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1.  カフェ・ソサエティ 《ネタバレ》 
撮影がヴィットリオ・ストラーロ。 停電した部屋の中で、蝋燭の灯りに照らされるクリステン・スチュアートとジェシー・アイゼンバーグのツーショットなど真骨頂である。  伯父を選ぶ彼女の表情と台詞から一転、マンハッタンブリッジの夕景へとディゾルブされる場面転換の鮮やかさ。 それが橋のショットであるのは、単なるランドマークの提示以上の意味があるだろう。  同じく、それぞれの場所でふともの思いにふける元恋人たちを緩やかに溶け合わせるラストのオーヴァーラップの情感も素晴らしい。
[映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2017-05-08 12:23:53)
2.  合葬 《ネタバレ》 
手前の座敷、奥の中庭を縦の構図で繋いだルノワール的なショットや、格子窓を介した内と外のやりとりなど、 美術とキャラクターをよく組み合わせ、さらに雨もふんだんに降らせるなどして丁寧に画面をつくっている。  そしてブルーを基調とした画面や、睡蓮の花のイメージ、そして独特の音楽の響きが怪異譚交じりのドラマを良く引き立てているが、 上野戦争の場面で、逃走する柳楽らを追う新政府軍側を画面に登場させない趣向なども作品のテイストに適っている。  朝帰りシーンの、どことなく70年代風のアンニュイなムードがいい。
[DVD(邦画)] 5点(2017-03-07 01:49:02)
3.  駆込み女と駆出し男 《ネタバレ》 
冒頭の俯瞰の瓦屋根ショットとタイトルデザイン、情緒を排し障子や格子による幾何学模様を強調した家屋セット、そして登場人物の早口ダイアログ。 いわゆる「クール、スピーディ、グラフィック」、そして「モダンと伝統」の市川崑スタイルである。  映画は情動的なシーンを出来るだけ排除し、あるいはそうしたシーンをロングに引き、あるいは大泉洋の客観ショットを挿入し(姉妹の再会シーン)、あるいは暖簾の陰にわざと隠すように演出し(ラストの旅立ちのシーン)、ドライに徹する。 火ぶくれの傷に繊細に触れる・触れない、相手を見たい・見てはいけない、そういう絶好の映画的シチュエーションの処理もなかなか軽妙だ。  ただし、複数のエピソードの交錯によってドラマの流れは散漫である。ラスト近く、大泉と戸田恵梨香のやりとりと寺内の騒ぎがクロスカットされるのだが、 このクライマックスも単にそれぞれの状況の羅列であって噛み合わず、何ら相乗の効果をもたらさない。 所々で差し挟まれる市川的スローモーションも全く必然性のないショットばかりで(水を掛けられる大泉など)、アクセントとしても不発だ。 単なる説明に終わる密偵のエピソードなどの残念具合といったらない。  屋内への外光の入射や製鉄の炎や行燈など、光源を限定して暗がりの中に女たちの表情を浮かび上がらせる前半のショットは 晴れて寺を下るシーンで何らかの対照をもたらす為ではなかったのか。
[DVD(邦画)] 5点(2017-02-13 23:04:08)
4.  海賊とよばれた男 《ネタバレ》 
『続・三丁目の夕日』で東京タワー展望室内を再現するために、ほとんど画面に映ることが無かったにも関わらず当時の展示資料をスタッフが 借りに来たことがあって、そのこだわりぶりと労力に感心した覚えがある。 そうしたことから、本作でも時代の再現に関する美術面は大いに信頼してもよいと考える。 送迎デッキで船を見送る・迎える大勢のエキストラの衣装ひとつとってもよく作り込まれていて、その画面作りには頭が下がる。  記念写真の用法も山崎映画の特徴となっているが、夫婦のドラマの弱さと共に今回は印象が弱い。 岡田を舳先に立たせて並走する水上シーンのローリングも一瞬の高揚だけで後には続かない。  劇場予告の時点で耐性はついているものの、力みかえった絶叫芝居も相変わらずなら、煽情的な劇伴も山崎印である。 社歌を歌って労働するシーンにBGMを被せるセンスがもう理解出来ない。  何より、この時制を頻繁に往還させる作劇がしんどい。
