Menu
 > レビュワー
 > ザ・チャンバラ さんの口コミ一覧。2ページ目
ザ・チャンバラさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1274
性別 男性
年齢 43歳
自己紹介 嫁・子供・犬と都内に住んでいます。職業は公認会計士です。
ちょっと前までは仕事がヒマで、趣味に多くの時間を使えていたのですが、最近は景気が回復しているのか驚くほど仕事が増えており、映画を見られなくなってきています。
程々に稼いで程々に遊べる生活を愛する私にとっては過酷な日々となっていますが、そんな中でも細々とレビューを続けていきたいと思います。

表示切替メニュー
レビュー関連 レビュー表示
レビュー表示(投票数)
その他レビュー表示
その他投稿関連 名セリフ・名シーン・小ネタ表示
キャスト・スタッフ名言表示
あらすじ・プロフィール表示
統計関連 製作国別レビュー統計
年代別レビュー統計
好みチェック 好みが近いレビュワー一覧
好みが近いレビュワーより抜粋したお勧め作品一覧
要望関連 作品新規登録 / 変更 要望表示
人物新規登録 / 変更 要望表示
(登録済)作品新規登録表示
(登録済)人物新規登録表示
予約データ 表示
評価順123
投稿日付順123
変更日付順123
>> カレンダー表示
>> 通常表示
21.  TIME/タイム 《ネタバレ》 
アンドリュー・ニコルの作品は、SF映画として鑑賞すると落胆させられることが多いように感じます。大成功した『トゥルーマン・ショー』や傑作と呼ばれる『ガタカ』ですら世界観の作り込みが甘く、設定に腑に落ちない点が多すぎるのです。例に漏れず本作も、基本的な設定部分はボロボロ。ニコルはこの点を取り繕う気すらなかったようで、冒頭のナレーションで主人公に「なぜこんな世界になったのかは俺にもわからない」と身も蓋もないことを言わせる始末。ニコル作品はSFではなく寓話として観るのが正解で、基本設定へのツッコミは忘れてあげるのが作法のようです。。。 一部の大金持ちが貧乏人の命を搾取してその繁栄を維持している世界。ジュード・ロウ主演の『レポゼッション・マン』と同じく、サブプライム問題で露呈した強欲なアメリカ資本主義をデフォルメした内容となっています。はたまた、人類は不老不死の夢を叶えたがその夢を享受しているのは一部の金持ちだけという構図は、マイケル・ムーアの『シッコ』でも描かれたアメリカの歪んだ医療保険制度を象徴しているとも解釈できます。つまりこの映画が描いているのは未来世界ではなく、現代のアメリカ社会なのです。。。 そんな目の付け所は面白いし、これを『人生の残り時間が通貨となった世界』という図式にまで落とし込んだアイデアには脱帽させられますが、この映画が優れているのってそこだけなんですよね。主人公の行動原理にイチイチ不明な点が多いし(身の危険を冒してまで見ず知らずの金持ちを救おうとした理由は?100万年もの時間の強奪に成功しながらそれに一切手を付けず、ヒロインともども死にかけたのはなぜ?)、キレ者に見えて実はマヌケなタイムキーパーにもガッカリさせられます。特に目を引く見せ場があるわけでもなく、主人公がやることは全てうまくいくのでスリルやサスペンスの演出にも失敗しています。娯楽映画としては赤点寸前の出来なのですが、美しい出演者達(2006年の佳作『アルファ・ドッグ/破滅へのカウントダウン』の出演者多し)は見てて飽きないので5点としておきます。
[DVD(字幕)] 5点(2012-08-05 03:29:12)(良:2票)
22.  ダークナイト ライジング
IMAXシアターにて鑑賞。 関係者の想定以上によく出来てしまった『ダークナイト』の続編。傑作になることを義務付けられた完結編という相当な重荷の中、上がりまくったハードルをきっちり超える映画に仕上がっています。アクションはより派手に、ストーリーはより重厚に、世界が見たがっているバットマンを正確に理解した映画となっているのです。『スター・ウォーズ/ジェダイの帰還』『パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド』『マトリックス・レボリューションズ』等、要らないものを足しすぎて失敗する完結編が多い中で、ここまで過不足なく綺麗にまとめられた完結編は珍しいと思います。とにかくクリストファー・ノーランの仕事が圧倒的。日本のオタク以上に厄介なアメリカのオタクを納得させてきたストーリーテリングの手腕はさすがのものだし、アクション演出は前作以上に的確です。『ビギンズ』の時には演出に固さがあったものの、娯楽部分の演出はどんどん巧くなってきています。007を思わせるスカイアクションにはじまり、ウォール街襲撃に、バットマン再登場に、ゴッサム陥落にと圧倒的な見せ場が連続するのですが、CG全開のマーブルヒーローとは一味も二味も違うリアリティある見せ場には大変恐れ入りました。。。 物語については賛否が割れているようですが、私は良い内容だったと思います。最大の武器であった財力とテクノロジーを奪われた時、ブルース・ウェインはどう戦うのか?というのが本作のテーマ。なかなか面白い点に目を付けたなぁと感心しました。第2のロシア革命を目論むベインという敵にも、完結編に相応しい重厚さがありました。無目的な狂人であったジョーカーでは完結編の主役は務まらなかったはずであり、バットマンとは相要れぬ信念のために突き進む怪人こそが、サーガの幕引きには適任だったと思います。。。 そして最期に一言。どんなに扱いが悪くてもシリーズに出演し続けたキリアン・マーフィの度量は素晴らしすぎる!
