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プロフィール
コメント数 2401
性別 男性
自己紹介 〈死ぬまでに観ておきたいカルト・ムービーたち〉

『What's Up, Tiger Lily?』(1966)
誰にも触れて欲しくない恥ずかしい過去があるものですが、ウディ・アレンにとっては記念すべき初監督作がどうもそうみたいです。実はこの映画、60年代に東宝で撮られた『国際秘密警察』シリーズの『火薬の樽』と『鍵の鍵』2作をつなぎ合わせて勝手に英語で吹き替えたという珍作中の珍作だそうです。予告編だけ観ると実にシュールで面白そうですが、どうも東宝には無断でいじったみたいで、おそらく日本でソフト化されるのは絶対ムリでまさにカルト中のカルトです。アレンの自伝でも、本作については無視はされてないけど人ごとみたいな書き方でほんの1・2行しか触れてないところは意味深です。

『華麗なる悪』(1969)
ジョン・ヒューストン監督作でも駄作のひとつなのですがパメラ・フランクリンに萌えていた中学生のときにTVで観てハマりました。ああ、もう一度観たいなあ・・・。スコットランド民謡調のテーマ・ソングは私のエバー・グリーンです。


   
 

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1.  ジョアンナ 《ネタバレ》 
監督のマイケル・サーンは、「ナバロンの要塞」などに出演した俳優(最近ではイースタン・プロミスに出演しているそうです)兼シンガーソングライター兼映画評論家ですが、長編第一作のこの作品は彼の才気が爆発しています。60年代スゥインギングロンドンの雰囲気がたまらなくカッコ良いのです。この映画は、駅の場面で始まり駅の場面で終わるのですが、オープニングのカッコ良さは鳥肌ものです。ラストはジョアンナが列車に乗って故郷に帰るのですが、なんと彼女は撮影中のスタッフにまでお別れのキスをして回り、列車が去ったあとカーテンコールよろしく全出演者がホームでダンスをするというしゃれた演出です。ジョアンナ役のジュヌビェーブ・ウェイトは下手な演技ですが不思議な雰囲気を持っています。アートスクールの学生という役柄、ジョアンナのカラフルなファッションは現代でも通じるセンスでした。制作40年記念してDVD化して欲しいものです。 【追伸】祝! 熱狂的なファンの夢がかなって『マイラ』と共についにDVD発売! 本作は大森一樹や大林宣彦など日本映画人にもファンが多く、また『スラムドッグ・ミリオネア』のエンディングなんか、パディントン駅でのカーテン・コールへのダニー・ボイルからのオマージュですよ。DVD発売を機会にもっと大勢にぜひ観て欲しい傑作です。『ジョアンナ』観ずしてスゥィンギング・ロンドンを語るなかれ!
[地上波(字幕)] 10点(2008-12-24 23:04:39)
2.  しとやかな獣 《ネタバレ》 
ほぼ団地の一室だけに限定された空間で繰り広げられる密室劇。登場する四人の家族のキャラの異様さは数ある日本映画の中でもほぼ頂点に近いんじゃないでしょうか。「うちの娘は不思議と妊娠しないんですよ」という伊藤雄之助のセリフがありますが彼は私が今まで観た映画でもっとも異様な父親です。要はこの夫婦は息子が横領してきた金と娘が愛人からせびってきたカネで優雅な暮らしを維持する寄生虫みたいな存在ですけど、妙に丁寧な言葉遣いで捲し立てられる二人のそれを正当化するロジックは、聞いているとふと納得してしまいそうになるから恐ろしい。基本的に横移動に徹する撮影には、歌舞伎の音を挟んだ進行もあって歌舞伎か能の舞台を見せられている印象すらあります。またこの映画の特徴は、劇伴としての音楽の使用を最低限にして、開け張られた窓から聞こえる音がその代わりを果たしているように感じるところです。ジェット機の轟音、蒸気機関車の音、夕立の雷、そして最後は救急車(パトカー?)のサイレン、などが印象的な使われ方をされています。そして時おり挿入されるドイツ表現主義を思わせるような誇張された階段を使った人物の心象表現がまた深みをつけてくれていますね。ここまで来ると、もうコメディというよりも心理ホラーと分類した方が正解かもしれません。全編でほとんど感情を交えることなく押し通す若尾文子の悪女も秀逸で、彼女が演じた中で最高のヴァンプなのかとすら思えます。 やはり本作は新藤兼人の脚本の最高傑作じゃないでしょうか。
