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なんのかんのさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

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21.  噂の娘 《ネタバレ》 
『妻よ薔薇のやうに』の年の暮れの作品で、設定もお妾さん絡みでちょっと似ている。ただし娘は姉妹で、和装の姉は同情的、洋装の妹は反発している。それに家業の酒屋の没落が絡む。婿の頑張りも限界、遊んでいるおやじのほうも元気一杯というわけではなく(釣りはいらねえぜ、と言ったものの釣りを受け取ったり)、全体が衰弱していく気分に包まれている。その気分そのものがこの映画の味わいであって、特別モダンな妹に希望を託すわけでもない。酒がマガイモノでだんだん質を落としていくような衰弱感に、映画もひたされている。見合いのあと橋の上をトボトボとやや俯き加減で歩く千葉早智子のあたりに成瀬のトーン。ラストで家庭内の緊張が高まり、妾が店たたんでやってきて、妹が誕生パーティで父と喧嘩し、カットが細かくなり、カメラの向きが変わって、そこで警察=外部が入ってきて、という展開のリズムの妙。向かいの床屋の「次は何になるかねえ」という冷たい言葉でサッと締める厳しさ。何が噂の娘だかよく分からないけど、一番描きたかったのは“姉”の寂しい笑顔だったのだろう。一家を支えて頑張るぞ、って感じじゃなく、家の滅びに殉じてもいいのよ、という微笑み。
[映画館(邦画)] 7点(2009-06-24 12:08:17)
22.  うた魂♪ 《ネタバレ》 
歌ってるコーラスを見ると、たしかに感情表現がオーバーな人が必ずいて、そこから自信過剰・自己陶酔のヒロイン像を生み出したってのは、うまいところを突いた。陶酔のあまりいつもポカーンと口をあけているヒロイン。これに男性合唱団が絡んでくるとなると、恋愛ドラマも絡んできそうなところだが、この男性合唱団がとんでもないキャラクターで、そこでこの映画は膨らんで成功した。恋愛はどうってことない生徒会長との脇筋に押しやり、この副主人公格の男性合唱団長とは、子弟の関係になるところがいい。なんとこれは、求道の映画なのだ。港で訓戒を垂れるところはさながら秘伝伝授の場で、大事なところで後ろの連中がハミングを入れだすのには笑った、このセンスは貴重だ。真剣になっているとき、顔なんか気にしちゃいけない、って訓戒。そういえば浅田真央だって三回転半跳んでるときは凄い顔してる。合唱大会、ヒロインのとこのコーラスより、前の男子校(ケチャがはいるやつ)のほうがうまく聞こえたが、ここはヒロインのとこのほうがうまいんだ、と思って聞くのが映画の観客としての礼儀だ。 
[DVD(邦画)] 7点(2008-12-27 12:20:00)(良:1票)
23.  浮雲(1955)
戦時下の仏印というニセモノの極楽で出会ってしまった二人が、戦後の現実と折り合いをつけられないまま日本中を漂い流れ、また南へと下っていく、と要約できる話だ。ずっと不貞腐れていた高峰秀子が、屋久島へ連れていって下さいと、泣いて哀願する迫力が見事で、あの渡航のシーンで終わってもいいんじゃないか、と思ってしまう。不貞腐れる、ってのは、とても非建設的な行動で、現状への不満は表明するが何ら積極的な働きかけはしない、ってこと。戦後の映画はもっぱら建設的なアピールをしていたが、ひとり成瀬は、不貞腐れる高峰を信念を持って撮り続けた。みんな一緒にスローガンのもとで調子に乗るのに比べれば、不貞腐れるって行為は、個人が取れる精一杯の批評だったんじゃないだろうか。彼女はいい加減に不貞腐れていたのではなく、一生懸命に不貞腐れていた、必死で不貞腐れていた。そしてついに不貞腐れるのをやめたのは、建設の側に回るためではなく、全否定の側に回るためだった。すごい映画である。ただ成瀬の本領は、いろいろあっても市井に留まり続ける普通の人たちを描いた作品のほうで、より発揮されてるんじゃないかなあ。
