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1.  オーソン・ウェルズのオセロ
壮観のロケーションとアレクサンドル・トローネによる厳かな美術が目を奪う。 そこでは太陽光や雲の形状や風や波など、ロケ撮影の特長が強調されている。   城砦上を並び歩くオーソン・ウェルズとマイケル・マクラマーの 会話と移動を延々とフォローしてゆくカメラワーク。  あるいは、遠近を強調した極端な縦構図とパンフォーカス。 要所要所での仰角アングルや、人物の表情のクロースアップの効果。 黒い闇に侵食されるウェルズと、白布に象徴される清楚なシュザンヌ・クルーティエとのハイコントラストを強調した光学効果。  あらゆるショットが舞台劇では表現し得ぬ画面効果を目指しており、 映画としての徹底した差別化が目論まれている。  自らのルーツである戯曲へ敬意を払いつつ、それをいかに映画表現するかの苦心の痕跡が全編から窺える。 
[DVD(字幕なし「原語」)] 9点(2014-10-29 23:56:06)
2.  オーソン・ウェルズ/イッツ・オール・トゥルー
第一話『ボニート』、第二話『カーニバル』は断片のみだが、 羊の群れや人々を小さく捉えた教会の鐘楼からの俯瞰ショットや 子牛と戯れる少年の表情が瑞々しい。 サンバに興じる群衆の熱狂が力強い。  そして主体となる第三話『4人のいかだ乗り』。 材木運びから、魚籠つくり、カンナ掛けと 、筏作りのプロセスが丹念なショット の積み重ねによって描写される。  RKOの制作中止決定、予算不足によって白黒35mmフィルム撮りであり、 肝心な航海シーンもわずかだが、画像はシャープで鮮やかだ。  幾多の筏が水面を滑るように出帆するシーンも躍動感は満点、海は眩しく輝いている。  カメラに撮されるのは初めてだろう浜辺の女性たちの笑顔も初々しい。  結婚・事故・葬儀・船出のドラマが現地の人々によって演じられるのだが、 台詞は一切なく佇まいと表情と身振り、構図と陰影、若干の効果音と音楽によって 紡がれていく。 それらの映像による語りがことごとく素晴らしい。 とりわけ人々のクロースアップは、芝居を超えて味わい深い。 ウェルズが彼の地と人々とに如何に接し、密な関係作りをしたかの証左である。  ラストは撮影初期に撮られた『カーニバル』のカラー映像だ。  現地ロケ及びセット再現によって撮られたサンバの熱狂は、 色彩の鮮やかさと人々の陽気な笑顔が相乗し、ひたすら美しい。 
[DVD(字幕なし「原語」)] 9点(2014-09-07 23:51:17)
3.  オルエットの方へ
16mmからのブローアップによる画面の微妙な粗さが、ささやかな異世界というべき夏の海辺と陽光のカラーと相俟っていい味を出している。通奏低音となる波音も同様だ。ジャック・ロジエの長編2作目となる本作の設定もまた、3人娘のヴァカンスというシンプル極まりないもの。本作に限らず、この作家はいかなるシーンも物語に従属させることなく、何よりも場の空気を清新に掬い取り、人間関係の微妙な揺れを的確に捉えることに徹しているようだ。嵐の夜のおしゃべりやうなぎ騒動、海辺での戯れ、乗馬の疾走感等々、、本作の優れたシーンの数々は、物語的にはまったく意味が無いが、それゆえにこそ彼女らの生きる場を捉える画面は豊かさと鮮度を増す。とりわけ、ヨットシーンの滑走とローリングの感覚は格別だ。今流行りの3Dにも全く引けを取らない体感度で、スリルと緊張感、そして波と風と光を受け取ることができる。
[映画館(字幕)] 9点(2010-02-13 20:00:38)
4.  婦系図(1942)
