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なんのかんのさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

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21.  ゼロ・シティ 《ネタバレ》 
この監督の『ジャズメン』てのは、この国には珍しい屈託のない映画だったが、これはちゃんと屈託のある映画。国は崩壊直前で、どうしても歴史に目がいってしまう時期だった。博物館の蝋人形たち、向こうの人が見ると、なんかいちいち笑いが起こったシーンだったかもしれない。その精気のない歴史の展示。馬鹿馬鹿しくもあり、奥に悲痛さを秘めているようでもあり、動けなくなった哀れな国民たちの自画像でもある。ケーキのシーンなんか充実。コックの自殺がある。あの国は自殺に見せかけた殺人に近・現代史は彩られており、改革派と保守派の軋轢が背後にあるわけだが、主人公は改革派の目玉に祭り上げられて当惑しているみたいなのがおかしい。今までのあの国の映画では集団の動きの勝ち負けが重視されてきたが、ここでは個人の当惑が描かれている。彼はロックで踊るより、民謡を歌いたがっていた。そういう保守的人間が改革派の旗になってしまう悲痛さ、でもある。改革でも保守でもどっちでも同じ、個人がグループに追いやられてしまう動きの連なりが、つまり「歴史」ってこと?
[映画館(字幕)] 6点(2013-09-21 10:11:05)
22.  絶叫屋敷へいらっしゃい 《ネタバレ》 
金曜日に見るにふさわしい映画で(土日だったらもうちょっと歯応えがほしい)、二日たてばきれいに忘れてしまい、次の週に引きずらない。お化け屋敷もの。落とし穴あり、滑り台あり、迫り来る壁あり、でも庭にジェットコースターがあるのは珍しい。テーブルにおもちゃの汽車がまわる仕掛け。仕掛けのある家の面白さってのは何なんだろう。初めて招かれたよその家に対するある種の緊張を具象化するとこうなるのかな。ブラジル人二人組はなんか中途半端でした。若者グループと警官がピストルを突き付け合うとこ、彼らが老判事を見てワッハッハと笑うとこ、結婚の誓いをもぐもぐと口ごもるとこ、再度乗り込んで警官たちがニッコリ笑って「判事」というとこ、などなど。アメリカは麻薬に対してはほんとに厳しい。
[映画館(字幕)] 6点(2013-05-30 09:47:45)
23.  戦争と平和(1947)
時代を考慮に入れればあんまりキツいことも言えないが、後半の登場人物の物分かりのよさは、ほとんど不気味と言ってもいいくらいで、まったく人間味が感じられなかった。でもかえってそんなところに、史料としてのフィルムと言うか、時代の雰囲気の記録があった気もする。前半での軍国の妻が近所の人にチクリと言われるとこなんか、なるほどと思う。顔のアップが多かったのは、プロパガンダ性の強いフィルムでは常套映像だが、もっとロケをいっぱい時代の記録として撮っておいてほしかった。宮島義勇のカメラがちょっと凝ってて、発狂した池部良をめぐって三人の顔が次々に画面を占めるシーンの照明とか、川岸でヒロインが泣いて動くと向こうに池部が立ってるってのを繰り返したりとか、やってる。ミシンという機械は、人がかがみこんでいる姿に神経症的雰囲気があるなあ。
[映画館(邦画)] 6点(2013-03-30 09:50:16)
24.  瀬戸内少年野球団 《ネタバレ》 
敗戦後の地方小都市における風俗カタログという感じで、それ以上でもそれ以下でもない。つまり、ああこういうことあったな、とか、こういうの知ってる、とかうなずきながら観る映画。それはそれでもいいが、篠田監督ならもっと何かを加えてくれても良かったんじゃないか。登場人物がみな泣きすぎる。こんなにメソメソしていられた時代だったんだろうか。亭主の帰還や再会でいちいち泣くのはまあ理解できても、ラストで加藤治子が貰い泣きするのは、不必要に思えた。これまでの篠田作品はちょっとスマしたような感じが鼻に付くとこがあったんだけど、その反動か、これでは真面目な人間が無理に冗談言ってるようなぎごちなさがあって、けっきょく寛げない。月夜の砂掘りや、室内で少年たちがスイカ食べてるシーンなど美しかった。こんなにノスタルジックに語られるほど昔のことになってしまったのか。
[映画館(邦画)] 6点(2013-03-03 09:36:33)