[CS・衛星(邦画)] 9点(2021-03-09 22:41:09)(良:1票)
3.  終身犯 《ネタバレ》 
今まで自分が観た中で最良の刑務所映画、『ショーシャンクの空に』なんてこの映画の足元にも及びません。また、主人公が脱獄しようとしない唯一の囚人映画でもあります。だからこの映画では一生を刑務所暮らしする人間とはどういう存在なのか、また更生とはいったい何なのかということを鋭く問題提起しています。 囚人が苦労してその道の達人にまでなったというのは日本人好みのいわゆるイイ話になっちゃいそうですが、そんな単純な撮り方をしてないところが監督フランケンハイマーの凄いところです。バート・ランカスターの演じるストラウドからしても、映画の前半では狂信的なまでに反抗精神が強いあまり共感を呼ばないキャラです。そんなランカスターが「お前には人に感謝する気持ちがない」と看守に指摘されてハッと気づき、「今まですまなかった」と謝り生まれ変わった様になるシーンには心を打たれました。ほんと人間には感謝の気持ちを他者に持つことが大事なんですね。彼は『真昼の暴動』でも囚人暴動のリーダー格でしたが、本作では非常に抑えた演技が光ってました。 このランカスターを取り巻く刑務所の人間たちがいい味出してます。初めは嫌っていたが生涯の友となる看守のネヴィル・ブランドや、粗暴ながらもカナリヤ飼育によって人間味が増してゆく囚人テリー・サヴァラスがいい演技を見せてくれます。主人公ストラウドにしても常に突き放した様な客観的な演出で通しており、決してハッピーエンドではない終わり方にも納得させられます。 「更生とは尊厳を取り戻すことだ」というランカスターのセリフは、キリスト教的な意味合いもあるんでしょうけど考えさせられます。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2015-07-29 22:12:23)
4.  心中天網島 《ネタバレ》 
「日本のシェイクスピア」近松門左衛門の名作をモダニズムの極致とも言える演出で堪能させてくれます。自分は篠田正浩は好みではないですが、本作だけは別格。前衛的ながらオリジナルの基本的なところはきっちりと造っているのが良い。紙屋治兵衛がまた観てて情けなくなるダメ男で、名優中村吉右衛門がさすがの演技で唸らされます。 私の中では戦後日本映画界でもっとも妖艶な女優は岩下志麻だということになっています。若い人たちは『極妻』シリーズのイメージしかないでしょうけど、この人の60年代70年代の作品をぜひ観てください。その美しさ・色っぽさには眼が釘付けになりますよ。
[DVD(字幕)] 9点(2011-01-07 02:31:03)(良:1票)
5.  女王陛下の007 《ネタバレ》 
自分でも意外なことに、今回生まれて初めて『女王陛下の007』を観たことに気が付きました。公開当時はジェームズ・ボンドがショーン・コネリーじゃないということに強烈な違和感があったのですが、観てみるとこれは子供が観ても理解できない、大人になって観て初めて真価が判る種類の映画です。まさか007シリーズでホロリとさせられるとは、想定外でした。正直、本作は今まで自分が観た007シリーズの中でもトップクラスの出来で、近年になって世間の評価が高まってきたというのは納得です。 まずサントラが抜群にイイ。