[映画館(字幕)] 9点(2012-07-29 01:08:11)(良:1票)
23.  大日本人 《ネタバレ》 
事前の予想と鑑賞後に持った印象との間に大きな乖離があった作品。事前には松本人志のシュールな世界観を2時間に拡大した映画だろうと思っていたのですが、実際のところ、極めて政治的な内容を扱った作品でした。。。 まず気になったのが、なぜ「6代目」なのかということ。大佐藤が日本国の守護神なのであれば、100代目とかの方がしっくりきます。そこで時代を逆算してみたのですが、すると初代大佐藤は明治政府が誕生した辺りであろうことがわかりました。すなわち、「大佐藤」とは近代日本を指しているというわけです。日本を守るという使命を持った主人公・6代目大佐藤は自衛隊のメタファー。彼はただ愚直にその使命を全うしているものの、世論からは邪魔者扱いを受けています。日本国民は大佐藤に守られているという事実を忘れ、騒音だの税金の無駄だのといった目先の問題ばかりに着目して彼を目の敵にしているのです。その父親である5代目大佐藤は高度経済成長の主役であった団塊の世代のメタファー。彼は許容量を超えて巨大化しようとした結果、弾けたバブルの如く命を落としました。4代目大佐藤は戦前日本のメタファー。彼は軍事力の全盛期を生きたものの後にその生き方は否定され、現在はボケて老人ホームでひっそりと暮らしています。。。 本作が興味深いのは、戦後民主主義を代表する「5代目」を否定し、戦後民主主義によって否定されてきた「4代目」を復権させたこと。ここに松本人志の思いが込められているし、本作が日本国内で酷評された理由も集約されています。本作は保守的な思想の下で製作されているのですが、左巻きの多い芸術界ではこれが受け入れられなかったようです。公開時、本作は激しい酷評に晒されましたが、それは本作の政治的背景の分析がロクになされないというアンフェアな状況下での酷評だったことは明記しておくべきでしょう。。。 私個人の意見としては非常に見応えがあったと思います。笑いを巧みに交えながら、かなり的確にテーマを突いているのです。ロクに戦いもせずに赤い怪獣(=北朝鮮)から逃げ回る大佐藤の情けない姿、敵を完膚なきまでに撃ちのめし、丸裸にしてもまだ容赦しないというスーパー・ジャスティス(=アメリカ)の戦い方などは、国際情勢をよく現しています。処女作とは思えないほどVFXや音響の扱いもうまく、タレント業と並行してここまでの仕事をした手腕は評価されるべきだと思います。ぜひ!
[DVD(邦画)] 8点(2012-06-10 09:33:59)(笑:1票) (良:2票)
24.  タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密
フィルム撮りを愛し、新技術に対して懐疑的なスピルバーグがついに挑んだ3D大作だけあって、技術的には物凄いことになっています。これまで見たどの3D映画よりも滑らかかつ迫力ある立体映像は入場料分の価値あり。特に凄いのが、3枚の羊皮紙を巡ってのバイクとハヤブサとのチェイスシーンで、「もう一回見せて」と言いたくなるほどのパワーと迫力に圧倒されました。やはりスピルバーグはスペクタクルの巨匠なのです。キャラクターの演出も相変わらず巧いもので、タンタンの愛犬スノーウィは誰からも愛される理想的なパートナーに仕上がっているし、失敗ばかりのハドック船長を観客からウザがられる一歩手前で愛すべきおとぼけキャラの域に留めている辺りのサジ加減も抜群です。。。 ただし、全体としてはアニメーションという初体験のジャンルをうまく活かせていないように感じました。「謎を解く→次の冒険へ→新たな謎の発生」という点と線をつなぐストーリー展開は「レイダース」を思わせるのですが、アニメ作品としては少々込み入っているように感じました。もうちょっとスリムにすべきだったと思います。また、アニメ作品のひとつの醍醐味は実写作品では不可能なほどの青臭いメッセージを大真面目に主張できることなのですが(「アイアン・ジャイアント」「ヒックとドラゴン」etc…)、本作はアニメならではの熱さを盛り込むことをしておらず、「実写で撮ってもよかったのでは?」という印象を受けました。これらについては、監督を担当したスピルバーグ、オリジナル脚本を書いたスティーブン・モファット、それをリライトしたエドガー・ライト、その全員が実写畑の人だったことが原因ではないかと思います。アニメ界の人材をブレーンとして入れていれば、結果は違っていたかもしれません。
[映画館(字幕)] 6点(2011-12-04 09:15:33)
25.  ダウト ~あるカトリック学校で~ 《ネタバレ》 
主要キャストが揃ってオスカーにノミネートされたことも納得いくほどの演技合戦は大変見応えがあります。みんな上手いです。そして、その中心に立つメリル・ストリープはとんでもなく上手いです。あまりに上手すぎてハナに付くくらいに上手い。デ・ニーロやパチーノといった同世代の名優達が過去の栄光を切り売りして小銭を稼ぎ、マジメに仕事しなくなっている21世紀において、これだけ真剣に演技に取り組む姿には尊敬の念すら覚えました。そして、そんなストリープを相手にするホフマンも上手い。この人はちょっと変わった脇役として存在感を示す程度の役者さんだったのですが、本作では一方の主役を務め、重厚感すら漂わせる超一流の演技派俳優に成長しています。主役二人のホットなやりとりを見るだけで、アクション映画数本分のスリルを味わうことができます。さらに、脚本の出来も上々です。本作は善悪の判断を観客に投げかけるタイプの作品であり、見終わった後にもテーマを咀嚼し、自分なりの答えを探すという楽しみが残されています。対立する校長と神父はどちらも正しいし、どちらも間違っている。物語上は校長側の言い分が勝ち、神父が身を引くという形で決着がつけられましたが、そもそも神父は悪いことをしていたのか?彼は少年を無理に犯したのではなく、相互に愛情を育んでいました。