石灯籠が並ぶ月夜の湯島天神境内の風情が麗しい。夜霧の漂う中、軟らかなライティングで梅の花の白が美しく滲んでいる。ここで主税(長谷川一夫)がお蔦(山田五十鈴)に別れ話を切り出すのだが、梅の木の幹に沿った上昇~下降~寄りの滑らかなクレーン撮影が醸しだす情感が二人の芝居とシンクロし、絶品である。これと同じ移動撮影が第二部後半同じセットで反復されるが、全く同様のカメラワークが今度は逆に舞い散る枯葉と寒々しい風音といった差異を際立たせ、彼女の孤独をより強調する効果をあげている。また美術的見どころとして第一部クライマックスである新橋駅の場面も素晴らしい。駅全景から改札そしてホームの人込みまでを延々と横移動で捉えた美術セットのスケール感、エキストラの規模は実景ロケと見紛うほどであり、別れの場面を細かいモンタージュを駆使して最高潮に盛り上げる演出も圧巻である。映画版の独創であるラストも優れた照明技術によって情緒に満ちた名場面だ。
[映画館(邦画)] 9点(2009-04-05 23:04:36)
5.  オデッセイ(2015) 《ネタバレ》 
この類の作品ならば普通なら主人公の追悼セレモニーのシーンなどで悲嘆にくれる家族の姿が登場するものなのだが、それが一切無いので、おや?と思う。 これはラストまで徹底していて、マット・デイモンの家族は台詞の中では語られても、それとわかる形では登場しない。 この省略は英断だろう。彼はあくまで一個のプロフェッショナルとして存在している。  火星への転進を決定した宇宙船のクルーが、家族と交信する中で帰還の延期を伝えると、彼の妻は画面の向こうで即座に理解を示し、 スクリーン上で互いに手を合わせる。 往年のトニー・スコットを思わせる、スクリーンを通してのさりげなくもエモーショナルな交感シーンに打たれる。  陽性の挿入曲に彩られながら、録画画面の中のマット・デイモンは軽妙に語り、 その一方で、終盤に控えめに登場する彼の痣だらけで痩せた裸身の後ろ姿のビジュアルは彼の艱難辛苦を雄弁に語る。 「危機感がない」からの冗談や軽口なのではない。絶望的状況だからこその精一杯のジョークなのだ。 こういった語りのバランスに唸る。
[映画館(字幕なし「原語」)] 8点(2016-02-12 21:46:57)
6.  オーソン・ウェルズのフォルスタッフ 《ネタバレ》 
高窓から光の差し込む城内の厳かな様。深い奥行きの画面がウェルズらしい。 対照的な酒場の猥雑な様。テンポよく韻を踏むダイアログ、短いショットと共に軽快に人物の動きを追うカメラが画面を弾ませる。 その酒場のセットも、材木の組み合わせと構造に妙味があって視覚的にさらに面白い。 中盤の合戦シーンは白煙の中に人物と騎馬が入り乱れる黒澤的なダイナミズムで目を瞠らせる。  ラスト、仰角のショットで成長した王の威厳を称え、寂しげに去りゆくウェルズの巨躯を小さく小さく捉えるカメラが印象的だ。
[DVD(字幕なし「原語」)] 8点(2015-12-16 23:39:29)
7.  俺は善人だ
悪女と聖女の両面を演じさせて女優を売り出すパターンが 当時からあるが、これはその男優版である。 エドワード・G・ロビンソンが小心で実直なサラリーマンと 凶悪なギャングを巧みに演じ分ける。  双方がそれぞれの役を演じるシーンもあるので、計4パターンの芝居となるが、 善人役の愛嬌のある芝居が実に萌える。鏡への反射を使ったギャグや、 酒に酔って社長室から出てくる場面の陽気な振る舞いなどは傑作だ。  この後、その対照的な二人が同一ショット内で共演することになるのだが、 このツーショットがどのような仕掛けで撮られたものなのか。 その違和感のない画面つくりには様々な知恵や工夫が凝らされたのだろう。  様々な箇所でシーンの省略が効いていて、テンポもいい。 欲をいうなら、後半もっとジーン・アーサーの活躍が欲しかった。    
[DVD(字幕なし「原語」)] 8点(2014-09-13 16:42:52)
8.  オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ
