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かたゆきさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1887
性別 男性
年齢 48歳
自己紹介 自分なりの評価の基準は、
10・超大好きな作品。完璧。映画として傑作であるばかりでなく、自分の好みと見事に合致している。
9・大好きな作品。完璧に近い完成度。手放しに歴史に残る傑作といっていい。
8・好きな作品。本当に面白い。欠点があるかもしれないが、それも含めて好き。
7・少し好きな作品。普通に面白い。欠点もあるかもしれないが、そんなに気にならない。
6・普通の作品。可も無く不可も無く。最後までストレスなく観られる。面白いけど、心に残るものはあまりない。
5・少しつまらない作品。最後まで観るのにちょっとストレスを感じた。面白い部分も多少はあった。
4・つまらない作品。最後まで観るのが苦痛だった。ほとんど面白いところが感じられなかった。
3・かなりつまらない作品。最後まで観た自分を褒めてあげたい。観終えた後に、怒りのあまりDVDを割りそうになった。
2・超つまらない作品。時間と金を返せ。観終えた後に、怒りのあまり製作者全員を殴りに行きたくなった。
1・絶望的につまらない作品。最低。観終えた後に、怒りを通り越して死にたくなった。
0・死霊の盆踊り。

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【製作年 : 2010年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
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1.  ジンジャーの朝 さよなら、わたしが愛した世界 《ネタバレ》 
「ねえ、聞いて。あたし、世界がこのまま終わってしまうなんて絶対に嫌。だから、あのキューバの核ミサイルのこと、なんとかしよう。あたしたちに出来る精一杯のことを」――。1945年、広島に原爆が投下された年に、ロンドンの同じ病院で生を受けたジンジャーとローザ。それから17年後の1962年、以来ずっと共に過ごしてきた2人はいつも一緒に居る親友同士となっていた。それぞれに問題を抱えた家庭環境から逃れるかのように、彼女たちはお互いの存在に大きく依存してゆくのだった。だが、感受性豊かなジンジャーがキューバ危機によってもたらされた「世界はこのまま終わってしまうのかも…」という強迫観念に捉われると、そんな2人の関係も少しずつ亀裂が生じ始めてゆく……。17歳の2人の少女の、文字通り今にも壊れてしまいそうな危うげな日々をリリカルな映像でもって綴った青春物語。うーん、なんだかこれまで大量に創られてきた思春期少女の青春を雰囲気重視で描いた過去の色んな作品(ソフィア・コッポラとかガス・ヴァン・サントとかの)の影響をモロに受けちゃってますね~、これ。ただ、そんな過去作に比べるとちょっと(いや、かなり?笑)センスが不足しているせいで、こちらはまったく新味のない平凡な作品となってしまってます。唯一新しいと思えるのは「核戦争勃発の危機により、もしかしたら世界は明日にも終わってしまうのかも」という、当時の社会に漂っていた現実的な閉塞感を物語の背景にしているところなのだけど、残念ながら巧く機能しているとは到底言い難い。それに後半、親友の父親に惹かれていくローザという展開もあまりにも単調過ぎるうえに、いまいち心理描写が希薄なせいで一向に感情移入できず、終始睡魔が…。主役を演じた2人がなかなかのかわい子ちゃん(エル・ファニング、いつの間にかなかなかの美少女に育っててびっくり!)で、そんな彼女たちのちょっぴり百合っぽい淫靡な雰囲気がけっこう良かっただけに残念!
[DVD(字幕)] 4点(2024-06-05 15:10:17)(良:1票) 《更新》
2.  少女は自転車にのって 《ネタバレ》 
いまだイスラム教に厳格な保守層が支配する中東の大国、サウジアラビア。そこでは、女性たちはいまだ抑圧された窮屈な生活を強いられている。家族以外の男の前では全身を覆うスカーフを身に纏うことを強制され、お洒落をすることはおろか、車の運転をすることすら禁じられているのだ。思春期を迎えたばかりの幼い少女ワジダもまた、そんな抑圧された社会に疑問を感じながら暮らしていた。それでも、親や教師の目を盗んでは欧米の自由なポップソングをカセットで聴いたり、幼馴染みの少年と追いかけっこしたりして、ワジダはなんとか自分らしさを保っている。そんな中、彼女はとある店先でまるで自由への象徴のような格好良い自転車と出逢ってしまう――。女性が自転車に乗ることすら憚られるサウジアラビアで、必死に自分らしく生きようともがく少女の健気な姿を淡々と描いたアカデミー外国語映画賞候補作。詳しい経緯はあまりよく知らないのですが、そんな厳格なイスラム社会で女性監督がこのように挑戦的――まがりなりにも先進国の一員である我々にとってはあくまで普通のことなのですが――な内容の映画を撮れたことに、まずは賛辞を贈りたいと思います。DVDに収録された特典映像によると、本作はサウジ国内では上映不可能とのこと。