[映画館(邦画)] 4点(2016-12-14 23:44:45)
5.  GANTZ:O 《ネタバレ》 
クライマックスに至るも、助太刀頼りでさして活躍するでもない主人公。そこで実写では再現できない身体アクションを目一杯披露するため のCGキャラクターではなかったのか。それがあの程度なら、俳優が演じりゃよいのに。 『ガルパン』のあんな図柄の二次元キャラクターでも最後には思い入れが出来るものなのに、よりリアル志向に造形されたはずのこちらの人物達の生き死にに さしたる感慨も起きてこないのは何故なんだか。  クリーチャーの攻撃を間一髪で躱す瞬間のスローモーションや、被写体の周囲を縦横無尽に旋回するカメラが頻繁に使われるが、 そういう如何にも3DCGアニメですといった無駄なカメラワークが逆に安っぽさに拍車をかける。 アクションや特殊効果はふんだんに盛り込まれているのだが、それが活劇的面白さにはなっていない、というか。 クライマックスを盛り上げるべきタイムリミットのサスペンスも何ら機能せず。 おまけに交わされる対話は、「他人の為に」とか「生きのびるために」とかの観念論・精神論ばかり。 キャラクターに血が通わないのも、当たり前である。
[映画館(邦画)] 4点(2016-10-14 23:25:48)
6.  帰ってきたヒトラー 《ネタバレ》 
タイムスリップしたらしいヒトラー(オリヴァ―・マスッチ)が軍服で街中をふらつくゲリラ撮影的シーンで通行人たちが様々な反応を示す。 それがどこまで仕込まれたものなのか、完全なアドリブなのか当初は判然とせず、フィクションとドキュメンタリー的画面が せめぎ合う中、現在の人々が彼との対話の中で示すリアクションに強く興味を惹かれていく。 白眉はNPD本部に突撃しての党首との対論だろうか。 御本人なのか俳優なのか、畳みかけるオリヴァ―・マスッチの饒舌とその迫力に強張る党首氏と取り巻きの表情に、こちらも息を呑む。 ふと『ゆきゆきて、神軍』を思い起こすシーンでもあるが、そうしたリスキーな対話シーンが度々登場してくるのが面白くもありスリリングでもある。 そこだけとっても、監督や主演俳優の果敢さは大いに評価されていい。  そのフィクションとドキュメンタリーを転倒してみせるラストも唸らせる。
[映画館(字幕)] 8点(2016-06-26 22:15:06)
7.  神様メール 《ネタバレ》 
カトリック教会での炊き出しシーンをはじめとする風刺の数々に笑い、突飛な発想にただ唖然とし、左手のダンスに魅入る。 鳥と会話を交わす、水面を歩む、人々の内なる音楽を聴くなどの、少女がみせる奇跡のささやかさがいい。  母親のつくり出したカラフルな空模様自体にはさして感動するものではないが、 劇中ほとんど笑みを見せなかった少女がその空を見上げて笑う、その笑顔のショットが何より素晴らしいと思う。
[映画館(字幕)] 7点(2016-06-04 23:54:58)
8.  ガルム・ウォーズ 《ネタバレ》 
『アバター』等の後では何の新味もない。それは『押井言論』の中で監督本人も認めている通りだろう。戦略もなかったに違いなく、 世界観と意匠だけでは何とも苦しい。技術に関するアプローチも、この内容ならむしろミニチュア特撮のほうが新鮮味とゴージャス感が出たのではないか。   監督自らが常々『ダレ場は必要』論を語るわけだからそこを批判しても仕方ないが、顔面づくしのドラマパートにエフェクト過多のロングショットが時折入り、「急」に転ずるべき格闘アクションはカット割りまくりの手ぬるさなのだから始末が悪い。  女優に興味なさそうなのも相変わらず。  正直のところ、川井憲次氏の映画音楽さえ聞ければOKだから良いが。『GANTS』といい、『009』といい、本編はアレでもエンディング曲だけで 何となくマスターピースを鑑賞したような気にさせてくれるこの方はやはり凄い。  会話中の劇伴は少々鳴りすぎだったが。
