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1.  ブラックハット
『ラスト・オブ・モヒカン』のオーディオコメンタリーでマイケル・マン監督が 披露する時代考証の知識には圧倒される。 『コラテラル』のコメンタリーで雄弁に語るキャラクター設定の緻密さにもまた 感心させられる。 この作品についても、ハッキングに関する綿密で膨大なリサーチが為されたはずだろうし、 主役脇役問わず各人物の背景や生い立ちまで詳細に設定されていることだろう。 それらはこれ見よがしにひけらかされることなく、 各人なりの明確な原理と裏付け・信念が、即物的な行動のみの描写となって 画面に載せられていく。  いきなり幼少時代に遡って主役の人物背景を説明し始まった『アメリカン・スナイパー』とは 大きな違いだ。  クリス・ヘムズワースが、『ラッシュ』に続き、男の色気があっていい。 うなじや二の腕を映し出しながらタン・ウェイにいまいち官能性が薄いのが マイケル・マンたる所以か。それとも機動性・高解像度と引換えに光量不足を露呈してしまう デジタルカメラの弱みゆえか。  夜明けの航空機内、復讐に向かう二人は抱き合い、カメラと共に共振する。 ここからラストに至るまで、さらなる台詞の削ぎ落としは見事の一語。
[映画館(字幕なし「原語」)] 9点(2015-05-29 23:54:55)
2.  フライトプラン
ヒッチコック自身が「映画術」の中でも「穴だらけのシナリオ」と語っているにも拘らず『バルカン超特急』が映画として傑出している要因は、列車という舞台の活かし方であり、キャメラワークであり、サスペンスの醸成であり、という映画的手法の豊かさにある。この「映画術」は示唆に富んで非常に面白い。ストーリーを語る事を重視しつつも、ストーリーには<らしさ>や<首尾一貫性>など無くてもよいということ。辻褄合わせよりも人物の動作や画面連鎖のリズム感を大切にすること。ミステリー(謎解き)ではなくサスペンスこそ肝要であること。説明台詞への依存によって、視覚的表現を疎かにすべきでないこと。『フライトプラン』はプロットのみでなく、こういったヒッチコックの映画術自体を範としているのであり、必然的にこのフィクション映画の主眼は瑣末な犯人探しやトリックではなく、母親のドラマとしてエモーションをどう喚起するかにあることがわかる。例えば、暖色系に色調を変え半逆光の美しさを活かした最後の場面では安易に台詞を持ち込むことなく、無言の情感を演出する。仮にここで社会規範に縛られた余計な「謝罪」の台詞などが入ればそれは単なる一義的な和解でしかなくなり、両者の間にある賞賛や自尊や畏怖、その他諸々の複雑微妙な交感のニュアンスが打ち消され、何の余韻もない貧弱な場面になるはずだが、この映画はそのような愚を犯さない。絶品のラストである。そしてWASPの抱く妄想という、いわゆる9.11報道の虚構性・欺瞞性に対する鋭い批評性はもっと評価されても良い。それはジョディ・フォスター起用の意義の一つでもあるはずだ。
[映画館(字幕)] 9点(2006-06-05 00:13:48)
3.  ファインディング・ドリー 《ネタバレ》 
ルイ・アームストロングが流れ出したスローモーションシーンの何とはない既視感。すぐには浮かばなかったが、 矢口史靖『スイングガールズ』の猪シーンだと思い出した。 移動に不自由を課された主人公たちが様々に飛ぶこと(上昇と落下)をモチーフに冒険を繰り広げるが、 そのクライマックスとなる大ジャンプを例の曲が情感とヒューモア豊かに彩っている。  トラックを一旦は止めたものの再びドアを閉ざされ移送される。今度こそ万事休すかと思われた瞬間、目に入るのは天井の非常ハッチである。 クライマックスの水平運動に慣らされた目に垂直軸のベクトルを不意に導入させることで驚きを創出する。 『トイ・ストーリー』から一貫した、軸転換によるアクションと作劇のスタイルだ。  ドリーにとって大切なのは、目の前に広がる光景すべてに、全方位的にまずは目を凝らして「見る」こと。 それが下方の貝殻の発見につながり、ピクサー的かつアメリカ映画的な「家に帰ること」に繋がっている。