人種的にも性的にもマイノリティという究極の孤立無援状態にあった少年にとっては、神父は彼の生きる世界で唯一の理解者であり、また鉄板のように強力な保護者でもありました。神父からの愛情が少年を救い、その人生を良い方向へと導いていたのです。確かに、神父は未成年の生徒と深い関係を持つという重大なルール違反を犯しましたが、彼のルール違反は誰かを傷付けているどころか、被害者とされる少年に良い影響を与えていたのです。対する校長の言い分は額面上は正しいものですが、少年から神父を奪うことが本当に正義だったのかは疑問です。また、結果的には校長の持った疑いは正しかったものの、その疑いの発端は真実の究明ではなく「考え方の合わない神父のアラを探す」という点にあったことから、図らずも校長の浅ましさが露呈される結果にもなっています。正しい行いとは何なのか、清廉潔白な生き方とは何なのかを考えさせられる非常に優れた作品だったと思います。
[DVD(吹替)] 8点(2011-04-08 22:18:33)(良:1票)
26.  ダ・ヴィンチ・コード
2時間半、ひたすら退屈でした。原作の要約に終始するだけで話がまったく面白くなく、映画ならではの工夫や見せ場を入れているわけでもなく、わざわざ大金かけて映画化する必要があったのだろうかという印象です。せっかく映画というメディアを使いながら、謎のほとんどをイアン・マッケランに喋らせて終わりでは芸がなさすぎます。また、銃で撃たれた館長がその場で素っ裸になり、大の字に寝転んで息絶えるというダイイングメッセージの残し方は、映像化すると驚くほどマヌケです。このような文章と映像のギャップを埋める作業が脚本や監督に求められる機能のひとつなのですが、本作ではそれがほとんど機能していません。ロン・ハワードは仕事をしていたんでしょうか?ハワードは常に堅実な仕事をする人だけに、ここまで雑な仕事には驚きました。。。そもそも長大な原作を一本の映画にまとめることが不可能だったとも言えます。駆け足のダイジェストになってしまった結果、原作未読者にとっては情報量が多すぎて話を追い切れないし、既読者にとっては映画版ならではの見せ場に欠けた、ただのおさらいにしかなっていない。結局誰も喜ばない中途半端な出来になっています。「ダ・ヴィンチ・コード」の映像化に手を挙げたのは映画界のみならず、「24」の原案にするという意見もあったそうなのですが、2時間半にムリに詰め込むよりも、「24」にしてしまった方が良かったと思います。主人公がラングドン教授からジャック・バウアーに代わった「ダ・ヴィンチ・コード」って、それはそれで面白そうだし。
[DVD(吹替)] 2点(2010-02-08 00:14:52)(良:1票)
27.  ダイ・ハード4.0
大好きなシリーズなので高得点をつけたかったものの、残念ながらこれはダメでした。ド派手な見せ場の連続なのに手に汗握らないという、アクションものの末期症状とでも言うべき状態となっています。シリーズの定番通りマクレーンは傷つき、満身創痍で敵に挑むものの、どんな強敵を相手にしても負けないだろうという妙な安心感が作品を覆っています。マクレーンが超人化した「2」、駄作と言われる「3」にも、戦いには一定の緊張感が存在していたのですが、本作にはそれが皆無に近い状態となっています。「アンダーワールド」の頃から、レン・ワイズマンは「迫りくる緊張感」や「煽り」というものを不得意としていました。ド派手なアクションを撮る実力はあるのに(どこまでがCGでどこまでがライブなのか見分けがつかないほど見事な腕前)、これを映画における見せ場として機能させることができないのです。そんな彼の作品においては、設定や物語はアクションをやるためのお膳立てにすぎません。よって脚本はかなり雑です。自分の意見を聞いてもらえなかったとヤケになって米国にテロを起こすちっちゃな男が今回の敵なのですが、動機とやってることのスケールがあまりに一致していないため、この人物をリアルに感じることができません。「どうしてここまでのことを?」「6億ドル盗むとなると、とことん追われるからな」と、大それた行動に見合った動機付けをしていた「1」が懐かしくなりました。また、魔法の杖のようにいとも簡単にインフラを操作することも、あまりにリアリティを欠いていました。これでは、この映画は何でもありかいと冷めてしまいます。これまた、プログラマーがセキュリティを解除するための時間稼ぎをしていた「1」が懐かしくなりました。さらに、彼の配下には恐ろしく優秀な部隊がいますが、彼らは一体どういう動機でテロに参加しているのかも不明です。敵の存在もマクレーンの活躍もあまりに都合よく話が進んでしまうため、見ている側は特に何も感じることのない2時間を経験することとなります。画はよかっただけにこの仕上がりは残念です。
[映画館(字幕)] 4点(2009-07-30 20:27:48)(良:1票)
28.  ターミネーター4 《ネタバレ》 
物陰に隠れてレーザー光線を撃つのが精一杯のもっとチマチマした戦争をイメージしていただけに、潜水艦を司令部にし、空中戦もやってみせる人類の予想以上の健闘ぶりに燃えました。部隊と共にヘリから降り立つジョンの登場シーンでは「これは戦争映画だ!」という監督の心意気を感じ、「こういうのを待ってたんだ」となぜか涙目になる私。大小揃ったロボの充実ぶりに、巨大ロボからモトターミネーターが分離するギミック、また輸送船からHKが分離するギミックと、「ロボットの醍醐味は分離・合体である」という重要な基本を押さえた素晴らしいシーンの連続に感動しました。またマーカスという新キャラも良く考えられています。2003年までの記憶しかない彼が観客と世界観の橋渡しの役割を果たしており、彼が見聞きするものが情報として観客へ提供されるという巧い構成になっています。彼が頼もしい用心棒として大アクションを繰り広げる前半は旧3部作のアップグレード版であり、この過程で観客はマーカスに感情移入します。