[映画館(吹替)] 3点(2016-05-26 23:33:46)
9.  ガールズ&パンツァー 劇場版 《ネタバレ》 
キャラクターの絵柄も、声優の声音もまるで苦手。だが活劇として文句なく面白い。 誰が誰やらという感じの女性軍団が延々と賑やかなトークを繰り広げるが、それらは常にアクションを伴うから心地よい。 それはメカニックの擬人化ともなる。そして迷いのない決断と行動が一貫していて清々しい。 これはホークス的と云ってよいかもしれない。  ラスト近く、二台対三台となり科白がほとんど省かれてからの近接戦闘とぶつかり合いの素晴らしさ。 舞台装置や大道具を存分に駆使しふんだんに投入された戦術のアイデア。 斜面やコーナーでの遠心力や重力を活かしたアクションの物理性。重量と戦速の感覚。 映画ならではの市街破壊のカタルシス。 その過剰とも言えるサービス精神と、今のご時世でミリタリー趣味と街おこしの相性のデリケートさを踏まえた上で尚 ひたすら活劇性に徹してみせる作り手の心意気が感動させる。  全編通してカット数も多い分、大洗町内の背景画の数も膨大である。ランドマークだけでなく其処此処の路地までロケハンが尽くされているのがわかる。 単に街並みを絵で忠実に再現するだけならどうということもない。そのロケーション(地形・建築)をアクションにどう活かすか、がポイントなのだとよく心得られている。  「A級」気取りの作品が入れたがる冗長な後日談を一切カットした、この潔いB的感覚も嬉しい。
[映画館(邦画)] 8点(2015-11-26 23:55:55)
10.  ガールズ・ステップ 《ネタバレ》 
非常に不入りらしい。確かに不入りだったが。同じJKものでも 馬鹿らしさに10分で退席した『ヒロイン失格』の方は大ヒットらしい。となると援護もしたくなる。貶しどころはそれこそ山ほどあるが。  思い入れたっぷりに抱き合っている5人娘の周囲を、エキストラの大人達が横目で見ながら行き交っている。 引きのカメラでそうしたドライな視点をふと採り入れたかと思うと、今度は海辺で一人一人をクロースアップしていく。 そして、次は青い海を背景に思い思いにはしゃぐ5人のロングショットへ。  ダンスシーンのカッティングと同様、感傷過多となりそうな表情アップとキャラクターから距離を置いた引きのショットが バランスよく織り交ぜられているので、個とチームのドラマとも調和している。  海を背に石井杏奈と磯村勇斗が自転車を押す坂道の望遠の感覚なども映画の図として無視し難い。
[映画館(邦画)] 6点(2015-10-01 23:37:14)
11.  カリフォルニア・ダウン 《ネタバレ》 
仄暗い闇の中を漂うペンダント。その冒頭ショットの意味は主人公らの断片的な会話の中から次第に明かされ、 これは子供を守れなかった父親の復権のドラマであることが解ってくる。水難事故だというその過去のトラウマはイメージ的なショットのみで 詳しい経緯までは明らかにされないが、その時点で観客は映画のクライマックスにどういうシチュエーションが訪れるか、 ある程度予想がつくだろう。が、その娘を救うシーンがいまいちカタルシスに欠けるのはどういうわけか。  無闇に回想に頼らない語りは潔しだが、この場合はレニー・ハーリン『クリフハンガー』冒頭のようにある程度は具体的な描写を置くべきではなかったか。 同様の状況を反復するなかでトラウマを克服してこそ、再生のドラマの感動があったと思うが。  そもそも、のっけからドウェイン・ジョンソンの颯爽とした超人的活躍シーンが展開するわけで、 家族問題で心を閉ざしたとかいうキャラクターがピンとこない。  『ダイ・ハード』1作目のように、少し冴えない頼りなさげな主人公が衣装と身体をズタボロにしながら無謀なアクションを敢行し、今度こそ娘を守る。 欲をいうなら、そういう変化・変貌のドラマを見せて欲しかった。  この主人公ときたら(『宇宙戦争』のような)埃にも塗れない、汚れもしないのだもの。 その役割は、ブルーの瞳が印象的な娘と青年が担ってくれたが。