[映画館(邦画)] 7点(2008-11-21 12:11:58)
24.  Wiz/Out 《ネタバレ》 
すごく面白いところと、すごくつまんないところがある困った映画。比率で言えばつまんないとこの方が多いけど、そこは見なかったことにしてやろうという、新人監督(園田新)を応援したい気持ちになる映画でもある。冒頭が引き込まれる。これから見るかもしれない人のために細かくは言わないけど、テレビとケータイの時代の恐怖で押していく。他人の事件をドラマとして安全地帯から眺めていたはずが、しだいに当事者になっていく。テレビ画面と現実との切り返しが効いていて、このモチーフだけを膨らませてくれたら傑作になっていた。たとえば遠くの戦争のニュースを見ているときの漠然とした不安(遠くのものが本当に遠いいとは限らないまでに込み入っている現代社会)とも関係があるような。これが話の本筋になるとチマチマした通俗青春ドラマになって、ある天変地異が拡がっているのに、渚で女の子が裸足になって波と戯れてたりする。ま、この天変地異が冒頭の事件の波及した結果らしいんだけど。けっこう撮影大変だったとこもあるんじゃないかなあ。
[DVD(邦画)] 7点(2008-11-05 12:16:07)
25.  海の上のピアニスト 《ネタバレ》 
ハリウッド映画だったら、ラストは街へと一歩踏み出していく終わり方を選ぶだろうな。でもこれは、あえてとどまる。有限の鍵盤で無限の曲を奏でるピアニストとしての矜持か、それとも外の無限を怖れてのひきこもりか。船の中ならなめらかに自在に滑りまわれる男なんだけど。単に臆病なのなら、こんなに天使のように美しく描いてしまってもいいのかと思うし、でも船から下りない生き方を肯定しているようでもない。移民や娘たち、実生活のある無限へ乗り出していくものたちも描いている。その肯定とも否定ともはっきりさせないところが、つまり伝説の豊かさなんでしょうなあ。
[映画館(字幕)] 7点(2008-10-31 12:07:56)
26.  ウォーターボーイズ
微妙にこの監督向きの題材ではなかったような。ガールフレンドが自販機にケリを入れて登場するようなあの感じこそ、この監督の味だ。「これコツがあんの」って。5人がボーゼンとこっちを向いて並んでいる場の反復とか。頑張って成功するという段取りのとこより、新任女性教師の登場でワッと集まり、産休でワッと減り、テレビで紹介されてまたワッと集まり、ってようなとこがいい。ゲーム機などを見ると同時代の話らしいが、出てくる曲はすべてナツメロ、これ監督の強引な趣味であろう。指導者がいいかげんなイルカ調教師ってのは面白いんだけど、竹中直人がはしゃぎすぎてしまう。
[映画館(邦画)] 7点(2008-07-13 11:13:36)
27.  ヴェルクマイスター・ハーモニー
いちいちに隠されているらしい寓意は、ほとんど読み取れていない。しかし全体を覆う圧倒的な不穏の気配を体験することで、モトはとれたと思う。個人の不安でも国家の不安でもない、町の不安ってとこがいかにも東欧。焦点は暴動の場。ひたすら歩く暴徒たちの、その静かな表情が怖い。ワンカットで描かれる病院襲撃(2時間25分で37カットっていうと単純に計算して1カット3分55秒か。広場に点々と立つ人々の場なんか、長回しの先輩アンゲロプロス好みのシーン)。隣人がたちまち無表情の群衆に変わり得ることの不安て、やっぱり20世紀の多くの町が体験した不安だったんだ。
[映画館(字幕)] 7点(2008-06-14 12:07:02)
28.  ウォレスとグルミット/野菜畑で大ピンチ!