少女が自転車に乗るというなんてことない映像ですら表現できない社会がいまだ存在しているという事実にあらためて驚かされてしまいます。さて肝心の内容ですが、とにかく主人公ワジダを演じた女の子のキラキラと輝くような笑顔がとても魅力的。そんな彼女が自転車が欲しい一心でコーラン暗唱大会に必死で挑む姿には素直に共感出来ました。変に政治的なメッセージを強調せず、あくまで一人の少女の日常を切り取ることで、サウジ社会が抱える問題を淡々と炙りだしたところも良かったと思います。ただ、あまりにもゆっくりとストーリーが進行してゆき、最後までいまいち心に残るシーンやエピソードに出会えなかったところが少々物足りなくも感じてしまいました。それでも最後、しっかりと前を見据え自転車を漕ぎ出すワジダのその凛とした後姿は、良い余韻となっていつまでも僕の心に残りそうです。いつの日か、彼女のような女の子が普通にお洒落したり恋をしたり自転車に乗って何処までも自由に旅をしたり出来る日がやって来ることを祈らずにはいられません。
[DVD(字幕)] 6点(2024-03-07 11:11:58)
3.  SHAME -シェイム- 《ネタバレ》 
皆さん、都会で生きていると、たまに疑問に思うことはありませんか?街のいたるところに存在するコンビニに入れば、その雑誌コーナーの片隅には必ずと言っていいほど、いかがわしい雑誌――敢えて下世話な言い方をすればエロ本の棚が存在しています。ビデオ屋さんの18禁コーナーに入れば夥しい数の他人のセックスを収めたDVDが並び、ネットを開けば簡単に過激な動画を見ることが出来ます。電話を掛ければ、そういう女の人がすぐにやって来てくれ、繁華街に行けばさらに過激な性的サービスを供給してくれるお店を利用することが出来ます。なのに社会では、電車に乗っていると日常的に人身事故に出くわし、理不尽な暴力事件はあとを絶たず、幼児虐待やストーカー殺人などといった悲惨な事件も一向になくなる気配はありません。そして世界の何処かでは今も戦争が続き、貧困や飢餓が貧しい人々を苦しめている。それでも僕たちは自分の性欲を満足させるためにエロ本を買い風俗店に足を運ぶ。人のことなどどうでもいいと言わんばかりに……。いったい人間とは何処まで愚かな恥ずべき生き物なのだろうって。本作の主人公であるサラリーマン、ブランドンもそんな都会の片隅で、まるで日々恥の上塗りをするかのような刹那的な日常を生きている。行きずりの女と愛のないセックスに溺れ、商売女を自宅のマンションに呼んで快楽を貪り、あまつさえ仕事中にトイレにこもっては自慰行為に耽る…。なのに少しも満たされない孤独な心を抱えた彼の元にある日、「何処にも行き場所がないの!お願い、ここに住まわせて…」と、同じく鬱屈した日々を送っていた妹のシシーが転がり込んでくる。お互いの孤独を敏感に感じ取った2人でしたが、少しも正直になれない彼らはすぐに互いの心を傷付け合い、ますますその閉塞感を強めてしまうのでした。そして彼らは自らが生きる理由すら次第に見失ってゆく……。そんな愚かな人間たちの姿を冷徹に見つめながらも、物語は最後、微かな――今にも消え入りそうな本当に微かな希望の残像のようなものを残して静かに幕を閉じます。正直、見れば見るほど気が滅入るような作品なのですが、美麗な映像と実力ある役者陣の熱演、そして何よりも悲哀に満ちた美しい音楽とによって、胸を打つ哀切な人間ドラマへと見事に昇華されている。素晴らしいとしか言いようがない。人間は誰もが“恥(シェイム)”を抱えた愚かしい生き物、それでも人は幸せを求めて必死に生きてゆく。そんな当たり前のことをあらためて教えてくれる、美しい作品でありました。
[DVD(字幕)] 8点(2024-03-01 12:39:51)
4.  子宮に沈める 《ネタバレ》 
「実際に起きた「大阪二児餓死事件」を基に、家庭という密室の悲劇を描いた衝撃作」という前提を取り除いたら、後に残るのはさして中身のないただただ悲惨な事実を再現しただけの映画。自分の率直な感想を述べさせてもらうと、それ以上でもそれ以下でもありません。幼い子供がこの状況に置かれたら必ず母親を求めて泣き喚き、声を枯らせて助けを求めると思う。ゴミにまみれた小さな部屋の中でドアも窓も全てふさがれ、面倒を見てくれる大人も食べるものもない状況に置かれた子供は、きっと極限の不安感から悲鳴に近い声を上げ続けるはず。でも、この映画にそんなシーンは一切ありません。ただ淡々と静かに「お母さん、お母さん」と呼び続けるだけ。今の時代、3、4歳の子役にそこまでの演技をさせるとコンプライアンス的にまずいと言うことで恐らくそのようなシーンを撮らなかったのだろうけど、そういったシーンが撮れないのであればこの映画は作るべきではなかったし、実際に起きた事件を基にしたと謡うのであればやはり子供が泣き喚くシーンは絶対に入れなければならなかったと思う。これは社会を震撼させた衝撃的な事件をただ表面的になぞっているだけで、メッセージ性もテーマとしての深みも非常に浅いと自分は感じてしまった。実際にあった悲痛極まりない事件を基にしたという誰も正当な評価をしづらい前提を建前に、これは監督の自己顕示欲を満たすため、なおかつ幾ばくかの金儲けのために撮られた映画だと思う。邦画でよくある難病系のお涙頂戴映画よりも、とてもいらやしい下劣なものを感じ取ってしまった。正直、この監督の人間性は下劣だと思う。