[映画館(字幕なし「原語」)] 6点(2015-09-17 23:43:39)
12.  神々のたそがれ 《ネタバレ》 
雨に霧に炎、蒸気、煙、吊るされた身体。 流動的で不安定、不定形のものが常に画面に充満している。 初めはそのフェリーニ風の世界観と意匠に眼を奪われ、次いで画面に突然現出してくる あらゆる事物、人物、動物、現象の動きそのものに約3時間驚かされ続けてしまう。 カメラがどう動くのか、様々な動物たちがどう行動するのか、 画面手前や横からいきなりフレームインしてくる奇矯なる人物達が次の瞬間に何をしでかすか、 次のショット、次の瞬間の予測が全くつかないので眼が離せないまま、 何やらドラマは進行してしまっている。  雨と泥土とモブの中で、尚且つ動物とも共演しながらの俳優は想定通りの芝居など出来ない上に、 即興演技も相当に入っているであろう人物同士も常にぶつかり合い、どつき合っている状態だから そのリアクションは必然的に生々しくならざるを得ない、という寸法のようだ。  人間たちは雨や泥に塗れながら唾や反吐を吐き、汗や鼻水や鼻血を流し、放尿する。 身体の大半が水分から成ることを改めて実感させる、個体の生々しさも強烈だ。  この即物性もまた、紛れもない人間描写である。
[映画館(字幕)] 9点(2015-07-12 00:33:52)
13.  紙の月 《ネタバレ》 
地下鉄駅のホームで、線路を挟み向かい合う宮沢りえと池松壮亮の視線が合う。 列車の到着と発車の中で彼女の姿がかき消される。 発車後のホームに彼女の姿はない。振り返ると、 池松側のホーム階段を降りてく彼女の脚がある。 次は一気にホテルのシーンだ。  ラストも同様、「見えない壁ガラス」を割った彼女は次のシーンではもう 自らの脚で駆け出しており、街路の壁を曲がるところだ。  観客が気付いた時には彼女はすでに足を踏み出している。 画面には交差点や線路、白い会議ルームの壁のラインや窓ガラスなどの境界線が配置されているが、彼女は意を決したらもう躊躇わない。 心理を露呈させることなく、観客の共感など置き去りに突き進んでいる。 その潔さ、唐突さがいい。  儚げでありながら時に不敵な面持ちを見せる宮沢りえが随所で単に美しいだけに 留まらない複雑性を内包した魅力的なヒロイン像を見せる。   
[映画館(邦画)] 7点(2014-11-19 23:59:47)
14.  渇き。(2014)
暴力シーンの打撃の瞬間に度々挟まれるサブリミナル的なアニメーションなどは、 打撃のインパクトを強調しているかに見えて、その実、身体の被虐性を 巧妙に隠蔽している。 打突の瞬間映像は首尾よく自主規制され、その映画アクションは死ぬ。 小刻みで断片的なカッティングと、揺れる画面の中に曖昧模糊にモンタージュされる 強姦シーンもだ。安心、安全。  勿論、見せるばかりが能ではない。 車に二度激突される妻夫木聡の派手なショットも、今度は逆に 単なるインパクトに過ぎなくなってしまう。  北野・黒沢らの地味で寡黙であっけない暴力と、それを冷徹に凝視するショットこそ 凄みと過激さを際立たせているだろう。  虚飾は何ら過激ではなく、それでは痛みも伝わらない。  
[映画館(邦画)] 5点(2014-07-28 17:04:09)
15.  風立ちぬ(2013)
