21. 裏窓(1954)
《ネタバレ》 久しぶりに見ましたが、記憶していたよりはるかに面白かった。本作では基本的に窓から覗いた世界しか映されておらず、そうした限定された状況で情報を手に入れるのがミソなわけですが、そこで重要な役割を担っているのが“音”。他の部屋から漏れ聞こえてくるSEが効果的に状況を描写しています。また、BGMとして歌を流しておいて、心理描写に使ううまさ。ヒッチコックの技巧の冴えを聞くことができました。カメラ・ワークのたくみさは言うに及ばず。話としては、疑惑が確信に変わる展開がよかったですね。あの、ベッドが空の部屋を「お待たせしました」とばかりババーンと映すあたりとか。ユーモアも適度にあり、時間も長すぎず短すぎず。小道具の使い方もうまいです。 ちなみに、最後にジェフが落下する場面ですが、最初に見たときは色のトーンの違いから合成であることがかなりはっきりわかりましたが、今回はかなり自然に見えました。デジタルで処理したのかもしれませんし、ヒッチコックが生きていたらきっと喜ぶでしょうが、以前の方もそれなりに味があって好きでした。 [映画館(字幕)] 9点(2010-02-26 19:57:22) |
22. 宇宙大怪獣ギララ
《ネタバレ》 子供の頃、夏休みになると大映や松竹の特撮映画を放送していて、本作も毎年のように見ていました。それ以来ですから本当に数十年ぶりの鑑賞。みごとに忘れています。というか、序盤はもしかして放送していなかったんじゃないかと思うくらい記憶にありません。そもそも、話の流れからすると月面基地に立ち寄るエピソードは必要ないはず。どうもこれは、当時子供向けの雑誌や書籍によく載っていた「未来の予想」を映画化したような感じではないかと思います。それで、月面でも野菜が採れるし、水もあって風呂にも入れると。大阪万博の3年前、未来は明るかったんですね。 それ以外にもシナリオは酷い。隊員同士の三角関係というのも、大人の観客を意識したのかもしれませんが面白くない。半分くらいの長さで終わりそうなプロットを、あれやこれやで無理矢理引き延ばしたように思えます。それと、特撮ものは本編と特撮とのコンビネーションが重要だと思うのですが、そのあたりがボロボロ。特撮のみならまだ見られるのですが、人物と合成のカットは全然ダメ。いかに東宝の本多・円谷コンビが優れていたかを再認識しました。ただ、ギララのデザインはけっこう好きなので、おまけで+1点。 余談ですが、WOWOWに加入して最初に見た映画がこれでした。なんか情けないぞ。 [CS・衛星(邦画)] 5点(2010-01-09 19:39:24) |
23. ヴァージン・スーサイズ
《ネタバレ》 見ていて妙な居心地の悪さを感じました。見終わって理由を考えるに、劇中では男性の回想として進んでいるのに、そのようには感じられないからではないかと思います。例えば、ラックスなんて年の割には異常に大人っぽく、美人に映されています。監督にしてみれば“男性から見たあこがれの女性像”だと思ってやっているのかもしれませんが、あまりにやり過ぎという感じ。これ以外にも、「男心」をわかっていない人が無理やり男から見た設定に作り上げていると感じる部分がありました。それにどちらかというと、男を悪く描いています。例えばトリップなど、突然“現在の本人”が出てきてインタビュー形式になっているのでおかしいと思ったら、最後のアレをやりたかったわけでしょう。底知れぬ悪意を感じます。 話としては、ありきたりの青春ドラマです。展開は簡単に読めるし、映像と音楽に頼っていてあまりよろしいとは言えません。その映像も、綺麗だけれどだから何?って感じだし、音楽の使い方は凡庸。全体としては、特にこれといった印象が残らない映画でした。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2009-12-23 19:18:14) |
24. 雨月物語
もう、退屈のひとこと。どうでもいい話がダラダラと続き、台詞が聞き取りにくい(音楽はちゃんと聞こえるのに)。これなら台詞だけ消して、字幕を使った方がまし。映像に見るべきところもあるけれど、このつまらなさを帳消しにするほどでもない。早坂文雄の音楽がなかったら、最後まで見ていられなかったでしょう。 それにしても、この台詞の通りの悪さは、録音のせいなのか? それとも監督にトーキーを作る気がないの? [CS・衛星(邦画)] 5点(2009-09-16 20:33:29) |
25. 宇宙水爆戦
《ネタバレ》 2度ほど民放の吹き替えで見たことがありますが、ノーカット・字幕で見るのは初めて。けっこうよかったという記憶があったのですが、今回の感想は「こんな面白くなかったっけ?」 いや、序盤はいいのですよ。リアルな演出は後半の飛躍した物語をリアルに感じさせるために必要だし、インターロシターを組み立てるくだりもダルイとは感じませんでした。が、中盤以降「?」なところが出てきます。はるかに科学が発達しているはずのメタルーナ人が、地球人に助けを求めるというのもヘンだし(一応説明はあるけど)、主人公2人以外の科学者を殺すというのも後味が悪い。が、一番ダメだと思ったのは、最後まで見ても結局何がやりたかったのかサッパリわからないこと。星間戦争に巻き込まれたからといって、戦争の悲惨さを訴えるでもなし、科学の行き過ぎを警告するわけでもなし。「それで終わっちゃうの?」という感じ。 だから見どころとなると、地球とメタルーナの気圧が違いすぎるために体質を変化させるところとか、メタルーナ・ミュータントとか、その辺しかないわけです。 おそらくは、「人間が太陽系外の惑星へ飛び出した」というだけで映画が作れた、そういう時代の遺物ということなのでしょう。この映画と同時期に日本では『ゴジラ』が製作されていますが、こちらが現代にも通じる普遍的なテーマを扱うことで今日でも鑑賞に耐えるのとは対照的です。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2009-07-28 20:05:49) |