またジョン役にクリスチャン・ベールを得られたことも幸運で、本作の実質的な主人公はマーカスであり、相対的にジョンの出番は少なく、また一時的にマーカスを殺そうとするヒールの立場にもなるのですが、ベールの存在感によりカリスマ性ある人物にきちんと見えています。カイルとの出会いは素晴らしく、「命を捨てて母を守ってくれた偉大な父にようやく会えた」というジョンと、「憧れの指導者が目の前にいる」というカイルの視線が交錯する時の、ベールの表情が物凄く良いのです。カイルとの出会いに続いてT-800州知事モデルの登場でさらに因果な展開を迎えますが(なんでこのサプライズをCMで見せるんだ!!)、ここで脚本は残念なミスを犯します。2、3と「スペックで劣る善のターミネーターが、サラやジョンとの関わりの中でスペックを越えた力を見せ、新型を倒す」という展開で来ており、このバトルもそれを踏襲したものだと言えますが、マーカスの中身はT-800と同様のものなのか、それよりも劣る機体なのかを説明するセリフがないため、前作のような燃える展開になっていません。また、生前のマーカスが犯した罪についても言及されないため、「今度は良いことをしたい」というマーカスの行動もしっくりきません。死ぬ前にでもこれを告白させるべきでした。
[映画館(字幕)] 8点(2009-06-15 10:05:43)(良:3票)
29.  ターミネーター2
小学生の時のレンタルビデオが初見でしたが、圧倒的な面白さに家族全員がテレビの前から動けなくなったことをよく覚えています。すぐに寝てしまう祖母も、30分もテレビを見ていられない妹も、2時間以上の長尺を微動だにせず見入っていました。当時の標準的な娯楽作よりも2つか3つぐらいレベルが上の作品だったと思います。製作から18年が経過し、娯楽作全体のレベルも進化している現在において見返しても十分面白いのですから、本作がいかに優れた作品であるかがわかります。役者もよくハマっています。第一作当時は無名だったシュワ氏もその後6年でコメディまでこなすようになっており、もう一度悪役をさせても前作同様のインパクトを残すことは不可能だっただけに、善玉に転換したことは良い判断でした。また、重い宿命を背負った人生を送り、前作とはまるで別人となったサラ・コナーをリンダ・ハミルトンが演じきっています。そして収穫だったのがエドワード・ファーロングで、輝かんばかりのルックス、大スター・シュワを相手にしてもまったく見劣りしない演技力と、これ以上望めないほどハマっています。…と、本作がきわめて優れた娯楽作であることは明らかなのですが、何度か見るうちに気になった点もいくつか。最大の問題はT-800を人間臭くしすぎたことで、良い子守りとなり、最終的には「行かないで、ロボット」までやってしまうのは違和感がありました(ファーロングの力により、陳腐にはなっていませんが)。その点でいえば、「サラを殺すもジョンを守るもプログラムが違うだけで、ターミネーターとしての本質は変わらない」という描き方だった第3作の方が合理的でした。また、核戦争を阻止すべくサイバーダイン社を破壊しにいくという展開は、さすがに話が飛躍しすぎです。ジョンの保護を任務としているT-800が、警官隊に囲まれ、T-1000が来ることも予想される襲撃にジョンを連れて行くことはありえないでしょう。自分の生みの親であるスカイネットの破壊に、ターミネーターが進んで手を貸すことにも違和感があります。「未来は自分の力で変えられる」というメッセージがラストに提示されますが、今の社会が続けば犯罪者の母親と不良少年にすぎないサラとジョンにとっては、予定通り核戦争が起こって人類の救世主となる未来の方が良かったんじゃないのとも思えるので、ハッピーエンドとも言い切れないモヤモヤが残ります。
[ビデオ(吹替)] 8点(2009-06-11 16:32:10)
30.  007/慰めの報酬 《ネタバレ》 
カジノ・ロワイアルの緻密な完成度と比較すると007らしい大味さが気になる面もありましたが、ブロスナン時代のようにバカに突き進むこともなく締めるべきところはきっちり締まり、硬派な空気が全編に渡って維持されています。やたら向いのベランダに飛び移る逃走劇や高速の編集でジェイソン・ボーン状態となったアクション、外交上のしがらみから捜査にストップがかかり、現場が単独行動せざるをえなくなるジャック・バウアー状態の展開とよそ様のおいしい面をいただきつつも、007らしい面白さもキープ。突飛な展開が入っても観客から許容されることが老舗007の強みですが、本作においてはそのブランド力がうまく活用されています。スペクターのような世界的な闇組織を登場させることにまんまと成功しているのです。M:iシリーズが悪役を作ることに苦労し、3作すべて局内の裏切り者になってしまったことを考えると、この時代に世界的な悪の組織が登場するアクション大作を楽しめるのは007だけ。突如スカイアクションがはじまっても違和感なく楽しめるのは007だけ。砂漠のド真ん中に要塞のような建物が「ホテルです」と言って登場しても、特におかしく感じないのは007だけ。50年で培われた暗黙の了解とは大きいのです。ダニエル・クレイグも確実にボンドをモノにしてきています。ひたすらストイックで一本気であればよかった前作と比べると、終始クールな中でもボンドらしいくだらないジョークを口にし、男のフェロモンで女性を骨抜きにする砕けた面も求められた本作はバランスが難しかったはずですが、これらをうまくこなしていて感心しました。表面的には反目しあいながらも硬い信頼で結ばれているMとの関係性もうまく描かれており、オスカー脚本家とドラマ畑の監督、演技のできる俳優が揃ったおかげで良い作品になっています。ラストも秀逸で、ジェームズ・ボンド個人の感情とエージェント007の職務というふたつの物語が余韻を残して締め括られており、新シリーズのドラマ性の高さがここでも味わえます。惚れた女が付き合ってたのがクソ男だったと知った時の憤りは、男性ならみなさんわかりますよね。良い女はなぜクソ男と付き合うのか。しかし私怨に走らず、山ほどある感情を口にせず、007としてやるべきことを優先したボンド。Mも含め「そいつなんか殺しちゃってもいいよ」という状況でも職務を優先した男の背中こそが最高の見せ場でした。
