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なんのかんのさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

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81.  赫い髪の女
にっかつロマンポルノは70年代初めに青春の終わりを描くことから始まったが、ここに至ると、もう青春の終わりでなく、中年まっただ中。いいかげん落ち着かなくちゃいけない、って年頃も過ぎている。もうよそに働きに出ていく気にもなれないし、若いもんのようにカケオチなんかも出来ない。半分はそういう状況を受け入れてるんだけど、あとの半分でわだかまりを残している。やたら雨が降る。ガラス戸はずしちゃって室内にまで雨は流れ込んでくる。若いもんに赤髪女を貸してるときにも雨は降っている。狭い飲み屋のシーンなんか良かった。室内はひっくり返った電気ごたつの赤。若いもん同士は廃船で密会するのだが、この監督、船好きみたい。これまたうらぶれた風情を強めている。弱者を描くんだけど、そこからは強者への恨みも妬みも感じられない。革命の気配などトンとない。「わしらはわしらでやってんのや、ほっといてんか」ってことでしょうか。こういうニヒリズムに沈んでいく世界観が間違いなく70年代末のもので、60年代末の高揚から10年でここまで来てしまったという記念碑のようなフィルム。
[映画館(邦画)] 7点(2010-08-31 09:51:50)
82.  アンナと過ごした4日間 《ネタバレ》 
男が忍んでいるときのアンナの顔が初めてはっきり見えたのは、ヘリコプターのシーン。鏡越しにこちらで隠れている男と目が合うんじゃないか、とハラハラさせつつ、指輪をうっとりと眺め男の心を歓喜で満たしている場面。それまでは、ただいればいいという役どころで、スタッフの一人を使って演出しても安上がりに済んじゃうんじゃないか、などと思っていたが、このシーンから彼女は「対象」として生命を吹き込まれ、終盤やはり演技の力を見せる。裁判の場のアンナが素晴らしい。視線のそらしと凝視だけなんだけど。ああ東欧の女優さんの顔だ、と思う。なにか耐えに耐えて硬くなったなかに、人間味を潜めている顔。風景も久しぶりに、旧体制下の東欧を思い出させる陰鬱な静まりを見せてくれて、とても美しい。裁判の場で、寡黙だった男が「愛」という言葉を口にする。その場違いな唐突さ、驚き、その上で「この言葉以外にないな」と深く得心させられる。これレンタルビデオ店では「ラブストーリー」に分類されていたけれど、間違いなくラブストーリーなのだ。同じ姿勢でレイプされたもの同士の共感からスタートしたのかも知れないが(皿洗いから記憶がよみがえる趣向)、「愛とはこういうものだった」と、すごく極端な設定で普遍の本質を提示されたような感動があった。
[DVD(字幕)] 8点(2010-08-20 09:57:42)(良:1票)
83.  あなたに降る夢
キャプラタッチかもしれんが、どうも流れが澄み切ってくれない。主人公がチップの約束を守る、いうとこにいかにリアリティを与えられるかが勝負どころだろうが、成功してるとは言いづらい。妻の反応も、すぐ悲鳴を上げるのではなく、最初は笑い飛ばしてて、しだいに、本気なの、と変わっていくべきでは。ウェイトレスのほうにしたって、もっともっとからかわれてると心配すべきで、アイスクリームを振舞うのは早すぎる。その最初の仕掛けの部分の説得力が弱いので、しっかりと話が根付いてくれなかった。後も、もっと善意の行為に絞るべきであって、地下鉄をタダにするのはイヤミでしかない。この手の映画は好きなんだけど、ピタリと決めるのは難しいんだなあ。
[映画館(字幕)] 6点(2010-08-07 09:50:27)
84.  あんにょん由美香
