Menu
 > レビュワー
 > Nbu2 さんの口コミ一覧
Nbu2さんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 344
性別 男性
自己紹介 「昔は良かった」という懐古主義ではなく
「良い映画は時代を超越する」事を伝えたく、
 昔の映画を中心にレビューを書いてます。

表示切替メニュー
レビュー関連 レビュー表示
レビュー表示(投票数)
その他レビュー表示
その他投稿関連 名セリフ・名シーン・小ネタ表示
キャスト・スタッフ名言表示
あらすじ・プロフィール表示
統計関連 製作国別レビュー統計
年代別レビュー統計
好みチェック 好みが近いレビュワー一覧
好みが近いレビュワーより抜粋したお勧め作品一覧
要望関連 作品新規登録 / 変更 要望表示
人物新規登録 / 変更 要望表示
(登録済)作品新規登録表示
(登録済)人物新規登録表示
予約データ 表示
評価順12
投稿日付順12
変更日付順12
>> カレンダー表示
>> 通常表示
1.  アラビアのロレンス 完全版 《ネタバレ》 
私を映画ファンに仕立たのは間違いなく「燃えよドラゴン」と「雨に唄えば」、そしてこれ。この作品は間違いなく全ての芸術作品もひっくるめて後世に残すべき文化遺産である!と声を大にして訴えたい。「清潔な」砂漠を愛した一軍人が歴史と民族の諍いに巻き込まれ英雄となり、その手を血に染め敗残者として記録から姿を消す。歴史の記録/記憶の作られ方や人間(民族)の倫理観や行動について考えさせられただけでない、自分にとってこの映画は「個の確立(砂漠を越えた後のあの『Who are You?』は深い)のあり方」そして強い意志を持って未来を乗り越える事の素晴らしさ(逆に今になってみるとそういった希望はなかなか叶わない難しさも感じる)を教えてくれた。なおかつこの映画は絶対にCGでは再現不可能な、人間の息づかいがスクリーンからあふれている!役者も音楽もなにもかも素晴らしいがやっぱりここは名匠デビット・リーン(=この人の作品に流れる「異文化コミュニケーション」の取りあげ方は現代の社会でも十分議題に挙げられるべきテーマでまったく古くさくない)のテクニックに堪能しよう。何回見ても飽きないし毎回新たな発見があるこの映画、ぜひ機会があればスクリーンで堪能ください。テレビ画面ではこの映画、多分7点くらいでしかない!
[映画館(字幕)] 10点(2012-06-16 09:50:36)(良:1票)
2.  雨に唄えば 《ネタバレ》 
ちゃんちゃらちゃんちゃんちゃ~、ポーン!(ケーキから出てくるデビー・レイノルズ!)このシーンで僕は映画を見続ける事の幸せを感じ、今でもその感動を追い求めているのだなぁと思う。時代が変わり、技術が進歩しようとも多分このような感動は永遠にあせない、そんな映画。(悪声スターを演じたジーン・ヘイゲン(好演!)の扱いだけかな、あえて不満と言えば。)
[映画館(字幕)] 10点(2006-10-19 21:23:05)
3.  赤い風船
スクリーンに投影された本当の「ファンタジー」映画。
[ビデオ(字幕)] 10点(2006-04-16 13:01:45)
4.  暗殺の森 《ネタバレ》 
監督の伝えたい事を念頭におきつつ、台詞からではなく 「映像上の隠された比喩や引用から意図を想像する」 そんな映画の楽しみ方を伝えてくれたという点で印象的な1本。  原題「体制順応主義者」とは主人公マルチェロその人を指すだけでなく、 イタリアのファシズム政権を誕生させてしまった数多くのマルチェロ =社会に無関心・無責任な大衆への糾弾を伝えたかったのではないか。 年少期の出来事が影響したとはいえ信念の欠けた、未熟な生き方を 続けてきた男は(落語で言う「でも医者」ならぬ)「でもファシスト」。 反体制を主張する恩師の調査追跡によって感じたのは自身の生き方とは 真逆の、「人権を声高に主張し自由に生きている」人間の姿。  女性二人のタンゴ。平凡な生活を余儀なくされていた婚約者が 恩師の若い妻と踊るそのシーンは、女性としての真の生き方ってのか 心身の解放を教授してもらうというシーン、だと思ってる。  人間らしい生き方に触れたにも関わらず、全く動かない主人公。 恩師を暗殺する段になっても、その対応を同僚になじられる。 大勢の暗殺者によってナイフでめった刺しにされる恩師の様は 「無責任な大衆によって少数の良心は潰される」様を見ている様で 痛々しい。