[映画館(字幕)] 8点(2009-02-02 01:36:28)
31.  タイタニック(1997)
構造はターミネーターと同じで、不満を抱きながら日常を送っている女性の元にある日イケメンが現れ、襲いかかる脅威から全力で自分を守ってくれる中で愛が芽生え、数日の間に一生分の恋愛を経験するという女のファンタジー。このイケメン、顔だけでなく中身も完璧で、ありのままの自分を愛してくれると同時にいざという時には身を呈して守ってくれる理想の男性。このように少女マンガみたいなベースにアクションを作るのがキャメロンの独特なところです。ただ、ターミネーターの時にはこの傾向にもさほど違和感はありませんでしたが、タイタニックでは特殊な方向にまで進化しています。女性視点で話を展開するどころではなく、フェミニズムへの迎合が見えるのです。「女だからと言って自分の人生を生きられないのはイヤだ」というローズの嘆きはかなりストレートで、女性を縛りつける昔ながらの社会をはっきり悪と位置付けています。婚約者キャルはローズを束縛し、思い通りにならなければ暴力も振るうDV男だし、その対極にあるジャックは「君は人として自由になりなさい」とローズを導きます。キャメロン作品には珍しく一方的な価値観が作品を貫いており、それは物語のバランスを崩しかねないほど。不満があるにせよれっきとした婚約者がいるのに、昨日今日出会ったばかりの男とフラフラ遊び回るのはさすがにマズイでしょとか、貴族社会が息苦しいと言っても、庶民では一生食えないものを食い、欲しいものをいくらでも買えて貴族社会に属する恩恵も十分受けてるんだから、ちょっとはガマンなさいよとか、この映画のモラルには脆弱な部分がいくつもあります。悪役とされるキャルにしても、貴族社会の中では十分浮いているローズの行動を忍耐強く見守っており、また彼女を取り戻すべく沈没寸前のタイタニックに残るなど彼なりに彼女に対して最大限の愛情を注いでいて、一方何不自由なく生きられるはずのローズを貧乏生活に引き込もうとするジャックが正しいとも言い切れません。つまりこれは女性の自立を絶対的な善とするフェミニズムに立脚した物語であり、これをなぜ男性であるキャメロンが作ったのかはよくわからないところです。別に私はフェミニズムが悪いとは思わないのですが、一面的な主張がこの作品の奥行きを奪っているのは確か。ローズの母やキャルの思いも平等に描いて観客に考える余地を与えていれば、もっと良い映画になったと思います。
[DVD(吹替)] 7点(2009-01-02 03:43:50)(良:3票)
32.  ターミネーター 《ネタバレ》 
小学1年の時に日曜洋画劇場で見て以来、現在に至るまで私を映画にどっぷりハマらせるきっかけとなった作品です。普段見るテレビとはまるで違う世界、ターミネーターがものすごく怖くて、アクションの凄まじさに驚いて、ラブシーンに気まずくなって、とにかく圧倒的に面白くて、まったく目が離せない感覚を人生ではじめて味わったのがこの時でした。以来数えきれないほど見ていますが、いま見てもやっぱり面白い。キャメロンの映画作りのセンスはあらためてズバ抜けています。舞台は真夜中で、出てくるのはゴミだらけで人気のない路地裏ばかり。同年の作品と比較してもアクションは派手な部類には入らないのですが、冒頭のテロップひとつで「これは人類の存亡を賭けた戦いだ」という史上空前のハッタリをかましてみせます。アクションにはさほどお金をかけない一方で(シュワ氏の存在感からとんでもない破壊者を見たような気になるものの、物を壊したり爆破したりの場面はかなり少ない)、ターミネーター絡みの特撮や彼が持つ銃火器には徹底したこだわりがあり、「ここを作り込めばあとは何とかなる」という判断が的確に為されています。最初から大手と契約してたスピやルーカスとは違い、ロジャー・コーマンの元で修業した苦労人キャメロンならではの強みでしょうか。脚本の出来も上々。例えばカイルがサラにこの戦いの背景を話すシーン。普通ならいったんここで話が停止状態になるのですが、本作ではなんとカーチェイス中の車内でこれを一気に説明させ、話を止めないのです。またこの車内ではパニックになるサラを「黙れ!僕が話していいと言うまで話すな!」とカイルが恫喝して話を聞かせるやりとりがありますが、このたった数十秒のシーンで、突如命を狙われることになったサラのリアルな反応を描き、一方でカイルが厳しい世界の住人であることをうかがわせます。本作はテンポの速いアクションですが、その中でも人間の生身のリアクションやドラマがきっちりと描けており、そのリアリティがSFとしての説得力をうまく補完しています。傷つくカイルを救おうとする中でサラに戦う強さが宿っていく過程は自然だったし、ラストではカイルの思い出を話をしている時に撮られた写真こそが、カイルがサラを愛するきっかけとなった写真でしたというオチ。SFや銃火器を好む一方で、最終的にはこういうセンチな話を好むあたりが、やはりキャメロンなのです。
[地上波(吹替)] 9点(2008-12-06 03:10:22)(良:1票)
33.  ダークナイト(2008) 《ネタバレ》 
