21. 武士の一分
《ネタバレ》 原作は短編も短編なので映画化に当って相当変更されていると予想していたが、割りと忠実にシンプルに仕上げている。鑑賞前は現代風の代表のような木村拓哉さんに時代劇なんて似合うはずがないと危惧していたがハウルに続いて健闘を見せている。そして作品そのものがキムタクナイズされている。重苦しくなってしまうところも時に喜劇調を織り交ぜ彼の特性を生かしながらも作風を損なわず融合させたのは見事だ。脇を固める登場人物たちも僅かな登場ながら強烈な印象を残す。剣術道場師範や医者などは物足りないと思うほどだが、主題はあくまで新之丞と加世と徳平の三人が成す家にあるからであろう。気に食わぬ仕事、切腹が待つ厳しい武家社会、冷たい親戚に囲まれながらもささやかで穏やかな幸せに価値を見出している。殊に印象深いのは加世が〝蛍はまだ出ていない〟と嘘をつくところで、しびれるものがある。しかし、思い込みかもしれないが若干気になるのは台詞が説明のように感じられるところ。活字ではない情報量の多い映像なれば必要以上の言葉は要らなかったと思う。ましておしゃべりは嫌いだとあれほど言っていたのだから。無言の中にというのが日本人の愛する奥ゆかしさだと認識しているのだが、もはや時代錯誤なのであろうか。日本人の一分はもうそんなところにはないのかもしれない。・・・・・・ところでシネコンで観たのだがチケット売り場で数人の子どもたちが〝たけしのいっぷん〟と笑いながら連呼していた。そんな映画があったら・・・ぜひ観たいゾ;。 [映画館(邦画)] 7点(2006-12-02 23:57:27)(良:1票) |
22. フル・モンティ
《ネタバレ》 意外と言っては失礼ですが傑作だと思います。コメディをしっかりかましながら、労働者階級の苦境や男女の立場逆転等の現代社会風刺に加え、普遍的な家族愛までも巧みに描いています。悲哀に満ちた登場人物達も魅力的です。ロバート・カーライルほど情けない人物を魅力的に演じられる俳優はいないと思います。さらに、一度限りのストリップは大成功で幕を閉じますが、おそらくその1ヶ月後には冒頭のダメな状態に戻っているんじゃないかと想像できるところも良いです。 そして本作が好きな一番の理由は全天候型だからです。つまり楽しい時は笑わせてくれるし、落ち込んだ時は彼らと一緒に落ち込めてちょっぴり元気になれる。好きな映画でも「今はちょと重いな」と思ったり、「そんな能天気なの観る気分じゃない」ということがあります。しかしこの作品はいつだって観てみたいのです。 [ビデオ(字幕)] 9点(2006-06-28 17:38:15) |
23. フェイク
《ネタバレ》 レフティはうだつの上がらないマフィアの世界で家族を想いながら、ドニーは囮捜査官として正義を貫こうと、異なる世界で互いに必死に生きている。だがレフティもドニーもマフィアと警察、それぞれの歯車にしか過ぎず何も出来ませんでした。二人は強い絆で結ばれていたのに…。そこが悲し過ぎる哀愁漂う作品です。本作には極限状態にあるからこそ考えさせられる人間の性、友情、家族、仕事、社会と人間の表裏、そして〝信頼〟が描かれています。ですがやはり一番の見所はアル・パチーノとジョニー・デップの名演です。二人にはこういう悲しい役が良く似合います。特にパチーノ!ラストの家をあとにするシーンは圧巻の一言に尽きます。最期の時までドニーを信じきった、やる事なす事すべてがダメな情けないレフティが最高にかっこいいです。割りと地味な作品ですが隠れた傑作だと思います。 [ビデオ(字幕)] 10点(2006-06-16 18:52:22)(良:2票) |
24. ブロンクス/破滅の銃声
《ネタバレ》 マニーが銃で撃たれてしまう最後は別として、起伏の無いストーリーですね。いつ本題に入るのかなと思っていたら、それが本題だったという感じがします。でもそれがミソなのかもしれません。というのも始めのうちはマニーの方が多くの問題を抱えていると感じました。しかし徐々にドラック中毒のダニーの方が問題があると分ってきます。そして最後にマニーがドラック中毒者に撃たれてしまうシーンで完全にダニー側、つまりドラック中毒側の方がいかれている事が判明します。その最後のシーンと起伏の無いストーリーのコントラストがドラックの怖さを伝えているのです。しかしそれ以上の何かは感じませんでしたね。でも↓の【tetsu78】さんのレビューを拝見して、なるほどそういう見方もできるなと改めて思いました。それからティム・ロス、もともと彼の出演作という事で鑑賞したのですが、作品の内容は別として、彼の特性が生かされた役でしたね。 [ビデオ(字幕)] 5点(2006-02-26 11:33:48) |
25. PLANET OF THE APES/猿の惑星
《ネタバレ》 リメイクというのは良いところはそのままに、悪いところは改善できるので、基本的にはオリジナルより出来が良くなると思います。しかしオリジナルが名作であると、そのイメージを壊してしまうという事の方が遥かに大きく、評価を落とす事になってしまいます。さて「猿の惑星」は言わずと知れた名作です。しかも〝自由の女神〟の衝撃のオチがあってこその作品です。オチのある名作をリメイクする事が決まった時点で、バートン監督の敗北(世間が言う意味での)は決まったも同然だったと思います。ですからどうせなら、もっと〝バートンらしさ〟を出して欲しかったですね。 でも単品として考えればけっこう楽しめましたよ。特に猿側が興味深い。ヘレナ・ボナム=カーター演じるアリはなかなか魅力的でしたし。さすがに恋愛感情までは無理ですけど。それにティム・ロス演じるセード将軍は強烈でした。彼は人間の恐ろしさを誰よりも知り尽くし、絶対服従させようとする恐るべきモンスターです。セードに征服されてしまったラストも頷けますね。 [DVD(字幕)] 6点(2006-01-17 15:03:44) |