一度は気にかけた恩師の妻が惨殺されてゆく様子を ただ車窓から見ているだけ。無関心が悲劇を増大させる。  でそんな情景を映し出す映像美。巨匠ヴィットリオ・ストラーロ30才。 青・赤・白を多用した色彩は主人公のフランス旅行に結びつくだけで 無く、国旗:トリコロールにも関連付けられてるとは今回知った事実。 青:自由/白:博愛/赤は平等なんだけど、どちらかというと暴力に よる流血と合わせて、「血の色は同じなのに考えが異なる多様性」 を明示した隠喩と思っている。あと光と影の使い方。「カラヴァッジオ (イタリアバロック絵画の巨匠)を参考にした」との事だが、絶対これ エドワード・ヤン、影響受けてんだろ。「牯嶺街少年殺人事件(’91)」  ラスト、主人公夫婦にとってあのフランス旅行の喜びは一過性 でしかなかった事に愕然とさせられる。そしてファシスト政権の 崩壊と同時に目撃した出来事。何もかも失ってしまった主人公 はどう感じたか。「おまえら全員ファシストだ」  自分は無責任な傍観者になってないか? 映画館を後にする自分にも、その声は響いてるのだ。 長文失礼しました。
[映画館(字幕)] 9点(2023-11-06 20:52:08)
5.  有りがたうさん 《ネタバレ》 
いつまでもこの作品世界に浸っていたいと思いながらこの映画を観ていた。それは上原やその他の出演者が醸し出す温かい人柄だけではなく、短いショットとフェードの繰り返しによって観客に心地よいテンポを感じさせてくれる監督清水の技量によるものではないか。もう一度述べさせていただきたい。時代によって今の観客にはわかりづらい点・録音映像の見辛さは多々あれどこれこそ元祖「癒し系」ムービー、ゆったりと浸っていたい。ほっこり。
[映画館(邦画)] 9点(2012-01-03 10:47:28)
6.  赫い髪の女
久方ぶりにDVDで再見しこれは「ロマンポルノ」という範疇を超えた、素晴らしい名画であることを再認識した次第。ブックレットには「体を貪り合う事でのみ結ばれた男と女の澱んだ関係」とあるが個人的にはまったくこれ、澱んでいない。彼らは体を求め合う事でのみ自分の生を実感している、寂しさを抱えた男女なのではないか。それには「澱んだ」という言葉よりも傷ついた心そして体をいたわり合っている「優しさ」が垣間見える気がする。もちろん主演の二人の好演もさることながら、憂歌団の音楽もまた良い、監督神代の名作。
[映画館(邦画)] 9点(2007-02-03 19:41:48)(良:1票)
7.  赤い殺意(1964) 《ネタバレ》 
今村映画の常連小沢昭一は、「土着的な雰囲気をかもし出す都会人監督(都会的なセンスをかもし出している地方出身の川島雄三の対比として)」と説明しているが、自分が好きなのは登場人物を取り巻く苦しい因習や環境に対するパワーの源が泥臭い土着的なイメージで表される「ど根性」、そして恵みを与えるかのような母「性」(だから男は皆情けない人物ばかり)。またかなり陰惨な話にも拘らずその土地の「方言」が妙にホラ話的な感覚を与え、とぼけた味わいをかもし出す。ここに私などは楽しみを覚えるんですね。(だから陰惨なだけの「楢山節考」、中途半端なエッチぶりの「うなぎ」などはちっとも面白くないわけです) でこの話。仙台(その頃はまだ田舎の地方都市)でひ弱な男と生活している風采の上がらない主婦(春川ますみ好演)がある日見知らぬ男に乱暴されてから女としての自信を取り戻し、たくましい女になってゆくという話を「今村節」というのかパワー全開で展開させています。「にっぽん昆虫記」と並ぶ、彼の名作ですな。長々と失礼しました。
[映画館(邦画)] 9点(2006-06-05 22:59:51)(良:1票)
8.  アルゴ探険隊の大冒険 《ネタバレ》 