[映画館(吹替)] 8点(2016-08-07 08:26:19)
4.  フラワーズ・オブ・シャンハイ 《ネタバレ》 
約十数人が集って談笑している宴席。テーブル上のランプと共にその反射を受けて食器類も艶やかに光を放っている。 そのカメラ位置でフレーム内に収まるのは四~五人であり、後景を動く女性たちの動きや話し手の移り変わりに応じてカメラは左に右にと揺蕩う。 その会食シーンでは脚本もなく実際に俳優に酒を飲ませながら撮ったというから、即興の芝居に合わせての臨機応変のカメラワークでもあろう。 その動きは緩やかで、発話者が必ずしも画面内にあるとは限らない。そこで画面には(フレーム外への)遠心的な力が呼び込まれる。  いわゆる、静的・耽美的・審美的な映像を狙うなら、もう一段カメラを引いてフィックスで撮ればよろしいが、 それは単に絵画的な求心性へと向かうだろう。  だから剣戟と屋外ロケーションと風の主題を持つ『黒衣の刺客』が動的で、こちらが静的な映像主義だとは決して云えまい。  舞台を屋内に限定して外光と風を封印し、椅子とテーブルで俳優の動きを制限し、映画のショットを四十弱に制限する。 その自ら課した制約は『百年恋歌』第二話ではサイレントにまで達し、『黒衣の刺客』では画面を薄絹で幾重にも遮りもする。  その不自由の中から、世界の深まり・拡がりが見えてくる。
[DVD(字幕)] 8点(2015-10-13 23:54:19)
5.  フランシス・ハ
パンフレットのモノクロスチル写真でみるグレタ・ガーウィグはさして魅力的には 見えないのだが、ひとたびスクリーンの中で活動し出すとその仕草が、 表情が、不器用なカッコ悪さまで引っくるめて生き生きした魅力を発散し始める。  ルームメイトと戯れあい、ゴロ寝し、街路を飛び跳ね、駆ける。  ありがちな大仰な表情芝居がまるでなく、全身でフランシスを生きる 彼女は実にしなやかで愛らしい。  文句なしに、映画のヒロインだ。
[映画館(字幕なし「原語」)] 8点(2015-04-15 23:51:32)
6.  プリースト判事
ここでのウィル・ロジャースは特に判事の業務を行うわけでもない。 トム・ブラウンとアニタ・ブラウンの仲を取り持とうと、 ゴルフボールを飛ばし、茂みの陰で一人芝居をし、飴を伸ばしと、 ひたすら具体的に行動する。二人を物理的に近づけるために。  その周囲を、ステッピン・フォチェットら味のある黒人俳優が 音楽的なイントネーションで語らい、歌う。  さらには、ヤギやアヒルや鳥たちも視覚と聴覚を賑わかし、 大合唱が大団円を盛り上げる。  そんな飄々としたウィル・ロジャースが暗闇の部屋にランプを灯すと、壁に 飾ってあった妻と息子らしき肖像写真が明りの中に浮かび上がり、 それを静かに見つめる彼の顔が写真の家族と重なり合う。  こうした何気ない静かなひとときのうちに、 彼が若い2人のために世話を焼く心中までが 滲み出てくるようで、愛おしい。    
[DVD(字幕なし「原語」)] 8点(2014-09-05 17:06:21)
7.  ファインド・アウト
派手に車体をぶつけるばかりが能ではない、というカーチェイスがいい。 車種を幾度も変えつつ、 追走するパトカーの目眩めくライトの光芒がテンポの良いカッティングの中で 美しく映えて、車体の接触など一度も無いことが逆に一層の緊迫感を煽る。  運転座席での携帯通話という図の繰り返しは単調になりがちだが、 通話しているアマンダ・サイフリッドの背後の窓ガラスに意識的に 映り込んでいる雨滴、緩やかに流れていく街燈の光やマジックアワーの明かり、 そして森の闇が画面の動的なアクセントとして機能している。  「Just Watch Me」と懐柔を拒否し、「I lied」と何の躊躇もなく マッチの火を洞穴に投げ込み復讐を果たすヒロインの清々しいまでの豪胆。 全編に一貫した、一切躊躇のない無頼派の行動が何より魅力だ。  