ほとんどの証言者は男であり、彼らが口を揃えて言うのは、由美香の男性性についてだった。ゴーケツだった、とか。男のスタッフに囲まれて女性性を売り物にする仕事をしていた彼女は、オヤジ化して対さざるを得なかったのか。女性関係者では銚子でひとり登場しただけで、彼女はいたって影が薄く、男性の陰に隠れるように「女性的」にふるまっていた(この銚子の寂れたシーンはいい)。たしかにこういうエロ業界では、女優はうたかたのように通り過ぎる者であって、過去の証言者を探すのは難しいだろうし、探し当ててもインタビューに応じない可能性も高い。だから非常に男性に偏った証言になってしまう。そのなかで、今はもういない由美香だけが、どんどんオヤジ化されてイメージされていく。そこらへんが面白かった。男たちのイメージの中で、彼女はある種の祭司に祭り上げられていくが、それでいいのだろうか。彼女はほかのうたかたのような女優とは違った、っていうことが強調されていくが、小遣い稼ぎでチョコチョコっと業界を通過していった女性群たちのエネルギーこそ、もしかするともっと注目すべきものだったのかも知れず、うっかり業界に残ってしまいオヤジとなって死んでいった由美香さんは、こう祭り上げられるよりも、別の視点で見るべき犠牲だったのではないか、という気持ちもちょっとする。この映画が男のみの視点になってしまったことからくる単純さを感じた。もっとも男にもドラマはあり、子どもの出産の日が撮影日だった、という男優の話など面白かった。子どものためにも仕事に精を出さねば、とセックスシーンに励む。セックスと出産と子育てという本来哺乳類として密接に繋がっているものが、ずいぶんややこしい遠回りな関係になってしまっているおかしさ。そして「ラストシーン」。以上のような理由で、これは男だけの身勝手な祝祭でしかないと醒めて思う一方、関係者一同が揃ってくるとそれだけで、映画ならではの「たむけ」として心動かされてもしまうのだった。
[DVD(邦画)] 6点(2010-07-27 10:49:29)(良:1票)
85.  アブラハム渓谷
ナレーションに語らせる、つまりこれ弁士付き映画として徹底された世界。ま、ポルトガルに弁士付き無声映画はなかっただろうが。そこで登場人物すべてが何者かによって見透かされている感じになる。真正面から捉えるが、実体のない影のような人々。音楽も徹底して流す。一楽章まるまるとか。徹底すると言えば、みながエマに惹かれていくってのも徹底していて、下男や執事さえも。なんか『テオレマ』をちょっと思った。ヒロインの持っている軽蔑、男社会へ対してなのか、もっと広く現実すべてに対してなのか。ただそれを深い謎として展開するには、彼女若すぎた。表情も一本調子で、長い作品を持たせるには弱かったと思う。
[映画館(字幕)] 6点(2010-07-25 09:46:47)
86.  アバター(2009) 《ネタバレ》 
水面や波のCGなんか随分うまくなってるなあと感心したけど、ナヴィの世界が人間世界に切り替わるときの質感の違いは、やはり気になる。同一地平で起こっている出来事という共通感が得られなかった。CGの進化は、どうしてもアナログ的な実写からは遠ざかる方向にあるようだ。だからそれを生かす筋立てならいいのだろうが、この話の場合どうだっただろうか。その質感の違いは、車椅子の人間が元気に動き回れる夢としてのナヴィの世界として一番感じられ、自然保護テーマの物語としては、加害者側と被害者側がうまく噛み合ってくれなかった。そしてアメリカ映画の原型のような話の展開、無邪気なのは分かるけど、悪意がないからといってすんなり受け入れるわけにもいかない。インディアンが蜂起するとしても、その中心にWASPを置かないと落ち着けない大前提がある。それでラストでは主人公は敗北の側からスルリと抜け出してしまう。また、竹槍で近代兵器に対抗しようとし最後は神頼みで敗れていった歴史を持つ国の住民としては、あの展開はかなり鼻白む。エイワの神が助けに来た! って言われても、なかなか神風は簡単に吹いてくれないことを、あなたの国にいやというほど教え込まれたもので、理想を描いたオハナシだよとは思っても「なんだかなあ」である。住民たちの祈りのシーンは東宝にやらせてほしかった。ああやってただ祈ることに関しては、ハリウッドより年季が入っている。宙に浮く岩山って、すでにパン兄弟の『リサイクル』で目にしてるけど、あっちはただ浮いてただけで登ってはいなかったな。
