1. ダンサー・イン・ザ・ダーク
《ネタバレ》 この映画がどうしてこんなにも人の心を掻き乱し、賛否両論分かれるのか。何度も何度も繰り返し観て(よく自殺しなかったな笑)なんとか自分なりに結論を得ました。この映画は踏み越えてしまっているんです。つまり、主人公セルマは頭のおかしい気の狂ってしまった人間なんです。だから、間違った選択を繰り返し、誰の助けも借りず、最後は息子のためにと幸せに死んでいく。この主人公に「やっぱりお前は馬鹿だ、不幸だ」と誰が言える権利があるでしょうか。そう、この映画のテーマはそこです。人間の幸せは主観的なものであるなら、自分を幸せだと強固に信じる人間を誰も非難できない。つまり、もしかしたら全ての人間の幸せに意味などないのでは、ということです。とても恐ろしい踏み越えてしまったテーマです。この映画が、敢えてその恐ろしい問いに挑戦する武器として、想像力の美しさを選んだことに敬服せざるを得ません。ただ、勝利できたかどうかは観る人の判断ですが。そして、この映画を徹底的に非難するレビューにこそ、僕は感動を覚えます。そこには、全ての人間の幸せには意味があると信じようとする力強さを感じるからです。それこそが人間の想像力の持つ美しさだと思います。敢えて踏み越えてまで、この映画を撮った監督に改めて敬意を表したい。 [DVD(字幕)] 10点(2012-05-14 02:27:21)(良:2票) |
2. 第9地区
《ネタバレ》 久しぶりに面白い映画を観たなぁと素直に思える映画だった。特に設定が秀逸。差別されるマイノリティであるエイリアンの居住地区を南アフリカにもってくるところなど、下手をすると説教臭くなったり変に啓蒙主義的になったりするものだけど、この映画はちゃんとエンターテイメントから軸足がぶれてない。何より、自分をマジョリティであることを信じて疑わなかった主人公の公務員が、徐々にエイリアンに変質していきながら自分が何も考えずにマイノリティを差別していたことを悟っていく姿は深い。そして、最後、そんなどうでもいい人間だった主人公が意を決して男気をみせる姿に、僕は思わず拍手を贈りたくなってしまった。面白い設定、徐々に盛り上がっていくアクション、魅力的な登場人物、ちょっぴりグロくて、そしてほんの少し深い。良質なエンターテイメント映画だった。 [DVD(字幕)] 8点(2012-04-25 12:08:45) |
3. ダウン・イン・ザ・バレー
この映画、良い意味で僕の期待を裏切りました。単なる田舎の軽薄な男女の無軌道な青春を描いた映画かと思いきや、後半は演技派俳優ノートンの怒涛の狂気が溢れ出す姿は圧巻の一言。かき鳴らされるギターの音色に酔いしれるかのような、冷たい彼の目がいつまでも忘れられません。 [DVD(字幕)] 7点(2012-05-20 20:58:35) |
4. ターミネーター4
《ネタバレ》 最低最悪だった前作のこともあったので、どうせ今回も…、と全く期待せずに観たのだけど、前半の畳み込むような迫力のアクションシーンを見て「これはひょっとしてひょっとするかも?」と思ったのも束の間、ものの見事に後半は失速(笑)。まあ、ターミネーターの最新作というより、凡百のアクション映画の一作として観ればそこそこ楽しめます。 [DVD(字幕)] 6点(2013-04-30 17:43:36) |
5. 誰も知らない(2004)
《ネタバレ》 確かに、子供たちの(日本の本当に下手な子役が多いなか)自然な演技は素晴らしいし、悲惨な話なのに、その優れた映像感覚で最後までちゃんと観ていられるところも評価したいのだけど、それでも個人的にはちょっとずるい映画だと思わざるを得ない。後で調べたところによると、実際の事件の少年はこんなに優しい人間では毛頭なかった。ここまで事実を曲げて描くのであれば、やはり冒頭に「この映画は実際にあった事件をモチーフにしている」というのは、ちょっと言い訳がましく聞こえてしまう。監督は完全フィクションとして勝負すべきだったと、映画の内容が良かっただけに残念に思ってしまった。 [DVD(字幕)] 5点(2012-08-27 20:02:27) |
6. TAKESHIS’
《ネタバレ》 明らかに、デビット・リンチの「マルホランド・ドライブ」を意識した作品だろうけど、いかんせん才能の差が際立ってしまっている。悪夢のようなシュールな世界を構築しそれを芸術の高みにまで昇華するということと、無茶苦茶すればそれで後から意味なんか付いてくるだろうという浅薄さを、明らかに履き違えている。それでもタクシーのシーンなどは光るものがあったので、この点数。 [DVD(字幕)] 5点(2012-06-14 16:28:47) |
7. ターミネーター3
《ネタバレ》 ジェームス・キャメロンの過去の傑作に泥を塗りこんだうえに土足で何度も踏みにじったような駄作。冴えないアクションも全く魅力を感じない俳優陣も(シュワも年取ったなー)たるいストーリー展開もさることながら、最後のオチで「結局、審判の日は止められませんでした」って……。過去の映画への冒涜とさえ言える、最低のラストでありました。 [DVD(字幕)] 3点(2013-03-29 14:48:19) |
8. ダーウィンの悪夢
《ネタバレ》 言いたいことは分かるけど、で、だから?という印象。ほらほら世界にはこんなにもグロテスクで不条理な現実があるんですよ、なんてことをわざわざ教えられてもじゃあどうすればいいんだという疑問に、この映画はなにも応えていない。村上龍がコメントを寄せていたから、もっと「シティ・オブ・ゴット」のような、どんな劣悪な環境のなかでも力強く生きる人間の姿を描いたドキュメンタリーだろうと期待していただけに残念。 [DVD(字幕)] 3点(2012-04-24 13:31:20) |