サッチモが歌う「愛はすべてを越えて」はもちろん知っていて好きな曲ですが、本作の主題歌だったとは迂闊にも知りませんでした。このアレンジが全編に流れるだけでエモくなります、あの騒々しい“ジェームズ・ボンドのテーマ”がオープニング以外では上映2時間を過ぎてからほんのちょっとだけ流されるにとどまっているのも、ナイスです。イオン・プロが関わっていないジョン・ヒューストンの『カジノロワイヤル』を除けば、本作のサントラはシリーズ中で最高なんじゃないでしょうか。アクションも抑制気味なのも良かったです。アルプス山中が舞台なだけあってスキーに始まってカーリング(現在行われている競技とは細部がだいぶ違ってました)そしてラスト・チェイスはボブスレーと、まるで冬季五輪とタイアップしてたみたいです。今回の悪役ブロフェルドもシリーズ恒例の“何がしたいのか良く判らん症候群”が重症です。「ウィルスばらまくぞ」と国連を脅迫した見返りが自分の恩赦と引退後の爵位の保証って、えらいみみっちい、金正恩の方がはるかに器がでかい(笑)。それにしても、ブロフェルド、スキー上手すぎでしょ(笑)。 そしてついにジェームズ・ボンドが結婚、それも欧州でNO.2の犯罪組織のボスの娘!結婚式でベソをかいているマネーペニーおばちゃんが、抱きしめてあげたいほどいじらしい。そしてご存知悲劇の幕切れとなるわけですが、ボンドよ、なんでブロフェルドの死体確認をしなかった?テレサの死にはお前の責任が多々あるぞ! でもやっぱ本作のボンドはジョージ・レーゼンビーで正解だったのかもしれません、ショーン・コネリーやロジャー・ムーアだとだいぶテイストの違う映画になってしまったでしょうね、悪い意味で。
[DVD(字幕)] 8点(2018-05-29 22:53:03)(良:1票)
6.  銃殺(1964・英) 《ネタバレ》 
キューブリックの『突撃』のプロットを英軍に置き換えた様な感じですが、もとは舞台劇だったそうで、戦場の廃墟が軍事法廷となりあと映されるのはハンプ二等兵が監禁されている室内だけでほとんど密室劇の様な展開です。弁護人のハーグリーブスをダーク・ボガードが演じているので、『突撃』のカーク・ダグラスとは打って変わってポーカーフェイスでお行儀のよい弁護を展開しますが、その冷淡な弁論に徐々に感情がこもってゆく演技が秀逸です。ハンプ二等兵は個性がない平凡そうな男で、その当り前さが戦場にいる普通の兵士たちを代表している様な演出です。 弁護は成功したかの様に見えましたが、「攻撃前に士気を高める必要がある」という将軍からのお達しで判決はあえなく有罪・銃殺。なんの救いもない結末ですが、「彼にはなんの軍功もない、ただ生き残ってきただけの臆病ものだ」「生き残ることが罪だとおっしゃるのですか?」、このやり取りに重い反戦のメッセージが込められていました。
[DVD(字幕)] 8点(2012-05-09 22:25:03)
7.  ショック集団 《ネタバレ》 
B級映画の巨匠サミュエル・フラーの「呪われた傑作」です。この映画は新聞記者が狂ったふりをして入院して精神病院の中で起こった殺人事件を調査するサスペンス・スリラーですが、「狩人の夜」の名手スタンリー・コルテスが陰影の濃い不気味な映像を作り上げています。精神病院の廊下が主要な舞台になりますが、キャラがたった精神病患者が低予算を逆手にとった工夫を凝らした廊下のセットを歩き回ります。中でも、自分はKKK(クー・クラックス・クラン)メンバーだと思い込んで、「アメリカは白人のものだ!」とアジる黒人青年には度肝をぬかされました。主人公の記者は電気ショック治療(短いですがこのシーンが怖い!)を受けたりして本当に狂気の世界に入ってしまいます。殺人事件の新犯人を探り当てながらも、ラスト完全に狂って廊下に立ちすくむ記者の姿が強烈です。
[ビデオ(字幕)] 8点(2009-04-13 21:16:04)(良:1票)
8.  史上最大の作戦 《ネタバレ》 