[DVD(吹替)] 6点(2010-07-20 11:04:48)(良:1票)
87.  愛・アマチュア 《ネタバレ》 
ゴタゴタを全部切り捨てて一からやり直せたら、っていう再生への夢は、記憶喪失願望になっていく。酷薄だった男もイノセントになれる。イザべルのほうも「修道院ではどうも違う」と15年間思い続けポルノを書いてるってのも、なにか一種の記憶喪失的断絶を経た再生を待っているようなもの。この二人がやや受け身の転身願望なら、ソフィアは自分で男を突き落としてるんだから積極的。金を騙し取ろうとするのも、転身への準備ということか。それらの邪魔をするのが、悪の組織・あるいは警察ってところが物足りない。それは本来「世間」そのものであるべきで、それを相手とするのが大変なので、悪として処理しやすいものを引き出してきた、って感じ。つまり、はっきりした悪を相手とすることで、三人の連帯がたやすくなっちゃう。そこでドラマが弱まる。ラストは『ラストタンゴ・イン・パリ』の裏返しのような感じで、あちらは究極無名同士の関係を見事に語ったのに対して、こちらは認知する。「名前はトーマスよ」なんてセリフでもよかった。
[映画館(字幕)] 6点(2010-07-12 12:03:26)
88.  アイ・ラブ・トラブル 《ネタバレ》 
20世紀末、アメリカ映画は一本の作品を一つのジャンルだけで統一できないようになってきつつあり、ブン屋の取材合戦もの、というアメリカ得意のジャンルが、後半ドンパチに移る。そこにどうしても断層を感じてしまう。前半はいいのよ、だまし合いの楽しみ、リフレッシュとフレッシュと。でも観客ももうこういうのだけでは物足りなく思うようになっているんだろうなあ。サービス精神と思って納得しよう。この手の映画は後から考えると犯人の側の行動にヘンなところ・つまりもっと簡単にやれそうなのに大袈裟にしてしまってる、ってのがいっぱい見えてくるもんで、なにもわざわざ列車を転覆するまでも、とか、わざわざエレベーターを停めたり面倒なことしなくても、とか思ってしまうもんだけど、これもみんな親切なサービス精神と思って感謝しつつ観よう。
[映画館(字幕)] 6点(2010-07-07 11:55:43)(笑:1票)
89.  哀戀花火
ちょっとの火も危険と靴を履き替えさせられる花火工場、なるほど、ここぐらいメロドラマの舞台にふさわしいスリリングなところはあるまい。女主人は視線をそらして絵描きに話しかける。愛の火花が散っては危険だからだ。でも番頭との間には摩擦熱も生まれつつ、あぶないあぶない。恋愛映画はスリリングなのである。恋の発生の危険が現実の発火の危険と重ねられる舞台設定が秀逸。しばしばメロドラマが戦争を舞台にするのも、危険が満ちているからだろう。でも無粋な爆弾工場より花火工場のほうがロマンチックである。ちょっと役者(とりわけ男のほう)が物足りなかったか。黄河の両岸からの花火合戦よりも、そのあとの煙のたゆたいが美しかった。
[映画館(字幕)] 7点(2010-06-30 11:57:25)
90.  愛を読むひと 《ネタバレ》 
彼女の秘密とドイツの歴史との絡み具合がよくわかんなかった。どうも私のなかでピントがピタリと合わない。時代の罪と個人の罪の関係、とか、本当の意味で違う時代を裁けるのか、といった話だけなら、日本にも引き寄せてよく分かるテーマなんだけど、そこに彼女の秘密が入ってくると、かえってぼやけて感じられた。法廷のシーンはいいんだよ。最初にハンナの声が入ってきて、次に遠景の彼女が見えて、という段取りもいいし、裁判長もそう権威的でなく、いかにも戦後の「ナチズムを反省した市民」の代表って感じで、彼の正義感もよく理解できるようになっている。そこで時代の溝が、映画として生きている。個人にとって歴史というものの冷酷さが感じられた(ただほかの元女看守たちはやや造形が雑だった気がする)。法廷のシーンは緊迫していた。でもあの「秘密」によって、話のポイントがずれて縮む印象。なんか重要な点を理解し損なったのかなあ。住まいを定めるときとか、仕事に就くときとか、どうしたってそれを世間に隠し通せない場面が今までにもたくさんあっただろうし、そもそもこの法廷に至るまでの裁判の過程で、告発する側も弁護する側も、それに気がつかないってのは不自然なんじゃないか、やたら書類にサインさせる社会で。それほどいいかげんな裁判だったのかも知れないけど。いや、そういう女性の物語としてそれだけで完結してるのなら作品の設定枠として受け入れられるんだけど、歴史の悲惨に絡んでくるとなると、疑問。