今年度の「午前十時の映画祭」で一番楽しみに してたの、もしかして本作品かもしれない。 人生初のハリーハウゼン、劇場体験というポイントで+2点。  個人的に好感が持てるのは、映画の肝がハリーハウゼンの特撮 である、と認識した上で演出/編集/音楽等がそれを盛り上げる為 のフォローを惜しまなく実行している事。モンスターの行動に対して いちいち演者がリアクションをするカットを律儀に入れていたり、 おどろおどろしさ溢れるベタな音楽もスクリーンで聴くと心地よい。  常日頃から「ハリーハウゼン=文楽(歌舞伎)」説を主張し 私は友達から馬鹿にされているのだが、あえて力説しておきたい。 彼の造形したモンスター類はモデルアニメなので、滑らかな 動きを要求される。この作品自体、ストップアニメの撮影等で 2年の年月をかけて(特にラストの骸骨剣士×7体とのバトルは 4ヶ月かけたそうな)るのはそういった自然な動きを求めてのもの。 ただ彼のモデルアニメの演出には決まって「溜め」の動きがある。 プラスチックのモデルに命を吹き込む作業として彼は、実際の 動植物の動きを参考にし、クリーチャーが動く直前のコンマ秒を 「溜め→瞬発→起動」の流れで撮影してる、そこに「藝」を感じる。 そしてそのワンテンポ留まった瞬間が私にとって文楽や歌舞伎の 「見得を切る」仕草に被るのだ。後世に残るだけの映像作家っぷり。  今回劇場で拝見してヒュドラの顔(7つ首)がそれぞれ表情が異なる 細やかさ、あと骸骨剣士の持っている盾や刀、槍の造形の違い あとタロス像の間抜けっぷり(笑)がより堪能できたのも好印象。  さあ、そこな映画ファンの皆様、 劇場に足を運び心の奥底から叫ぼうではないか、 「よっ、ハリー、千両役者!!」と。  てか、おじさんには最近のCG表現の乱雑ぶり、疲れるんだよな...。
[映画館(字幕)] 8点(2023-08-04 19:22:07)
9.  あらくれ(1957) 《ネタバレ》 
成瀬作品の魅力の一つとして感情を台詞で説明するのではなく 演者の視線や表情・動作等で示す「見せない・隠した」演出方針があると思うが この作品は彼の作歴上珍しく、感情や欲望含めて「さらけ出す」事に 重点を置いた人物/環境設定が私には意外であり、面白かったのでこの点数。  五代目古今亭志ん生の高座中、禄でもない男と付き合う女性の心境を 「だって寒いんだもん」で説明する小咄がある。まさにこの感情を地でゆくヒロインお島。 彼女を取り巻く環境も、付き合ってゆく男たちもどうしようもなく酷い。 (私の好きな男優・森雅之/志村喬/加藤大介/宮口精二/田中春夫、みなグズだからワクワクする) 「あらくれ」である彼女はこういった境遇から抜け出す器量も度量も才覚もあるはずなのに、 「寒い」から抜け出せない。脚本水木洋子も過去の「浮雲(’55)」に比べて性愛肉欲から 抜けきれない感情をこの時代にしては深く掘り下げてきた点、注目。  作中劇「金色夜叉」に表れる皮肉も効いてるし、 感情の発露がラストの夫の愛人との喧嘩に結びつく展開も良い。 「浮雲」が苦手な皆様、こちらをぜひどうぞ。 ようやく昨年2021年にDVD化されたので、機会があれば。 (成瀬作品初心者には①「おかあさん(’52)」⓶「稲妻(’52)」③でこの作品か 「女が階段を上る時('60)」をどうぞ。「浮雲(’55)」 「乱れる(’64)」はその後で)
[映画館(邦画)] 8点(2022-02-06 16:14:43)
10.  アパートの鍵貸します 《ネタバレ》 
隣人とは仲良くしておこう。という一言で片付けていいくらいの都合良すぎる話と思う。ただここは役者・演出・脚本の三拍子がそろっている分あざとらしさ、嘘くささが感じられないのが上手いところ。ワイルダーの手にかかれば割れたコンパクトも、テニスラケットもシャンパンも帽子もひからびたパスタでさえ魅力溢れる小道具に早変わり!「蛍の光」がこれほど印象的に使われている映画はない、という事もあげとこうかな。ラブコメディの古典。
[映画館(字幕)] 8点(2010-12-26 19:01:10)
11.  赤い天使 《ネタバレ》 
監督増村と若尾文子(様)コンビは次の「華岡青洲の妻」で終わりを迎えるが、この作品でやること全てやりきったのでは無いか、という位の日本映画史上に残る「ド変態映画」。彼女にとって「身体を求める事」は常に死と隣り合わせであった状況下での生きている証であり、「身体を与える事」は血塗られた看護婦として残された最後の仕事・奉仕であったという厳しさ。敵の大群が攻め込んでくる中軍服コスプレプレイをしている、という時点でどうかしているのだが下手に裸を見せるよりも物凄いエロティシズムを感じてしまうのは自分だけか。戦場下で「人間性」など無意味である(バケツに無造作に突っ込まれた足や手の残骸!)事をうたいあげたこの作品は増村にとっての「反戦映画」なのだろう。ただHなシーンはともかく戦場/病院の描写、きっつーい。とりあえず増村+文子(様)コンビの映画は年代順で鑑賞すること、切に願います!