25.  世界の始まりへの旅
年寄りが作る映画ってのは、老人には世界がどう見えてるのか、ってな興味でも観てしまう。ただ見えるだけで世界が慈しめるのかもしれない。木漏れ日の中の人々だけで美しい。マストロヤンニはこの監督の役が遺作となり、やはり監督を演じた代表作と帳尻を合わせて去ったことになる。言語の問題ってのがありそう。甥がポルトガル語を喋らず、フランス語を喋ることにこだわる伯母。いちいち通訳を介する会話のすべてを映画は記録している。日本のスクリーンではそれぞれの翻訳された字幕が繰り返されるだけなんだけど、フランスやポルトガルの人にとっては味わいが生まれているのだろう。アイデンティティの問題。この忘れ去られたような土地の同一性と、他者が激しくぶつかっているサラエボと、同じヨーロッパの端と端にあって、こっちの土地が死に絶えたとき、そこが世界の始まりになるって言うのだろうか。よく分からん。マルチェロは、実際に疲れきっているのか・疲れきった役を見事に演じているのか分からないけど、映っているだけで画になる。
[映画館(字幕)] 6点(2012-06-27 09:26:02)
26.  セーラー服と機関銃 《ネタバレ》 
『スーパーマン』のM・ブランドはしっかり浮いていたが、そこいくと我らが三国連太郎はすごい。大奮闘。ちゃんとコミック的な世界に溶け込んでいる。ああいう敵の巣窟の映画ってのが懐かしく、また廊下での撃ちあいも懐かしく、なんかそんな懐かしさに一番こころ撃たれた。長回しもたしかに面白いが、芸術上の必然性より作者が楽しんでるみたいなとこが、この監督の特徴。躍動感をそのままフィルムに封じ込めるのに成功している。薬師丸ひろ子は、新宿の高層ビル群が似合う(『翔んだカップル』もそうだった)。生活臭のないところだろうか。でも彼女自身はそう都会的って方向ではなく、そこらへんのアンバランスが魅力だったんだ。「しっかり」にちょっと「けなげ」が混ざってる感じ。いろいろと迷ったりする役より、一直線的な役のほうが合う。けっこう古風な青春像に重なっている。
[映画館(邦画)] 6点(2012-05-23 09:57:57)
27.  セント・オブ・ウーマン/夢の香り
この「セント」には、香りっていうよりも、猟犬が嗅ぎ分けていくにおい、っていうようなニュアンスがあるらしい。それなら分かる。この副題の「夢の香り」はまずいやね。傲慢無礼な退役中佐、世の中を排除しきっているようでいて、女に対する嗅覚にだけは敏感なところが面白い。世界との関係の回復、良好だったときの想い出を、「女の匂い」という一点からうかがわせていく。最後の歓楽としてのタンゴ、フェラーリの疾走、触覚と嗅覚と身体感覚。人生は踊り続けられる、たとえ脚が絡まっても、そのまま踊り続けられる、って。ヒネクレモンと盲導犬としての純真な青年の組み合わせ。A・パチーノは少しツクリが浮いてたような気もするが、まあ熱演。ラストの演説なんか、思わずかけ声を掛けたくなる間合いがある、そういった種類の熱演。その他の演者の質をガクッと落としているので、より目立つ。一応青年は「見てしまったこと」によって窮地に立たされたりして盲人と対照されてるんだが、役者が釣り合ってないんで。
[映画館(字幕)] 6点(2011-09-15 10:43:43)
28.  青銅の基督 《ネタバレ》 
滝沢修の新劇臭プンプンの熱演にはまいるが、隠れキリシタンの集会の場など舞台的な場面では、新劇臭もそれほど気にならない。滝沢が弾くオルガンを壁へだてた向かいで、堺駿二が空気送ってるあたりに渋谷の味。でも渋谷が好んで描いた“人の弱さ”は、こういう転向といった大げさなものより、普通の生活でチラリと見せるズルさみたいなのの方が得意だったんで、やっぱりこれは新劇なんだな。原作読んでないからよくは分からないけど、この転びバテレンは、苦悶と裏切りとがうまくつながって感じられなかった。面白かったのは信仰のテーマより芸術論のほうで、実にプライベートな感情から立派な鋳物をこしらえ、それによって裁かれてしまう岡田英次、それと信欣三の対比が面白かった。クリスチャンではない山田五十鈴はその絵の芸術性のゆえに(まあ男に惚れているわけだが)踏めぬと言う。またワイセツ画の絵師の信欣三は、火あぶりになっていく香川京子をせっせと写生していく、という対比。岡田英次の声は実に不思議な味を持っていて、日本映画の黄金時代に初期の社会派から『砂の女』などまで数多くの作品に出演し、レネの『二十四時間の情事』もあるが、そのキャラクターを十分に生かしきった作品についに出会えなかったのでは、という残念な思いもちょっとある。いつもながら三井弘次がいい。