[DVD(吹替)] 6点(2010-05-23 12:05:33)(良:1票)
91.  アポロンの地獄
かつて名画座という文化があったころ、イタリア映画の最後の黄金期に立ち会え、フェリーニ・ヴィスコンティ・パゾリーニ三羽烏の追っかけを随分した。フェリーニの幻想、ヴィスコンティの風格に対して、パ氏の粗削りな現代彫刻のような手触り。本作の、オイディプスがテーバイにたどり着くまでが、とにかく好きだった。パゾリーニの映画によく出てくるニヤニヤ笑いをする民衆、ってのが、王を巡る物語だけにとりわけ効いている。荒涼とした風景に不意に雅楽の笛の音が流れてきて、トントンと太鼓(?)が刻み出すと、“運命”が世界を覆ってしまう。こんなにも民族音楽が効果を持った例は少ない(『王女メディア』では三味線が聞こえたが、これは日本人には四畳半的に響いて失敗だった)。しかもこの“運命”はあきらかに悪意を持っており、託宣によって積極的に主人公を不幸に導いていくのだ、そもそも赤子を“不憫”と思う気持ちに乗じて、運命はことを始めたのだし。もっともこの映画、古典悲劇の分析よりも、一つの世界の提示として強烈で、どこかの名画座に掛かっていると、好きな音楽を繰り返し聴きたくなる心境で、ついフラフラ行ってしまう麻薬のような力があった。非道な運命に対抗する荒ぶる王をやったフランコ・チッティ、パ氏の常連となったが、監督の没後はどこをさすらっているかと思っていたら、『ゴッドファーザーPARTⅢ』にチョイ役で出てきたのにはグッとさせられた。
[映画館(字幕)] 10点(2010-04-20 12:05:16)
92.  アウトブレイク 《ネタバレ》 
ペストの時代から疫病というのは半分社会問題であった。D・サザーランドが「言ってみれば、この人々は名誉の戦死なのだ」という論理。彼が常に口にする「センチメンタル」という批評、ここらへんに一番の怖さがあった。日本にもよく「センチメンタル」で切り捨てる知事がいるでしょ。多数と少数の問題。多数の側に立てば、あらゆる人道的発想はセンチメンタルとして扱われるだろう。小さな町が軍に封鎖されてからが本筋。なあに脅しだけさ、と逃げた車が容赦なく爆破される。不意に少数の側に区分けされてしまった市民、こっちの側に立てば「センチメンタル」などと言ってられないのだ。そうは言っても多数の側に立てば、やっぱり安全を考えちゃうだろうし。そこらへんの問題。多数はこういった少数の集積であるって考えが大事なんだろうね。アメリカ映画でいいのは、主人公が組織の問題児ってところ。勇気ってことも絡んでくる。それと責任ってことか、責任から逃げない。そういう本筋の健全さが偉い。D・ホフマンをつかまえにきた軍に、レネ・ルッソが「背の高い男よ」と教えるところは、もっと笑っていいんじゃないか。
[映画館(字幕)] 8点(2010-04-19 12:00:10)(良:1票)
93.  嵐が丘(1953) 《ネタバレ》 
この映画、個々の文章は文法間違っていないのだが、全体を読み通すと異様な文体、って感じ。エキセントリックな登場人物たちが、なんのフィルターも掛けられずに、そのまま動き回る。普通だったら、もうちょっとドラマとして整えようと、理解しやすい面も取り入れるのに、愛と憎しみの感情以外はすべてシャットアウトし、煮詰めてしまう。ラテンの血か。だから登場人物たちは、ボヤーッとしている時間は許されず、いつもパンパンに感情が詰まっている。そういう人物が存在することを観客に説得させようなんて気はなく、もう既定の事実として画面にある。こんな夫婦ありえないだろ、なんて疑問をはさむ余地を与えない。ここにあるんだ、と突きつけてくる。そうして観客はブンブン振り回されて、ラスト、ワーグナーが渦巻く中、銃を持った憎しみの男と、愛する女性の花嫁姿が重なる瞬間、なるほど、感情というものの原質はこれか、とそれに立ち会った気にさせられるのだ。ここの高揚感はすごい。数ある『嵐が丘』のなかでも私が知る限り一番不親切な映画化であるが、作品の核心だけを描いているからだろう。冒頭が『スサーナ』とまったく同じで(魔は窓からやってくる)、中盤の結婚が『エル』と同じ(式を挙げたら変な男)。ブニュエルの世界はつながりあっている。怯える子どもってのも、ブニュエルの好むモチーフか。怯えながらも、豚を屠殺する木の串を一心に削っているのが不気味。