[映画館(邦画)] 8点(2010-09-12 19:25:52)
12.  ある日どこかで 《ネタバレ》 
「主人公が余命幾ばくもない事/偶然見かけた美人女優のポートレートに惹かれ調べてゆく内に実は過去に...」という設定にした原作の方が話の流れとしては自然なのではないかな、と思うのだが「映像化」という意味ではとても上手く出来ていると思いますよこれ。ジョン・バリー+ラフマニノフの音楽・俳優の演技(役者リーブはこの映画で100年後の映画ファンに名を残す演技をした。断じてクラーク・ケントの人では無い)、主人公が惹かれたポートレートの裏話。そしてそしてラストシーン。もちろん原作も彼女との結びつきを暗示して主人公はあの世へ向かうのだが、「絶対このようにして彼らは再会している!そうに決まっている!!」とばかりに映像として具現化されちゃうと、「時を越えて二人は永遠に結ばれたんだ」という思いが湧き出てたまらないんですよね。初見は大学生。ヌーベルバーグだなんちゃらと言ってた頃には甘っちょろい話だと蛇蝎の如く嫌っていたくらいだが、今なら言えよう。新しい波、どっか行け~! 愛しい皆様と観賞下さい。
[ビデオ(字幕)] 8点(2010-08-14 11:23:36)(良:2票)
13.  悪魔のいけにえ
これは最大級のほめ言葉なのですが、映画を見ていて本当に不快な気持ちになったのは後にも先にもこの一本だけ。訳わからない、気持ち悪い、耐えられない。この映画ばかりは映像がどうとか、演技がどうとか語るよりも実際に見て感じるしかないそんな一本。しかし「ゾンビ」と共に後の文化・芸術に多大な影響を与えた金字塔にも関わらず撮った本人はまったくその勢いや流れに乗り切れなかった、という所がまたトビーらしい、というのかなんと言うのか。映画ファンにとっての「劇薬」。
[ビデオ(字幕)] 8点(2006-05-07 19:15:24)
14.  ある結婚の風景 《ネタバレ》 
倦怠期を迎えた夫婦が紆余曲折を経て離婚。離婚時はいざこざがあって大変だったが、時がたち新しいパートナーを得た二人が再会した時は昔の思い出を落ち着いて話す事が出来ました。文章にすればこれだけの内容だけど、ベルイマンが示した3時間の内容で語られるその実態は身もふたもない。設定としては知識人の家庭で子供もいてという事から理知的な会話をするかと思えば、感情に走っているときのその行動はまさに雄と雌。最初は何らかの妥協点を見出す努力をそれなりに行い、何となく離れがたい振りをしているが、一旦相手に対する嫌悪感があふれだすと、もう止まらない。自分達の性生活に対する思いをあけすけに語り、傷口に塩を塗りゴシゴシとこするような振る舞いや言葉の応酬。主演2人の演技合戦を(特にリブ・ウルマンの存在感)見ていて疲れてしまった。「理想的な夫婦生活」でも起こりうるかもしれない結婚生活の危機と破滅をこれでもか、と見せていただきましてもうお腹満腹っす。マイナス点は子供の存在がありながら、それに関してあまり触れていない事。
[ビデオ(字幕)] 8点(2006-04-20 02:54:43)
15.  遊び 《ネタバレ》 
「2023年:大映4K映画祭」関連企画で初めて劇場鑑賞。  私が増村監督を知ったのはテレビドラマ:山口百恵主演「赤い衝撃(’76〜)」、 堀ちえみ&風間杜夫主演「スチュワーデス物語(’84〜)」(脚本)位から。 少年期の私からすれば「なんちゅう暑苦しく、クドイ作品なんだ」と感じてたけど、 彼の経歴を辿ってみればTV界における彼の業績は「才能の出涸らし」でしか なかった事がわかる今日この頃。そりゃ「盲獣(’69)」みたいな世界観、 より大衆性を求められるテレビでは絶対に出来るわけないもんね。  青春映画「くちづけ(’57)」で監督デビューした彼にとって 最後の大映作品となったこの一本が青春譚になったのは 大映在籍時にやりたい事全てやりつくしただろう彼が、 生涯のテーマ「感情を露わにする、近代的人間像 を日本映画に打ち立てる」への原点回帰として 取り上げたのではないかな、と個人的には感じてる。  