[DVD(邦画)] 4点(2024-03-01 09:09:57)(良:1票)
5.  シークレット・パーティー 《ネタバレ》 
都会の片隅で出張コールガールとして働く2人の女、そんな彼女たちの運転手をしている自堕落な男――。社会の吹き溜まりのような、薄汚れたアパートの一室で酒とセックスに溺れるそんな3人の男女の愛と嘘とトラウマが刹那的に交錯する哀切な人間ドラマ。な~んて真面目に本作の内容を説明してみましたが、はっきり言って久し振りにこんなにも論評に値しないと思える「クソつまんないショボ映画」に出会ってしまいました。キアヌ・リーヴスを初めとするこの3人の男女が、ひたすらどうでもいい愚痴を言い合い、たまに喧嘩して、やっぱり仲直りしてがダラダラダラダラ延々と続いて、もう最後まで観るのが苦痛で苦痛で仕方ありません。中盤、路上でカメラを盗むキアヌのエピソードもそのカメラで撮られる女優たちの即興演技もいったい何がやりたいのか、さっっっぱり訳が分からない。挙句、最後に客である独身最後の夜を満喫したい新郎と友人たちの〝シークレット・パーティ〟に呼ばれた彼女たちの、ぬる~~~いエロ描写でお茶を濁して終わり……。山ナシ、オチナシ、意味ナシという、まるでコミケなどで売られていそうな安っぽい同人誌のようなお粗末な映画でございました。もう何日も満足な睡眠を得られていない、極度の不眠症に悩まされている方などにお薦めです(笑)。
[DVD(字幕)] 1点(2023-12-27 10:21:11)
6.  シン・シティ 復讐の女神 《ネタバレ》 
罪の街、シン・シティ――。そこに集うクズどもの悪と悲哀に満ちた生き様を、これまでにない斬新な映像で魅せたバイオレンス・ノワールの待望の続編。そのあまりにも漫画チックで荒唐無稽なストーリーに賛否両論分かれた前作ですが、僕はあの他の追随を許さない独創的な世界観がけっこう気に入っていたので、本作も期待して今回鑑賞してみました。うーん……、期待が高すぎたのか、あらゆる意味で前作よりスケールダウンしちゃった感が否めなかったですね、これ。確かに映画としてある一定の水準に達してはいるのですが、前作での冴えに冴えまくっていたサイコーにかっちょ良い演出が今回は少々おとなしめ。こういうあまりにも馬鹿馬鹿しい荒唐無稽なお話は、もっともっと極限まではじけてもらわないとやっぱり観ていてちと辛い。エヴァ・グリーン演じる超絶悪女――そういえば彼女、同じくフランク・ミュラー原作の「300」の続編でも同じような超ドSな悪女を演じてましたね。うん、何度見ても良いおっぱいだ(笑)――は確かに魅力的だったのだけど、そんな彼女に翻弄されるジョシュ・ブローリンがあまりにもアホ過ぎてちっとも魅力が感じられなかったのも残念。とはいえ、猥雑な熱気に満ちた、この唯一無二の独創的な世界観は個人的に好みなので、ちょっぴりおまけして6点あげとこう。
[DVD(字幕)] 6点(2023-08-31 13:43:12)
7.  ジャッジ 裁かれる判事 《ネタバレ》 
「いいか、ここは弁護人として言っておく。親父、勝つためにあんたに証言台に立ってもらうつもりはない。あんたはキリスト教保守の田舎者ばかりが住むこの町の一公務員に過ぎない。誰もあんたの功績なんて気にしてないさ」「私が気にする。42年間、判事としてこの町の裁判長席に座り続けたんだ。人々は私を信じ、私が下す判決を支持してくれた。証言台から逃げたがるのは罪を犯した者だけだ。余計なことはするな」――。大都会、シカゴ。金持ち専門のやり手として忙しい毎日を送る敏腕弁護士ハンクの元に、地元インディアナから一本の電話が掛かってくる。長年疎遠にしてきた実家で彼の母親が病死したというのだ。すぐに現在担当する裁判を延期し、飛行機に乗り込むハンクだったが、彼には長年の気がかりがあった。それは地元でずっと判事として働いてきた父親との長い確執を抱えているという事実。無事に葬儀を終えた彼だったが、やはり父親とは酷い口論となってしまい、「もうこんなところ二度と戻ってこないからな!」と捨て台詞を残して家を飛び出すのだった。だが、飛行機に乗り込んだ彼の元に再び電話が掛かってくる。なんとその父親が酒を飲んで死亡轢き逃げ事件を起こしたらしい。すぐに引き返し、窮地に陥った父親のためにやむなく弁護を引き受けたハンクだったが、長年の親子の確執は裁判に暗い影を落としてゆく…。アメリカの保守的な田舎町で、父親である堅物の判事が起こした交通事故、その弁護を引き受けることになったやり手弁護士である息子が、裁判を通して向き合うことになる家族のドラマを軽快に描き出す法廷サスペンス。新旧実力派俳優の競演と言うことでこの度鑑賞いたしました。確かにエンタメ映画に徹したその演出手法は最後まで好感を持って観ることが出来て、そこは素直に良かったと思います。普通に考えて重たくなりそうな題材だけど、本作では田舎ののどかな田園風景を背景に、ロバート・ダウニー演じる弁護士の飄々としたちょい悪ぶり(確かにアイアンマンのトニー・スタークと思いっきりかぶるけど笑)がいい感じで作品を軽いものにさせている。そんな彼の周りに配置された演技達者たち(偏屈親父役のロバート・デュバルはもちろん、僕的にはビリー・ボブ・ソーントンが凄くいい味出してました!)のいぶし銀の競演が華を添えてます。うん、良い映画でした。7点…、と、言いたいところだけどさすがに長すぎるかなぁ。この題材で2時間20分はちょっとねぇ…。いらんエピソードを削ってもっとスリムに出来たはず。それに後で思い返してみたら、結局真相は完全には明らかになってませんやん。ここまでベタでいくなら、最後までベタで通してすっきりと終わらせてほしかったです。と言うわけで-1点。
