと危険なものだったはず。そこらへんでこの映画、名作にはなりそこねたが、でもジュディ・デンチの演技の凄みだけに絞れば圧倒的だ。辛辣の限りを尽くすモノローグは、嫌な人だなあ、と思いつつ聞きほれてしまう。猫の死で狂乱しケイト・ブランシェットにすがるあたりの切迫と、夜ひそやかに日記に金星を貼り付けている不気味さとの対照。もう孤独が体の中心で芯のように固まっている人間なのに、それでも他人へつながりたいと思っている哀切が、あのいかめしい顔の中に埋め込まれていた。
[DVD(字幕)] 7点(2008-04-02 12:17:55)
77.  暗黒街の対決 《ネタバレ》 
これを見た日の日記を以下に再現する。『岡本喜八のリズムになりきってます。シーンの冒頭のカットでいつもハッとさせる。パッと踊り子に照明が当たったり、あるいはシーンの終わりを射撃場の“ダブル”で締めたり、キビキビしてる。それでいて殺し屋にコーラスさせる(やっちゃえやっちゃえ)なんてユーモアも忘れていない。ミッキー・カーチスが怪しげなライト浴びてギャーッと言うところまで。悪玉中丸忠雄が、あっさり手錠かけられちゃうなんてユーモアもなかなか。三船敏郎は、ちょっと「用心棒」を先取りしたような役柄で。』射撃場のダブルってのが何だったのかまったく思い出せないが、ミッキー・カーチスがギャーッと叫ぶってとこを再見したい気持ちが、いま激しく高まっている。
[映画館(邦画)] 7点(2008-01-07 12:20:28)
78.  アメリカの伯父さん
生物学者がネズミを例にひいて「状況を把握できないことが苦悩だ」と言う。しかしその「状況を把握できないで苦悩するネズミ」を、上から客観的に観察すると、それは滑稽に見える。この苦悩と滑稽の絡みあいこそが人生、ってことかしらん。映画の大枠だけみると、安全地帯から観察しているものの無責任さや上品ぶった語り口が想像され、フランス映画お得意のおすましした世界だな、と思われるかもしれないが、でもそこはかとないしみじみした情感も感じられるところが悪くない。島で再会する場面、当人たちにしてはひどく厳粛、それをネズミの類型を通して一度滑稽に転化し、そのネズミがまた人間に戻ってくると、滑稽を含めた人間の営みがより大きな厳粛さの中に吸い込まれていくような、宗教的な悟りとは別ものだけど、ある種の安定した人生観が見えてくる。行動心理学でとりあえず説明しようとし、でもそれで割り切れない部分にいとおしさを感じさせるような、そんな映画。
[映画館(字幕)] 7点(2008-01-06 12:26:33)
79.  愛の讃歌 《ネタバレ》 
伴淳が女のもとへ、ほかの用事にかこつけながら出かけようとし、それを周囲がからかう場なぞ「寅」で何度も見ることになるシーン。「今日も待ち人来たらずか」のせりふは、やがてタコ社長によって反復される。実質の主人公である有島一郎の、想いを秘めながらひたすら倍賞へ尽くす姿は、そのままインテリの寅さんのようでもあるし、また寅シリーズによく登場する口下手なインテリそのものでもある。これ、寅が始まる2年前の作品。人生で後悔したくない、後悔させたくない、という互いの想いが、ややこしく絡み合ってしまう恋人たちの物語。その背景となる瀬戸内海の島は、若者を閉じ込める拘束場所だが、ユートピアにもなっている。おそらく現実の地方暮らしだったら、娘が父なし子を出産したらこう温かくは見守られず、どろりとした非難の眼差しも少なからず向けられるだろう。そうしていたたまれず大阪に逃げていくという話になる。でもこの映画では地元の人々に祝福されての出発へと話を展開させることで、故郷というものが無垢のままに保存された。そうである世界から、そうであってほしい世界をひねり出していくのが、山田洋次の基本姿勢と言えるかも知れない。
[DVD(邦画)] 7点(2008-01-03 12:18:43)
80.  暁の脱走 《ネタバレ》 
日本兵における“マジメ”がいかに異常なものであったかが、よく分かる。上官の足にヨーチンを塗り息を吹きかける主人公。その滅私奉公ぶり、ひたすら忠義を尽くすことの、マゾヒズムといってもいいような喜びすらが感じられる。よそから見ればビョーキだが、男だけの組織のなかではそれが安定したシステムを形作る基本単位の“マジメ”なのだ。これに対するのが山口淑子の春美、彼女こそ男を不幸にする元凶なのだけど、彼女は滅私の対極、“個人”が“私”のなかに満ちあふれ輝いている。敗戦直後の男性観・女性観の典型がここに見られ、しかしこれは典型として今でもある程度有効なのじゃないだろうか。疲れきって兵隊たちが帰ってくる場から、酒保でのツーツーレロレロでのはしゃぎぶりへのダイナミックな揺れぐあいなどに、脚本黒澤明のリズムが感じられた。ラストのゲートを突破するハラハラも彼の好んだモチーフだし、若山セツ子が聞く軽音楽(ポルカ?)の効果などにもやはり黒澤を思ってしまう。もしかすると谷口監督の個性かもしれないのに、ごめんなさい。
[映画館(邦画)] 7点(2008-01-01 12:26:57)
000.00%
100.00%
200.00%
320.09%
4331.41%
52279.72%
691439.13%
773931.64%
834314.68%
9682.91%
10100.43%

全部

■ ヘルプ
© 1997 JTNEWS