[映画館(邦画)] 6点(2009-11-23 11:58:35)
29.  世界で一番美しい夜 《ネタバレ》 
そりゃ失敗作でしょうよ。エピソードが未消化なまま次々と展開していく。たぶん冒頭の、文明から逃れ退化していきケータイで火を発見するアニメが、まとまりのある出来としては一番よかった。あとはゴテゴテと縄文式土器のように部分部分が勝手な方向へ増殖した畸形の作品となっている。保険金殺人をめぐる推理ものに落ち着くのかと思ってると突如オカルトがかったり、挫折した革命家の苦みの話かと思ってると屋外での縄文時代的乱交に至ったりと、ごった煮の世界。でもね、因果なことに、こういう豪快に破綻した失敗作って嫌いじゃないんだよね。最近の映画って弥生式土器のようにノッペリと小器用にまとめられちゃってるのが多いでしょ、とりあえず無難に完成させてるの。こういう無難でない映画、統一させようなんてハナから思ってない縄文映画、なんか嬉しかったなあ。おやじ今村の南島志向を受け継いだような話の枠組みが一応あり、田口トモロヲは『神々の深き欲望』の北村和夫につながってるみたい。トモロヲがまた蛇になるのは(ネズミを食べるシーンあり)、おやじの遺作へのオマージュか、それともあれは今村作品というのは名ばかりで、実質せがれの映画だったのかもしれない。止まっていた構図が動き出す瞬間などに、映画ならではの喜びがあったし、三上寛、若松武史といった寺山修司の顔が揃ったのも懐かしい。ここは笑うところなの? ムッツリ思案するところなの? と見てるほうがどういう態度をとっていいのか分からなくなるシーンが多々あるが、そういう戸惑いも含めてけっこう楽しんで見ていた。これをきっかけに大バケする監督か、もっと破綻街道を突き進んでいくのか、それとも反省して小器用な映画に戻るのか、興味津々です。
[DVD(邦画)] 6点(2009-07-20 12:09:09)(良:1票)
30.  青春シンドローム
これ見たときは、1975年がもう回顧され再現される歴史の一コマになっているのに愕然としたものだった。学生運動はやや惰性になってきてて、“サイケ”はもうちょっと前だった気もするが、とにかく激しかった政治の嵐のあとのユルメの気分のころ。ただこういう青春群像ものって、懐かしさをたどっていくとだいたい“ワルガキもの”になってしまうんだなあ。こいつら社会でやっていけんのか、って思わせるところが青春の青春たるゆえんだからなのでしょうか。で飼い慣らされぬまま青春に殉じるキャラクターが、一人ぐらいいるわけ。その犠牲がいることで、ホロ苦くも心地よく回顧できでしまう。でもたまには“一見いい子たち”の青春にだってスポットを当ててやりたいものだ。いくつかのスケッチがよく、ギター、メロディのコピーが出来てゲンブツを聴くとテンポが全然違ったり、とか。
[映画館(字幕)] 6点(2009-03-12 12:10:23)
31.  セブン・イヤーズ・イン・チベット
西洋を中心とした文明社会が混乱を極めていたとき、登頂を拒む聖なる山の麓に桃源郷があり、そこで精神的な時を過ごした、って話で、これはもう欧米人にとっての理想化した東洋の見本みたいなもので(もちろんドイツ人もチベット人も英語をしゃべる)、いい加減にしてくれよ、とも思うが、ただ一点、そうだ山岳映画というジャンルがあったなあ、と懐かしく思い出させてくれたのは嬉しい。映画ならではの広がり。まだ外国の風俗や風景が珍しかったころ、スクリーンはそこへの窓だった。まして秘境ならなおさら。絵葉書と違って大きいし動くのだ。その中に立っているような気分になれる。映画はもっと深くいろんなことを描けるはずだ、と思うとともに、映画の基本はこの記録精神だなあ、とも思う。
[映画館(字幕)] 6点(2009-02-12 12:11:07)
32.  銭形平次(1951) 《ネタバレ》 
活劇調ではなく、平次はひたすら推理する。最後は罠で引っかけるというのは、ちときたない。微罪の手下どもが毒薬で皆殺しにされてしまうのも気の毒であった。女房お静の長谷川裕見子のしょんぼりした場のみ、時代劇らしいしっとりとした味わいがあった。仕事に口出しするなと旦那に叱られて、酒買いに出ていくシーン。障子の影の使い方、外の路地の陰影などに、大映京都の手堅い仕事ぶり。女中役高森和子にも、こんなにかわいらしいときがあったのだ。「スタッフに松村禎三という名があったが、音楽ではなく美術であった」と見た日のメモに書き込まれている。