[DVD(字幕なし「原語」)] 8点(2013-10-16 01:04:20)
8.  ファウスト(2011) 《ネタバレ》 
つきまとい、つきまとわれ、顔を接さんばかりに寄せ合い、問答する登場人物たち。 スタンダードサイズの画面の中、歪曲のエフェクトと共に その過剰なまでに詰まった人物間の距離が息詰まるような緊迫感を醸す。  猥雑かつ殺伐としたイメージ群の中、 マルガレーテ(イゾルダ・ディシャウク)の清楚さが文字通り輝く。  教会内のシーンの厳かな光。 ファウスト(ヨハネス・ツァイラー)に真相を問わんとする彼女の 複雑で繊細な表情を包む光芒。そして雷光が劇的だ。  湖畔に一人佇む彼女がファウストを振り返る、その一瞬の表情の印象深さ。  そのまま二人がグリーンの湖中へと沈んでゆく、その静かな波紋の広がりの清冽。  ラストの峻厳なロケーションもまた素晴らしい。 
[ブルーレイ(字幕)] 8点(2013-05-31 23:58:15)
9.  舟を編む
宮崎あおいの「上で食べよう。」のシーンから、十二年後のシーンへ転換する鮮やかさ。 のちに登場する「香具矢さんは馬締さんの配偶者なの」といった台詞の妙が 石井監督らしくて面白い。  または、加藤剛の死去の場面。 病院の廊下に立ち尽くす松田龍平の横顔から、喪服姿の松田・宮崎が傘を差しながら 坂道を登ってくるロングショットへと画面は転換する。 そして二人が蕎麦を一口すする静かな食卓のショットが窓の雪を映し出す。 そのカメラワークが情感に溢れ、素晴らしい。  この手の物語でありがちなパターンである、 結婚式やら恩師の死やらの劇的イベントに時間を割いて感傷的に盛り上げるといった 媚びになるシーンをことごとく割愛してみせる節度ある姿勢に 非常に好感を持つ。  酒を飲めなかった黒木華が、ビールを一気に飲み干す。 吃音っていた松田龍平が、自然に仲間たちと会話を交わし、チームを統率する。 ツマを盛りつけていた宮崎あおいが、凛とした立ち姿で主菜をふるまっている。 外見の変化だけに頼ることなく、具体的な行動の変化によって 時の流れと人の成長を描く。そうした演出方法も真っ当だ。  ほぼ全てのキャラクターが善良すぎる点は玉に瑕だが、 オダギリジョー、小林薫、伊佐山ひろ子などなど、いずれの配役も味がある。 書物の積み重なる編集部や下宿の内装美術も相当に凝っており、素晴らしい。 
[映画館(邦画)] 8点(2013-04-18 23:58:22)
10.  ファミリー・ツリー 《ネタバレ》 
意識の戻らない母を逝かせる事が次女(アマラ・ミラー)に伝えられる。カメラは彼女の目に光る涙を見逃さない。幼さを残しながらも、気丈にその言葉を受け入れる彼女の表情。その一連のショットを繋ぐ寡黙で繊細で優しいディゾルブ処理が素晴らしい。  通俗に陥りそうな、親族会議でのスピーチを巧みに省略するのも、親子3人と少年の小さなシルエットがカウアイ島の渚を歩くロングショットの重なりが豊かな情感を醸成するのも、この適切なディゾルブ編集による。  単なるハワイの絵葉書的美観の羅列に陥らせずに、風や波の音と共に自然光を活かしながら、パンフォーカスやロングショットによって人物・自然・ポートレートを同化させる構図もシークエンスと主題を際立たせている。  その極めつけが、父ジョージ・クルーニー、長女シャイリーン・ウッドリー、次女アマラ・ミラーの親子がソファで寛ぐラストショットの一体感だろう。  母の形見の膝かけに包まる三人の真直ぐな視線。その背後にあるランプシェードの灯。額縁の絵。開放的な奥の空間。流れ続ける『皇帝ペンギン』のナレーション。  静かな時間の感覚が父娘の絆を炙り出すようで、秀逸だ。 
