1. オルエットの方へ
木靴をみつけてゴトゴト鳴らしてゲラゲラ笑う。何が面白いのかわからんがこっちまで笑いそうになる。「おーるるるえっっっと」と言ってはゲラゲラ笑う。何が面白いのかわからんが笑いが伝染する。これは演技なのだろうか。脚本はどうなってるのだろう。とにかくそこに演出があることを感じさせない彼女たちの素の表情とカメラを意識しないあまりに無防備な彼女たちの身体が次から次へと映し出される。彼女たちは物語に準じた会話をするでもなく、決められたゴール地点へ向かって行動するでもない。彼女らに引きつけられるようにして登場する男たち同様、ただひたすら昨日と今日と明日の関係になんの脈略もない彼女たちのバカンスに付き合うのみ。それがそのまま極上の映画体験になっちゃうんだから素晴らしい。登場する男の一人がやたらとワインをがぶ飲みしてるんだけど、南仏の海岸と白ワインって合うなあと。凄く美味しそうだったもんで、この映画見たあとすぐに安物のワインをアホみたいに大人買いして毎日ガブガブ飲んでたんだけど、安物はいらんとヨメさん付き合ってくれず。一人でがぶ飲みワインってのは絵にならんのな。ま、夫婦でがぶ飲みだって絵にはならんか。 [映画館(字幕)] 8点(2010-08-06 14:32:27)(良:1票) |
2. オリエント急行殺人事件(1974)
原作があって、しかも容疑者がうじゃうじゃいるミステリーとなれば娯楽映画の限られた尺に収めること自体に無理が出てくる。乗客への質問シーンではすでにポワロの中である漠然とした答えを出しているのだが、その根拠がほとんど映されていない。推理を促す発言やエピソードもかなり都合よく出てくる。そこまでしても破綻してないのがかえって凄い。短い回想シーンの入れ方も抜群。これは推理を楽しむ映画じゃなくて、人気小説の映像化を楽しむ作品と割り切ったほうがいいし割り切れる。そして豪華俳優陣の共演を楽しむ作品でもある。ホントこの面子は凄い。単に人気のある役者が出てるんじゃなくて“凄い人”がぞろりといる。 [ビデオ(字幕)] 6点(2009-03-31 13:56:39) |
3. O侯爵夫人
《ネタバレ》 ロメールのコスプレ劇はコスプレ劇なのに歴史大作でも文芸作品でもなく、いかにもロメールな、優しい語り口の小品といった感じの映画でした。この「小品」が侮れない。お?!と思わせるオープニングから物語に引き込み、なんてことのないお話の中にどこにでもある些細な喜びや悲しみを観る者にしっかり提示し、けして退屈させず、そうこうしながら物語を堪能させる。怒り心頭の父親が大泣きするところは笑った。いつもきりりとしたお父さんが「むああああ」って、お父さん泣きすぎ(笑)。でもちょっとジーンとしたりもして。号泣するお父さんの横で小芝居を続けてるお母さんがまた笑っちゃう。でもこれもやっぱりジーンときた。ああ、ジーンとしながら笑っちゃう、幸福感が充満したようなこの感じがたまらん。エンディングも好き。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2008-08-01 17:10:23) |
4. オーメン(1976)
子供の頃はテレビで放映するたびに見ていた。学校では頭にマジックで666と書いて「うわぁ~、ダミアンや~!」とはしゃいでたことを覚えている。当時は二日遅く生んでくれた母にひっそりと感謝したもんだ。要するに私の中では一世を風靡した映画である。怖いのは苦手なのだが、おそらくこの映画は面白いのだ。今風に言うとこわおもろい?いや、ちょっと違うか。 首がひっくりかえるとか、死人が蘇って襲ってくるとか、怖くて見られないようなシーンがないから全部見ちゃうのだ。映し出されるのは自殺だとか事故であってその一つ一つは悲惨な日常のひとコマでしかないもの。それらを関連付けるストーリー展開と、目のアップだとか山犬がじっとこちらを伺う姿だとかという悪を彷彿させる画のモンタージュによって、シーンの怖さではなく見終えた後に初めて「あ~怖かった」となる怖さを持っているのです。だから怖い映画なのに何度でも見ることができるのだ。あ~怖かった。 [DVD(字幕)] 7点(2006-11-17 13:54:00)(笑:1票) (良:1票) |
5. 狼たちの午後
社会派ルメットが実際にあった事件を映画にしたものだが、社会批判を随所に見せながらも犯人VS警察(FBI)の心理戦を軸にすることでなかなかの娯楽作品となっている。ソニーのどうしようもない家族の描写に、環境が犯罪をつくる、ということを伝えたいのかと思ったがそうではないように思う。ソニーは遺書で家族への愛を語っていますから。メディア批判もありますが、それも大きなテーマではなく付随したものにすぎない。きっとルメットは弱者をつくる社会そのものに対する憤りを実際の事件に感じたのだと思う。ソニーはゲイでありサルは無教養。外国に逃げるのにどこがいいかと問われてワイオミングと答えるサル、このシーンがなんとも痛々しい。 [DVD(字幕)] 6点(2005-04-04 19:10:22)(良:2票) |
6. オープニング・ナイト
脚本にあるセリフをどういう口調でしゃべるのが適当か、またその役の人間はどんな感情を持つべきか、そしてその感情をどこまで表に出すべきか、、そんな役者の質問にカサヴェテスはこう答える。「あなたに任せる」と。役者を信頼しているのです。裏を返せば信頼できる役者でないと使えない。この作品で主人公の舞台女優が女優としての葛藤と戦う様が描かれる一方で、葛藤に負けたかもしれない女優に全てを託す演出家が描かれます。心中覚悟で初演に望みアドリブ演技に一度は見切りをつけて劇場を出ますが「女優への信頼」に腹をくくり戻ります。そして映し出される女優と相手役の男優の自由で自然で生々しくて活き活きとした演技合戦。信頼を得た俳優たちは単なる俳優の枠に納まらずアーチストへと昇華する。監督(演出家)はアーチスト(芸術家)と呼ばれることがある。しかしカサヴェテスにとっては俳優もまたアーチストであるべき存在なのです。そしてカサヴェテスの映画の俳優たちはまぎれもないアーチストたちである。 8点(2005-03-17 12:27:36) |