[DVD(字幕)] 6点(2023-07-19 09:48:17)
8.  シェフ 三ツ星フードトラック始めました 《ネタバレ》 
街のこじゃれたフランス料理店で長年シェフをしていた主人公が、ツイッターで問題を起こしたことが原因でオーナーと揉め仕事を首になるものの、仕方なしに始めたフードトラックが評判となり見事再起を果たす映画。それ以上でもそれ以下でもありません。いくらシンプルイズベストと言ってもさすがにこれは捻りがなさ過ぎるような気がします。とにかくストーリーが一本調子なうえに容易に先が読めるため、僕は途中でだれてしまいました。小食な自分には作中で取り上げられる料理にも特段魅力を感じず……。全編に使われているラテン・ミュージックもあまりにも陽気過ぎて自分には合いませんでした。特に、僕はこういう「出てくるキャラクターが基本的に善人ばかりで、なんだかんだあったとしても最後は誰も彼も皆ハッピーになって終わる」ような映画は嫌いです。豪華な役者陣競演ということで今回観てみたのだけど、どうやら自分には合わなかったみたい。これは完全に好みの問題なので如何ともしがたい。すんません、4点で(ジョン・ファブロー監督、これを読んで殴り込みに来ないでね笑)。
[DVD(字幕)] 4点(2023-05-17 09:13:38)
9.  人生スイッチ 《ネタバレ》 
ふとしたきっかけで人生の落とし穴に落ちてしまった人たち。前を走るポンコツ車の運転手へと追い抜きざまに罵声を浴びせた男、偶然客としてやってきた父親の敵へと復讐しようともがく深夜のファミレスのウェイトレス、駐禁を取られたことに怒り心頭な建築技師は当局の窓口で不満をぶちまける。息子の轢き逃げを金の力で揉み消そうと画策するブルジョアは逆に追い詰められ、結婚式の最中に夫の浮気を知った花嫁は悪女と化す。それはまるで人生を破滅へと導く禁断の〝スイッチ〟を押してしまったかのように――。不条理な事態に追い込まれ、自滅していく人々をブラックかつシニカルに描いたオムニバス作品。スペインの巨匠ペドロ・アルモドバルが制作を務め、アカデミー外国語映画賞の候補にもなったということで今回鑑賞してみました。確かに個々のお話は短いながらもそれぞれにキレがあり、独特のカメラワークや悪意に満ちたストーリーテリングの妙もあって、普通に面白いとは思ます。特に一番はじめの飛行機の話と、2人の男が些細なことから言い争いをはじめ次第に殺し合いにまで発展する第3話はけっこう惹き込まれました。女の壮絶なバトルが繰り広げられる最後の花嫁の話など、いかにもアルモドバルが好きそうなブラック・ユーモアに満ち満ちていて楽しい。とはいえ、1本の映画として評価するならば正直微妙。個々のお話に全く繋がりがなく全体の統一感が希薄なせいで、一つの作品としてみるとさすがに散漫さが否めません。例えばこれに同一のキャラクターが複数のお話にまたがって登場するだとか、あるいはお話の舞台がリンクするだとか、そういった工夫が欲しかったところ。それぞれのエピソードのクオリティは――程度の差はあれ――なかなか高かっただけに惜しい。
[DVD(字幕)] 5点(2023-04-17 09:10:57)
10.  白い帽子の女 《ネタバレ》 
舞台は1970年代、南フランスのとある小さな港町。田園と漁場以外何もないこののどかな町に、一組の中年夫婦が派手なオープンカーでやってくるところから物語は始まる。夫であるローランドはかつて人気作家として名を馳せたものの今や落ちぶれて酒浸りの毎日、ダンサーとして舞台に立っていた妻ヴァネッサも今では精神的な不調により薬に頼らざるを得ない日々を過ごしている。見るからに不穏な空気を漂わせるこの夫婦、すぐに地元のホテルへとチェックインするものの、もちろん胸躍るバカンスというわけではなさそうだ。ローランドは地元の食堂にすぐさま飛び込むと朝からジンを煽り、ヴァネッサも明らかな抑鬱状態からベッドから起き上がることすら出来ず、二人の間には会話らしい会話すらない。そんな閉塞感に打ちひしがれる二人の隣室に、ある日、一組の新婚夫婦がハネムーンでやってくる。未来への希望に満ちた二人に嫉妬と羨望の目を向ける夫婦は、部屋の壁に小さな覗き穴が開いているのを発見する。好奇心から彼らの情熱的なセックスを夜な夜な覗き見るようになってゆく妻と夫。かつての自分たちの姿を彼らに重ね合わせ、次第に修復の糸口を見出しそうになるのだったが…。お互いの関係に息詰まってしまった一組の中年夫婦のそんな葛藤と退廃の日々を倒錯的に描いた心理ドラマ。アンジェリーナ・ジョリーがメガホンを執り、実生活でもパートナーであったブラット・ピットと夫婦役を演じたうえ、公開直後に二人が実際に離婚してしまったということでいろいろ話題になっていた本作。興味を惹かれて今回鑑賞してみました。まあやりたいことは分かります。古いフランス映画っぽいアンニュイ&デカダンスな雰囲気、そして婚姻という制度への圧倒的な不信感。監督はそういった退廃的な世界から何か新たな思想や価値観を探り出したかったのでしょう。ですが、本作の欠点はそのための端緒には立ったものの、それ以上に深化はしていないところでしょうか。なので何か新しいメッセージ性を感じさせることもなく、全体的に古臭い印象しか残らない。実際に破局の危機を迎えた夫婦――本当のところがどうなのかはこの際置いておいて――が同じような危機に直面した夫婦を演じることで、自らの関係を改めて問い直そうという私小説的な試みはなかなか興味深かっただけに残念と言わざるを得ません。