[映画館(字幕)] 8点(2012-05-24 22:27:10)
11.  ブンミおじさんの森
大雑把に三部に分けられる構成には侯孝賢の『百年恋歌』のような趣がある。  熱帯林の緑の濃淡と、湿潤の感覚。裸電球の下で食卓を囲むショットとフレームへの人の出入り。エピローグのPOPミュージックなど等、、。  小さな滝と水流の幽玄性、中国茶の入ったガラスコップに木漏れ日を美しく反射させる採光などは実に繊細だ。寝室の蚊帳は幾度も画面に淡く美しい紗をかける。 水と小魚の鍾乳洞のイメージなどは母胎のメタファーそのままだが、まずもって具体の画面として吸引力がある。  冒頭から豊かに響く生命の気配の濃密さ。静かな地鳴りのような音響へと変わり、それが途切れた瞬間に引き立つ静寂、その音響が緊張を孕みながらも心地よい。 あるいは足を患うジェンの不自由な足取り、水牛、犬、精霊の佇まいもまた静かな緊張感を終始漲らせる。  赤い目を光らせる「猿の精霊」の造型はどこか宮崎駿の描く神人の影響などもおぼろげに感じさせる。 暗い洞穴の中で輝く、星のような鉱石の光。その美しいイメージはまさに『天空の城ラピュタ』の一場面の優れた実写化だ。
[映画館(字幕)] 8点(2011-04-18 23:01:37)
12.  不戦勝 《ネタバレ》 
ワンカットに複数のアクションを組み込む複雑な長回しは、現実時間への同調と演技・運動の持続による生々しさを獲得する一方で、撮り方次第で作り手の作為や計算を逆に露呈させかねない諸刃の剣でもある。 この作品でいえば、移動を交えた長回しのカット尻に、生卵投げや即興の似顔切り絵の大道芸といった難易度の高いパフォーマンスを配置している辺りに図らずして「段取り」の周到さを感じさせてしまう。 とはいえ、ここでは如何にも低予算的な作風と趣きゆえに、その意欲性と情熱と力強さが勝っていて好ましい。 ボクシングシーンの荒々しいファイトの長回しも勿論素晴らしいが、圧巻は何と言っても主人公(スコリモフスキ本人)の乗る列車をバイクが並走して追う驚嘆のショット。 彼が意を決して列車を飛び降りるまでの葛藤と煩悶が、俯瞰気味の絶妙なキャメラ位置と持続的なショットの時間によって生きてくる。
[映画館(字幕)] 8点(2011-01-18 21:08:08)
13.  冬の小鳥
『警察日記』の二木てるみ、『ポネット』のヴィクトワール・ティヴィソルにも比肩する子役キム・セロンの圧倒的存在感。 賢しらな芝居を越えた眼差し、表情、佇まいそのものから目が離せない。食器を手で払いのける瞬発的アクションの見事さ。医師との対話シーンでは繊細な長台詞をこなし、情感に富み透き通った歌声を聞かせ、絶妙な表情で喜び・悲しみ・孤独・絶望の諸々を振り幅広く演じきる。 ラストで空港のゲート出口へ向う彼女の、言葉では形容不可能な表情と歩みはとりわけ絶品といえる。  監督をはじめとするスタッフはどのようなアプローチでこれらを引き出すのか、非常に興味深い。優れた助演者たちの功労も大きいだろう。  劇中は子供たちの歌唱以外、音楽を廃した抑制的な語り。エンディングにのみ流れる静かな旋律がまた余韻を残す。  ただ、埋葬シーンの観念性などにはどこかキム・ギドク的な危うさも感じさせる。 
[映画館(字幕)] 8点(2010-10-19 20:56:59)
14.  ブロンド少女は過激に美しく