[映画館(邦画)] 6点(2009-01-19 09:09:41)
33.  ゼア・ウィル・ビー・ブラッド 《ネタバレ》 
資本の論理と宗教の倫理がアメリカの二本の柱で、それが狂ったのが現在の状況、ってことを言ってる話なら納得できるけど、もひとつ焦点が分からない映画だった。主人公と狂信家、たしかにどちらも個性の強いキャラクターだが、モンスターって言うほどではなく、なんか二流なんだな。主人公も財を成したけど、けっきょく最後に勝ち残るのは、あのレストランで隣のテーブルにいたような都会的で垢抜けた連中のほうでしょ。宗教屋のほうも、財の蓄積に失敗して滅んでいく。どちらもコツコツやる庶民を最初から呑んでかかってくヤリ手なんだけど、モンスターとして抜きんでていくだけの力量はなかった。ニセの息子を作っても、ニセの弟に騙されてしまう。家族を求めても、うつろなシンメトリーが際立つ家だけが残る。それとも、私たちは二流だったというアメリカの反省の映画なのかな。よくわかんない。この監督の才能、アルトマンもどきのときも半信半疑だった、なんかありそうなんだけど、まだ私はつかみきれない。弦楽器のみの音楽(ときにバルトークのような、ときに湯浅譲二のような)はいい。
[DVD(字幕)] 6点(2008-11-22 12:08:43)
34.  セキ☆ララ
民族のアイデンティティの不安なんて、本当に現在切実なテーマだろうか(と言ってしまってから、こちらの認識不足で傲慢な発言になっているかも知れぬ、という心配がつきまとうのだけど、とにかく言わせて)。たとえば仕事一筋の人間が、会社の倒産で味わうアイデンティティの危機のほうが、現在ではキツいような気がする。ヤクザやカルト宗教の信者など強固な集団に属したがる人が跡を絶たないってことは、アイデンティティの不安はもう十分世の中に瀰漫し、多様化してるってことだろう。そりゃ在日の人たちは税金払ってて選挙権がないとか、もっといろいろ日常生活でも問題はあるだろうし、それを無視する気はないが、なんか問題設定が先走っていて、カメラが後追いしているような気がした。ルーツ探索という設定、AV嬢の故郷への旅、あるいは中華街、あるいは一世の父が一階で眠る二世AV男優の部屋と、アイデンティティのよりどころを最初から方向づけしてしまっている。もちろんそれらを裏切って、あっけらかんとしている彼らの表情も、カメラは捉えているのだけど。現代が踏み込んでいるのは、アイデンティティという故郷を蹴飛ばして、自由を優先する結果生まれた都市の時代だ。その反動の民族主義も勃興しているが、もう歴史はこういう方向に進むしか道はないと思う。なんて力む種類の映画じゃないんだけどね。この作品で一番良かったのは、尾道の昼の盛り場の閑散とした光景、蹴飛ばされた故郷の、老いた親のようなたたずまいが、けっこうジーンときた。
[DVD(邦画)] 6点(2008-10-11 12:19:08)(良:1票)
35.  洗濯機は俺にまかせろ 《ネタバレ》 
東京の商店街は西の練馬や中野にもあるのに、とかく東部が映画の舞台になりがちなのは、きっと土手があるからに違いない。葛飾区と言っても、寅さんの江戸川のほうではなく、荒川のほう。大売り出しの回覧板がまわってくる密度の高さがある一方、ちょっと行方不明になれる土手がある。土手はサックスの練習場にもなる。土手があるだけで、話も風景も広がりやすい。青春もの。洗濯機という機械自体、何か内側でウンウン唸っていて、時に煙を出したりして、青春っぽい、やや夢薄れて中古になったり。冨田靖子が酔っ払って帰ってきて、寝っころがって「牛乳、牛乳」とリズム付けて繰り返すとこと、菅井きんが「ここでポックリいけたらいいんですけどね」と言ったあと静かになってしまうとこが好き。
[映画館(邦画)] 6点(2008-10-06 12:10:02)
36.  惜春鳥 《ネタバレ》 