[DVD(字幕)] 5点(2023-04-03 13:11:38)
11.  ジュリエッタ 《ネタバレ》 
マドリードで平穏な日々を過ごす初老の女性、ジュリエッタ。現在付き合っている彼氏ともに近々ポルトガルへと引っ越し、2人で新たな生活を始める予定だった。だが、そんな一見幸せそうに見える彼女にも誰も知らない秘密の過去が。一人娘であるアンティアともう長い間音信不通で、お互いの安否すら分からない状態だったのだ。深い諦めの中に生きていた彼女だったが、旧友との再会が彼女の運命を再び揺り動かすことに。「先週、あなたの娘さんとコモ湖で会った。子供たちと一緒に買い物していたわ」。家族ぐるみで付き合いのあったその旧友の言葉に、心を掻き乱されるジュリエッタ。今、決断しなければ私は死ぬまで後悔することになる――。恋人とのポルトガル行きをキャンセルし、娘との唯一の繋がりであるかつてのアパートへと引っ越してきた彼女は、ただひたすら娘からの連絡を待ち続けることに。そんな孤独な日々の中で、ジュリエッタは最愛の娘へと一途な告白を書き始める。娘の父親との初めての出逢い、海沿いの田舎町での満たされた日々、そして母子を分かつことになるあの運命の日のことを……。過酷な運命に翻弄されるある一組の母と娘の物語を、過去と現代を行き交いながら描くヒューマン・ドラマ。スペインが生んだ巨匠ペドロ・アルモドバル監督の最新作ということで今回鑑賞してみました。冒頭、まるで女性器を思わせる赤いドレスを背景に映し出されるアルモドバルのクレジット、そしてキャスト・スタッフの一連の紹介が終わった後に突如として現れる抽象的な男性器の彫刻。もうこれだけで唯一無二のアルモドバル・ワールドへと引き込まれていきました。この変態チックなのに何処か高尚な世界観はやはり素晴らしいですね。そんな独自の世界観の中で描かれる母と娘の愛憎劇もまた、いかにも彼らしい憂いと熱情に満ちたものでとても良かったです。前半、ジュリエッタの家族が幸せであればあるほど、いつかこれも壊れてしまうことを分かっている僕たちは何ともいたたまれない気持ちにさせられる。この不安感の煽り方は絶妙にうまい。人は誰しも愛し合い慈しみ合いながら生きていく生き物だが、些細な行き違いによってそれもいつか憎しみに変わってしまうかもしれない。それでも人は――女は母となっていく。そんなアルモドバル終生のテーマが情熱的な映像によって見事にアートとして昇華されている。見事というほかない。ただ、ラストは賛否が分かれるところ。最後まで見せなかったのはいささか物足りない気もするけど、これはこれで良かったのかな。難しいところだけど、僕は充分満足でした。7点!
[DVD(字幕)] 7点(2023-02-17 11:50:03)
12.  シェイプ・オブ・ウォーター 《ネタバレ》 
社会の片隅でひっそりと暮らす口の利けない女性と、アマゾンの奥地で捕らわれた謎の半魚人との一風変わったラブストーリー。印象的なシーンも多く、テーマも分かりやすく深い。そしてギレルモ・デル・トロ監督らしい、細部にまで拘った独創的な映像美が素晴らしかったです。水没した部屋の中で二人でダンスを踊るシーンは、最近観た映画の中でも出色の名シーンでした。個人的には『パンズ・ラビリンス』の方が好みだけど、こちらも充分楽しめました。8点!
[映画館(字幕)] 8点(2022-12-29 11:03:31)
13.  シドニー・ホールの失踪 《ネタバレ》 
既存の価値観を真っ向から否定するような挑戦的な内容で、全米ベストセラーとなった青春小説『郊外の悲劇』。デビュー作にして一躍時代の寵児となった作者であるシドニー・ホールは、プレッシャーからかなかなか二作目が書き出せずにいた。そんな折、この小説に影響された青年が自らその命を絶ち、全米中で賛否両論含めた議論が巻き起こるのだった。精神的に追い詰められたシドニーはある日、着の身着のままの姿で失踪してしまう――。以来シドニー・ホールの消息は誰にも分からず次第に人々は彼のことを忘れていった。だが、七年もの月日が過ぎたころ、いくつかの図書館で彼の著作が燃やされるという事件が多発する。老犬を連れ、ふらりと現れた犯人こそが彼なのではないか。疑問を抱いたある人物が彼の調査を開始する。浮かび上がってきたのは、シドニー・ホールという男の深い哀しみに満ちた人生だった……。失踪したベストセラー作家のミステリアスな半生を、三つの時間を行き交いながら綴るヒューマン・ミステリー。描かれるのは作家シドニー・ホールのまだ無名だったハイスクール時代と、やがてベストセラー作家となった彼の栄光とプレッシャーの日々、そして一匹の老犬だけを相棒に全米を放浪する空白の時期という人生のターニング・ポイントとなった三つの時代のエピソード。