アメリカンニューシネマから影響を受けたと思われる 若者二人の逃避行を描くこの作品、突然挿入される わかりづらいフラッシュバック(過去の回想)とか 大門正明の台詞廻し等、鬱陶しい展開の上 「若さ故のあやまち」から来る悲劇感ありあり。 でもなんかその若さがその悲劇を打破してくれる、 という希望も感じさせる雰囲気に包まれてる作品で 自分にとって好印象なのでこの点数。 それを強調しているのがこの年16才(!)の関根恵子 のヌード/濡れ場シーンとボロ舟を押しながら川へ流れゆくラスト。  日本青春映画の佳作としておすすめ。機会があれば。
[映画館(邦画)] 7点(2023-06-20 19:56:33)
16.  あゝ声なき友 《ネタバレ》 
「もっと上手くできたんじゃないのかなぁ」というのが率直な感想。戦没兵の遺書を遺族へ届ける為、日本各地を旅する男を渥美清が演じたロードムービー。役者渥美清が映画化を熱望し、個人プロダクションを立ち上げてまで作品化した意図は明白。復興に沸く社会の光が届かない、戦争の影や闇に未だ苦しみもがいている人達に焦点を当てるなんて題材は戦後四半世紀が経ち、少しずつ記憶が薄れつつあるこの時期だったからこその上映だったんだろうな。がこの作品、評論家からは酷評・興行的にも失敗。渥美清にとってはこの映画の失敗によって、役者スケジュールを「年2回の寅さんと松竹大作へのゲスト出演」にシフトし、観客の求める「寅さん(もしくはそれに近いキャラクター)」に専念する事を決定づけた1本になっちゃったと自分は思ってる。70年代は戦争体験者が社会構成上まだ多かったであろう時期、「戦争がもたらす悲劇」を描くのはリアル過ぎると不快を覚える観客もいたろうし、といって現実から離れた絵空事みたいに描けば作品を世に出す意味は薄れる。個人的には最近の調査で「太平洋戦争下における兵士の死亡原因の6割は飢餓・もしくはそれに伴う戦病死である」旨を知っている分だけ、その背景にはもっと奥深い、闇の深淵が広がってる題材と思うのだけどすべてを映すのには限界があり、その点が自分の感じる「もっと上手くできなかったのか」につながる。(同じ1972年に深作欣二が東宝で「軍旗はためく下に」を先に上映してるのも大きい)NHK等のドキュメンタリーでも「届かなかった兵隊の遺書」テーマは扱う様になってはいるがそれでも90〜2000年代。やはり早すぎた企画だったんだろう。この映画のポイントは「渥美清の役歴上、もっとも陰のある役柄」。世評では「拝啓天皇陛下様(’63)」などが挙げられるが個人的にはこっち。この題材こそ現在リメイクしてあげるべき、なんだろうな。機会が有れば。
[映画館(邦画)] 7点(2023-01-28 12:25:06)(良:1票)
17.  愛のコリーダ 《ネタバレ》 
吉蔵演じる藤竜也にレビュー点数全振り。  70年代の修正版リバイバル→2000年完全ノーカット版 →2009年クライテリオン版無修正ブルーレイ→2021年2Kリマスター、が私の鑑賞履歴。 因みに無修正度は丸見え順に無修正ブルーレイ>2021年リマスター>2000年>修正版。  この映画の困った点はあまりにも性器のクロースアップ・性交描写が露骨過ぎるので どんなに大島監督が芸術作品である、とうたっても、周りからは「わいせつじゃん、これ」 と片づけられてしまう事+性描写に尽力注ぎ過ぎで肝心のストーリーが薄い、という事にある。 阿部定事件を描いた作品としては前年に制作された監督田中登/主演宮下順子の 「実録・阿部定('75)」の方が事件の背景・心情もわかりやすい。  ただ私はこの作品、「性愛の行く末」を描いた映画として当時の世界映画史上 徹底的にやり切ったという点に評価をしてあげたいし、何よりも藤竜也のキャラクター に尽きる一本だと思う。「女からの狂おしい愛情を受け止め、死に至るまで付き合う」 という概念は当時の男尊女卑の風潮から考えたら有り得ないだろう感覚で、 『この出演依頼から「逃げちゃいけない」と思った』という藤竜也の想いがちゃんと 表れている事に(実際、彼はこの映画出演により所属事務所を退社し、 約2年間、映画界から締め出される=休業)感心しつつこの点数。  個人的には大島監督の小難しい主張が炸裂する「日本の夜と霧('60)」、 「絞首刑(’68)」「儀式(’71)」よりは好き。機会があれば、と言いたいけど 兎に角露骨でございますので、その点はどうぞご勘弁。