この映画は、第二次世界大戦の一つの作戦をテーマに作られた初めての映画で、実はこの映画以前のハリウッド戦争映画は、意外と製作費をかけた大作がないのです。制作後40年以上たち、その後同じノルマンディー上陸作戦がテーマの「プライベート・ライアン」が作られたりして影が薄くなっていますが、戦争映画の金字塔であることは間違いないでしょう。監督が国別パートで3人(実際にはプロデューサーのザナックもメガホンをとっているので4人)いるのでタッチが異なるところはありますが、各シークエンスがそれぞれ一つの映画にできるほど素晴らしい映像です。街中に降下してしまって全滅する空挺部隊を、教会の屋根に宙づりになったレッド・バトンズの視点で描く「サンメールエグリーズの虐殺」は、この映画でも屈指の名場面です。出演者が多くて各自の登場時間が少ないのですが、かえって大きな歴史事件を目撃しているようで良いのではないでしょうか。当り前のようですが、ドイツ語・フランス語で演技していることは評価できます。
[DVD(字幕)] 8点(2009-03-29 13:27:02)
9.  新・兵隊やくざ 《ネタバレ》 
三作目も前作と同様に脱走したが再び他の部隊に見つかって何とか潜り込むことで軍隊生活になってしまった大宮と有田、しかし今回は開幕十五分余りで部隊を脱走、そこからは天津の街に紛れ込んでゆくという新しい展開です。ここでは女郎屋でこき使われた挙句女郎を引き連れて逃亡、なんとその女郎たちとともに新規に女郎屋を始めるという予想外な展開。本作では藤岡琢也=豊後一等兵や玉川良一=坊主上がりの上州一等兵といったゲストキャラが登場しますが、彼らが良い味出しているんです。大宮と有田の関係も、それぞれの出自が違うところから来る対立もありながらも、友情・信頼関係がより深まってゆくところが丁寧に描かれています。二人が同性愛的な心情を持っている観方もありますが、これはさもありなんという感じです。後半から登場する成田三樹夫=青柳憲兵伍長がまた彼にマッチした悪辣なキャラで、まるで憲兵隊のラインハルト・ハイドリヒという風情すら感じてしまいました。大宮と嵯峨三智子=桃子が結婚してしまう展開もびっくりですが、後のシリーズでは桃子という役は登場しないみたいなので、この結婚の先行きが心配です(笑)。 本作は軍隊映画というよりもヤクザ・マフィア映画に分類したくなるテイストでしたが、ここまでのシリーズ三作中ではもっとも痛快でした。ラストが大暴れしたあと何か乗り物を分捕って銃撃を浴びながら脱走するというのはいつもの展開ですが、むき出しのサイドカーに乗って突破するというのはさすがに無理ゲーでしょう、ほんと二人には一発も弾が当らないんだから(笑)。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2023-02-28 23:16:53)
10.  飼育(1961) 《ネタバレ》 
大江健三郎の芥川賞受賞作の映画化。のっけから“大宝映画”なんて初耳の映画会社のマークが出てくるのですが、これはたった6本映画を配給しただけで消えていった、新東宝破たん後に製作部門を分社化したもの。なんでもこの会社が製作した映画で現在鑑賞出来るのは本作だけなんだそうです。大島渚もこの映画が独立後の処女作になります。大江健三郎の小説を大島渚が監督するなんて、大蔵貢時代の新東宝では絶対あり得ないお話しです。 太平洋戦争末期、山奥の部落に落下傘降下してきた黒人航空兵を部落の住民たちが監禁します。B29爆撃機に黒人搭乗員がいるなんて当時はあり得ない話なんですが、そこは寓話と考えてスルーしておきましょう。実はこの黒人兵はあまりストーリーには絡まない存在で、部落の長である三國連太郎とその小作人たちが、捕虜を媒介にして人間関係を崩壊させてゆく過程が実はテーマなのです。捕虜も村民たちとの接触はほとんどなく、物語の中盤であっさり殺されてしまいます。