アナログレコードの音楽に合わせて踊る、トム・ヒドルストンとティルダ・スウィントンの俯瞰ショット。 ソファの上で弾むように脚を組み替えるミア・ワシコウスカの仕草。 静かな映画の中で、それらの滑らかな運動感がアクセント的に心地よい。  途中、そのミア・ワシコウスカの闖入によって館が三人所帯となることで ジャームッシュ流の移動の映画=ロードムービーとなる。 彼女の登場は、移動を促す契機としてあると云っても良い。  遠くに街の灯が散らばるデトロイトの寂れた夜道。 まばらな明かりの中に浮かび上がる廃墟の群れが、街の盛衰を偲ばせる。  勾配が特徴的なタンジールの石畳の路地。 黄昏のような、艶を帯びた妖しげな光の加減がエキゾチックで素晴らしい。  ランプを光源とした屋内シーンの見事さも見逃せない。 
[映画館(字幕なし「原語」)] 8点(2013-12-23 23:24:51)
9.  オズ/はじまりの戦い
2D版を鑑賞。  噴煙の中に浮かび上がる『イングロリアス・バスターズ』のような映画内映画。 『蜘蛛巣城』のように、白霧と共に押し寄せてくる軍隊の影。 枯葉の落下や草の揺れなど細やかな動きに満ちた、高精細に造形された森の美術。 これらの立体的イメージはぜひ3D版で味わいたかった。  映画こそ魔法。その主題が声高でないところが好ましい。  透過光と火炎を派手に使った魔法合戦もよいが、マリオネットのレトロな味わいを残す 陶器の少女の愛くるしい仕草も絶品である。  あるいは幻燈のキスや、シルエットによるメタモルフォーゼなど、 簡素で古典的で不可視の表現ほど観客の想像を掻き立て、 画面に引き込む事も弁えているようだ。  暴力と正義のテーマ性を含ませたドラマだても『スパイダーマン』の監督らしく、 ラストの魔女同士の対決なども、地味ながらサム・ライミらしさがあっていい。 
[映画館(字幕なし「原語」)] 8点(2013-04-15 23:56:44)
10.  大鹿村騒動記
トンネルを越えて紅葉の山道を登っていくオープニングの緩やかな縦移動の感覚。  三國連太郎が墓参する、あるいは小倉一郎が農作業する山の斜面の感覚。  激しく窓を打つ豪雨と暴風の描写が素晴らしい山の嵐の感覚。  そして、原田芳雄の営む食堂の外観・内装から滲み出る地味な生活感を笠松則通の落ち着いたカメラが的確に掬い取る。  現地ロケーションと役者の馴染み具合が何よりで、おひねりの白い和紙や掛け声の飛び交う、客席と舞台上とのコミュニケーションもすこぶる楽しい。  手前に食堂テーブル、奥に玄関。あるいは手前に洗濯機とトイレ、奥に居間といった手狭感の秀逸な縦構図のなか、それぞれ岸部一徳や松たか子、冨浦智嗣らと原田芳雄が絡むロングテイク主体の対話劇もいずれもユーモア豊かで味わい深い。  ラスト近く、原田と大楠道代が並ぶ、舞台後の裏口のロングショットもいい距離感を出している。  そのうえで繰り出される、原田振り返りのクロースアップが尋常でない凄みを放ち、感慨深い。  三國連太郎との充実した芝居のなか、目深に被り直すテンガロンハットの芝居も泣かせる。  
[映画館(邦画)] 8点(2011-08-15 20:18:10)
11.  男はつらいよ 寅次郎紅の花 《ネタバレ》 
巻頭の劇中テレビ映像。よそ行きの作業ジャンパーで仰々しく避難所を慰問する当時の首相の「パフォーマンス」を邪魔するかのように、一張羅の寅が画面手前にCG合成される。 政治風刺を絡めたギャグとCG用法が共にさりげなく巧い。  渥美清の身体的ハンデも、津山の一方通行の路地や、奄美大島の海辺で吉岡・後藤が担う一進一退のアクション性が充分に補完している。  エピローグは、震災後の神戸市長田ロケ。墓に手向けられた小さな菊の鮮やかな黄。 寅が画面右手にフレームアウトした後も留まるカメラは、背景の赤錆びた瓦礫の間から真っ直ぐに茎を伸ばしている菜の花の黄を捉え続ける。 そして長田マダンでの民族舞踊の華やかな色彩の輪と活気。そこからカメラは引き、プレハブ住宅が立ち並ぶ再生と復興の長田地区俯瞰ショットが見事に映画を締めくくる。  被災者が求めるものは、同情でも応援でも祈りでもなく、「そばにいて一緒に泣いてくれる、そして時々面白いことを言って笑わせてくれる人」だと、現地から熱望されたという「車寅次郎」。 彼と被災地の再生への希求が込められた万感のラストショットだ。 
[映画館(邦画)] 8点(2011-03-26 18:16:26)
12.  オーケストラ!