ビギンズには辛い評価をした私ですが、それを撤回せねばならない続編が出てきました。スパイダーマンと比較してヒーローの見せ方がなってないなどと批判したのですが、この新生バットマンは他のアメコミ映画とは目指すものがまるで違うようです。マンガの世界を巧く作りあげ、ヒーローものならではの荒唐無稽なアクションを見せ、そして実写化した時の違和感をうまいトンチで乗り切ることが他のすべてのアメコミ映画のキモとなっていますが、このシリーズが目指すのはそれとは正反対。バットマンや敵のフリーク達を現実の世界に引っ張り出し、現実世界で彼らがどのような意味を持つことになるのかがこのシリーズの追うところです。なのでCG丸出しのヒーロー大暴れなどは一切なく、バットマンやフリークとはいえあくまで生身の人間が戦ってるよう見せることにこだわっています。前作では視覚的に未完成だった為この狙いがイマイチはっきりしませんでしたが、本作では見事にスクリーンに反映されています。そこいらの刑事ものよりもリアルに、しかもバットマンという非現実が真ん中に立っていても変に見えないようにという絶妙なバランスで作られているのです。またそんな生真面目なアクションの中でも、バットモービルからバットポッドが分離するというかっこいいギミックも見せてくれるので、監督も相当小慣れてきてるなと感心しました。脚本の充実ぶりも見事。たったひとりの狂人が大都市をパニックに陥れていく過程に疑問や違和感を覚えさせないのは、話が良く練られている証拠。そんな「よく出来た脚本」からさらに二歩も三歩も突っ込んで、ドラマとしての面白さ、「正義とは?ヒーローとは?」という問いかけまで盛り込み、かつ大量に仕掛けたネタをどれひとつ破綻させていないという神業的な仕上がりとなっています。特に素晴らしいのが二隻のフェリーの駆け引きで、戦いの当事者が「正義とは?」と悩む映画はいくつもありますが、傍観者である市民にその姿勢を問うというありそうでなかった展開を挟んできたことで、この作品の価値はぐっと上がりました。今回点数を9点としているのは、映画館で一度鑑賞しただけでは、情報量の膨大な本作の全貌を掴んだ自信がないからです。それにしても、このような観客に対して相当レベルの観賞力や集中力を要求する映画が史上空前のヒットとなっているのですから、アメリカというのもバカにならない国です。
[映画館(字幕)] 9点(2008-08-15 03:36:58)(良:2票)
34.  ダイ・ハード2
通常の映画がクライマックスに持って来るレベルのアクションを次々に見せつけられて所見時は大興奮でしたが、現在の水準から見てもアクションは特盛大サービス状態。「1」を超えるものを作ろうとひたすらスケールの拡大、見せ場の充実を図っているのですが、「これ以上やりすぎるとかえって緊張感がなくなる」というギリギリのところでうまく踏みとどまっているので、満身創痍で戦っている生身の感覚がまだちゃんと残っています。アクションの自家中毒に陥っていた「3」「4」よりはひとつ上の仕上がりと言えるでしょう。また、レニー・ハーリンを監督に引っ張ってこれたのも幸運で(「エイリアン3」の監督に内定するなど、当時はハリウッド中が注目する若手監督でした)、この人の手腕が作品にかなり貢献しています。「動く歩道を起動させ銃をキャッチ!」「迫りくる飛行機からギリギリで身をかわす!」と、バカバカしいまでのカタルシスをバッチリ味わわせてくれます。中でも白眉なのが飛行機爆破からの脱出で、外には銃を構えたテロリスト、ドアはロックされ完全に身動きの取れなくなったところに山ほど手榴弾が投げ込まれ絶対絶命のピンチ!→寸前でコックピットからズドーンと脱出!という稀にみる大脱出の演出は本当にすごかった。「1」の屋上ダイブではまだボヤく余裕のあったマクレーンですが、ここではシリーズ中もっともテンパった顔となっており、見ている私も一緒に手に汗握った名シーンでした。また、悪役の見せ方もなかなか良いです。ハンスのようなスマートな敵はもう作れないと判断したのか、今回の悪役は筋肉隆々の肉体派揃い(変な方向に行ってしまった「3」「4」を思うと、この判断は成功だったと言えます)。しかもボスクラスが3人とこちらも質より量で勝負していますが、フルチンで妙な空手を披露するボスの登場にはじまり、空港ホテルを隊列を組んで歩く私服テロリストのみなさんなど、物凄くヘンなんだけど訳のわからん威圧感や凄味をワンシーンで伝えることに成功しています。体どころか顔まで筋肉で出来ているかのようなウィリアム・サドラーが存在感をムンムンに放っていますが、他の作品の彼は全然パっとしないことを思うと、ハーリンがいかに効果的な見せ方をしていたかがわかります。以上、かなり良い出来の映画なのですが、奇跡的な完成度だった「1」があるので損をしている作品ではないでしょうか。
[DVD(字幕)] 7点(2008-06-29 19:27:11)
35.  007/カジノ・ロワイヤル(2006) 《ネタバレ》 
何度目かとなるリニューアル作ですが、過去のシリーズからの連続性を完全に断っているという意味では史上最大のリニューアルといえます。次回作は本作の続きになると言われていますから、カジノロワイヤルをスタートとして新生007を作る、ドクター・ノオやゴールドフィンガーといった往年の作品も現代風にアレンジして再映画化する計画でもあるのだろうかとも推測されます。だからこそ歴史を捨て去り、007の誕生をテーマにしているとのではないかとも思われます。また従来のボンド像にまったくそぐわないダニエル・クレイグを起用したのも、新シリーズ構築に対する計算があってのことではないかとも推測されるのです。そのような事情があってか本作に対するスタジオ側の熱意は並々ならぬものが感じられ、シリーズ中でもトップクラスの仕上がりだと評価できます。純粋に映画としての完成度が高いうえに、シリーズへの目配せも充実しており、ファンも初心者も両方納得させられる映画になっているのです。冒頭、トイレで裏切り者を始末するシーンはシリーズ中異色なほどの荒っぽさですが、007は殺しのライセンスを持った殺し屋なのだという本来のジェームズ・ボンド像を再確認させるのに十分な効果をあげており、また殺しとは鮮やかに決められるものではないというリアル路線を決定的に印象付ける素晴らしい場面だといえます。そこからいつもとは違ったアレンジでの「銃口」→主題歌となるのですが、定番を踏襲しつつも新しいというセンスのよさには唸りっぱなし。序盤ではチンピラのようなジェームズ・ボンドが、カジノロワイヤルに潜入するために服装の着こなしや酒の選び方を覚えていって007になっていくという流れも実に良くできています。それと同時に精神面の変化も大変な説得力をもって描かれており、ジェームズ・ボンドという個人が007というスパイに変わっていく過程がドラマチックに描かれています。そしてラストでは、個人を振り払い007となったジェームズ・ボンドがついに姿を現し、普段であれば第一声であるはずの「ボンド、ジェームズ・ボンド」の定番セリフを、本作ではクライマックスになって初めて口にするという粋な演出。そしてこれまた定番のジェームズ・ボンドのテーマがエンディングになってはじめて流れるのもこれまた粋。次回作への期待も一気に高まりました。