そうなるとなんでわざわざ黒人という設定にしたのか腑に落ちませんが、そこは原作通りなんで仕方ないでしょう。“異文化同士の対立”みたいなものを予想していましたが、描かれているのは今村昌平の映画の様な土俗的でドロドロした世界でした。 皮肉にも捕虜を殺したとたんに終戦となり責任のなすり合いになりますが、すべてを一人の厄介者に押しつけてみんなでお囃子を踊って目出度し目出度し、というあっさりした終わり方でした。でも村民たちが集まってくるシーンになると固定カメラによる長回しを多用するなど、大島渚の才気は十分に感じることは出来ました。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2014-02-01 18:47:17)
11.  死ぬにはまだ早い 《ネタバレ》 
情事を終えた元レーサーと人妻。女を車で送りに行くが、街道では殺人犯を追っている警察が検問をしている。夜11時、喉が渇いたので山小屋風のドライブインに二人は入る。店内には新婚カップル、常連の医者、おつむの軽い若い娘ふたり、タクシー運転手、そしてカウンターの隅っこで黙々とマッチを積み重ねる陰気な男などの客がいた。そこに拳銃を持った男が乱入してくる… ここでネタばらしちゃいますけど、実は本作は64年製作の『恐怖の時間』を翻案した映画なのです。原作は菊村至の『閉じ込められて』という小説なんだそうですが、原作自体が『恐怖の時間』をネタにしたということなんでしょうか。 『恐怖の時間』と違ってこちらは男が立てこもってからは完全に密室、誰も入ってきません。客たちのエゴはだんだんむき出しになってきて、自分だけは助かろうとして醜い行動をする奴も出てきます。黒沢年男が演じる立てこもり犯は、浮気した恋人を射殺しその浮気相手を殺すために店に来たのですが、いきなり見回りの警官を射殺する凶暴な奴です。こいつは『恐怖の時間』の山崎勉とは違って鬼畜のような男で、医者に新婚の女をレイプさせようとしたり緑魔子には裸になることを強要したりでやりたい放題です。この頃の黒沢年男はこういう激情に駆られて身体を動かすキャラをやらせたらピカイチですよね、セリフは聞き取りにくいけど。 低予算ながらもほぼドライブイン店内だけで繰り広げられる密室劇としてはかなり濃度が高いと言えます。ジュークボックスがあって、そこから森進一の『花と蝶』やザ・タイガースの『青い鳥』なんかを聞かせるところなど独特のテイストに満ちています、この映画は。ラストにちょっとしたオチがあるのですが、『恐怖の時間』と比べても毒味がはるかに利いています(基本的には同じオチなんですけどね)。 こんな映画がソフト化されていないのは実に不思議。この映画の内容が、後におこった三菱銀行北畠支店の有名な事件に似ているからというあまり説得力のない説もありますが、真相はどうなんでしょうね。監督の西村潔には、ほかにも完成したのにお蔵入りさせられて観た人がほとんど皆無の『夕映えに明日は消えた』という正真正銘の幻の映画があり、まあ不運な人だったみたいです。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2012-10-08 14:33:41)
12.  白い巨塔 《ネタバレ》 
タイトルバックが実際に開腹手術をしているところを撮っているのにはびっくりです。この映画はその他の手術シーンも実写でカメラに収めていて、現代では絶対に不可能なことでしょう。モノクロだからまだましですが、けっこうグロいです。78年のTV版に衝撃を受けた年代ですので、「あれ、財前五郎はガンで死ぬんじゃなかったっけ?」と拍子抜けしましたが、本作は原作の正編だけの映画化だったんですね。 とは言え、上映時間2時間半でもかなり駆け足で物語を進行させていると言う印象はぬぐえないかな。それでも、田宮二郎のド迫力には終始圧倒されてしまいました。 でもやはりTV版をもう一度観たくなりました、ビデオ屋で探してみよう。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2012-07-28 23:07:37)