[映画館(邦画)] 7点(2022-06-22 13:21:54)
18.  仇討(1964) 《ネタバレ》 
前作「武士道残酷物語(’63)」監督今井正+主演中村錦之助コンビが橋本忍のオリジナル脚本を使い、改めて武士社会の理不尽さを描いた作品。だけど「橋本忍脚本+武士社会への糾弾」というテーマでは小林正樹「切腹(’62)」「上意討ち・拝領妻始末(’67)」が有名で、この作品にあまり触れられないのがちょっと残念だ。武家社会において「仇討を果たさない限り主家の名誉(武士道)は回復しない」という風潮の中、些細な事情から正当防衛で上級武士を殺してしまった下級武士の主人公は武家社会からは討たれるべき対象となり、一般社会からは抹殺されるべき憎悪を向けられる。可愛がっていた弟分が家の名誉回復の為、討ち手として仇討の場に出てくる事を知り、男は刃引きした刀を持ち果し合いの場へ出向く。そこで彼が見たものは...。理不尽な境遇に追い込まれた哀愁感漂う演技から最後、狂気を込めた大爆発と壮絶な仇討シーン、と中村錦之助の演技力がやはりこの映画の白眉。仲代達矢も三船敏郎も怒りは演じれるけど、悲しみや哀愁を感じさせる演技は出来ない。ラストの悲劇性がちょっと薄いかなぁという事でこの点数にしたけど、個人的には好きな一本という事で機会が有れば。(ってか東映ビデオ、中村錦之助作品のDVD化もう少し頑張って下さい。)
[映画館(邦画)] 7点(2021-05-31 20:55:01)
19.  あした晴れるか 《ネタバレ》 
「芦川いづみの魅力は『憂い顔』(風船/洲崎パラダイス・赤信号/陽の当たる坂道)だ」と小生は言う。友は「笑顔が素晴らしい(乳母車)」「大人の魅力(嵐を呼ぶ男【渡哲也版】/若草物語)」「幸薄い美少女も素敵(佳人)」そしてここに「ツンデレ」コメディエンヌも継ぎ足そう。話に齟齬があるというのは野暮ってもの、これはアイドル映画なのだからキャラクターに魅力があればそれで十分なのだ。久しぶりにスクリーンで鑑賞したが今回改めて強く感じたのは、この様な小品に渡辺美佐子/中原早苗/高野由美といった他社作品なら主演級の若手俳優を惜しげもなく助演として投入し、三島雅夫/東野英治郎/殿山泰司という多くのベテランで脇を固めている→「日活」という会社の当時の勢い=映画が流行の最先端であり発信地であった事実そのものでありました。もちろん監督中平康の映像テクニックが、この映画の魅力に貢献しているのは間違いない。生きてるうちに中平+芦川いづみの「結婚相談(’65)」見てみたいなぁ...。
[映画館(邦画)] 7点(2019-04-12 07:29:56)
20.  ある戦慄 《ネタバレ》 
正直言えばもう少し尺を短くしてもらいたい気もするが(特に地下鉄内の「出来事」が始まる前の人員紹介。ただその情景を延々と見せつける事で彼ら=我々観客自身の投影であること、併せてその焦燥やいらだちが引き立つ効果があるのも承知)なかなかの一本ではないか。深夜の地下鉄内で暴漢に絡まれる乗客は自分が巻き込まれなかった事に時に安堵し、他人の苦しみを見過ごし勇気を持って対応できず結局他者任せでなあなあに事を終わらせるという結末。まったくすかっとした気分になれないからこれは「隠れた一本」になったのでしょう。戦病軍人・黒人・同性愛者をこの時代から取りあげていた、という点もポイント。
[DVD(字幕)] 7点(2012-05-13 14:46:46)
000.00%
120.58%
282.33%
351.45%
472.03%
5133.78%
6277.85%
78324.13%
810329.94%
96017.44%
103610.47%

全部

■ ヘルプ
© 1997 JTNEWS