この三つの時間軸を複雑に行き交いながら同時並行で描くという難しい手法を使っているのですが、ちゃんとそれがいつの時代の話なのか観客に分かるように描き分けているのは巧いと思います。どの時代のお話にもちゃんとそれぞれに明確なテーマと謎が存在し、全体としてある一人の男の人生を重層的に浮かび上がらせることに成功しています。そして、それら三つの時代に様々な姿で立ち現れる美しい女性メロディの存在も煌びやかで大変いい。彼女を演じたエル・ファニングがとてもキュートで、まさに嵌まり役。ただ、物語の終盤、それぞれのエピソードに隠された謎が全て明らかにされるのですが、それらが一本の映画としてうまく纏まっていないのが本作の弱いところ。青春期の初恋と友情、デビュー後の挫折と喪失、失踪後の絶望と再生、これらの要素が有機的に巧く絡み合っていません。なんだか別々の映画を一本に編集しなおしたような印象を受けてしまいました。きちんと整理されたストーリーテリングが抜群に巧かっただけになんとも惜しい。
[DVD(字幕)] 6点(2022-08-04 12:06:02)
14.  ジェントルメン(2019) 《ネタバレ》 
引退を決意した麻薬王の資産を狙って、それぞれに蠢き始めた暗黒街の〝紳士たち〟を終始軽快に描いたクライム・サスペンス。マシュー・マコノヒーやコリン・ファレル、それに懐かしのヒュー・グラントなど豪華な面々がそんな個性豊かなワルたちをのびのびと演じております。監督は、この手のジャンルを得意とするガイ・リッチー。と言う訳で今回期待して鑑賞してみました。うーん、期待が高すぎたのか、なんかイマイチな出来でしたね、これ。とにかくテンポが悪い!探偵と麻薬組織の幹部がボスの秘密をめぐってひたすら駆け引きを繰り返す会話劇が物語の縦軸となり、そこから過去の話が回想形式で再現されるという本作の構造。これがうまく機能してないんじゃないかな。この先面白くなりそう!ってところでいちいち現在のシーンに戻るので、なんか集中力が途切れちゃうんですよね。演技派でならしたマシュー・マコノヒーだけにタメの演技を多用しているのもテンポの悪さに拍車をかけているような?お話自体はそこそこ面白かっただけに、もう少し見せ方を頑張ってほしかったです。うーん、次作に期待!
[DVD(字幕)] 5点(2022-06-20 06:34:30)
15.  JUNK HEAD 《ネタバレ》 
たった一人で脚本から美術から撮影から編集から果ては声まで手掛けた孤高のクリエーターが、7年もの歳月を掛けて創り上げたというストップモーション・アニメ。この常人にはおおよそ思いつけないだろうぶっ飛んだ世界観や、キモさと可愛さが絶妙に同居するキャラデザインなどは何だか癖になる魅力があり大変良かったです。特にクスコという謎の食べ物をもらうシーンなんか絶妙に気持ち悪い!!でも最後まで魅入っちゃうのは、この監督のユーモアセンスがよく分からないなりにクスリとさせられてしまうからなのかな。まあ自分はそこまで熱狂的に嵌まるほどでもなかったですが、充分楽しめました。三部作みたいなので、もちろん全部観ますぞー!!でも、本作完成までに7年、単純に計算して完結編完成まではあと14年かかるってことですな…。そのころまで生きてられるかな……(笑)。
[DVD(字幕)] 7点(2022-05-09 21:26:16)
16.  ショート・ターム 《ネタバレ》 
ショート・ターム12――。それは、短期滞在型の児童福祉施設だ。そこでは、家庭に問題を抱えた様々な子供たちが暮らしている。育児放棄や児童虐待、家庭内暴力や貧困などそれぞれに深刻な問題を背負った子供たち。彼らの世話や健康管理を担当する施設職員グレイスは、そんな子供たちが日々巻き起こす問題に忙殺されていた。彼らの切実な思いに満足に応えられないというジレンマに悩むグレイス。彼女の唯一の心の支えとなっているのは、同僚で一緒に暮らしている恋人メイソンの存在だった。そんなある日、グレイスに予期せぬ妊娠が発覚する。だがグレイスは、素直に喜ぶことが出来ない。何故なら彼女自身もまた、幼いころ実の父親に虐待を受けていたというトラウマを抱えていたから。そこに同じく父親から虐待を受けていると思しき女の子、ジェイデンがやってきて…。小さな児童福祉施設を舞台に、そこに暮らす様々な子供たちや職員たちの心の葛藤を描いたヒューマン・ドラマ。自傷行為やドラッグ、衝動的な暴力や精神疾患等々、ここで取り上げられる子供たちの実態はかなり深刻で、ともすれば非常に暗い作品になりそうなのだが、そうさせない魅力がこの作品にはある。きっとそれは、登場人物誰一人として希望を失っていないところだろう。親からの虐待やネグレクト、中には実の父親からの性的虐待などと言う心が挫けそうになる深刻な事態に陥りながらも、それでも彼らは明日を見つめることを止めない。それはグレイスをはじめとする施設職員も同じで、ここで暮らす誰もが時に反発しあいながらも絶えず前を向こうと努力している。そんな彼らを、この監督はまるでこの施設に一緒に暮らしている一員かのような目線で見つめている。物語の進行とともに、観客はいつしか彼らの仲間の一人となっているかのような感覚に陥ってくるのだ。この監督の豊かな才能のなせる技なのだろう。主人公を演じたブリー・ラーソンもそんなトラウマに悩む施設職員を等身大に演じていて、とても魅力的だった。彼女と父から虐待を受ける少女ジェイデンとの間に芽生える友情には心揺さぶられるものがある。特にジェイデンが創作した童話「友達のサメのために足を差し出すタコ」という哀しいお話に、彼女がじっと耳を傾けるシーンには思わず涙してしまった。この世は辛く悲惨なことばかりだけど、それでも前を向いて生きていこう。自分のことを理解してくれる仲間のために――。そう思わずにはいられない、とても優れた物語だった。