13.  シベールの日曜日
さすが本作は「ロリコンのイコン」と称されるだけあって、パトリシア・ゴッジの魅力はその手の嗜好がある人にはたまらないでしょうね。キューブリックの『ロリータ』なぞ足元にも及ばない、史上最強のロリコン映画じゃないでしょうか。『ロリータ』と違って本作がいまだにリメイクされないのは、そりゃこれだけ完成度が高ければ納得です。「禁リメイク」映画リストがあるとしたら、上位にランクしておかなければいけません。 それにしても、ネットで調べてみてパトリシア・ゴッジの人気がいまだ高いのには驚かされます。出演作は他に『かもめの城(1965)』(ジョン・ギラーミン監督)があるだけだそうで、ほんと「まぼろしの美少女」と呼ぶにふさわしいですね。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2010-09-08 23:20:43)
14.  シンシナティ・キッド
この作品ではマックイーンはお得意のアクション演技は見せず、エドワード・G・ロビンソン、カール・マルデンという二人の名優に負けない抑えた演技を披露してくれます。もともとマックイーンは演技力のある役者ですので、ポーカー・プレイヤーとしての説得力ある駆け引きが堪能できました。ただこの映画でのエドワード・G・ロビンソンは迫真の名演で、さすがのマックイーンも影が薄くなってしまいました。この人本当にギャンブル強そうに見えますねえ。
[DVD(字幕)] 7点(2009-08-02 00:31:10)
15.  十三人の刺客(1963) 《ネタバレ》 
三池版リメイクを先に観ていますけど、やはりオリジナルは正統派時代劇という感じです。悪役殿様は明らかに三池版よりもまともというか迫力不足(リメイクの稲垣吾郎がぶっ飛びすぎとも言えるけど)、最期も単なるボンボン育ちらしい小物感が濃厚だったのが残念。こんなのが老中になっても大した影響なさそうな感もあるけど、逆に体面のためには妾腹といっても将軍の弟までも抹殺する幕府というか武家社会の非情さを強調する意図のストーリーテリングなのかもしれません、まあ考え過ぎでしょうけどね(笑)。十三人の刺客たちの半数は正直言って誰と特定できないような無個性なのがこの映画の欠点だけど、片岡千恵蔵・嵐寛寿郎・西村晃をキャラ立ちさせれば良いという脚本の割り切り方みたいですね。リメイクと違って里見浩太郎・山城新伍という若手キャラが目立たなかったのも残念、きっとまだ時代劇全盛時代のことですから、千恵蔵・アラカンといった大御所がメインで若手が活躍するような映画造りは難しい時代だったんじゃないでしょうか。出番はわずかでしたが月形龍之介=牧野靱負もさすがの存在感。リメイクでも松本幸四郎がキャスティングされていますが、「このチョイ役になんで幸四郎が起用されるんだろう?」という疑問がありましたが、オリジナル版へのリスペクトだったと納得しました。内田良平=鬼頭半兵衛も鬼気迫る演技、東宝製作だったら仲代達也が演じたんだろうなという感じもして、この二人の侍姿は雰囲気が似てますね。 クライマックスの大活劇はまさに“集団抗争”と呼ぶに相応しいごちゃごちゃぶり、これはこれでリアルなんでしょうけど好き嫌いは分かれるでしょうね。あんだけカッコよかった西村晃の無様な最期と逃げ延びてなぜか哄笑する明石藩士がラスト・カットというカタルシスのない幕の閉じ方、この辺りこそが工藤栄一らしいところなんでしょう。
[CS・衛星(邦画)] 6点(2021-10-05 22:21:25)
16.  城取り 《ネタバレ》 