国情の対比を反映させたものと了解はしつつ、前半(ロシア篇)の特に屋内シーンの薄暗くくすんだ画面群はもう少しどうにかならなかったのだろうか。せっかくのヒロインの初登場シーンも明度が低く、顔に影が落ちすぎて印象が弱い。それでも前半はギャグシーンの場面転換のテンポが小気味よいのが救い。役者も皆良い味を出している(特に親友役:D・ナザロフ、妻役:A・K・パヴロヴァら)そして、クライマックスとなるコンサート場面で俄然引き立つ、メラニー・ロランの麗しさ。ヴァイオリンを演奏する身体の的確な動き、意思的な表情は完璧。そして奏者たち、とりわけアレクセイ・グシュコブと交わす視線の交響性。予定調和のドラマに則り、画面と音楽の一体感による帳尻あわせで結果OKといったところ。作品には拙いフランス語を活かしたギャグも盛り込まれているが、この辺りが理解できればもっと楽しめるはず。
[映画館(字幕)] 8点(2010-05-11 21:06:36)
13.  お父さんと伊藤さん 《ネタバレ》 
食事シーンの沢山ある映画はいい。上野樹里、リリー・フランキー、藤竜也の三人がテーブルを囲むフィックスのショットに流れる時間の 何とない気まずさとぎこちない対話、やがてドラマの進行と共にそこには温かみが感じられてくる。 出される料理はシンプルながらも上野の手料理で、柿を剥いたりフライを揚げたりの調理もさりげなく描出されているのが監督のセンスだ。 古屋敷で夜を明かすシーンも、酒を燗することから微妙に変わっていく場の空気がショットの中に捉えられている。 上野が一人で酒やビールを呷る、その飲みっぷりの良さや、リリー・フランキーがウスター派の藤の前で遠慮がちに 中濃ソースをトンカツにかける仕草なども微笑ましい。 食事や、家で寝そべってのくつろぎ、庭いじり、本屋でのアルバイトの描写。それら生活行為の丹念な積み重ねによって キャラクターが少しずつ肉付けされていく作劇がじんわりと楽しい。(伊藤さんの素性は謎のままだが)  ラスト、藤を追って走る上野はカメラ移動によって前向きのショットで捉えられる。素敵な笑顔と共に。
[映画館(邦画)] 7点(2016-10-10 00:33:27)
14.  女が眠る時 《ネタバレ》 
ビートたけしを始めとして新井浩文や渡辺真起子に至るまで、クセのある俳優がいかにもクセのある達者な芝居を展開する。 リリー・フランキーなどにしても、如何にもリリー・フランキーらしい粘着質の造形によって凄みを見せつけている。 いずれのキャラクターもその身振りと表情の中に狂気の片鱗を覗かせ、それがサスペンスを形づくるが、 俳優陣のいつも通りハイレベルな狂気演技の安定ぶりが少し物足りなくもある、というのは贅沢な不満か。  窃視のサスペンス。そして覗いていたつもりが、いつの間にか覗かれる側になっていたというサスペンスに否応なく引き込まれる。  快晴から曇天へ、そして土砂降りの嵐へ。天候の変化もまたドラマの不穏な空気を良く演出している。
[映画館(邦画)] 7点(2016-02-27 23:00:16)
15.  黄金のアデーレ 名画の帰還 《ネタバレ》 