[DVD(字幕)] 8点(2022-04-25 07:10:25)
17.  ジョジョ・ラビット 《ネタバレ》 
彼の名は、ジョジョ・ベッツラー。アドルフ・ヒトラーを心の底から信奉し、現在敗色濃厚なドイツの最終的な勝利を日々神に願い、そしてユダヤ人を劣等民族だと信じて疑わない、愛国主義の見本のような10歳の少年だ。だが、ドイツ少年団のキャンプに参加した際、彼はウサギを殺せという命令を実行できず、ジョジョ・ラビット(臆病者)と言う不名誉な渾名を付けられる。そればかりか、手榴弾の扱いを誤り、大怪我を負ってしまうのだった。周りの友達が皆、戦地へと駆り出される中、彼は母親とともに自宅療養を余儀なくされる。空想の中の友達である〝アドルフ・ヒトラー〟と空しい日々を過ごすジョジョ。ところがある日、彼は自宅の屋根裏に謎の少女が密かに暮らしていることを知るのだった。「間違いない、彼女はユダヤ人だ」――。すぐにでも秘密警察に知らせようとするジョジョだったが、この件には母親が深く関わってることが分かり、彼は苦しい板挟みに陥ってしまう…。第二次大戦末期、時代の空気によってナチスの信奉者となった少年とユダヤ人少女との密かな交流をコメディタッチで綴ったヒューマン・ドラマ。アカデミー作品賞にノミネートされ、世間の評判もすこぶる良かったので今回鑑賞してみました。いや、噂に違わぬ素晴らしい出来でしたね、これ。ナチスのホロコーストと言う非常に重いテーマを扱いながらも、最後までコメディタッチの軽いノリを貫き通したのは英断だったと思います。なにより笑いのセンスがすこぶる良い。ナチスの秘密警察が人に会うたびに一から「ハイル、ヒトラー」を繰り返すとこなんて思わず笑っちゃいました。飄々とネタを披露するサム・ロックウェルもナイスな仕事ぶり。ブラックな発言を繰り返すあの太った女性なんて、もはや吉本新喜劇のノリですね。悪趣味一歩手前のぎりぎりのラインを突くこのユーモアのセンスはなかなかのものがありました。もちろんそれだけではありません。時代の空気なので仕方ありませんが、このジョジョと言う少年があまりにもナチスを信じ切っていて最初は嫌悪感爆発。でもその後、このユダヤ人の少女に徐々に心を許してゆき、次第に洗脳が解けて、やがて彼女にほのかな恋心を抱くとこなんてホント巧い。彼女のためにジョジョが書く手紙も切なすぎます。スカーレット・ヨハンソン演じる彼の母親のエピソードなんて涙無くしては見れません。惜しいのは、彼の空想上の存在である〝アドルフ〟がいまいち巧く機能していないところぐらい。笑って泣けて最後は深く考えさせられる、素晴らしい作品でありました。
[DVD(字幕)] 9点(2022-03-14 16:13:07)
18.  幸せへのまわり道(2019) 《ネタバレ》 
彼の名は、フレッド・ロジャース。アメリカで30年以上にわたり人気を博してきた子供向け長寿番組で、ずっとMCを務めてきた名司会者だ。優しい語り口と明るい歌声、そして何よりあくまで子供の視点に立ったスタンスで幅広い世代から親しまれてきた。そんな彼はある日、とある社会派ジャーナリストから取材を受けることに。ロイド・ボーゲルと名乗る彼は、早速フレッドの仕事場であるテレビのスタジオへとやってくる。だが、彼は明らかに顔面を殴られた痣があり、何とも不機嫌な様子で早く取材を終わらしたがっていた。いたく興味を惹かれたフレッドは、逆に彼に質問を浴びせかける。聞き出してみると、なんと彼は姉の結婚式で久しぶりに会った実の父親と激しい口論となり、殴り合いにまで発展してしまったのだという。取材はそのまま終わったものの、彼のことが気になったフレッドは後日、取材の延長ということで彼と再び会うことに。子供のように純粋な好奇心から話を聞くフレッドに、ロイドは淡々と語り始める。父が過去、幼かった自分と病弱な母を残し、他の女の元へと逃げ出してしまったことを――。実話を元に、アメリカでもっとも有名な人気司会者と家族との確執を抱えた中年ジャーナリストとの交流を暖かな目線で見つめたヒューマン・ドラマ。アメリカでは知らない人はいないとも言われるそんな人気司会者を演じるのはベテラン俳優トム・ハンクスで、なんと20年ぶりにアカデミー賞にノミネートされたということで今回鑑賞してみました。というか、そんなに久しぶりのノミネートなんですね。なんか毎年受賞してるくらいのイメージだったんですけど、それは僕の思い込みでした。確かに長年のキャリアに裏打ちされたであろう彼の演技は抜群の安定感で、このフレッド・ロジャースという人物を知らない僕でも「ああ、確かにこの人は長年多くの人に親しまれたんだろうなぁ、こんなに大らかで見ているだけで癒される人は滅多にいないだろう」と思わせるほどの説得力がありますね。そんな彼が、ある日偶然出会った短気で偏屈な中年男の心を徐々に開いてゆくというのはベタですけど、なかなか面白かったです。特に、この大らかな人物の周りの人が「あれで昔は短気だったのよ」と語らせるとこもさりげなくて巧い。全体的に子供向け番組のような演出を差し挟んでくるのもそこまで違和感なく、逆にこの地味なお話を魅力溢れる物語へと昇華させることに成功している。うん、観終わるころにはほっこりしている自分がいましたわ。まぁお話としてはあまりにもストレートで若干パンチに欠ける気がしなくもないですが、なかなか良かったんじゃないでしょうか。監督は、前作でもそんなうまくいかない人生に疲れた人たちを終始暖かな目線で見つめたマニエル・ヘラー。この人の作風は僕の好みと合うようなので、これからも追いかけていこうと思います。