上映時間64分の濃密さ。  列車の座席で隣り合ったマカリオ(リカルド・トレパ)と婦人(レオノール・シルヴェイラ)が語り合うシーンの一定した構図によって、語りが進むにつれ婦人が送る視線の動きが微妙に変化していく様がうかがえるなど、芸が細かい。同じく定点から捉えられたリスボンの丘の美しい遠景ショットの反復が、鐘の音が、不可逆的な時間の推移を印象づける。  そして、通りを挟んで向き合う窓と窓の縦構図の中にルイザ(カタリナ・ヴァレンシュタイン)を妖しく浮かびあがらせていくフレーム造形の妙。 顔の右半分を隠すブロンド、正面を遮る扇、紗のカーテン。そしてカメラは彼女を主に右横からのショットあるいはロングショットで捉えるため、彼女の相貌はなかなか全体像を表さない。 玄関階段での振り返り、右足を浮かせた抱擁のショット、足を開いてソファに座り込む彼女のラストのショットまで、少ない出番でありながら醸しだされる謎めいた雰囲気は絶品である。  公証人の豪邸内の重厚な美術と照明設計。対する、洋服ダンスとベッドのみが置かれた安アパートの深い陰影など、スタッフワークも当然のごとく充実している。 
[映画館(字幕)] 8点(2010-10-11 21:11:12)
15.  ブレードランナー/ディレクターズカット<最終版> 《ネタバレ》 
全編を貫くのは「見る」という主題。人造人間識別機の画面に映る瞳、潰される目、眼球製造者、フクロウの目。画面の到る場所に様々な「瞳」が提示される。人間は識別機を通してしかレプリカントを判別できない(直接視覚の無力)。ハリソン・フォードがエレベーター内のショーン・ヤングに視覚では気付かない場面なども象徴的だ。これを画面上で補強するのが、闇の領域と蒸気・雨を大きく取り入れて視界を遮るノワール風照明設計である(ブラインド等の使い方も秀逸)。この映画はその盲目的人間が、目を閉じ頭を垂れたルトガー・ハウアーとの視線の切り返しを経て「開眼」(夜の闇から晴天への転換)するドラマともとれるだろう。ラストで対峙するルトガー・ハウアーの見開いた瞳は映画冒頭の「青い瞳」へと回帰し、その台詞「オリオン座の片隅で燃える宇宙船」「タンホイザー・ゲートの側で輝く星」が、映画のファーストショット(夜景と炎の俯瞰)と重なり直結していく巧妙な構成が非常に見事である。
[DVD(字幕)] 8点(2009-10-11 19:56:35)
16.  不屈の男 アンブロークン 《ネタバレ》 
イタリア移民としての被差別、走ることとの出会い、そしてオリンピック走者としての活躍が回想処理によってまずは語られる。 ナショナリスティックな曇りを取り払い、映画的な主題に立ち返れば、走ることに対する抑圧と解放のドラマということになるか。  丹念に描写された前半の海上漂流は、踏むべき地面の無いゴムボート上では立つことも歩くことも出来ない、そういう意味での責苦でもある。 収容所では足・顔を殴打され、幾度も地面に伏すこととり、直江津では重い木材を担がされ、ひたすら直立させられることとなる。 単純化するなら、走ることで自己実現してきた者が走るという行為を奪われ、それを取り戻すまでのドラマ、となろう。  それだけに、エピローグでにこやかに走るザンぺリ-ニ氏の姿は感動的である。  ロジャー・ディーキンスの撮影は、実話の映画化といこともあって合理的な光源を基にした自然主義的なルックだ。 爆撃機のキャノピーの中を一瞬横切る太陽の入射光などの細部が画面にリアリズムを与えている。 直江津の石炭採掘場の見事な美術を舞台に展開されるのは、収容所長との視線の闘いでもある。 ここに至って、写実的な照明はより強度を帯び、二人は順光と逆光で対照化される。
[DVD(字幕なし「原語」)] 7点(2017-01-29 04:52:30)
17.  ブリッジ・オブ・スパイ 《ネタバレ》 
マーク・ライランスの自画像、鏡像、本人の三身が一画面内に映し出される冒頭のショット。 それは二対一の交換のドラマ、国を跨ぐスパイのアイデンティティのメタファーでもあろうか。 鏡への反射の演出は随所にみられ、様々に考察の余地がある。  裁判劇を含む饒舌な脚本でありながら、冒頭で示されるそのスパイ活動の描写は尾行劇とレンズを凝視する事という視覚の駆使であり、 そこに画面で語るスピルバーグの本領が発揮されている。  ヤヌス・カミンスキーは、凍てつくヨーロッパと、温かみのあるニューヨークのルックのコントラストをよく際立たせ、 クライマックスの橋は越境という決定的局面を光と共に象徴的に浮かび上がらせている。  本作での光は、米国パイロットを幾度も苛み、銃弾の撃ち込まれたトム・ハンクス家族を晒し、橋の向こう側に輝くライトも 必ずしも希望を象徴していない。蒼白い光芒の下、シルエットと化して消えゆくそれぞれのスパイと、立ち尽くすトム・ハンクスの 暗示的なロングショットが切なくも美しい。  マーク・ライランスの寡黙な芝居が素晴らしい一方、眉間に皺を寄せるばかりのトム・ハンクスの表情は少々単調か。