現代パートでの資金難とか家庭不和といった障害はある程度台詞での処理に頼らざるを得ないだろう。  その辺りの淡白さを補うかのように、過去パートの脱出劇がサスペンスと緊張に溢れている。  裏路地で逃亡を通報する者。咄嗟に逃げ道を指示し、手助けする女性。通りの群衆の中で、追う者・追われる者・味方する者・妨害する者、 それぞれの視線が交錯し、スリリングなアクションを形作っている。 出国手続きの受け答えの中で、声を上ずらせながら懸命に機転を利かす若きヒロイン(タチアナ・マズラニー)の気丈さが心を打つ。  弁護士の弁論から大団円まで、クライマックスの調停シーンは裁判映画の型通りの流れだが、それで万々歳とはならない。 その次の場面に訪れる、過去と現在ふたりのヒロインの涙とそれぞれの抱擁が美しい。  その繋がり合いはヘレン・ミレンのチャームあってのもの。メリル・ストリープではこうはいかない。
[映画館(字幕)] 7点(2015-12-04 20:20:53)
16.  オリエント急行殺人事件(2017) 《ネタバレ》 
シドニー・ルメット版のアルバート・フィニーよりも、より紳士的なケネス・ブラナーのポワロである。 列車内で通路を譲るなどの、女性への対し方がスマートだ。 彼がキャサリンと呼ぶ美しい女性の写真を見るシーンが幾度かあるが、彼の愛した女性か、あるいは娘か、彼女に関する説明は明確には為されない。 が、このさりげないシーンの積み重ねが彼に関するささやかな人物描写となってラストでの彼の決断に納得性を与える。  大筋も謎解きも一緒であるから、このリメイクの見どころは新旧キャストの比較でもあり、時代に即したマイナーチェンジの数々でもある。  車外シーンは実景主体だがほぼ列車内を舞台にしたルメット版に対して、CG感満載だが、スペクタクルとアクションを加味した本作。 クライマックスの舞台も、トンネル内の長テーブルと声の反響、白と黒を活用して12対1を巧く演出している。  スター映画らしく顔のアップ主体だが、ジュディ・デンチをはじめとして表情が大変美しく撮られているのがいい。
[映画館(字幕なし「原語」)] 6点(2017-12-11 23:25:07)
17.  追いつめられて(1987) 《ネタバレ》 
ホワイトハウスからペンタゴン上空を経て、一軒家へと至る見事な空撮。そしてケヴィン・コスナーの回想形式の語り。 元となるジョン・ファーローのノワール『大時計』(1948)の冒頭の大胆なカメラ移動を意識して大掛かりに変奏したオープニングである。 夜の路地に立つコスナーのシルエットや、緩から急へのドラマ展開などもノワールスタイルを踏襲したものだ。  一方では1980年代でのリメイクということで様々な設定の改変があるが、あからさまな性愛シーンや同性愛の設定など当時ならばコードに引っ掛った シーンを採り入れる一方、喫煙のショットなどは逆に除かれているあたりが世相の差として興味深い。  ポラロイドフィルムをデジタル化して画像解析していくサスペンスも、今見れば何やら映画史の流れを思わせる趣向で面白く、 階段や廊下を使った追っかけや市街カーチェイスを採り入れたアクション志向も、オリジナルとの差別化要素だ。 アクション自体にも撮り方にもさして工夫はないが。  ドラマは国防絡みにスケールアップした分、痴情関係で右往左往するコスナーやジーン・ハックマンらのキャラクターが冴えないのは問題だし、 ショーン・ヤングの役柄は単なる色情狂的な人物にとどまり、魅力を欠く。
[映画館(字幕なし「原語」)] 6点(2017-02-05 23:01:02)
18.  溺れるナイフ 《ネタバレ》 