グルミットの表情が不思議だ。もっぱら動くのは単純きわまりない白丸に黒丸の目だけなのに、主人に対する心配や、ヤレヤレ感、一途さ、などかなり微細な心理を無言で表現し分けている。大河ドラマの侍が顔中の表情筋を総動員して単純な怒りしか表現できないのと大きな違いだ。よく「あの役者は目の演技がいい」などと言うのを聞いて、ただの眼球に演技が出来るわけはなく、まぶたの開閉の技術だろう、と思っていたのだが、このグルミットの名演を見ると怪しくなってきた。それにこのアニメ、人間はやたら歯が強調されているのに、歯が特徴の犬の方には口がない。まったく表情ってやつはどこで生まれてくるのか。
[DVD(吹替)] 7点(2007-10-17 12:14:48)
29.  運命の逆転
ちょっと前に実際にあった事件もの。当事者がまだ生きてるうちの映画化ってのは、それで盛り上がってたアメリカ人には面白かったでしょう。こういうナマの面白さは映画にとって大事だと思ってるんだが、それを知らなかった異国のものにとっては、疎外感はあります。真実がどんどん分裂していく面白さ、といった「形而上学的」興味を無理に味わうしかない。形而下の楽しみも味わいたかった。金持ちには金持ちなりの不幸があるんだなあ、とは思った。「上流社会の奇人」って独特の世界を造れちゃうからいい。ルートヴィヒのように道楽で城を建てられる。日本にも金持ちがニ笑亭って珍妙な家を作っちゃった話があった。この映画では回想シーンの庭園に虎の子が出てくる。
[映画館(字幕)] 6点(2014-01-06 09:27:02)
30.  歌麿をめぐる五人の女(1946)
道具としての女、その女が男を刺すこと。なんか大枠だけ捉えると、溝口っぽさが感じられなくはない。田中絹代のアップの凄味が変に印象に残っている。あんまりアップで捉えたことなかったんじゃないか。時代が変わって、何かやってみたってことなのか。時代と言えば手ぐさりをめぐるエピソードなんか「戦後」を思った。自由に描ける時代になったんだ、って気分が底にあったのでは。自発的なテーマと言うより、そういうことをテーマとする時代になったんだ、という手探りのような。ま原作ものなので、あまり物語から監督の狙いを探っても意味はない。溝口と言うとまず明治で、江戸時代だとそれまでは侍階級だった(『元禄忠臣蔵』とか)。やがて西鶴や近松に惹かれていく彼が、江戸時代の町人階級を扱ったのはこれあたりかららしい。
[DVD(邦画)] 6点(2014-01-02 08:51:57)
31.  埋もれ木
ユートピア的な町を描くって『眠る男』もそうだった。きっとこの人の原イメージなんだろうが、この人は原作が別にあってオリジナルシナリオでないほうがいいみたい。別の物語とぶつけたほうが、彼の中で展開があって、本人の原イメージもそれとぶつかり塩気を含んで膨らむようで。それがないとノッペリしたユートピア讃歌まがいのものになってしまう危険性がある。一つ一つのカットの確かさ、安定感はさすが。みな静かにしゃべる。雲がいちいち美しかったが、あれはニセモノね。移動する家。その影。音楽はアルヴォ・ペルト。この人は中世音楽のような響きの曲を作るエストニアの作曲家で、現代のクラシック作曲家ではかなり耳にするほう(ゴダールのなんかでも耳にした)。
[映画館(邦画)] 6点(2013-12-22 09:48:15)
32.  哥(うた) 《ネタバレ》 
旧家の重さ。家を守らんとする右翼気質の篠田三郎と、食い尽くさんとするニヒリストの兄弟。家に殉じ主人の命令には絶対服従の篠田が死んでしまっては面白くならないんじゃないか。あの気味悪さは生き残り続けなければならないと思う。もしかすると彼を肯定的に捉えてたのかな。脚本の石堂淑朗って左翼かと思うと右翼的だったりしてよく分からない人だった。「世間の噂にならなければ、いくらくずれていてもいい」って(ここの私のメモ、汚い字で「くずれ」じゃないかもしれないんだけど)。音楽「四季」が全然合わないのは『無常』のバッハからこの人のいつもの世界で、ウルトラセブン最終回でのシューマンのピアノ協奏曲なんてのもあった。あと女優の起用の趣味の悪さもあるか。今回は八並映子さん。