キネマ旬報の何某は、この喫煙シーンを狭量な「挑発」だという。 勿論、『紅の豚』でも煙草のポイ捨てシーンをあえて描いているのだから 一種の挑発的な意図もあるのだろうが、 宮崎駿の細やかな絵コンテ指示を見てもわかる通り、単なる挑発だけで多大な経費や手間を要する作画・エフェクトの指示はすまい。  それこそ、何よりも風を生起させる行為として紫煙は表現されている。 震災の黒煙、工場の煙突からの排煙、汽車の蒸気、雪の朝の白い息、バスのあげる土煙、 家から登る白煙。それらと同様、二次元の画面に豊かな空間の深みと流動態を与え 画面を息づかせる描画演出のひとつに他ならない。  絵を常に何らかの形で動かすことへの徹底したこだわり。 眼に見えない大気をも可視化させアニメーション化することで世界に生気を与えること。 そこにアニメーション作家の矜持を見る。  その挑発ならぬ挑発に簡単に引っ掛かってしまう学会こそ滑稽だ。  嫁入りの夜、襖が静かに開き、美しい奈穂子の正面のカットとなる。 そこに風花がさっと舞う。その柔らかな大気の流れがシーンの美しさを引き立てる。  『ひこうき雲』の流れる映画のエンディング。 静止画となる人間不在の情景カットにあるのは、全てを語りきったという思いか。      
[映画館(邦画)] 8点(2014-02-16 04:31:13)
16.  かぐや姫の物語
子の成長、四季の移ろい、里から都への暮らしの変貌。 その「移りゆき」をモチーフとするアニメーションの素晴らしさは、 かつて高畑勲監督が賞賛したあのフレデリック・バックの『木を植えた男』 からの継承を思わせる。 作中のワンシーンにある、樹々の再生の件などはまさにそれへの オマージュともいえる。  桜の樹の下で舞い踊る娘の喜び、野や山をひた走る娘の激情が迸るクロッキー風の タッチ。 生物の営みそれ自体への慈しみが滲んでいる柔らかなタッチ。 その伸びやかで、味わいのある筆致が創りだす画面の躍動は、 動画であって動画を超えている。 (エンディングのスタッフロールでは馴染みのない様々な作画の役職が並んで 興味深い。)  波やせせらぎの表現の斬新と大胆。木々の影が人物の衣類に落ちて、揺れ動く紋様を創りだす様。機織りや演奏などをはじめとする写実的なアクションと、快活に跳ね回り、飛翔する姫のファンタジックなアニメーションの絶妙なバランス。  題材とのマッチングゆえか、今回はその技巧もそれ自体が目的といった感が無く、 一枚一枚のスケッチの丹念な積み重ねがキャラクターに血を通わせている。 ヒロインを回り込むようなカメラの動き、彼女の寝返り、振り返りなどの動作は スケッチを立体的に浮かび上がらせるだけのものではない。  青い星を振り返る姫の涙が美しい。    
[映画館(邦画)] 9点(2013-11-26 23:59:30)
17.  かぞくのくに
いかにも善良な母・宮崎美子に、いかにも生真面目な父・津嘉山正種。 キャラクターイメージそのままのキャスティングも芝居もステレオタイプにすぎる。 京野ことみを始めとする同窓メンバーのいわゆる熱演も何ともクサく、 手持ちや自然光照明のドキュメンタリー調と馴染んではいない。  安藤サクラと井浦新の対話もまた熱演なのでああろうし、 役柄になりきらせる演出として恐らくアドリブを多々入れているのだろうが 作り手の過剰な思い入ればかりが突出し、芝居は読みやすい。  一方で、詰め寄る安藤に対してどんなリアクションで返してくるのか、 全く読めないヤン・イクチュンのどこか非心理的な佇まいと 静かな迫力こそが抜きんでている。 
[DVD(邦画)] 5点(2013-11-04 23:58:04)
18.  顔のないスパイ