菅田将暉と小松菜奈が初めて出会う入江の波立つ情景などは観る側の心もゾクゾクさせてくれるのだが、そのロングショットと 小松の視線、水面の菅田のカットバックが少々ぎこちなく感じられる。 土手のシーンなども、二人の位置関係が不明瞭で、高低差が活きていない。  劇伴や挿入曲も過剰に感じてしまう部分が多く、地方の映画なら尚のこと河川や水路のせせらぎや波音などをもっと活用して欲しいところだが、 ロケーションをロングショットのフレームの中で良く活かし、俳優らを良く動かし、彼らを幾度も水に浸らせて頑張っている。  森の中を風のように駆け、海に浸かり、炎と共に舞う菅田も小松もさすがに達者だが、 これだけ映画への露出が多いと食傷気味にもなるが、本作では重岡大毅がなかなか新鮮なバイプレーヤーであり、ナチュラルな口跡が素晴らしい。 彼絡みのシーンに長回しが多用されているのも頷ける。  バッティングセンターのショット、カラオケバーのショットなど、緩急自在の呼吸でロングテイクを活かしていて感心だ。 快活さとナイーヴさを体現し、一部で科白を噛んだりしているのも逆に自然体の魅力を生んでいる。
[映画館(邦画)] 6点(2016-11-05 23:37:45)
19.  オオカミ少女と黒王子 《ネタバレ》 
相変わらず、親も勉学も完全消去された惚れた晴れたオンリーの陳腐な世界観。それが少女漫画なのだろうから文句は言わない。 どう見せるかが問題な訳だから。 とりあえず、開巻から二階堂ふみがよく歩き、よく走り、よく食べるので救われる。 新宿の雑踏を捉えた『さよなら歌舞伎町』の撮影も頑張っていたが、こちらも渋谷らしき街中で山崎賢人を追って歩く彼女をゲリラ的に撮影した長廻しなど、ロケーションを活かした移動が楽しい。その後も学校内で駆け回り、ピーカンの雨の中で走り、マンションからの帰り道を鼻歌交じりに歩くなど、長めの移動撮影によって映画は弾む。 山崎の言葉に傷つき、喫茶店を飛び出して歩道を歩く彼女は泣きながら、やはり後ろも気になってしまう。そんな彼女のいじらしい心情表現が達者だ。  ラストには今度は男の方が彼女を追って走る。のだが、その後が良くない。 彼との大切な思い出の品を探しまわる彼女の姿を目撃するものと思いきや、彼女がごみ袋の中を漁って探していたことを通行人の女性の台詞で処理してしまうのだ。中盤で山崎が風邪をひくエピソードは、彼の家で二階堂がおかゆを作るのをソファから窃視すること、そして二階堂が山崎の寝顔を窃視し、撮影することが重要なポイントであり、相手に見られていることを知らない素の表情を垣間見ることによって、それぞれが相手の本質を理解していったという事である。 であれば、やはりラストは彼女が無様ながらも懸命にマスコットを探し、それを見つけ喜ぶ姿を彼の眼で見つめさせるべきであり、あくまでその視線の劇を通して彼の恋情を提示すべきだろう。  ここでは俯瞰ショットとなる南京町商店街の広場はきちんと水が撒かれ、赤や黄のネオンを反射して画面を彩るという具合に美術も頑張っているのだから、 もう少し肝心な部分で台詞に頼らないなどの工夫が欲しい。
[映画館(邦画)] 6点(2016-05-28 23:25:07)
20.  犯された白衣 《ネタバレ》 
モノクロからカラーに変わるショットの淫靡で毒々しい赤。 そして海の蒼と、夕景のオレンジに続き、白い布に旭日旗の如く放射状に塗られた血の鮮紅色。そして女性達の死骸の白。 その中心で少女の膝上に赤子のように青年はうずくまっている。少女は男に「何故、自分の血を流さないのか」と問う。 その問いはなかなかに意味深だ。  柱や襖などの障害物が監禁された女たちの姿を隠しては現させ、溝口的な抑圧空間を創り出している。
[DVD(邦画)] 6点(2015-12-10 23:45:20)
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