[DVD(邦画)] 6点(2013-12-21 09:38:55)
33.  動く標的 《ネタバレ》 
アメリカ映画では、正義を行なう個人の勇気がしばしばクローズアップされ感動させられるが、「出来ねえよなあ」と思わせられることも正直言って、ある。さて本作のラスト、これどう解釈するか微妙なところなんだけど、それまでのアメリカ映画だったら正義に向かうハーパーをはっきり描いたろう。しかしこれでは銃を構えた犯人が「無理だ」と銃を下ろし、ハーパーも「無理だな」と立ち止まるところでストップモーションになる。これ「正義を行なわない結末」と思ったんだけど、それでいいんでしょ。標的になりながら数歩歩いたことは「アメリカ的勇気」だけど、法律上の正義は放棄した、と解釈した。車中での会話で若いころの希望や現在の状況を改めて思い、悪い奴(不法移民斡旋宗教家その他)は司直の手にゆだねたり死亡したりしてるし…などの言い訳も浮かんだろう、それほど人間正義絶対で生きてるもんじゃないよ、と主人公が心中ぼやいて通報義務を捨てた瞬間のストップモーション。ハードボイルドの主人公像とうまく重なるものを感じた。事件をクリアに理解できてないので間違ってるかも知れないけど、そこが新鮮だった。妻のJ・リーは朝食の卵の黄身を、ハーパーが去ったため、ハードボイルドどころか、一つ一つ潰してたっけ。見てる間は分からなかったが、悪の店の歌手は『エデンの東』のアブラさんだった。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2013-07-03 09:19:14)
34.  唄の世の中
むかしの邦画で多いのが、主人公がレコードデビューしてハッピーエンドになるストーリー。『愛染かつら』を初め、高峰三枝子では戦後までその手の話があった。のちの木下恵介の『歌え若人達』(1963年)はその変形でゴールがテレビスターになっている。レコード業界からテレビ界へと「花形」が移ったわけだ。で本作は、小心者の岸井明が友人藤原釜足の後押しを得てレコードデビューする話。遊園地に、客の歌をレコーディングして売る商売があったのが分かる。楽しいのが新人発掘オーディションで、歌だけではなく漫才なんかもやってる(当時エンタツ・アチャコなどレコード化されていた)。ここでは永田キング(和製グルーチョ・マルクス。面白い)とミスエロ子が登場。強烈な名前とそぐわない、和服を着て、学校の先生でも似合いそうな人で、その落差で笑いを取るってようでもなく、つまり当時の「エロ」という言葉には現在感じられる湿っぽさはなかったんだろう。広くユーモラスな方面の言葉として受け取られていたよう(小津の『エロ神の怨霊』が6年前。前作『その夜の妻』を城戸四郎にほめられ褒美に温泉での休暇を与えられたが、ついでに一本撮ってきてくれ、と注文がついて生まれた作品。残ってないが資料ではコメディ)。おかしいのはところ狭しと飛んだり跳ねたりアクロバット芸をするトリオで、こういうのはレコードにいかがでしょう、とオチがつく。ラジオの時代になって、視覚に訴える「イロモノ芸」の手品師や紙切り芸人は、ちょっと悔しい思いをしてたんだろうな。サイレント映画が始まったころに、その反対のことが起こっていたように。オーディションシーン以外では、若き渡辺はま子の「とんがらがっちゃ駄目よ」が準テーマ曲扱いで聞けます。テーマは岸井の「Music goes round and round」。朝鮮の女性舞踊もあり、当時人気で川端康成もひいきにしたという崔承喜ってのはこんな感じだったのか、などと思ったり、全体、当時の芸能興行界の雰囲気が味わえた。終盤にはけっこう迫力あるカーチェイスがあり、それが行き着いたところは、二年前に完成したばかりの狭山湖ではないか? 伏水修監督。