[映画館(字幕)] 8点(2006-12-11 00:59:10)(良:1票)
36.  太陽の帝国(1987) 《ネタバレ》 
スピルバーグ作品中でも注目度や知名度の低い作品ですが、今になって見るとスピルバーグ本人の中ではけっこう重要な作品なのではないかと思います。スピルバーグの感傷的な演出がこの映画ではほぼなくなっているのがまずひとつ。死人から靴を奪う、他人の食器を盗んで2人分の食料にありつくなど倫理的にいかがなことを平気で出来るようになることが主人公の成長として描かれてる上に人間関係もきわめてドライで、収容所内ではみんなで助け合って生きているように見えても、少し目を離しただけで自分の物を盗まれるなど結局は自分のことしか考えていない様子。保護者役をやっていたベイリーも慕ってくるジムに愛情をかけているとは言いがたいものがあります。キジ獲りの罠を仕掛けるエピソードでは、地雷が埋まっている可能性のある鉄条網の外へジムを行かせ、彼が生きて帰るかどうかを賭けるなんてことをやっているし、結局はジムに黙って収容所を脱走して姿を消してしまいます。損得関係なく唯一心を通わせていた日本人の男の子もベイリーに殺され、4年の間で作ってきた人間関係は完全に消滅。ひとりになったジムはようやく両親に再会しますが彼は両親の顔を忘れており、再会の感動もないまま死人のような無表情で話が終わるという絶望的なラスト。最近のスピルバーグならともかく、20年も前にここまでの映画を撮っていたというのは驚きです。また、死への執着というもうひとつの特徴がこの映画では見えはじめています。スピルバーグを語る上で死は不可欠な要素であるもののその性質が判明したのはシンドラーのリスト以降なのですが、この映画にはその後の彼を思わせる描写が見受けられます。冒頭からして揚子江に浮かぶ棺からはじまり、主人公は少年でありながら多くの死に直面します。しかも死に行く者がのたうち回ったり何か言い残して死ぬという映画にありがちな劇的な描写ではなく、何の言葉も発することなく気がつけば死んでいたという突き放したような死。死は刹那的に訪れるというのがスピルバーグの認識のようですが、それを映画の中ではっきりとやったのはこれがはじめてではないでしょうか。後にシンドラーのリストやプライベート・ライアンでやる演出のプロトタイプみたいなシーンもあるし、作品自体は少々間延びして退屈ではあるものの、スピルバーグのその後を思わせる描写がいくつもあるので見る価値のある映画だとは思います。
[DVD(字幕)] 6点(2006-11-10 00:52:42)(良:3票)
37.  ターミナル 《ネタバレ》 
正直、微妙でした。やっぱりオチが中途半端だったのがイタかったですね。缶の秘密はどうでもよかったし、恋愛の落とし方はヘンだったし、グプタの自己犠牲はとってつけたようだったし、あれだけお堅い警備主任の突然の心変わりは不自然だったし。それぞれにじっくりとした描写が必要なシーンなのに、ほとんど説明なしで流されてるんですよ。おかげで、実に印象に残らないクライマックスになってしまったのが残念です。この後半って、実はスピルバーグ自身も手を抜いてたんじゃないの?とも思います。だって、念願のサインをもらいに行くシーンのあまりのこだわりのなさには驚きましたよ。話のすべてが収斂される重要な締めだと言うのに、タクシーでホテルに行き、本人に会い、サインをもらって、はい終わり。そんだけですからね。グプタおじさんの人生まで賭けさせた選択だったわりに、あまりに呆気なさ過ぎて参ってしまいました。それに、普通ならあそこでジャズの名曲をフルコーラスで見せるもんです。その音楽をバックに各登場人物の姿や、そこに至るまでのエピソードがフラッシュバックされ、最後には涙ぐむ主人公のアップ。それで感動を高めるもんですよ。しかし、主人公があれだけこだわったジャズの扱いはあまりにぞんざいで、スピから「はい終わりですよ」って言われてるような気がしました。そんなスピが見せたかったのって、やっぱり小ネタ満載の前半だったんでしょうね。前半は本当におもしろかったんですよ。強引に話を進めるのではなく、細かいエピソードを重ねてドラマを育むやり方って、実に好感が持てます。スピのコメディ演出の巧さには唸らされました。シリアスなわりに小ネタ満載の「マイノリティ・リポート」では「なんでこんなに悪趣味なの?」と笑うのをためらったものの(緊迫の追跡中、ロケットパックの炎でハンバーグが焼ける等)、今回の笑いはほのぼのしてて、実に気持ちが良かったですね。監視カメラVSトム・ハンクスや、グプタの曲芸などなど。この巧さが後半の感動にまでつながってれば、本当の傑作になったと思うんですけどね。
5点(2005-01-17 21:20:09)(良:2票)
38.  ダークシティ 《ネタバレ》 