佐田啓二、川津祐介という二人の人生の敗者が故郷に帰還するところから始まり、それぞれが故郷に受け入れられずに終わるという話だ。木下における「地方」は、けっして単純な理想郷ではない。地方ならではの跡継ぎ問題もあれば、工場で赤旗振ってる若者もいて(元士族を誇りとする笠智衆は気に食わない)、地方にも都会と同じように、安保闘争前夜の政治の季節が近づいている。ロケにいささか会津名所めぐり的なところがあって緊張を欠くが、ラスト、びっこ(脚の不自由な人)の青年が駅に駆けていく木下お得意の長い横移動は素晴らしい。木下映画では身体障害者の登場の頻度が高いような気がする、『永遠の人』にもびっこ、『カルメン故郷に帰る』『二十四の瞳』の盲人、戦傷者であることが多く、あまり弱者弱者した描き方でないところに特徴がありそうだが、ひとつ頭に入れておく注意点としとこう。
[映画館(邦画)] 6点(2008-09-13 12:15:07)
37.  女衒 ZEGEN
この主人公伊平治、お国から大義を示されると、すぐそのとおりだ、と納得してしまう。女郎のほうが、何やこのおっさん、って感じで醒めて見てるのに、本人は自分の正義に酔っている。ああ、これぞ近代日本人の素顔です。国立娼館という究極の夢、天皇の立派な赤子として認められたいという希望が一方にあり、明治天皇の写真をいただきながら子孫づくりに励むあたりの滑稽と哀切は、もう本人が天皇になっちゃって小日本を作ってしまっている。作者は、馬鹿なことやってんの、という醒めた目を採りつつ、そのエネルギーには敬服してしまう。愚行の狂熱への批判と感嘆。今村昌平の基本姿勢ってこれだと思う。本作の場合、それが近代日本史そのものに重なった。
[映画館(邦画)] 6点(2008-02-15 12:19:19)
38.  戦争は終った
スペインとフランスの距離、現場の視点と現場から離れたところでの視点のずれ、みたいなこと。反フランコ闘争の現場であるスペインでは、ゼネストが不発に終わるだろうことは見えている。しかし現場から離れたフランスの亡命者たちには、理想が先行しちゃっているのでそれが分からない。現場との距離に抽象化が正比例してしまう。このギャップは仕方のないことなのか、克服する手はあるのか、いう問いかけを感じた。それは学生たちの過激主義にも通じていく問題。取るべき行動を封じられると、ただ理想を純化していくしかないのか。これは60年代の熱い問いだったが、たとえばいま現在のイスラム世界で生々しく立ち上がっている問いでもあろう。
[映画館(字幕)] 6点(2008-01-15 12:18:14)
39.  戦場のフォトグラファー ジェームズ・ナクトウェイの世界
このカメラマン、ジェームズ・ナクトウェイの「戦争はたった一人にさえ許されぬ行為を万人にする」ぐらい、戦争に対するまっとうな疑義の言葉はないだろう。この言葉が軽く響かないために、その言葉が生まれる現場をたどる記録映画である。戦争写真家が常に直面している問題は、世界の悲惨を消費していく情報社会に対して湧いてくるシニカルな気持ちへの対処。子どもの泣き顔を求める社会にそれを提供することで食っている現実がある。でもシニカルになったって、それより大きな「敵」を利するだけだ、という深い決断が彼にはあるように思えた。悲惨の伝達者と自分を規定している。情報の受け手を信頼するしかない。パレスチナでの催涙弾の取材、インドネシアの硫黄鉱山労働現場での取材、痛みに耐えかね手で目を覆う姿が祈っているようにも見えた。その祈りに、受け手も応えねばならない。彼はその後、イラクで怪我をしたとニュースで読んだが、今はどうなっているのか。
[映画館(字幕)] 6点(2007-12-13 12:27:56)
40.  戦争と青春
実に正しい作品ではあるんだけど、同じことを反復してるだけでいいのか、という苛立ちも感じる。そりゃもちろん「何度も語らねばならない」と言われればそれまでだし、製作者たち一人一人の熱意をからかう気はなく尊重したいが、繰り返すごとに「津波警報」と同じで、緊迫が薄れていってしまい、かえってこういう反復が「戦争の記憶」を遠くへ押しやる加速度を付けてるんじゃないか、いう気もするんだ。このちょっと前に日本で公開されたドイツの『ナスティ・ガール』なんてのと比べても、日本の風土の甘さを感じた。ちょっと視点を工夫して、国防婦人会のおばさんたちの心なんかをこそ見詰めるべきなんじゃないか。弟が赤ん坊を渡されたときに「非国民の子ども」と思ったあたりをもっと突き詰めるべきだったんじゃないか。とは言え、この遺作が今井監督で唯一封切り時に観た作品でした。
[映画館(邦画)] 5点(2013-02-18 09:51:05)
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