本来なら星条旗の露出は、中盤の木々のざわめきや物干しにかかった衣類のはためき、情報屋のアジトである304号室の廊下の窓外で揺れる影などと共に何よりも具体の揺れとして画面に呼び込まれるべきはずだが、その頻出はメリハリを欠く上に何らかの象徴的な意味付けを感じさせて少々煩わしい。  逆に議員暗殺現場の路地の照り返しや、回想シーンの中で倒れている妻と娘に駆け寄るリチャード・ギアのロングショット、格闘シーンに入り込む割れた鏡など、所々に差し挟まれたさりげない部分の方が目を引く。  プラント内の監視室のシーン。リチャード・ギアより先に観客にトラップに気づかせてしまうようなモニター画面の映し方も小器用ではないし、主役二人の暗殺アクションの数々は短いカッティングが逆に俊敏性を欠いて物足りない一方、スティーヴン・モイヤーが乾電池二つを呑みこむ1ショットの異様が突出してしまう辺りの不均衡もこの映画の歪な魅力でもある。  尤も、小器用な映画などに面白味はない。 
[映画館(字幕)] 8点(2012-03-11 23:59:55)
19.  カルテット! 《ネタバレ》 
同日に催されることとなる、将来を賭けたデビューコンサートと家族のコンサートとの挟間で引き裂かれる青年のドラマとなれば、古典『ジャズ・シンガー』(1927)まで遡る音楽ものの定番的なプロットである。  その『ジャズ・シンガー』の潔いラストと比べて、演奏シーンにフラッシュバックを俗に絡め、舞台上の家族の笑顔と観客席の拍手であまりにも型通りに締めて良しとする安易で、くどく、大甘で、観客に媚びたラストは、『スイングガールズ』や『フラガール』以降の退行的慣例とも云えよう。  浦安市のドラマでもあるこの映画、ロケーションの選び方も、エキストラの用い方もどこか画一的・排他的で街の印象が非常に薄い。震災直後のクランクインでありながら、被災の光景を復興と再生のドラマにリンクさせないのも官僚的で勿体無い。   良かったのは、コンサート会場にやってきた高杉真宙のかじかんだ手を鶴田真由と剛力彩芽が両側からさすって温めてあげるショット。そしてその間、細川茂樹が間をもたすために壇上で語る昔話のシーンで、湖を飛び立つ白鳥を捉えるショットの美しさだ。 
[映画館(邦画)] 4点(2012-01-27 17:08:13)
20.  神様のカルテ
宮崎あおいが写真家の設定であり、病院屋上で加賀まり子と看護スタッフの集合写真を撮る彼女を正面から捉えたショットがあるならば、それに対応した記念写真のショットは説話的にも映画的にももっと効果的に活かされるべきだった。 『半分の月がのぼる空』で忽那汐里の笑顔の写真を感動的に導入してみせた深川栄洋なら尚更だ。  キャラクターの職業設定がまるで活かされないため、彼女の映画的存在性はますます希薄となる。 それは彼女だけに留まらない。原田泰造、岡田義徳、そして本来なら現代版『赤ひげ』たるべき柄本明も同様である。  本作が医療のドラマとしても薄弱なのは、「処置」の具体的なアクションがまるで描かれないからだ。ひたすら善良で美談づくしの脚本であったとしても、医師・看護師の実働が具体的に画面に載っていればそれは十分に説得力を獲得する。 しかし、この映画では「緩和ケア」も「優れた資質」もほぼすべてが説明台詞のみで処理されてしまう。モニターチェック一辺倒の櫻井翔はもちろん、吉瀬美智子も池脇千鶴も労働らしき所作を全く行っていない。ゆえに絵空事感が増す。  夫婦間の家事労働も然り。にわか雨で洗濯物を取り込もうとするショットや、住人たちが調理する描写はわずかにあっても、何の料理を作っているかすら判然としない。 (せめて、櫻井のおにぎりを握るくらいの描写は欲しい。)  結果的にいずれのキャラクターも「生活者」としての実存性が非常に乏しく、空虚なファンタジーに堕している。  櫻井・宮崎の交わす文語体の台詞は、日本語自体の美しさの復権を試みたものだろうと好意的に解釈は出来る。 が、大林宣彦の『なごり雪』ほどの過激性もなく、役柄からさらに生活実感を失わせるだけの結果に終わっている。 
[映画館(邦画)] 3点(2011-09-18 18:23:32)
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