[CS・衛星(邦画)] 6点(2012-09-02 09:34:06)
35.  麗しのサブリナ
なぜオードリーは、平気でおじさまと結ばれるのか。以下ざっとした暗算なので間違ったかもしれないが、このときH・ボガートは55だ。『昼下がりの情事』のG・クーパーは56、『パリの恋人』のF・アステアになると58である。おじさまというより、もひとつ上の世代ではないか。もしスクリーンの外で起こったことなら、死後の財産目当ての女狐と呼ばれるところだろう。男の側からすれば、そりゃ可憐な妖精を妻にめとれるのは夢であろうが、オードリー映画はファッションを考えても女性観客をメインに考えていたはず。つまり欧米では、こういうパターンがしっかり根付いていたんだな。ヨーロッパの小説では若いヒロインが保護者のような年上の男と結ばれるハッピーエンドが多い。娘にとって一番の幸福は、シンデレラのようにランクが上の男性と結婚することであって、それは地位の安定したある程度の年配ということになるんだろう。ディケンズの後期の長編で、やはりそのパターンだなと思わせといて、土壇場で「私はもう年寄りだから」と保護者のおじさまが身を引き若き医者と結ばれるヒネったのがあるが、そういう趣向が生まれるほど「娘はおじさまと結ばれてこそ幸せ」の型が根強くあったってことだ。この伝統がヨーロッパの共有無意識となり、大西洋を渡った新世界でも生き続けてきたんじゃないか。それにしても男女非対称な世界だ。もし若きイケメンの主演する恋愛映画の相手役に50代後半のおばさまが続いたらどうであろう。というわけで本作、いじめのないシンデレラで、屋内テニスコート場の光と影はロマンチックだし、割れないプラスチック板に乗って揺するH・ボガートは楽しく、割れたワイングラスは痛そう。デビッド一筋のオードリーと仕事一筋のボガートには、分かりあえるものがあったんだろう。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2012-07-26 10:06:16)
36.  薄れゆく記憶のなかで
何かを一生懸命なっぞってる感じ。「この映画をどうしても作りたかった」というより「なんでもいいから映画を作ってみたかった」って感じ。初恋は切ないのう、という話。合宿の練習、指揮棒が振り下ろされたところで鐘がゴーンと鳴って肝だめしに移るとか、映画作りの練習をしている生真面目さは買おう。その一生懸命さは買ってやってもいいんだけど、いい若いもんがこうチンマリしたのばっかり作るなよ、いう気分も同時に起こる。もっと不機嫌になってほしい。やりたいものが見つからぬ青春、って話も、もうすでにある定型のなぞりになってしまってるんだ。ヒロインがオーボエ、男は大太鼓、ってのも…。
[映画館(邦画)] 6点(2012-03-06 09:41:50)
37.  ウディ・アレンの影と霧 《ネタバレ》 
一つのテーマをじっくり醗酵させたというより、いくつかのモチーフが霧の中から現われてはまた霧の中へ消えていくという漠とした作品で、その手つきを玄妙と見るか、突っ込み不足と見るか。私は後者に近かったな。不安の影、絞殺魔の不安から自警団同士の殺し合いになっていくあたりを、ポイントに絞ってもらいたかった。主人公が不幸を一身に受けていく「開き直った被害妄想」は、もうお得意のところ。自分の役割を誰も教えてくれない。自分の指紋のついたグラスが証拠になりそうな運び。匂いで嗅ぎ出され、追われ、下宿のおばさんにも裏切られ…。繰り返される神を信じるかという問いかけ。この題はしぜんに「夜と霧」を連想させる、と思っていいのか。うつろなトーンは一貫している。
