1. セントラル・ステーション
ラジオを盗んだだけで射殺される国。ストリートチルドレンと人身売買。ブラジルの抱える社会問題がさらけ出される。この作品のいいところはこれらの諸問題を前面に出さずに、また語らずに、それでもしっかりと見せるところにある。都会から田舎へと移動するロードムービーはさらにブラジルの様々な顔を見せてゆく。代筆という仕事はブラジルの教育問題をもさらけ出しているが、同時に様々な顔を見せるブラジル中を繋ぐ重要な役割をこの女性が握っていることをわからせてゆく。そして田舎での代筆で、無条件に神に感謝する言葉、愛する人を想う言葉に「信じる」ことの素晴らしさを発見する。代筆、都会と田舎、子供、旅、それらは物語を感動的に盛り上げる一方でブラジルの現状というものを映し出す重要な駒ともなっている。いろいろな意味でよく出来た話。惜しむらくはユーモア。このおばさんと子供がなかなか魅力的なデコボココンビなのだが、このコンビならもっと楽しいシーンがあっても良かったように思う。 [ビデオ(字幕)] 6点(2008-09-30 12:57:46) |
2. セカンド・サークル
旧体制の軍人であった父に反発し家を出た青年が、父の死を聞き返ってくる。すでに死体となった父との対面後、死体が事務的に処理されてゆく様が延々と映される。旧体制の人間の死を「無」として描くところに社会の隠喩があるのは明らかなのだろうが、ひたすら長回しで映される淡々とした死体処理の段取りは正直退屈であり、眠気を堪えるのに苦心した。思い返せば、その段取りに翻弄される青年の物語には面白いところもあったかもしれないが(もちろん物語そのものが面白いのではなく映像の中に面白さがある)。惹かれるのはモノクロの黒の真っ黒さと白の真っ白さとそこに被さる生活の音と無線機からのノイズが奏でる虚構と現実とが均衡している画面そのもの。 [ビデオ(字幕)] 6点(2007-10-16 12:01:29) |
3. セント・オブ・ウーマン/夢の香り
深夜にたまたまテレビをつけたらフェラーリのシーンでそのまま最後まで見てしまったというのを何度か経験しているということは、それなりに引きつけるものがあるのだろうが、校長のいやな男っぷりは露骨だし、そもそも全校生徒のあの喝采を見たって校長の正義が歪んでいることは最初からあきらかなわけで、感動的な弁論もただの正論にすぎず、その正論をぶつけられたからって聴聞会の結論が変わるってのもあまりにもバカバカしいオチであんまり良い印象が無いんだな、これが。シェイクスピア狂のパチーノお得意の舞台演技のような濃い演技がこの作品の主人公のキャラに妙にはまってて、その渾身のパチーノ節にぐいぐいと引きこまれているだけのような気がしないでもない。まぁそれも映画の魅力のひとつでもあるからいいんだけど。マーティン・ブレストは俳優の魅力を引き出すのがうまい監督なのだと思う。ガブリエル・アンウォーがからむシーンはもうちょっと見ていたかったなぁ。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2006-04-11 18:57:26) |
4. セレブリティ
これってフェリーニの『甘い生活』のパロディですよね?セレブと記者、そして強引に出てくる神父さん、オープニングも空から始まるし、絶対そうですよね。W・アレンってフェリーニ好きだし。だからモノクロなのかな?そうすると退廃の象徴はディカプリオ演じるムービースター、欲望の象徴はセロン演じる全身性感体のスーパーモデル。わ、わかりやすー。とはいえ、このアレン流「甘い生活」では、セレブの生活に憧れる記者(アレンの分身ブラナー)はフェリーニの分身マストロヤンニとは違って、その世界になかなか足を踏み入れたくても入れずに身勝手な妄想だけが先走りするなんともかっこ悪い男である。そして退廃と欲望渦巻くセレブの世界で幸せを見つける人たちも描くのは、やはりアレン流。豪華な出演陣を見るのもひとつの魅力ではあるが、その名前につられて見るとがっかりする人も多いだろう。アレンの映画であることを頭に置いとかないと。 7点(2004-08-12 12:06:04) |
5. 世界中がアイ・ラヴ・ユー
私がミュージカル映画に対しちょっぴりの不満があったのは、全部セットで歌い踊るならスクリーンでなくても舞台で見たほうがいいではないか、と思っていたところがあったから。では、『シェルブールの雨傘』や『エビ-タ』は?これらも嫌いではないですが、ただ舞台を外に持ってきただけだし、根本的にオペラ色が入っていてジャンルが違います。そこに往年の楽しいミュージカルを継承しつつも映画ならではの今作品の登場は嬉しいかぎり。ミュージカル俳優ではない人たちの滅多にお目にかかれない歌といい、ワイヤーを使った華麗なダンスといい、現実とミュージカルという非現実の絶妙なミスマッチングに一役も二役もかっています。ホント”映画ならでは”です。そしてこれまでのアレンの映画の中で一番「美」を意識したニューヨークをたっぷりと堪能できます。ベニスもパリも美しかったが、ことあるごとにニューヨークに帰ってくるジョー(アレン)の描写にアレンのニューヨーク愛を感じます。ちょっといい気分になれる、そんな映画です。 8点(2004-08-11 12:21:50)(良:1票) |
6. セブン
フィンチャ-の映像美が相性の良いサイコスリラーというジャンルでさらに美しく輝いた逸品。日常風景がすべて伏線となり驚愕のラストへと向かう。驚愕といってもけして意外なオチというわけではなく、予想できても予想を裏切ってくれと願わずにはいられないオチ。さんざんエグイものを見せておきながら最後の最後で見せなかったことも評価できる。ミルズが見なかったように我々も見ないことでミルズと共に泣く。 9点(2003-04-25 16:13:25)(良:1票) |