オールタイム・ベスト格の映画なので、これは譲れません。って、評価低いですね。奇抜な世界観、怒涛の展開、超能力バトル、そして世界の創造と、これが100分足らずで起こったことかと思えるSF映画史上の奇跡。これって「マトリックス」が3部作かけてやった内容ですからね。 そして愛は記憶を超えうるのかという裏テーマもナイス。ジェニファー・コネリーは究極の奥さん女優であることは「ビューティフル・マインド」で世界が認めましたけど、この映画で私はずっと前から知ってましたよ。ルーファス・シーウェルが超能力でガラスを割り、ジェニファー・コネリーとキスするシーンは映画史上もっとも美しいシーンです。そしてキーファー・サザーランド演じるドクター・シュレイバーにも男泣き。この映画でもっとも感情移入してしまうのがドクター・シュレイバーです。人間でありながらストレンジャーに加担する彼は、冒頭での登場以来どう見ても狂気の科学者なのですが、実はストレンジャーから自分の記憶を消すことを強要された悲劇の男だったんです。支配の側で身の安全を図る現状と、一方で同胞を裏切っているというジレンマに悩む彼は、ラストで突然変異のマードックを救世主に変えます。そのほか、何もしないのにかっこいいウィリアム・ハートもナイス!考えてみれば、この映画ってのはマードック以外の誰が主役でも話が成立するし、そうすればそれぞれに印象の違う作品になりそうです。それほど構成がしっかりしているということ。ミステリーから幕をあけしだいにテンポをあげていき、世界の果てが露になるにつけ怒涛の展開に。そしてラスト、マードックはダークシティに光をもたらし、住民の記憶にだけ存在した海を作り上げます。そして神にさえなれた彼は、ただのひとりの男として再び妻との出会いから始めます。愛は記憶を超えたんです。そういえば、冒頭のナレーションは謎の半分をしゃべってるんで不要だとよく言われるけど(DVDの解説では、監督自身もあのシーンは無駄だと言っていました)、いま見返せば映画の雰囲気をよく伝えており、あながち悪いとも言えません。ちなみにDVDの吹き替えは出来がすごくいいので、ドラマがさらに盛り上がります。
10点(2004-11-05 02:15:13)(良:3票)
39.  ダーティハリー
同年の傑作「フレンチ・コネクション」とよく比較されますが、構造的にはまるで別物なんですよね。捜査が極めて丹念に描かれ、意外にも暴力描写の少ない「フレンチ~」に対し、こちらは暴力の嵐。犯人を捕まえるというよりも、法に代わって罰するというのがテーマでしたから。「フレンチ~」はオスカーを受賞するという快挙を成し遂げましたが(今後、このジャンルからオスカー作品は現れないでしょう)、一方後のジャンルへの影響力はこちらが上だと思います。「フレンチ・コネクション2」ですら、結果的には正編よりも「ダーティハリー」に近いものになってました。「ブラック・レイン」しかり「リーサル・ウェポン」しかり、犯人を逮捕することよりも、必要とあらば規則を踏み越えてでも罰することが刑事もの基本となっています。さらにサソリという敵キャラの存在も非常に大きいですね。ここまでのキ○チガイが登場する映画ってのはかつてなかったはずです。同年の「時計じかけのオレンジ」のアレックスと比較しても、単体での狂いっぷりは完全にサソリが上。このサソリが映画史上最狂のキチGUY、トラヴィスにつながったのかもしれません。さらに細かい部分を眺めても、自殺者の説得は「リーサル・ウェポン」や「タイタニック」に、公衆電話ラリーは「ダイ・ハード3」でパクられてました。 「フレンチ・コネクション」を「羊たちの沈黙」とすると、「ダーティハリー」は「セブン」って感じですね。
8点(2004-09-29 01:25:03)(良:1票)
40.  ダイ・ハード3
「ダイ・ハード」のレビューで述べたのですが、傑作「ダイ・ハード」のアクションのよさは、その凝り具合にあるんです。大味なようで実は細かいところまでよく配慮して作ってあるので、おかげで荒唐無稽なアクションにも味が出るんですね。その後のアクション映画は基本的に「ダイ・ハード」の影響下にありますが、それらがことごとく本家を越えられていないのは、派手さのみが先行して細部の作りが杜撰になったためです。で、同じ俳優、同じ監督で作られた「ダイ・ハード3」ですが、皮肉なことにこれもダイ・ハードシンドロームにかかってしまっています。わざとらしく並べ立てられた危機また危機には緊迫感のかけらもなく、安心して見られる作りに。いかに派手な見せ場を作るかのみに腐心したために、アクションから説得力が奪われたためです。ナンバーくじやダンプの盗難など、冒頭でわざとらしく並べられる伏線は細かい配慮とは言いませんよ。ちなみにこの映画で私的に一番おもしろかったシーンは、テロリストが手際よく金塊を強奪していくシーンです。このシーンだけはテロリスト側の周到な計画を流れるように見ることができ、やはり見せ場に流れは必要なのだなと感じました。その他のシーンはどんなに派手でも全然ダメ。アクションが話と連動しておらず、スポットのみになっています。話があちこち飛ぶのもよくなかったと思います。いい例が爆弾のタイムリミットで、これが演出上のスパイスになる予定だったんでしょうけど、話に焦点を絞り込めていなかったためにまったく効果をあげていません。ま、サービスに気を使いすぎたのが悪かったんです。あと細かい邪推を少々すると、ジョン・マクティアナンは「2」がかなりお気に召さないようです。「3」では「2」の話がなかったことにされてるのがいい証拠です。さらにマクレーンのキャラ設定にしても、「1」では脚本の時点ではタフだったマクレーンを、マクティアナンは意識的に普通の中年にしようとしたのですが(大正解!)、一転して「2」のマクレーンはアクションヒーローに。そして「3」ではその反動か、「1」とは比較にならないほどしがない刑事となっています。あそこまで情けない男にしなくてもよかったような気が。 
5点(2004-09-13 03:10:53)
070.55%
1171.33%
2272.12%
3564.40%
417513.74%
517713.89%
619715.46%
730924.25%
822217.43%
9685.34%
10191.49%

全部

■ ヘルプ
© 1997 JTNEWS