時は戦国、関ヶ原合戦に向けて徳川家康が策動を始めたころ。上杉征伐の軍勢が会津に迫ってきたのに呼応して北隣の伊達政宗は上杉家領内に多聞山城という出城を構築して会津征服を狙ってきた。憂慮を深める直江山城守兼続にたまたま侍大将・俵左内を訪ねてきていた名うての兵法者・車藤三は左内と五百両の軍資金があれば自分が城を落としてみせると豪語した。しかし多聞山城の城代は切れ者で知られた赤座刑部、果たして藤三の作戦は首尾よく事が運ぶのだろうか? 司馬遼太郎の『城をとる話』の映画化ですが、この日経新聞で連載された小説自体が主演である石原裕次郎に依頼されたもので、完結を待って石原プロが製作した映画です。裕次郎の相棒・左内には千秋実、これまた百戦錬磨の戦上手だけど銭を貯めることが生きがいというキャラが面白い。堺の白粉行商人役で芦屋雁之助と伊賀の抜け忍として若き日の石立鉄男が城取りチームに加わりますが、口八丁の雁之助が傑作なキャラでした。作戦としては城の建造現場に潜り込んで銭を使って使役されている村人たちを決起させるという割とオーソドックスなものですが、ストーリー展開はどこか『七人の侍』を意識している感が強かったですね。『七人の侍』とは大きく相違するところは悪役で、赤座刑部=近衛十四郎がこれでもかという存在感とキャラ立ちで、完全に裕次郎を喰っていました。裕次郎と十四郎のチャンバラ対決は当然のごとくラストで用意されていますが、互いに長太刀を使って太刀がぶつかり合う瞬間に激しく火花が散る夜間を活かした演出が印象的でした。ちょっと気になったのは裕次郎のセリフ回しで、彼だけはほとんどのセリフが現代調なんです。藤三が村人を集めて作戦説明するシークエンスでは、「こんばんは、皆さん」って裕次郎が挨拶するのにはズッコケました(笑)。 城取りチームの四人は誰も死ななかったけど、ヒロインの中村玉緒など死者が村人衆だけというところが『七人の侍』と大きく違ったところですかね。テンポも良く個々の役者もいい芝居してるんだけど、なんか物足りない、要は裕次郎のチャンバラを見せるための映画だったということかもしれません。
[CS・衛星(邦画)] 6点(2021-07-30 23:12:26)
17.  シシリアン(1969) 《ネタバレ》 
マフィアが欧州でも隠然たる勢力を保っていた60年代の映画ですから、“マフィア”や“コーザノストラ”という語句は劇中ではいっさい使われていません。ジャン・ギャバンがボスの組織はどう見てもその出身地や構成などからマフィアなのですが、せいぜい“シチリア人”と呼ばれる程度です。この組織の表の顔はゲーム機器を扱う会社ですが、「裏の稼業では人殺しは絶対しない」なんて綺麗ごとが過ぎる設定で、これもマフィア業界への忖度なんでしょうかね。ジャン・ギャバンがまた沈着冷静で友誼に厚い貫禄というものを擬人化したようなキャラで、『ゴッドファーザー』のヴィト・コルレオーネなんか目じゃないって感じです。こういう警察も全くマークしていないような組織が旅客機をハイジャックして宝石強奪する展開は、ある意味で逆転の発想ですけど突拍子すぎます。60年代にアラン・ドロンがジャン・ギャバンと共演した作品はドロンがチンピラ感あふれる小者キャラという共通点がある気がしますが、刑務所でドロンが入手した宝石展のセキュリティ設計図はけっきょく使われず、女に手を出して墓穴を掘る軽率な行動を繰り返し、けっきょくこのパターン通りでした。 よく言えば淡々とした、普通に観れば締まりのないストーリーテリングに華を添える(?)のがエンニオ・モリコーネの脱力系な音楽です。この人はマエストロとなって惜しまれながら世を去りましたが、若いころは“音符のチンドン屋”“来る仕事はすべて引き受ける”などと陰口を叩かれていたそうで、その悪い面がでた結果がこれなんでしょうね。でもあの“ポヨ~ン♪”は、意外とフランス人の哀愁を誘う音だったりして(そんなわけ、ないか)。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2020-09-13 21:01:41)