[DVD(字幕)] 7点(2021-10-02 02:08:39)
19.  ジョン・F・ドノヴァンの死と生 《ネタバレ》 
彼の名は、ジョン・F・ドノヴァン。数々のテレビドラマや映画に出演し、多くのファンを得ていた人気俳優だ。だが、順風満帆だった彼の人生はある日、一つのスキャンダルから転落の道を歩み始める。出演予定だった映画は全て降板、酒に溺れた挙句暴行事件を引き起こし、やがて自宅の浴室で死体となって発見されるという最悪な結末を迎えてしまうのだった――。そんな彼は生前、英国に住むある無名の11歳の少年と文通をしていた。シングルマザーの母とともに貧しい生活を送る少年ルパートが何気なく書いたファンレターに、ドノヴァンが返事を書いたのが始まりだった。以来彼とルパートとの文通は100通以上に及び、お互いの何気ない日常や鬱屈した想いを赤裸々に書き綴っていた。それも彼の死で終わりを告げたはずだった――。時は流れ、彼と同じ新進俳優となったルパートはそんな彼とのやり取りを綴った本を出版する。それは各方面で話題となり、幾つものインタビューの依頼が舞い込むことに。取材の場となったプラハで、彼は語り始める。ジョン・F・ドノヴァンとの濃密な交流といじめられていた幼き日々、そして衝撃的な彼の死の真相を……。カナダの俊英グサヴィエ・ドラン監督が、少年時代に憧れの存在だったレオナルド・ディカプリオに手紙を書いたという思い出を基に描くミステリー・ドラマ。物語は、主人公であるルパートが彼と手紙のやり取りをしていた少年時代と、大人になり彼と同じ俳優となった現代、そして虚飾に塗れたハリウッド・スターの内幕を相互に行き交いながら進んでゆきます。そういう複雑な構成のお話なのに、分かりやすく整理された脚本と全編に散りばめられた幾つもの謎によって、最後までぐいぐい引き込ませるのは監督の高度な演出力によるもの。率直にこの監督の才能は確かなものだと思います。張られた伏線を最後に全て回収する鮮やかな手腕も知的でアイロニカルに満ちた会話も、そして気品のある美しい映像も…。でも、僕は個人的にいまいち嵌まれませんでした。なんだかこの監督って、自分の才能に凄く自信があるんでしょうね。例えば、少年時代の主人公が雨の降るロンドンで母親と再会を果たすシーン。急にスローモーションとなって抱き合う親子に流れる、女性ボーカルの「スタンド・バイ・ミー」。確かに凄くセンス溢れる美しいシーンだとは思うんですよ。でも、僕は素直に感動するより先になんだかこの監督の、「どうだい?俺の感性ってお洒落で新しいだろ」とでも言いたげなドヤ顔が透けて見える気がします。いわゆる、鼻につくってやつです。全編こんな感じで、僕は素直に楽しめませんでした。僕にとって、「その才能は充分に認めるけれど、いまいち好きになれない監督」がまた一人増えたようです。
[DVD(字幕)] 6点(2021-06-07 04:53:19)(良:1票)
20.  ジュディ 虹の彼方に 《ネタバレ》 
『オズの魔法使』で一世を風靡した人気子役、ジュディ・ガーランドのその後を実話を基に描いた伝記映画。昔懐かしのレニー・ゼルウィガーがそんな落ちぶれたかつての人気女優を演じ、見事アカデミー賞を受賞したということで今回鑑賞してみました。なんですが、肝心の脚本がいまいちな出来でしたね、これ。とにかくこのジュディ・ガーランドという一人の人間への掘り下げ方が圧倒的に浅い!優れた伝記映画には、この人の人生とはいったいなんであったのか、その生涯を通じて何を追い求めたのか、そういったテーマが強固としてあるものだけど、残念ながらこの作品にはそのようなテーマ性が一切感じられませんでした。これではただ事実を羅列したにすぎません。また、ところどころにある回想シーンの挿入の仕方がどれもセンスが悪く、現在のシーンとうまくリンクしきれていないので何ともちぐはぐな印象。もっと子供のころの華々しい時代の真実を掘り下げて描くべきだったのではないか。ただ、レニー・ゼルウィガーの演技はさすがにアカデミー賞を受賞しただけあって、なかなか真に迫っておりました。って、これって演技じゃなくて彼女の素なんじゃないのなんて思ったりもしましたが(笑)。女優ってどんなに汚れ役を演じていようと、これは「演技」なんだという何処かに気品のようなものを感じさせるものだけど、本作での彼女の演技はそのまんまな感じでちょっと観ていて痛々しかったです。という訳でなんだかいろいろと残念な出来の作品でありました。
[DVD(字幕)] 4点(2021-06-06 17:52:02)(良:1票)
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