[映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2016-01-11 21:21:24)
18.  フランス組曲 《ネタバレ》 
ドイツ占領下のフランス。貞淑なヒロインと紳士的なドイツ軍士官のスリリングな視線の劇。 特に序盤のシチュエーションはオフからの足音等の音響と共に、メルヴィルの『海の沈黙』のような静かな緊張感を湛えている。  半開きのドアや鏡面等のフレーミングによって、ヒロインのミシェル・ウィリアムズは小さく切り取られているが、 ドラマがそこから大きくうねるのに伴い、義母役:クリスティン・スコット・トーマスと共に彼女もまた枠を越えて大きく変貌していく。  萎縮する女から、恋を経て雄々しく前進する女へ。ミシェル・ウィリアムズがひときわ魅力的だ。
[映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2016-01-10 23:53:06)
19.  フライト・ゲーム 《ネタバレ》 
携帯画面の文字情報と、それを読むリーアム・ニーソンのリアクションを 同じ画面内に乗せながら物語を畳み掛けていく。  観客は双方に視線を配りながらの視聴を要求されるが、それぞれのショットを 定番的に分断させるよりも断然テンポとリズムがいい。 その意味でも「NON STOP」である。  犯人とメール交渉をしつつ、相手の反応を機内の複数の監視カメラを通して 女性二人にチェックさせていく。 そこに同時進行で機外との通話が重なる、といった具合に複雑な シチェーションを的確に処理しながらテンションを上げていく手際がいい。  主人公を陥れていくマスメディア、謎解きに一役買う携帯動画メディア。 各種映像媒体の提示も現在的で面白い。  閉所での格闘アクションは相変わらず煩雑でぶつ切りなのが玉に瑕だが。  割れた鏡面に歪む主人公の像などは、もはや監督のトレードマークといえる。  
[映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2014-09-11 23:59:05)
20.  フタバから遠く離れて
映画中盤に、双葉町へ一時帰宅する避難家族たちの模様が映し出される。  舩橋淳監督ら撮影クルーも同行しているが、幾つもの家族を追うには限界がある。 監督から預かったビデオカメラだろうか。取材対象であった中井裕一さんは 自ら機材を持って、被災地の様を記録していく。  墓参に訪れた墓地は荒れ果て、あちらこちらで墓石が崩れている。 中井さんの慨嘆の声。カメラは激しく動揺し、忙しない。 時間がない、と怒鳴りながら親を急かす中井さんの切迫した声が胸を衝く。  限られた時間の中、頼まれてきた思い出の品々を家具の中から慌ただしく探し出す 一時帰宅者たちには悲しむ余裕も無い。  一方で、避難所の家族たちに寄り添うローポジションのカメラ、 牛舎の中で餓死している牛たちの惨い姿に正対するカメラの意志的な構えと スタンスは揺るぎなく、厳しい。  民主党の海江田・細野らによる恐るべき珍セリフも忘れがたい。 
[映画館(邦画)] 7点(2013-04-12 23:40:29)
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