[映画館(字幕)] 6点(2010-04-08 12:00:18)
94.  ある映画監督の生涯 溝口健二の記録
神話化の裏にある俗物的な部分がちろちろ見えるのが興味深かった。官尊民卑的なところがあった、との川口松太郎発言は、単純に「底辺からの視点」って誉め言葉でくくって済ましてしまう評価をえぐる(19世紀生まれの人の限界ということか)。中国へ行くときは将官待遇でなきゃやだ、とゴネたとか。あるいはヴェネチア映画祭のホテルで香を焚いて入賞を祈ってた、なんてのも面白い。なんとなく泰然とした印象を醸してた裏に、そういう人間味もあった。もちろんそういう人間だからこそ、あの美しくもネットリとした奥行きのある世界を構築できたのだろう。具体的なシーンについて発言しているときは、もっとオリジナル作品の映像を取り入れてほしいところだが、著作権とかで難しかったのか。ときにインタビューに誘導気味のところがあるような気がした。『雨月物語』の森の帰宅シーンの気合いの入り方を語る田中絹代のシーンは凄味があった。ぎりぎりのところで仕事をした人の貫禄と言うか。森さんがふっと煙草をくわえると、監督自らがライターを点したそうな。映画のそのシーンも美しいが、撮影現場のそのシーンも劣らず美しい。依田義賢が『雨月』『近松』はちょっとすましているところがある、と発言しているのには、なんとなく同感。
[映画館(邦画)] 7点(2010-04-05 12:05:55)
95.  愛なき女 《ネタバレ》 
よくまとまった小品というところ。特別ブニュエルならではってとこは感じられなかったけど、憎悪を描くと微妙に過剰になる感じはある。けっこうブニュエルってうじうじした男を描くのが好きで、これもそう。弟や母へのうじうじした不完全燃焼の思いが、これでもかこれでもかと続く。だからラストの和解がちょいとアッケなさすぎる気もしたが、とってつけたような八ッピーエンドはこの監督でよく見かけ(『スサーナ』とか)、なんか陰でブニュエルが大笑いしているような感じもあって安心できない。窓越しにうじうじ見るって場面がブニュエルはことのほか好きらしく、『嵐が丘』や『エル』にもあった、ここでも弟と婚約者を窓越しにうじうじ。あと老人と若い妻って組み合わせもよくこの人の映画で見かける、しかしブニュエルだけのモチーフと決めつけるのは早計かも知れない。映画とは関係ないけど、モーパッサン嫌いだった夏目漱石がこの「ピエールとジャン」だけは気に入っていた、ってのは、なんか「行人」につながるものがあるからだろうか。
[映画館(字幕)] 6点(2010-03-26 12:00:09)
96.  アポロ13
面白い題材をいかにもハリウッドらしくソツなく料理したという一編。難関に次ぐ難関を一つ一つ乗り越え、家族の反応なんかも折り込み飽きさせずに楽しめるが、結局それがそうであっただろう生々しさから遠ざかってしまった気もする。3回目だというのにもう飽きている大衆が背景にあって、家族よりもこっちをもっと突っ込んだほうが面白かっただろう。事故になった途端飛びついてくるテレビ。なるほどと思ったのは、もうコロンブスなどの個人の英雄の時代ではない、ってこと。どこまでも可能性を求めていくスタッフの冷静な姿勢が現代の英雄的行為なのだ。四角と丸の空気清浄器をあれこれ繋ごうとする。ライカ犬とは違うんだ、と生理データ器具を取り捨てる、なんて意地も見せ、困難を前にチームの和は固まり、無関心だった娘が家族の愛に戻ってくる、といったアメリカ人好みの「教訓」もいろいろ揃えてあります。
[映画館(字幕)] 7点(2010-02-26 11:08:06)
97.  網走番外地 北海篇 《ネタバレ》 