18.  秦・始皇帝 《ネタバレ》 
「大蔵貢の新東宝が明治天皇なら大映は始皇帝じゃ!」という永田雅一の雄叫びが聞こえてくるような70ミリ超大作、そりゃ始皇帝の方がはるかに各が上ですからね。大映の70ミリ大作は『釈迦』に続いての二作目で、『スパルタカス』の機材の払い下げ品である220キロも目方のあるヴィスタ・カメラも良く動かせるようになっていて、『ベン・ハー』ばりの戦車が登場する戦闘シーンまで登場します。タイトルに“中華民国陸軍協力”と出ていますので台湾ロケもしたみたいで、そういや山並みなんかの風景がちょっと日本離れしていて良かったです。 始皇帝の生涯を単発映画で見せるというのはかなり無茶ですが、後半とくに万里の長城建設に焦点を合わせた脚本は良くまとまってるんじゃないでしょうか。新東宝と違って綺麗どころの質が高い大映ですから、若尾文子・山本富士子・中村玉緒と惜しげもなく投入しています。でもそれぞれが別々に登場するのがちょっと残念で、どうせフィクションを盛り込んでいるんだからこの三女優の絡みで展開させて欲しかったところです。まあそこはオールスター映画のつらいところで、雷蔵の刑軻なんてあっという間に退場ですから実にもったいない。その中でもっとも感じが出てたのは始皇帝の勝新は別にしたらやはり鴈治郎の徐福ですね。絶妙のキャスティングで、どう考えてもこいつは稀代のペテン師だなと納得させちゃうのが凄い。 始皇帝の死なんかはまるっきりフィクションですけど、これはこれで良かったんじゃないでしょうか。彼の業績というか暴政をこうやって見せられると、スターリンの独裁とそっくりだなと改めて感じました。
[CS・衛星(邦画)] 6点(2014-09-22 00:29:05)
19.  紳士同盟(1960) 《ネタバレ》 
プロットというか設定は『オーシャンと十一人の仲間』に酷似しています。舞台が英国で元将校ジャック・ホーキンスが集めた連中がかつての戦友じゃなくて軍を不名誉除隊となった互いに見ず知らず同士というのが『オーシャン』との大きな違いです。普通ならこの海千山千な男たちが持つ特殊技能や仲間内の確執で話を引っ張るものですが、親玉ホーキンスが飄々としているせいか実に淡泊なストーリー・テリングです。いつもそのいかつい顔を活かしたキャラが多いホーキンスも、こんなにとぼけた役もこなせるとは御見それいたしました。 犯行が露見するネタには「こんなことでばれるか?」とちょっと疑問が湧きますが、あのラスト・カットを見れば「ああこれがやりたくてこの映画を撮ったんだろうな」と思わせるようないい味がありました。
[DVD(字幕)] 6点(2014-01-19 22:24:40)
20.  地獄(1960) 《ネタバレ》 
肝心の地獄よりも、天地茂たち主要な登場人物がほとんど死に絶える現生の方が、不気味なんです。上から見おろす、下から見上げる、そんなとてもシュールで居心地の悪いショットが一時間の現生編の半分は占めているような気がします。何度も挿入される走る蒸気機関車や線路のカットがどんどん鬱な気分にしてくれます。 しかし新東宝でも屈指のカルトにこの映画を押し上げたのは沼田曜一のそりゃ鬼気迫る怪演に違いなく、この演技を説明するには適切な言葉が思いつかないぐらいです。彼が悪魔なのか天地茂のダーク・ハーフとして出現したのか、けっきょく最後までよく判らんところがまた良いですね。 地獄で苦しめられる天地茂に何か光明がさしてくるような雰囲気もあり、まさか夢オチの最悪なハッピー・エンドかと危惧させられるも、あまりに無常なラスト・ショットで締めてくるとはさすが中川信夫です。 この映画、未成年とお迎えが近い老人は、決して観てはいけません!!
[DVD(邦画)] 6点(2012-09-08 20:04:12)
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