[映画館(字幕)] 6点(2012-02-28 09:43:41)
38.  美しき獲物 《ネタバレ》 
やっぱスリラーは金や欲よりサイコがいいね。かなり粗っぽい話でも、いちおう満足する。ゲームに憑かれた人間の気持ち悪さ。深刻な遊戯というか。繰り返される殺人はあんまり芸がないんだけど、ま雰囲気はいいですな。「ゲーム」の気味悪さみたいなものをいちおう突いている。すぐ下に沈んでいくカメラ。あの刑事、なんとなくサイコ少年に雰囲気似させてた。盲目の師匠ってのもワケアリにさせといて。何度も客に「やっぱりね」と思わせといてうっちゃるわけ。D・レインの役どころはやはり『羊たちの沈黙』からのイタダキでしょうか。水の地下室っていう舞台はいいが、ラストは長すぎ。
[映画館(字幕)] 6点(2012-02-15 09:59:23)
39.  海の牙
戦争終わってすぐなんて、レジスタンスが活躍する勇壮な映画がたくさん作られていた興奮期だと思うんだけど、なんかこれは視線が落ち着いてる、状況と距離を置いて眺めている感じ。なにしろファシスト側から描くなんて発想が出てくるのは「十年早い」んじゃないか、いや悪口じゃなくて褒めてるの。いままで強固だと思っていた地盤がぼろぼろと崩れていく寄る辺のなさが、潜水艦の密閉された空間に滲み出してくる。強固な鋼鉄の壁の中で、中身だけが徐々に腐敗していく感じ。最後まで千年王国を信じることにすがろうとするゲシュタポなんか、『日本のいちばん長い日』にも似たのがいたなあ、とシミジミさせられた。そのうつろな帝国と化した潜水艦から、現実の歴史という荒波に浮かぶボートに乗り移っていく場面の、ボートとともに揺れるドキュメントタッチのカメラが効いている。語り手となったフランス人医師だけがその帝国の残骸の潜水艦に残される皮肉。ああいう語り手を登場させた意図が十全に生かされていたとも思えないが(偽伝染病発生作戦の中途半端さ、あるいは南米で彼が目に出来なかったシーンが展開すること)、全体に距離をおいた冷静さが映画に生まれた。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2011-11-14 09:50:02)
40.  牛の鈴音
ドキュメンタリー風ドラマ、もしくはドラマ風ドキュメンタリー。純粋なドラマだったら「ほのぼの老夫婦のスケッチ」で決まっちゃう。ばあさんはいつも愚痴を言ってるが、ムッツリじいさんとのコンビが夫婦漫才のようで、「いやあ、でも本当は仲がいいんだよ」って気分に落ち着いていくだろう。でもドキュメンタリーの血も混ざっているので、なにやらチクチクと残るものがあるんだ。そこを買う。このばあさんの愚痴、けっこう本気な不快が籠もっていて、これは東アジアの農家の嫁がずっと忍従してきた愚痴なのではないか。労働力としてまず第一に考えられてきて、牛にやる草をこの年になっても刈る仕事をさせられる。ばあさんの牛に対する不満は、同じ農耕労働力として扱われてきたもの同士の憤懣が籠もっているようでもあり、奇妙な三角関係すら時に感じられるのだ。この感情のほつれは、ずっと東アジアの農民の間にあり続けてきたんだろう、という長い歴史がほの見える時がしばしばあった。でも仔牛を売るときなんか、けっきょくばあさんの意見が通っているし、対外的な実権はばあさんのほうが握っているらしい。それなりに釣り合いは取れているのだろうか。消えゆく家畜農耕の、人と牛との交わりの記録だが、消えゆく一昔前の「農村夫婦」のあり方を記録してもいる。
[DVD(字幕)] 6点(2011-04-10 09:59:47)
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