東映のヤクザ映画はだいたい新宿昭和館という名画座で観てて、ここは本物のヤーサンと並んでヤクザ映画を鑑賞できるという貴重な体験ができるとこだった。トイレで二人きりになったりすると緊張したものだ。ほかにも「一般市民」とはとうてい言えないいろんな異形の観客が平然とあたりにいて(ヘルメットかぶって頭との隙間にぐるりとチラシをたくさん差し込んでいるおじいさんとか)、思い出すと懐かしい。休憩時間には川中美幸の演歌が流れたりしてた。でこれ、アクション映画という前に、トラックに乗り合わせた人々の人間模様ドラマいう面がある。経営者の娘、ワケアリッぽい杉浦直樹、骨折した娘とその母、自殺未遂の女、それに若造と安部徹とくる。こういった面子なら安部徹がどうしたって目立つ。彼以外は善の方向を向く結末になるわけ。重厚な健さんの新作が次々作られていたころ観たので、チンピラ役は若干痛々しかった。男がムショに入っている間、嫁はしっかり姑に仕えてうんぬん、というのはちょっと無茶だな。
[映画館(邦画)] 6点(2010-02-01 12:06:42)
98.  愛の地獄(1994) 《ネタバレ》 
いわゆるオセロ症候群てヤツか。それでいて実際に妻が不貞をはたらいている余地を残しておき、曖昧に断ち切る。いかにもフランスらしい、キレよりもコクの世界。結局中心にあるのは「深まる疑い」という一本のベクトルだけなんだけど、それこそサスペンスだ、ってんでしょうね。尾行をする場面で、映画は生き生きする、個人的な視点だからか。嫉妬というのは、すべての材料を悪いほうへ悪いほうへととめどなく勘繰っていく装置で、ひとたび作動すると、そのとめどのなさがスリラーになっていくんだ。ラストで冒頭の風景が繰り返されるが、もう自転車はやってこない。水上スキーのシーンって、おそらくボートのおしりで撮影するんだろうけど、撮影シーンを想像するとおかしい。
[映画館(字幕)] 7点(2010-01-26 11:57:59)
99.  愛のむきだし
アクロバット盗撮の馬鹿馬鹿しさなんか好みだったし、「罪作りな神」としてのカトリックとその家庭ってのも日本では珍しい題材で、そうねえ、タイトルが出るくらいまでは興味が湧いた。なんか去年の『実録・連合赤軍』みたいな、作品を洗練させようとしないことでエネルギーを溜め込んだ映画になるのかな、と思って観続けたんだけど、でも、ならなかった。中盤「さそり」のあたりで無駄に長く、そのスカスカ感が最後まで続き、私は気が抜けた。ゼロ教会ってのが自明の理として邪教集団になってるのが話を薄っぺらくしていて(そいつらなら殺しても倫理的にかまわないらしい)、まあこの薄さは作者の狙いのようだけど、そのかわりとなる手応えは用意してくれなかった。ただ、ゼロ教会の「小池さん」やった安藤サクラの、性格悪そうな腫れぼったい顔の気味悪さは強烈で、特別演技をしてない場面でとりわけよく、中盤からは彼女の出番を楽しみに観ていたようなもの。これって変態ですか。
[DVD(邦画)] 5点(2009-12-30 12:12:06)
100.  赤い砂漠
まあいつもながらの活気のない映画で。ピントの外れた風景を長く捉え残しているので、非常に不安定な感じがかき立てられる。色彩は工場の原色を基本にしているようで、赤や緑が不健康さを強調している。対照的に南の海の健康な輝きがあった。定住する心と移動する意志との関係がテーマらしいんだけど。愛する人で壁を作りたいというようなことを言っていた、それで何を防ごうとしているのか、あるいはその壁のもろさを言いたいのか。子どもの仮病は自らの意志で移動することを拒絶した、ということかな…。などと散発的な感想は生まれるんだけど、どうもまとまらない。あくまで感覚的に捉えればいい作品なのだろうか。霧の中にたたずむ他人たち、などはかなりコワイ図だった。とにかくヒロインが、もうここにはいられないと思いながら、身動きが取れなくなっているのはよく分かるんだ。それをもっと突っ放してもいいんじゃないかなあ。風景はどれもこれもやたら寂しい。
[映画館(字幕)] 6点(2009-12-01 12:00:42)
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